幻想郷でパン屋、始めました。   作:命麗 命

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常識人は苦労する。うん。

「皆朝早くから来てお腹も空いただろう、朝食を用意したぞ。量は沢山あるから、好きなだけどうぞ」

 

そういって私が持ってきたのは、大きめの皿に盛られた、黄金色に染まったカットしたフランスパン。

その皿からは砂糖の濃密な甘い香りがミルクの優しい甘さの匂いと混ざり合い、そしてそれが焼かれた事により、何とも美味そうな芳香が漂う。

 

「おお、何とも旨そうな匂いだ」

 

「レヴァの料理はいつでも美味しいわよ」

 

「お世辞は止してくれレミィ」

 

お気づきの方もいるとは思うが、私が作ってきたのはフレンチトーストだ。

時々あるのだが、フランスパンという物はいつもは人気なのだが、稀に全く売れない時があるのだ。

昨日がまさにそんな時で、フランスパンが大量に余っていた。

そこで思いついたのがコレだ。

フレンチトーストなら時間が経って固くなったフランスパンも柔らかくなり、美味しく食べれる。

寧ろこれ程フレンチトーストに合った条件を持ち合わせているのは此れ位しかないだろう。

 

「へー、フレンチトーストか。何か、パン屋の朝御飯って感じだな」

 

「自家製のハーブティーと御一緒にどうぞ」

 

「じゃあ頂くとするわ」

 

「あっ、霊夢、手を出すのが早すぎよ!?」

 

......恐らく、廃棄のパン以外マトモな物を食べていなかったのだろう。霊夢は誰よりも早くフレンチトーストに手をつけた。

そこから追う様にレミィ、魔理沙と、次々に手をつけ、まるで餌を取り合う雛のような、中々愉快な光景となった。

そんなに取り合う程数が無い訳では無いのだがな。まあ、私も食べるとしようか。

事前に配っておいた小皿にフレンチトーストを一枚取り上げ、先にハーブティーを口に運ぶ。ミントやらカモミールやらを、特に指定もなく自分の好みで配合して作っているため香りに統一性はまるで無いが、不快な要素は一滴も無く、すっきりとした香りを主体に、どことなく深みのあるような味わいが感じられる。

因みに、ハーブティーにはフレッシュタイプとドライタイプが主流なのだが、私はドライ派なので今回もドライの方を淹れている。

フレッシュは生のまま、つまり摘みたてのハーブを使う事を意味し、ドライは乾燥してある、皆がよく売店とかで見る茶色の茶葉の事だ。基本的にはフレッシュの方がやわらかい風味だけを味わう物で、ドライはフレッシュに比べて濃密な香りと若干の渋みと程よい茶の風味が特徴となっている。アフタヌーンティーとかにはフレッシュがお勧めだ。(作者談)

いつも、朝眠気覚ましに飲んでいるが、こうして集まって飲んでみると、何かと美味しく感じる。

 

口を潤すと同時にハーブの香りでスッキリとさせ、漸くフレンチトーストに手を伸ばす。

私はナイフとフォークで食べる派なのだが、雰囲気からしてどうでも良いだろう。

と言う訳で、私は手に持ったフレンチトーストを口に入れる。

噛み切る時に、表面がカリカリと音を鳴らし、その奥から卵のこってりとした甘みと、牛乳の風味豊かな味わいが、砂糖の強烈な甘みを和らげ、絶妙なハーモニーを生み出している液がじゅわりと口の中に広がる。

それは噛む度に生み出され、収まる時はもう胃の中に納まっていた。

 

「思った以上に上手くできたな」

 

「美味しいぜ、くどくなったらハーブティーが口の中をスッキリさせてくれるな」

 

「もっちゃもっちゃ......」

 

「霊夢、人前なんだからがっつかない。あとそれ九枚目だけど喉渇かないの?」

 

魔理沙とレミィは一、二枚目をゆっくりと楽しんでいるようだが、霊夢は相変わらず遠慮無しのようだ。

確かに人前でその食いっぷりは確かに下品ではあるが、やはり作っている側から見たらより美味しく、そしてお腹一杯になって貰うほうが心境としては喜ばしい事である。

ただ、流石に何か飲み物を飲んだほうが良いんじゃないか?

