ぶっちゃけ、この子の過去なんてどうでも良いんですよね、本編に全く関係ないし。
夢を見た。
それは、私がまだ幸せだった頃。
お父さん、お母さんと一緒に、遠くの丘に遊びに行って、お花を摘んだ。
そのお花でお母さんに花冠を作ってあげたら、とっても喜んでた。
お父さんは、それを羨ましそうな眼で見ていた、仕方ないから、もうひとつ作ってあげた。
凄い喜んでくれた。
それで、また今度、お姉ちゃんも連れて来ようって約束した。
夢を見た。
それはまだ、私が汚れていなかった頃。
お姉ちゃんと一緒に、近くの森に行った。
お父さんがいつも頑張ってくれてるから、二人でご飯作ろうって。
茸や山菜、川ではお魚を一杯取ってきた。
そのあと、水浴びをして、二人共ビショビショになって帰っていった。その時、外はもう真っ暗だった。
お父さんに怒られた。
どうしてもっと早く帰って来なかったのかって。
理由を話したら、また怒られた。
今度は泣きながら、俺はお前達が無事だったらそれで良いんだって。
楽しかった。
平和だった。
幸せだった。
でも、それはもう元には戻らない。
もう、私は取り返しの付かない所まで来てしまった。
もう、皆には会えない。
こんな姿じゃ、会いたくない。
何で、私はこんなコトされてるんだろう。
私は、本当に生きているのだろうか。
そんな絶望の淵にいた私に、光が差したような気がする。
それは、血のように紅く、残酷な程鈍かったけど………凄く、温かい光だった。
「……ぅ……ここ……は…?」
気づけば、私はベッドの上に寝そべっていた。
確か、私はあの人達から逃げ出して、途中で気を失って倒れていた筈。
誰かが助けてくれたのだろうか。
なんにしても……
「……ふかふか」
何時ぶりのベッドだろうか。
数ヵ月なんて物じゃない、もう二十年程使っていないだろう。
裸だった私には、少しブカブカだけど、綺麗なお洋服が着せられている。
あの吐き気がする精液の腐った臭いも、乱暴に掴まれ傷みに傷んだ髪の毛も、綺麗になっている。
痣には湿布が貼られてあって、傷口には包帯が巻き付けられてある。
「……早く、出なきゃ」
ここに居れば、恐らく安全なのだろう。
けれども、もし、もしもあの人達がこの場所に私がいるって知ったら、私を救ってくれた人に迷惑がかかる。
女の人だったら、尚更だ。
それは絶対にいけない。
私はそう思い、痛む体に鞭を振り、ベッドの横にあった窓からこっそりと出ていこうとした。
「待ちなさい」
「!!」
後ろから声がした。
私はすぐにふりかえった。
そこには、綺麗な女の人が立っていた。
髪は私の物と違って短く、色も逆で血のような赤。
背も高く、胸も大きい。
何から何まで私と逆な見た目だった。
そして、その人の目は、日だまりのように暖かかった。
全てを許してくれるような慈愛に満ちた瞳。
これは、そう、母親。
我が子を見る母親の目に似ている。
私は、その目を見るや否や、逃げる事も忘れ、大声で叫んでいた。
「その目で私をみないでッ!!」
女の人は、戸惑った。
「どういう事だ?」
「……私は、私は、もう、その目で見られるような子じゃないの……もう…私は……」
もう、私は汚れてしまった。
だから、だから、
やめて、その目で見ないで。
ああ、もう。
泣けて来ちゃった。
何やってるんだろう、私。
自分で逃げて、自分で倒れて、自分が迷惑かけて、自分で突き放して、自分で泣いて……
バカみたい。
いっそ、あのまま、死ねば良かったのかな……
その時、私は強く、女の人に抱き締められた。
「……辛かったんだろう?」
「…ひっく……えぐっ……」
「君は、本当に辛い思いをしてきた」
「ほんの短期間だが、君の看病をしてわかった……恐らく、君は奴隷のような存在だったのだろう、それも、女性としての生き方を否定するような」
女の人は、優しく、冷たい私の心を包むような声色で話しかけてくる。
「辛かっただろう、苦しかっただろう、死にたくなったろう……けど、もう大丈夫だから」
ああ、そんな事言われたら……
「私が、君の味方になるから、安心して」
もう、限界だよ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
「よしよし……大丈夫、もう怖くないよ……」
あれから、少し時間が経った。
外はもうすっかり寝静まっており、梟や鈴虫の音が聞こえる。
「……落ち着いたかい?」
「ぅん……もう、大丈夫です……ありがとうございます」
少し、詳しい話を聞かせて貰った。
彼女の名前はステラ・サテラと言うらしい。
何故『らしい』なのかと言うと、もう二十年程前からその名で呼ばれた事がないらしい。
種族は、かなり珍しい『霧裂狼(ムレツロウ)』。
昔は言うほど珍しくも無かったが、最近ではあまり見かけない種族だ。
