ガンダムSEED NEOラウの『兄弟』地球連合の変態仮面ネオ少佐は娘を愛でたい 作:トキノ アユム
原作でラスティを撃ち殺した地球連合の士官のハマダさんは、なんか勝手に死にました。
(くそぉ!)
ザフトの兵士の一人であるアスラン・ザラは生き残っていた連合の士官達と銃撃戦。
兵士の質はコーディネーターであるこちらが上だが、数で勝る地球連合軍に何人かの仲間が犠牲になった。
だが銃撃戦の均衡も崩れ始めていた。仲間の一人が敵の士官を一人撃ち殺した。
後はモビルスーツの近くにいる女性士官だけだ。
任務達成は目前──
「な……」
その時であった。アスランがその存在に気が付いたのは。
「女……の子?」
この場に似つかわしくない綺麗なドレスを身に纏った少女が銃弾飛び交う戦場にいた。
(……民間人か?)
着ている服から地球連合軍の士官である可能性は低い。ならば、戦闘に巻き込まれた民間人の可能性が一番高いが──
「!?」
そんな思考は少女の目を見た瞬間、吹き飛んだ。
華奢で可憐な見た目からは少女の目にあったのは紛れもない殺意。
(まずい!)
そう思った時には手遅れだった。
「!」
少女は手に持っていた銃を向けると、躊躇いなく引き金を引いた。
「がっ!?」
「ラスティ!?」
発射される弾丸。それは死角である仲間を的確に撃ち抜いた。
「くそぉ!」
仲間を撃たれた怒りから少女に銃を向けるアスランだったが──
「……!」
発射された弾丸を少女は、必要最低限の動きで躱して見せた。
「馬鹿な!?」
アスランも兵士だ。人を撃つのも殺すのも始めてではない。
だから驚愕したである。
経験上、絶対に当たるはずタイミングの弾を少女が躱して見せたのだから。
(まずい!)
少女が動く。走りながら、銃口をこちらに向けようとしている。
「ちぃ!!」
アスランは再び引き金を引く。
アサルトライフルから発射される弾丸の雨。その一つが少女の手の銃に当たり、その手から弾かれる。
勝利の確信。だがその瞬間、アスランは背後から殺気を感じていた。
「うおおぉぉ!!」
振り返りながら、銃を撃つ。
「あうっ!」
放たれた弾丸はこちらを撃とうとしていた女性士官の肩に命中した。
「これで終わりね」
「!」
すぐ傍で声が聞こえた。
綺麗で幼い声。だがそれはアスランにとって死神の声だった。
「赤いの!」
少女の手にはナイフが握られている。
(まずい!)
咄嗟に回避しようとするが、間に合わない。
自分はここで死──
「アスラン逃げろぉ!!」
「ラスティ!?」
「!?」
少女に撃たれた仲間の叫びと共に銃声が鳴り響く。
「!!」
弾丸を回避することを優先したのか、少女はその場を飛びのくと、アスランからも距離を取った。
当然それは明確な隙だ。アスランは手に持ったライフルを少女に向け、引き金を引くが──
(出ない!?)
玉詰まりが起きたのか、弾丸が発射される事はなかった。
「ちぃ!!」
舌打ちをし、ナイフを抜き取り、少女に襲い掛かろうとするが……
「行けアスラン!」
「ラスティなにを!?」
仲間の声がそれを制止させた。
ラスティに目を向けると、腹部からおびただしい鮮血を流しながらも、立ち上がり、叫んでいた。
「この化け物は俺が何とかする!! お前はGを確保しろ!!」
「邪魔!」
銃を持っていないアスランよりラスティの方が脅威だと判断したのか、少女がラスティに標的を変えた。
「ラスティ!」
「行けっていってるだろう!」
「しかし!!」
「どの道、俺は助からねえ!!」
「……!」
反論しようとするアスランだったが、ラスティの言葉に気が付いた。
気が付いてしまった。
(あの出血ではもう……)
ラスティがどんな思いでそれを口にしているのかを。
どんな覚悟でそれを言っているのかを。
「行けぇ!!」
「!!」
断腸の思いでアスランは選択した。
少女の排除ではなく、Gの確保を。
仲間の想いをくみ取り、仲間を見捨てる道を。
キラ・ヤマトもまたその戦場にいた。
キャット・ウォークから飛び降りた彼は、自分よりも歳下であろう少女の戦闘に唖然としていた。
だが来いと言った女性士官がザフト兵の一人に撃たれ、彼の意識を引き戻した。
「大丈夫ですか!?」
思わず駆け寄るが、返事はない。
撃たれたのは肩のはずで死んではいないはずだが──
「!」
近くのザフト兵がナイフを持ってこちらに迫ってきている事に気が付く。
