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──ここに面白いやつが沢山いるって聞いたけど……あんたはどう見ても普通だよね。私をがっかりさせないでよ?
ある日、指揮官から異動を命じられた。
私向きの任地だと言われたから多少は期待していたけれど、待っていたのは冴えない新指揮官だ。
ま、冗談も解さない前の指揮官とは反りが合わなかったし、私は今まで通りにやるだけだ。
それにどんな奴が指揮官でも別にいいんだ。一緒に肩を並べて戦うのは同じ戦術人形、そっちは面白いやつが揃ってるといいけど。
──私の価値、あんたもよく分かってんじゃん。
意外なことに、私は配属早々、小隊長を任せられた。
他の小隊は一目で分かるほど
♡好感度up!♡
見直して損した!
私の隊員たちは製造したての人形ばかりじゃないか! 私は子守をしにきたわけじゃないんだぞ!
どうして私の隊だけがと問いただせば、他の小隊はここの所属じゃなく、一時的な支援の為に駐留してる他の指揮官の隊だって言うじゃないか!
しかもここは最前線だっていうのに指揮官は最初の訓練を終えたばかりの新人だって!?
……はぁ、指揮官がどんな奴でも良いとは言ったが、無能な指揮官に壊されるのはごめんだよ。
まあいい。他の小隊の支援があるとはいえ、この過酷な戦場に新人がいつまでも耐えられるもんか。
あの指揮官が臆病風に吹かれて逃げ出すまでの辛抱だ。
──へぇ……もうやめたと思ってた。
案外頑張るもんだね。
私が配属される直前に倒したっていうスケアクロウほどの相手はいないとはいえ、未だ鉄血の攻勢は激しい。
それに並行して本部が直々に用意した戦闘訓練にも参加して、いくら戦時とはいえ新人じゃとても耐えられそうにない激務が続いているっていうのに。
このまま続けていって、現場を混乱させるような指示を出さない程度になってくれたなら、万々歳だ。
──愚かな作戦計画はさっさと諦めなって。毎日オフィスにいる奴には、戦法を考えるなんて無理なんだよ。
M4A1の捜索、過密な戦闘訓練に加えて指揮官は本部に提出する新たな作戦計画の草案作りにまで手を付け始めた。
まだまだ実戦経験に乏しい指揮官に本部を納得させられるような作戦が立てられるもんか。
本部からの命令に従って、それ通りに私たちを作戦地域に向かわせればいいんだ。
現場でどう動くか、細かい所は現場の判断に任せればいい。無能な働き者に混乱させられちゃ堪らないよ。
──あいつらとチェスしたら、指揮官相手にするより面白いかもな。
戦利品と支援物資のおかげで、私とLink出来るダミー人形が製造出来た。
いの一番に私の編成拡大をするなんて、よく分かってるじゃないか。
戦場に必要なのはオフィスで立てた計画なんかじゃない、戦力だ。
戦力さえあれば、適当な作戦計画でも十分にこなしてみせるさ。
♡好感度up!♡
──勝手に良いところを探してくれ!
ダミー人形によって拡大した戦力で挑んだ戦闘訓練に失敗した。
原因は分かっている。訓練前、指揮官が立てた作戦を却下した私の責任だ。
作戦なんて必要ない。指示も必要ない。指揮官はそこでじっとしていればいい、そんな台詞を吐いておきながら、相手の奇襲に対応できずに私の小隊は無様に敗北した。
目標は達成し、訓練自体は成功したが、それはM4A1率いるもう一つの小隊の活躍のおかげだ。
私の隊が敵を引き付けたおかげだって? 違う! 私は私の慢心のせいで作戦の遂行を妨げ、M4たちはその尻拭いをしてくれたんだ!
……今回ばかりは私の問題だ。こんな私に小隊長は務まらない。他の隊員と変わる事になるだろうと思っていた。
だっていうのに指揮官は私を咎めもせず、次に期待しているなんて言うものだからどうかしている。
こんな醜態を晒した無能な人形をまだ隊長として使うなんてありえないだろう。
指揮官には私の何が見えているんだ。私の何が分かっているんだ。分からない。
だからつい、言ってしまった。これからも私を使うって言うなら、勝手にすればいい。
私はもう、自分に自信が持てないんだ。
──指揮官、自分の駒をせいぜい利用したまえ!
失地奪回の為の作戦、訓練と違って始まってしまえばもう待ったのチャンスはない。失敗は許されない。
私は私自身の意見を許さず、私自身の意思を介さず、私自身の指し手を私ではなく指揮官に委ね、駒として作戦を遂行した。
内心では命令に異議を唱えたい場面もあった。けれど結果として指揮官の指示は、まるで戦場を俯瞰していたかのように適切なものだった。
……優秀な指揮官の下なら人形らしく、駒として動くのも悪くはない。
♡好感度up!♡
──ねぇ指揮官、私とチェスすんの? 安心しな、あんたの面子を立てて、ドローですませてあげる~。
忙しい任務の僅かな空いた時間カフェで過ごしていた私を指揮官がチェスに誘った。
確かに私はチェスが好きだが、どうしてそれを知らないはずの指揮官が他にも誘う相手がいるのに私を選んだのかを疑問に思い、尋ねれば度々私がチェスになぞらえた発言をしていたから、だそうだ。
ふふん、私を使うのは私より上手いかもしれないけど、チェスではどうかな?
