ハイスクールD×D/Apocrypha 魔術師達の狂騒曲   作:グレン

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はい。ついに第一章です。第一章がホーリー編な作品なんてそうはないでしょう。

とりあえず何話かは、イルマ達の駒王学園転入編と、プロローグ終盤のミーティング後の、なんでそんなことをしたのかの説明となります。


第一章 体育館裏のホーリー ディアボロス・サーヴァントの脅威
1 転校性はギャルビッチ


 

 その日、兵藤一誠は驚愕を味わった。

 

 そもそも、ここ数日のイッセーは精神的に微妙に不安定だった。

 

 きっかけは、冥界からの帰還時に起こった出来事である。

 

 あの襲撃の後行われた、シトリーとのレーティングゲーム。結果は勝利だがイッセー達リアス・グレモリー眷属は酷評された。

 

 屋内で、かつ建築物の破壊を抑える事を前提とし、更にギャスパーの停止の力を封印した状態でのレーティングゲーム。この時点で不利であった。

 

 なにせアザゼルの指導方針は、基本的には持ち味を生かす事だ。その結果、グレモリー眷属は火力強化が行われた者達が殆どである。というより、グレモリー眷属は基本的に火力重視かサポートタイプの二極化が特徴なチームだった。

 

 これは禍の団との戦いも考慮していた為だが、結果としてこの特殊ルールとの相性が最悪だった。

 

 そして、結果としてもボロボロと言っていいだろう。

 

 まず先手を打たれて真っ先にギャスパーが脱落。更に注目株の一人であるデュランダルを使うゼノヴィアがカウンターを見事に喰らって撃破された。その上、リアス・グレモリー眷属における最大級のアドバンテージである回復担当のアーシアを、その能力を見事に逆手に取られて撃破された。

 

 そして一番評価を下げたのは、イッセーの敗北だろう。

 

 神滅具(ロンギヌス)の一角である赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)。フェニックス家の期待のルーキーであるライザー・フェニックスを、疑似的な禁手(バランス・ブレイカー)をもって倒したイッセーは注目株だ。

 

 しかも前夜に禍の団の特殊部隊、ヴァーリチームをイルマ・グラシャラボラス眷属や最上級悪魔タンニーンと共闘して退けた。その過程において悪魔社会的に忌々しい相手である、SSランクはぐれ悪魔である黒歌を圧倒。しかもその理由は正式な禁手に至ったからだ。

 

 試合前日に禁手に至るというタイムリーなニュース。あのレーティングゲームを観戦しに来た者は、少なからずイッセーの戦いに期待しただろう。

 

 が、その戦績はたった一人。

 

 ソーナ・シトリーの兵士(ポーン)。スケベで主に懸想している共通点から意気投合し、夢を語り合った同年代の匙元士郎(さじ げんしろう)。彼を殴り合いの末にリタイアさせただけだった。

 

 匙の駒価値はイッセーの半分の四で、しかも神器は禁手に至っていない。その上、一月前の会合で上役達に食って掛かった事もあって、アイネスが派手に制裁した事から溜飲は下がっているだろうが、上役の大半からの心象そのものは悪いはずだ。

 

 旧家の上役達はイッセーが圧倒する事を期待していただろう。そも、このレーティングゲームは下馬評ではリアスの圧倒的優勢だ。イッセーの禁手という唐突なアドバンテージの上昇もあり、勝って当然と認識されていた。

 

 だが、イッセーは匙相手に実に苦戦した。

 

 お互いに寿命を削る覚悟の戦いだったとはいえ、友人との殴り合いで若干気圧されていたとはいえ、匙の方が夢の為に覚悟を決めていたとはいえ、イッセーの方が性能では上だったのに、苦戦したのだ。

 

 そして、イッセーからすれば撃破されたのはイッセー自身だった。

 

 匙の持つ神器は黒い龍脈(アブソーション・ライン)。龍王ヴリトラの魂の一部を封印した神器で、ラインを繋げた相手から力を吸い取る能力を持つ。アザゼル曰く応用手段としてラインを二つ別々に繋げる事で、力を流動が可能でもあった。

 

 そしてソーナ達シトリー眷属こと生徒会は、イッセーのしぶとさと対女性における脅威度を考慮して、この神器の応用を試みた。

 