ただの民間人であるキラは咄嗟に逃げる事も出来ずに──
「──キラ?」
こちらに襲い掛かろうとしていたザフト兵が茫然とした声を上げながら、制止していた。
キラもザフト兵を見る。
炎の照り生えるヘルメットのバイザーごしに見えた顔に、キラもまた驚いた。
「……アスラン?」
無意識の内にキラはその名を呟いていた。
幼馴染であった親友の名前を。
「!」
バイザー越しに見える緑の瞳が、驚愕に見開かれる。
その意思の強そうな瞳と、物静かそうな顔立ちには紛れもなく親友の面影が色濃く残っている。
思いも寄らない形で再会に二人が立ち尽くしていると、
「……ぐっ!」
女性士官が負傷した肩を押さえながら、銃を構えた。
「っ!」
間一髪の所で、それに気が付いたアスランは咄嗟に後方に下がった。
先程までアスランがいた空間を、弾丸が薙ぐ。
そしてその一瞬の隙をつき、女性士官は近くにいるキラに体当たりをすると、開いていたモビルスールのコクピットに一緒に転がり込んでいった。
「く!」
コクピットに入り込まれ、起動するモビルスーツ。
それを見ながら、アスランは今正に立ち上ろうとするモビルスーツの隣にあるモビルスーツの元に向かって行った。
(馬鹿な! キラがどうしてここに!?)
この場にいない筈の幼馴染の姿を見たアスランの心中は乱れに乱れていた。
そんなはずはない。何かの間違いだと自分に言い聞かせるが、先程見た少年の顔立ちは、自分のよく知る友の面影があった。
「ぐああああぁぁぁ!!!!」
「!?」
仲間の苦悶の悲鳴に、アスランははっとする。
「ラスティ!!」
無意識の内に悲鳴の上がった仲間の元へ向かおうとするアスランであったが、それを寸前で何とか堪える。
ここでラスティの元に向かうのは、自分の背中を押してくれた彼の想いを無駄にしてしまう。
(それだけは駄目だ!!)
だからと──アスランは自分達の奪取目的の一つへと向かった。
振り返りは……決してしなかった。
「ぐ、がぁ!」
赤いザフト兵が仰向けに地に倒れる。
その手に持っていた銃は既にステラが奪い、勝敗は決していた。
いや、最初からそもそも勝負にはなっていなかった。
奪った銃のマガジンには弾は一発も入っていない。
「……やられた」
このザフト兵は最初から囮として自分の命を使い捨てる算段であったようだ。
「へへ……」
だからだろう。割れたバイザーから見える男の顔は勝ち誇ったように笑っていた。
「……」
それを見たステラは無言で男の腹にナイフを突き刺した。
「ぐああああぁぁぁ!!!!」
急所は刺さずに、あえて外す。
殺すのではなく悲鳴をあげさせるのが目的だ。
男の笑みに怒りを感じたからなぶっているのではない。
かつての自分ならここで激情に支配されていただろうが、ネオから感情を律する術を教わった自分は戦闘中はそんな初歩的なミスはしない。
男を直ぐに殺さないよう
ネオに教わった戦法の一つだ。
一人の敵をわざと生かし、その存在を餌にして他の敵を誘い出す。
だが今回は失敗だったようだ。
ああ、そうだったとステラは思いだした。
この戦法は感情的な相手に効果があるが、冷静な敵には効果が薄いともネオは言っていた。
仲間よりもモビルスーツの奪取を優先したあのザフト兵は冷静な相手だった。
「……失敗」
無駄な時間を費やしてしまったと、ステラは刺したナイフを引き抜くと、今度は男の喉元に突き立て、絶命させた。
「……」
ネオからの命令は可能であればGの奪取を阻止してくれ……であったからとりあえず敵を殺したが、これではもうどうしようもない。
Gの一機は起動し立ち上がろうとしているし、もう一機の方は今正にザフト兵の一人がコクピットに入り込んだ所であった。
今から行っても間に合わないのは明白である。
火の手も上がって来た。ここで自分が出来ることはもうないだろう。
「任務、終了」
ならネオの所に戻る。
そこが自分の本来の居場所なのだから。
「ネオの所に帰る」
自分には帰れる場所がある。
それがとても嬉しくて、ステラは幸せそうな顔でネオに指示された合流ポイントへと向かうのであった。
その手は殺した敵の血で赤く汚れていた。
ラスティが死んだ!
ネオさんの教育でプレデターレベルのアサシンになったステラちゃん。
アスランは一つでも選択肢を誤ったら、ステラに惨殺されてSEED終わってましたね