──チェックメイト!
それからというもの、空いた時間で指揮官とカフェで何度も対局した。
チェスの腕はお世辞にも強いとは言えないものだったので、引き分けで終わらせるのには苦労させられたよ。
どんどん野次馬も増えていったから、ぼろ負けさせちゃあ流石に可哀そうだからね。
とはいえこの程度の実力で調子に乗られても面白くないから、今度は私から指揮官を誘った。
ただし今回はカフェではなく、副官として控えている時に二人きりでね。
私しかいないんだから手加減してあげる必要はない。私の圧勝だった。
手加減していたなんて意地が悪いと指揮官は恨めしそうにいったが、なんだ、私の趣味や私の良いところは分かっても私の性格までは分からなかったのか?
私は人に意地悪するのが大好きなんだ!
♡好感度up!♡
──指揮官! まさか私を捨て駒にしないよね!
再びやってきた本部命令の戦闘訓練。
既に下手な実戦よりも難易度が高くなってる。
だけど指揮官と私たちなら大丈夫さ。
私の小隊は前回と同じく、敵司令部を叩く道中で奇襲に合った。
戦力は前回よりも多い、以前の私なら敗走するか、陽動の役割をこなすしかなかっただろう。
だけど今回の指し手は私じゃない、私の指揮官だ。
指揮官はね、私を陽動の為の捨て駒としては使わない。
私はこの戦いの、指揮官にとっての決め手なのさ!
♡好感度up!♡
──えへへ、道であんたのことを想うからさ。
後方支援任務の前にまた、二人きりで指揮官と対局した。
結果は当然、私の圧勝。
今度こそ勝ち逃げさせてたまるかともう一局申し込まれたけど、残念、任務の時間だ。
すぐにまた対局出来る……二人きりの時間を作れるように資材を集めてくるからさ、その間にどうやって私に勝つか、私のことを考えててよ。
私が指揮官のことを想うように、指揮官も私のことを想っててくれよ?
♡好感度up!♡
──私は見た目より軽いぞ。信じられないなら抱っこしてみる?
私の
普段は使っていない長銃身や機関銃のパーツも一緒に整備してたからそう思ったんだろうけど、失礼な話だね。
ほらほら、どう? 軽いでしょ?
シルエットこそ独特で大きく見えるけど、M4やSOPⅡと重さは大して変わらないし、M16よりも軽いんだから。
ん? 他の人形を抱いたことがないから分からないって?
ふーん、そっか。
でもこれでわざわざ確かめる必要もないぐらい、私は軽いって分かっただろ?
♡♡♡好感度up!♡♡♡
今日は久しぶりにカフェで他の人形たちに見られながら指揮官と対局した。
ここの所はずっと二人きりで、私の勝ち越しだったからな。
仕方ない、今回は指揮官に花を持たせてあげるとしよう。
だけど指揮官も随分強くなった。
それに私の趣味にこれだけ付き合ってくれたのも指揮官が初めてだ。
チェスをしてると楽しくてついいつも以上に意地悪したくなってしまって、みんな私と対局したがらなくなったからな。
うん? 賭けチェス?
ふふっ、いいとも。この対局で指揮官が負けなかったら……へえ、引き分けはなしで、指揮官が勝ったら、か。
ここでの対局はずっと引き分け続きだったっていうのに、大きく出るじゃないか。
それで何を賭けるんだい?
……お願いを聞いてほしい? 命令じゃなくて?
ただ聞くだけ? 返答は任せるって……よく分からないけど、いいだろう。
さて、じゃあ私が勝ったら何をしてもらおうかな。
──指揮官……まさかあんたも人に意地悪するのが好きだとは思わなかった。私のような性格の奴と合うなんて……涙が出るほど感動してるんだ。私のすべてを受け入れてくれる人は、たぶん指揮官しかいないだろう……。
そんなの、わざわざみんなの見てる場所でするお願いじゃないだろう。ずるいじゃないか。
今までの仕返しにしたって、ずるい。
私の答えだって分かってるくせに、命令じゃなくてお願いなのもずるい。
こういう意地悪をする指揮官相手なら、私はこれからも遠慮なく意地悪させてもらうよ。
これからずっとずっと、末永く。あんたの隣で、ね。
──親愛なる指揮官さま、お疲れ様でした~♡ こういう歯の浮くようなセリフを聞いて、今どんな感じ? 感想は?
……ふふっ、あんたもやっぱり意地悪だな、指揮官。
私は今……とてつもなく幸せな気分だよ。
ドルフロ初めて三日目の新米指揮官だけどXM8がかわいすぎる。