 

「まあいい。ところで魔理沙」

 

「どうしたんだ?」

 

「一応聞いておく。今日は何故私の所へ来たんだ?」

 

「あー、それはねレヴァ......」

 

「今日は寺子屋で授業参観があるから、一緒に行こうと思って来たんだぜ!」

 

「授業参観?」

 

授業参観。

外界の学校で行う行事の筈だったが、一体どういう事だろうか。

 

「レヴァ、貴女にはステラが居るでしょう?」

 

「ああ、そうだ。だが私はあの子の母親では無いぞ?」

 

レミィが遠慮を知らずに物を食べる霊夢を呆れ顔で見ながら、私に論す。

だが、レミィも知っている通り、私はステラの母親では無い、そもそも面識がない時点で、そういった事でステラとはあまり関わりが無い。

 

「でも、一応、今貴女はステラの保護者でしょう?どうせ寺子屋なんて行く機会もそうそう無いんだし、皆で行ってみない?レヴァなら顔が結構知れてるんだし」

 

顔が知れている。

これはレミィにとってとても重要な事なのだろう。

まず、レミリア・スカーレットは吸血鬼だ。

私は論外として、吸血鬼というものは総じて日に当たることは出来ない。皆さん御存知の通り灰になってしまうからだ。

だから、レミィはよっぽどの事がない限り、一歩も外へは出ていかない。自分の館の庭でさえ、日の差していない窓から見るようにしているのだから、その徹底ぶりが見て伺える。

まあ、要するに認知度が低くて人里では完全に蚊帳の外なのだ。もし知っていた人がいたとしても、その殆どが『異変首謀者』としての認知だろう、そんな者にわざわざ話し掛ける人は、人里には居ないだろう。

それに、レミィは意外と内気な所が有ったりする。

会話が成り立たない中に霊夢と魔理沙が居ては、混沌が訪れてしまいそうだ。

 

「だが、私は保護者ではない」

 

そう、私は保護者ではなく、居候の主人だ。

霧裂狼の群れが見つかり次第、あの子は帰すつもりだし、そうで無かったとしても、私の元には絶対に置かない。勿論、悪人の元に渡しては元も子も無いから、引き取り手はしっかりと選ばせて貰うがな。おばさん辺りが丁度良いだろうか?

 

「まあまあ、そんな事言わずに行こうぜ!ほら霊夢、全部食い終わったなら口拭いて手洗って仕度する!」

 

「んぐ…うるさいわね、分かってるわよ」

 

そういって霊夢は手をナプキンへと行かせ、汚れた口や手を拭く。

 

「良いわよ」

 

「うし、じゃあ行くか」

 

「私の意見は聞いてくれないのか…」

 

「諦めなさい、レヴァ。その子、妖怪みたいに傲慢だから」

 

「いい加減煩いぜ、レミリア」

 

 

 

 

 

 

一方その頃寺子屋では。

 

「皆、今日は授業参観日だぞ、良い格好が出来るように、真面目にやるようにな!」

 

『はーい!』

 

「(不味い、ごしゅじんに伝えるの忘れたッ……!!)」

 

「ス、ステラちゃん、顔真っ青だけど大丈夫?」

 

「だ、だいじょうぶ、だと、思い、たぃ……」

 

責任感に駆られて居ても立ってもいられなくなって、珍しくわたわたしたステラが目撃された。




皆様、お久しぶりです。命です。
前回の投稿からおよそ二ヶ月弱という時間が過ぎましたが、いかがお過ごしでしょうか?
なんだか、暑中見舞いみたいな事になってる。
まあ、暑い夏になりそうなんで、熱中症には気を付けてくださいねー。

今回、結構字数が少ない。と思う人もいるかもしれませんが、最近、敢えてそうやって書くようにしているのです。
あまり小難しい事を並べても、皆様が飽きてしまいますしね。
勿論、『そんな気遣いはいい、兎に角長く、長くだ!!』というような事があれば、もっとやりますけどね。
私に哲学とか心理学とか語らせたら一話普通に作れますし。
今度そういうの書いてみようかな。

さて、レヴァさん御一行はついに外へと足を伸ばしました。
ですが、寺子屋へ行く途中で、何やら騒ぎが起きているようですよ?
どうやら酔った低級妖怪が暴れているようです。
そこにバッタリ出くわしたレヴァさん達。
レヴァさんはこう思った。『博麗の巫女の霊夢に任せよう』と。当然の事であるが、どうやら幻想郷にはそんな常識は通用しないらしい。
レヴァさん達はどうやってこの場をやり過ごすのでしょうかね?
次回、『紅く燃ゆるは育たない竹の子』
デュエルスタンバイ!!

……(決闘は)無いよ?
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