瓦礫と地殻変動級の地形の変化によって、半分天然の迷宮と化した元中規模工場群であった場所と新たなにできた火山の熱に苦しめられながら、俺達は万能者の捜索を始めてた
途中でアブノーマルらしき小型戦車とネズミ達の奇襲を退けて、はや十数分がたったが……
「反応が見つからない……万能者はどこにいるのよ」
「おまけにこの暑さもきついです」
「このままだとオーバーヒートしそうだな」
入り組んだ地形と瓦礫で捜索が難航し、さらに暑さで不機嫌なM686さん達を横目に俺は隣のM3さんと共に周囲を見渡す
しかし、俺の視界にはいるのは残骸ばかりで万能者の姿はおろか、さきほどのポーンもどきやアブノーマルらしき存在すらいなかった
そして、俺の背後から気配を感じ、振り返るとアラマキ隊長が近づいていた
「万能者の姿が見えん上に、反応も見つからんな」
「はい、当初の座標だとこの近くなんですが……隊長?」
隊長は突然、火口と化した採石所であった場所の方へ顔を振り向けると手にしていたライフル構え直した
俺を含めたその場にいた全員が注視するなかで彼は小さく、確信をもったようにこういった
「火口の方へ向かった方がいいかもしれんな」
「どうしたの、急に?」
「あそこからアブノーマルの気配を感じた。さきほどのとは、別のモノの気配だ」
彼の言葉にその場にいた全員の表情が強張ると同時に、別行動をしていたアウレールさんの部下である鉄血ハイエンド(テツクズ)のウォーモンガーが火口付近で救援信号の位置を割り出したとの連絡を元に火口の方へ足を急いだ
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そして、万能者の救援信号の発信元へ向かった俺達が見たのはもはや、修理不可能だと思うほどにズタボロにされた万能者の姿だった
「これはひどい……万能者に一体何があったんでしょうか?」
「あいつらも万能者を怖かったのか、徹底的にやりやがった」
P228が顔を真っ青にし、その隣で興味深そうに万能者と思わしきソレを観察している
そして、支援仕様の試験者が彼の生死を確認するべく処置を始めるのを見ながら、俺も彼の状態をしっかりと観察する
(まず、外見から認識は難しいほど損傷している上に四肢も原型をとどめていない……多数のポーンズ達に集中攻撃をうけ……アレ?)
ふと俺は道中には気づかなかったおかしい事が電脳内に思い浮かんだ
そして、俺と同じ疑問に気づいたのは同じように万能者の姿を見ていたワカさんが口を開いた
「そういや、なぜ万能者がここで放置されていたんだ?」
「自分もそれは疑問に感じましたね」
「お兄ちゃん、それどういうこと?」
俺の呟きを聞いたSDMRが首を傾げた
「普通に考えれば、トドメを刺す事も鹵獲することも可能なのに放置しているのは不自然ですよ」
「でも、この状態じゃあ生きているのか怪しいけど……」
彼女はそう言って応急処置を行う支援者たちの会話から少なくとも動力源とメンタルモデル関連は無事らしい事は分かった
「……やっぱ規格外だね」
「いや、重度の損傷をうけても最低限の機能を維持させるダメコンの賜物じゃな」
「だな……これなら応急処置を受けたら、回収しよう」
皆が万能者の異常さにドン引きする中で隊長とワカさんが関心していたその瞬間、支援者の一言でその場全員が凍り付いた
《条件作動式自爆システムヲ確認、解除中・・・・・・》
「な、なんだって!?」
「自爆装置だと!?」
「ちょっと、万能者を作った奴は絶対に男に違いないわよ」
「ミョミョ!?」
支援者の発言に皆が各々に驚く中でアラマキ隊長だけは気づいたかのように手を叩いた
「そういうことか!?」
「どうしたんですか?」
俺の問いかけに彼は流れるように話し始めた
「いいか、ここはポーンズ達の重要拠点……おそらく、工廠のような場所だったかもしれない」
「そうか、これだけの大破壊は機密漏えいを防ぐために意図的に行ったということですね」
「うむ、おそらくは万能者との戦闘も一因かもしれないが主な狙いはソレじゃろう」
俺がそう言うとアラマキ隊長が頷くと支援者の方に顔を向けて叫んだ
「試験者達、絶対に万能者を死なせるなよ!!」
《言ウニ及バズ、確実ニ主ノシステム復旧サセル》
万能者の復旧作業を行っていた支援者達が断言その時、近くの穴からナニカが飛び出し、俺達の目の前に現れたのは一体の人型兵器だった
例えるなら、右手が多連装式ショットガンになったアメフト選手のようなフォルムで見るからに戦車と同等の装甲を纏ったヤツだと一目でわかった
「なに、新手!?」
「万能者に手を出されると都合が悪いらしいな」
「これはまた、頑丈そうなやつが……やるしかないか」
ワカさんの言葉と同時に目の前の人型兵器は右手のショットガンを多種多様な弾頭を乱射しはじめた
俺達はそれを回避すると各々の武器で反撃し、救出作戦最後の戦いが始まった
この時、俺達は人型兵器との戦いで気づかなかったが少し離れた場所でアブノーマルの狙撃手がこの戦いを静観していたことに誰も気づいていなかった
はい、キバヤシ論として中規模工場群跡地について考察をアラマキが行いました
簡単に言えば、地形が変わったのは機密保持と万能者との戦闘の被害という考察です