 ラインで血液を奪い取り、生存活動に影響するレベルまでイッセーの血を減らして、システムで強制的に退場させる。

 

 匙はそれを実行可能に持ち込んだ。しかもゼノヴィアの特訓傾向の一つであるアスカロンの貸与を実行していた所為で、撃破後も残っていたラインを切り裂く事ができなかった。匙元士郎という男は、兵藤一誠というグレモリー眷属の目玉を時間差で道連れにしたのだ。

 

 最終的にイッセーの新技で残りの作戦を見抜く事に成功し、祐斗達の奮戦もあってリアス達は勝利する事ができた。

 

 しかし、勝って当然の相手に最初から最後まで流れを支配され、メンバーの半分がリタイア。しかも相手は最大目標である「赤龍帝の撃破」を達成。なまじイッセーが禁手に至っていた事もあって向こうからしても望外の高評価となった。

 

 ゲストとして招かれた北欧神話体系アースガルズ主神であるオーディンは匙を絶賛。試合においても彼がMVPとなり、態々サーゼクスが直々に勲章を渡しに来るという大盤振る舞い。勝ったリアスが酷評され、負けたソーナが絶賛された。

 

 試合に辛勝して勝負に惨敗した形である。

 

 それはそれとして切り替え、そして目標を新たにしたイッセー達ではあるが、駄目な事は続くものである。

 

 駒王町に到着したリアス達、厳密にいえばアーシアの前に、一人の悪魔が現れる。

 

 アスタロト家次期当主、ディオドラ・アスタロト。

 

 なんと彼はアーシアに大怪我を治療された事があり、アーシアに恋心を抱いているのだという。実際告白までしてきた。

 

 その所為でイッセーは精神的に不安定気味だ。ディオドラのところにアーシアが嫁に行くのではないかと、不安で不安で仕方がない。

 

 ……ちなみに、アーシアはイッセーにぞっこんであるので杞憂なのだが、リアス・グレモリー眷属でそれに気づいていないのはイッセーだけである。

 

 そんな精神的に負担があり、学生生活としては体育祭が迫っている中、転校生が来るというニュースがやってきた。

 

 合計で五人くるという事になっており、しかもうち四名は美少女。残り1人も美少年。最後に、うち三名がイッセーのクラスに来るという謎の現象だ。

 

 結構クラス中大騒ぎになり、そして見事に美少女二人に美少年が来た。

 

 ……が、その相手が問題だった。

 

「紫藤イリナです、そこにいる兵藤イッセー君とは幼馴染で、ちょっと前までバチカンに住んでました! 皆さんよろしくお願いします!」

 

 快活そうな顔つきの栗毛ツインテールで、胸に十字架を下げたスタイルのいい美少女。まず彼女からして驚きだ。

 

 教会の戦士だった頃のゼノヴィアの相方で、和平のきっかけとなったコカビエル追撃の為に、球技大会があった頃に駒王町に戻ってきた、イッセーの幼馴染の人工聖剣使い。

 

 その紫藤イリナが、元気よく入ってきた。

 

 そして、次が更に問題だった。

 

「……はーい! 駒王学園の皆さんこんにちわー!!」

 

 そうトリプルアクセルを決めながら飛び込み、出るところが出ている胸を揺らすは薄緑の髪の少女。

 

 ……つい先日助けてもらった、イルマ・グラシャラボラスであった。

 

「マイネームイズ、イルマ・グラシャラボラス! この学園の二大お姉さま、リアス・グレモリーの遠縁の親戚でっす!」

 

『『『『『『『『『『えぇええええええええ!?』』』』』』』』』』

 

 いきなり衝撃の情報を告げ、注目を一気に集めに来た。

 

 ちなみに嘘で冗談でもない。それについてはイッセーもすぐに分かる。

 

「リアス・グレモリーのお母さんが、うちのお母さんの家系の本家筋なのです! 因みに私は故郷の立ち位置的にはリアス先輩とこのチョイ下レベルの貴族なので? 逆玉の輿を狙いたい人は頑張ってモーションかけてきてねぇ?」

 

 かなりギリギリのラインで個人情報をばらしている気がする。

 

 イッセーがもはや反応している余裕をなくしているが、しかしイルマの暴走は止まらない。

 

