「そう、甘過ぎるのも駄目なんだ。甘いリンゴを使うとどうしても甘過ぎてしまう。だからこうして酸味のあるリンゴを使うんだ」
ちなみに、ジャム等も同じふうに説明ができる。
あれらは保存の為に砂糖を大量に使う。用語では糖蔵という。
そのせいで、非常に甘味の強い物となる場合が多い。ジャムの元となるフルーツが甘ければ尚の事。
それで、酸味のある物を使う。
「あら、私は甘い方が好きよ?」
「……わたしも」
「まあ、そういう人……まあ、今回は妖怪だが、別に極端に甘い物が好きならばそうするといい。そんな事より、さあ、食べようか」
そういうと、皆が椅子に座る。
そして、声を揃え、ある言葉を言った……訳ではない。
これは文化的な問題なのだが、日本のような、食べる前に『いただきます』のような掛け声を言う国はあまりないらしいのだ。
よくテレビで出てくる外国の家族が『いただきます』のような掛け声をしている様子はあまり思い浮かばないだろう?
つまり、そういうことだ。
「……おいしそう」
「ステラ、今日は君の為に作ったんだ、遠慮せず食べるといい」
言われずとも、と言った感じで、ステラはアップルパイにフォークを差す。
パリパリと、外側の皮が崩れる音が心地良い。
そして、中からは金の様に光るリンゴが見える。
トロリと液が垂れ、皮に染みてゆく。
先程とは少し変わった匂いが漂ってきた。
恐らくシナモンの香りだろう、食欲をそそる。
「あら、シナモンの香りね、前までは嫌っていたのに」
「慣れさ」
レミィの言動からするに、レヴァはシナモンは得意では無かったようだ。
「……んむ」
ステラはアップルパイを口に運ぶ。
熱くて食べれない程の熱さではなく、ほかほかの丁度良い温度だった。
レヴァが気を掛けてくれたのだろうか。
程よい甘味が口を包み込む。
外側のサクサクとした皮と、中のトロトロとした林檎のソースが混じり合い、心地良い感覚に浸る。
林檎はまだ形を保っている物もあり、噛むと、ジュワリと果汁が溢れ出てくる。
これぞまさに、至高。
しかし、何か腑に落ちない。
確かにこれはとてつもなく美味しい。
けれど、何故か楽しい気分にはなれないような感覚だ。
何故だろうか。
「どうだ?上手く焼けたとは思うが……」
「……はい、とても美味しいです」
「えぇ、また腕を上げたわね」
「……」
パチェが何故か喋らない。
「どうした?パチェ」
「……喋ったら、余韻が抜けるじゃない」
どうやら、黙る程の美味しさという事らしい。
レヴァは嬉しそうな顔で、「ありがとう」と答えた。
その後は普通に、他愛もない話に花を咲かせ、下らない事に笑みを見せ、しょうもない出来事を語り合って一日を終えた。
しかし、ステラは疑問だった。
何故、あの時、楽しい気分になれなかったのか。
なぜ、あの時、三人は哀しそうな眼をしたのか。
なぜ、レミィはあそこまで過敏に反応したのか。
疑問はまだまだあるが、今回は忘れよう。
何せ、彼女には仲間が増えた。
十数年間、ずっと孤独だった彼女には、こんなにも友達ができた。
慕える者もできた。
今回は、それで終わらせようではないか。
悲しい話など、果たして伝える意味はあるのだろうか。
そう、私の、『イント・レヴァイナット』の過去など………
次回から数話の間、レヴァさんの過去編が続きます。
さて、レヴァさんの変わり様を見た時の皆様の反応が楽しみだ......
p.s.ちょっと過去編が面倒になったので止めます。