自然発生した大規模な霧から生まれ、成人すると自ら濃霧を出し、それに隠れて自身の巨大な牙と爪で相手を切り裂く、かなり上位種の獣妖怪だ。
しかし、この妖怪の幼年期は非常にか弱く、霧は出せない、爪や牙も発達しておらず、筋力も足りない。そして、妖力を大量に溜め込んでいる。
要するに、他の妖怪にとってはこれとない獲物なのだ。
それと、この種族には基本的な概念で『仲間を守る』という事がある。
話からすると、この本能がキッカケで、ステラは家族の身代わりに、結果奴隷となっている。
「辛い事を思い出させて済まないな」
「……ううん、良いの……」
『何が良いだってェ?』
「……誰だ、お前は」
突如、入り口らしきドアが勢いよく開き、人が入ってきた。
ステラはその顔に見覚えがあり、同時に顔を青ざめた。
「…ごしゅじんさま……」
「ケッ、逃げた奴隷にご主人呼ばわりされたかねェよカス……んで?そこの嬢ちゃんはこのカスを匿ってどうするつもりだ?」
その時、ステラの主人の背後からゾロゾロと妖怪が入ってきた。
その数、総勢200人。
『ヘヘヘ、やっと見つけたぜ……』
『たった一人の性欲処理班なんだから逃げんなよオラッ!!』
「がふッ!!……」
モブBがステラを蹴った。
腹を思いっきり蹴ったらしく、蹴られたステラはその場にうずくまり口を押さえている。
『……ん?ほうほう……ダンナダンナ』
モブAがステラの主人を呼ぶ。
「何だ」
『このオンナ、見て下さいよ、相当なベッピンですぜ、プロポーションも最高!!』
「……ケケ確かにな、しかも吸血鬼じゃねェか………おい、嬢ちゃんよ」
「ステラ、大丈夫か?」
レヴァはステラの主人をさっぱりと無視し、ステラの方へと駆け寄る。
ステラは未だに苦しそうに口を押さえている。
「ぅ……」
「無視かよ……良いぜ、そんなら俺らだって強行手段だ、オイお前ら!!」
『へい!!』
「コイツらをボッコボコにしろ!!手段は取らないが、生け捕りにしろ!!ああ、犯しても良いぜ!!」
『ウォォォ!!!』
モブ達は一気に店内へと入り、店を荒らしながらレヴァ達へと近づいてくる。
レヴァは少し間を起き、何もいない筈の空中に話かけた。
そして、次にレヴァはこういった。
「黙れ下巣共」
瞬間、空気が死んだ。
一言、そう、たった一言。
それだけで、あの喧騒を止めたのだ。
気が付けば、ばたりばたりと、100人程が倒れていった。
この空気に堪えられなくなったのだ。
「今の今まで黙っていれば調子に乗りおって……力の差も分からんのか、貴様等は」
今のレヴァは、完全にキレている。
本来の吸血鬼の本能を全開にし、魔法使いとしての魔の力を放出している。
外見も変わった。
普通サイズだった翼は、片翼2m程もありそうで、純白綺麗だった白目の部分は黒く染まり、黒目が黄色く、その上に黒い縦線が出来ている。
牙は、イージスの盾を貫き、
爪は、オリハルコンさえも切り裂いた実歴がある。
そして、全身から吹き出る病魔の霧。
モブとステラの主人は思った
死ぬ。と。
そこからは早かった。
レヴァの爪が首を死なない程度に切り裂き、
レヴァの魔法が死なない程度に大量の傷を付けた。
「ガァ……ヒュー……ヒュー……」
「喋る事さえ出来ぬだろう、無様だな……だが、ここからだ」
「……!?ブファ!ゲファ、グハッ!!」
突如、レヴァとステラを除く全ての者達が苦しみだした。
「どうだ、我特性のウイルスの味は」
そう、これはウイルス感染による発作。
傷口から感染し、すぐに症状として出るのは、血を吐き、頭が食いちぎられるような痛みに襲われ、もがき苦しむ。
そして最後は……
「ァァ……ァァア"ア"ア"!!!」
パンッ。
体が弾け飛ぶ。
「ふぅ……ステラ、大丈夫か?ウイルスは入っていない筈だが」
「……大丈夫です、ごしゅじんさま」
ステラは、不思議と怖くは無かった。
いや、寧ろ、素敵に見えた。
私の為に、こうもしてくれるのかと。
そして、ステラはこう思った。
これこそ、私の真のご主人様だと。
「え」
もう、ステラにはまわり等見えていない。
「これから、一生ついていきます……ごしゅじんさまぁ……」
「……まあ、良いか」
なんかひッッッッッじょうに変な終わり方になってすみません。
今回の裏話。
戦闘前シーンでレヴァさんが誰かと話しているシーンがありましたが、あれゆかりんです。
内容としては、今からこいつら肉塊にするから、処理を頼む。って感じ。
ステラたんは別にヤンデレじゃないです。
強いて言うなればはがないの幸村きゅんみたいな立場ですかね。
あと、前回消し炭にされたのはステラの元主人の相方みたいな感じです。
パンは次回ステラちゃんと一緒に食べますよー。
次回は絶対にほのぼのです。
※この話にはグロシーンがあります。