 プルンとわざと胸を揺らすと、彼女は淫靡な笑みを浮かべた。

 

 これはもうあれである。誘惑である。

 

「因みに遊びたい年頃でっす! この夏を出会い無しで過ごした童貞諸君、その気があるならイルマさんとちょっと遅めのひと夏のアバンチュールを楽しまな―」

 

 堂々とエロイ誘いをかけた次の瞬間、ハリセンが彼女の後頭部に叩き付けられた。

 

「……いい加減にしろよ、イルマ姉さん」

 

 ため息を付いて入ってきたのは、麻宮鶴木だった。

 

 鶴木はため息を付くと、苦笑をしながらイッセー達に向かって手を振る。

 

「グレモリー眷……じゃなかった、オカ研の連中は久しぶり。そうでない奴は初めまして、イルマ姉さんの舎弟兼お目付け役やってる麻宮鶴木ってんだ」

 

 そう告げた鶴木は、ジト目でイルマを睨んだ。

 

 転校して来て早々、ビッチまっしぐらの行動をしてきたのだ。お目付け役のやる事など決まっている。

 

 説教は長くしないでほしいなー……とみんなの心が一つになった。

 

 そして鶴木は復活してきたイルマにハリセンを突きつけ―

 

「まず俺とアバンチュールしてくれよ!! 俺だってエロい遊びしたい年頃だっつってんだろ!?」

 

『『『『『『『『『『そうじゃねえだろ!?』』』』』』』』』』

 

 見事に総ツッコミだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんな事になった理由は、冥界での禍の団の襲撃の後のホテルでの話に由来する。

 

 身内でのミーティングで今後の方針を決定したブルノウ・バアルは、イルマに駒王学園への転入を指示した。

 

 時間差で唖然となるイルマだったが、ブルノウは真剣だった。

 

「イルマ。スメイガとアイネスも覚えておくといい。世の中には流れというものがあり、この流れは急激に変化する事がある。人間の政治思想家マキャベリは自著で、「君主は運命の変転に備えなければならない」とも記している」

 

 そう告げるブルノウに、イルマ達は気圧される。

 

 世界の流れ。これに関しては何となくは分かる。

 

 世界というものが数多くの生命体の動きで決まる以上、そこには川の流れのような大きな方向性が出てくるものだ。

 

 そして、時としてその流れは洪水のように急激に変化する。それこそが運命の変転というものだろう。

 

「そして今がそれだと私は確信している。きっかけが二つもあったからね」

 

「……駒王会談と禍の団ですか」

 

 ツヴェルフがそう漏らす。

 

 魔術師達の集まりである時計塔。政治的な争いが日常茶飯事だった世界で、その政治的派閥の有力者一門に所属していた彼女だからこそ分かったのだろう。

 

 だが、これも言われてみればイルマやスメイガだって納得できる。

 

 駒王会談と禍の団。厳密には、駒王会談によって始まった流れと、禍の団の盟主となって急に行動を起こした者の存在が、流れの変化のきっかけになるのだろう。

 

 すなわち、三大勢力の和平締結と、連鎖的に始まった各勢力との和平交渉。

 

 すなわち、世界最強の存在である、無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィスによる今の世界への宣戦布告。

 

 どちらも、この世界の異形としてそれなりの知識があるのなら凄まじい事だと簡単に分かる。

 

「現政権の方針は君達も当然分かっているだろうが、それでも和平を行うにはきっかけもなく、また時間もかかると血統尊重主義派(我々)は想定していた。はっきり言って想定外というレベルを超えたとんとん拍子で和平は成立してしまったわけだ。完全に我々の判断ミスだね」

 

 これに関しても理解できる。

 

 かつての戦争から続く、いがみ合いと小競り合いを続けてきた三大勢力。だが悪魔としては、何とか終戦を行いたいというのが魔王派と大王派の共通認識だった。

 

 なにせ、戦争を主導してきた初代四大魔王は揃って聖書の神と相打ったのだ。その戦争で絶滅を危惧するほどにまで数を減らしたうえ、四大魔王の血族は元七十二柱を含めた貴族達にも暴政を敷いていたらしい。跡を継いだ魔王末裔達も、揃いも揃って自分達さえ生き残るのなら下級中級が全滅しても構わないという者達だらけだ。

