「………うーん」
ここは幻想郷唯一のパン屋さん「ぱんやさん」
今そこで唸っているのは店主のイント・レヴァイナット。
彼女は今、非常に困っていた。
その内容とは
「カレールゥが無い………」
何故、パン屋であるこの店がカレールゥが欲しいかと言うと、理由は単純、「カレーパンが食べたい」からだ。
と言うものの、実はちゃんとした理由があったりする。
この前、文に取材を受け、予定通り記事として文々。新聞に記載されたのだが……思ったより客が増えてしまったのだ。
まあ、それは良しとしよう。
その増えた客の中に外界好きな半妖がいて、そいつが「カレーパンと言うものはないのか?」と言って来たんだ。
その時は無いといったのだが、そのあと無性に食べたくなってきて、今に至ると言うわけだ。
カレールゥがなければカレーが作れない。つまり、カレーパンが作れないのだ。
だが、そんな事で諦めるようなヤワな吸血鬼になった覚えは無い。
そんな奴だったらこんな辺境の地でパン屋なんてやる訳がない。
「仕方ない、今は諦めよう」
前言撤回。かなりヤワだった。
と、謎の茶番を一人で繰り広げながら今日の売れ残りを廃棄しようとしていると…………ゴミ置き場に、女性が突っ伏せていた。
「はぁ!?」
そりゃあ、人が倒れていたら誰だって驚くだろう。しかもゴミ置き場に。
思考が混乱しているイントをよそに、倒れていた女性は今にも消えそうな声でこう言った。
「おなかすいた………」
「どうだ、腹は膨れたか?」
「ええ、有難う……貴方は命の恩人だわ………!!」
「んな大袈裟な……」
ここは倒れていた女性の家、いや、家と言うよりも神社か。
彼女の名は博麗 霊夢(はくれい れいむ)
かの有名な博麗の巫女だ。
何故、あんな場所で倒れていたのかが気になったので聞いてみたのだが、「腹が減って死にそうなんだ」としか言わない。一瞬、孤独のサラリーマンの面影が見えた気がするが気のせいだった。そう信じたい。
「にしても貴女、あんな美味しい物をなんで捨てるのよ!!食への冒涜よ!!」
「いや、えっと………そんな風に思うなら、毎日引き取ってくれないか?こっちも毎回大変なんだ」
実際、廃棄場所と私の店はかなり離れている。
飛ぶことはできるが、あまり得意ではないため、パンがぎっちり詰まった袋を担いで飛ぶなんて器用な真似は出来ないんだ。
「ええ、貰えるのなら喜んで貰うわ」
おいおい、かりにも捨てる物を即答で貰うって……どれだけ食糧難なんだ。
「そうか、有難う」
「いいのよ、寧ろ、こっちも餓死しかけてたし」
「餓死って………まあいい、じゃあ、また明日な」
「ええ、また明日」
「あっ、場所聞くの忘れた」
後日、必死で人里で店を探し回る巫女が確認されたとか。
とまあ、カレーパン伏線張っときました。