 

 結果として壮大な規模の内乱が発生。先代魔王の跡を継いだ魔王末裔の内、早々に姿をくらましたリゼヴィム・リヴァン・ルシファー以外の魔王血族代表は、先代魔王に匹敵、もしくはそれ以上の力を持つ現四大魔王によって打ち取られ、現政権はできた。

 

 要は、現政権は種の存続と繁栄が最重要で、代替わりが遅い事もあって厭戦気分が政治関係者の大半で蔓延したままなのだ。

 

 魔王血族を含めた大半の戦争継続派はそのまま追放され、禍の団の一員となる始末。奇跡的な事に、三大勢力で一番政争が激しい悪魔こそが、この一点において真っ先に和平前提で動けていた。

 

 だが、三大勢力同士でのパイプがろくに存在しない状況では、とっかかりになる事がない。よしんばできても、どの勢力も大勢が死んだ以上、恨みつらみで和平を結ぶのには世代交代が必要なレベルだろう。そう血統尊重主義派は思っていた。

 

 と、思ったらコカビエルの暴走を機にとっかかりができ、駒王会談ではあっさり和平が結ばれた。

 

 天界は、聖書の神が死んだ今は最重要視するべきは神の子を導く事で運営陣であるセラフの意見は統一。事実上の下部組織である教会も、聖書の神の死を知る枢機卿はこの厄ネタがある以上、いつか発生しかねない混乱に対応する為にも、争いを続けるべきでないという事は大半が理解するだろう。

 

 堕天使側に至っては、トップは軒並み「戦争? 何それおいしいの?」もしくは「戦争? そんなことより研究だ!!」状態。コカビエルの暴走は運営陣で一人戦争継続主義だった事によるストレスが限界に達した事で起こした物だったのだ。

 

 そしてコカビエルのこの暴走は、結果として三大勢力が二天龍迎撃をした時以来の共闘を結果的に引き起こし、それをきっかけとして会談の段取りがトントン拍子で進んだ。

 

 そしてどの勢力も和平を結ぶ為に動いた結果、あっさり和平が成立。その勢いに乗じて、各神話勢力との和平も進められる事となっている。

 

 これだけでも、運命の変転と言っていい事態だろう。

 

 だが、事態はそこで終わらない。

 

「そしてその妨害を試みた禍の団(カオス・ブリゲート)。その盟主はあのオーフィスというわけだ。明確な第三の脅威という、敵対していた者達が手を組むのに都合がいい存在ができてしまった」

 

 ブルノウはため息を付く。

 

 そう、オーフィスの存在はそれだけのものだ。

 

 世界には数多くの強者がいる。

 

 四大魔王の内、サーゼクス・ルシファーとアジュカ・ベルゼブブは超越者と呼ばれる、悪魔の次元を超えた超常存在だ。各種神話体系でも、オーディンのような主神クラスは単独で列強国を滅ぼす事もできるだろう。そんな神や魔王すら警戒する、ドラゴンだってゴロゴロいる。

 

 そんなインフレ極まりない存在だらけのこの世界だが、その上で強さの桁ではなく次元が違う存在がオーフィスだ。

 

 一神話体系が総力を挙げても、勝てるかどうか分からない。もし勝てても壊滅的打撃を受けて没落は必須。下手をすれば他の勢力に襲い掛かられて滅ぼされるかもしれない。

 

 そんなレベルの存在が、各勢力のはぐれ者を集めてテロ組織を結成した。

 

 今までろくに外界に関心を示さなかった存在の、世界に対する事実上の宣戦布告だ。これもまた前代未聞だろう。

 

 個人戦力だけで戦略をひっくり返す事はできない。それは賢者なら当然分かる事だ。だが、オーフィスはその前提を覆しかねないほどの存在ゆえに愚者達が凄い勢いで集まるだろう。

 

 これもまた運命の変転のきっかけとしては十分だ。異形社会についに対テロ戦争の時代が発生するといっていい。

 

 そして、そんな運命の変転のきっかけがほぼ同時に二つ発生してしまった。

 

「……変な化学反応を起こしそうですね、父上」

 

「もう起きているよ、このパーティにオーディン殿が来たのが証拠だ」

 

 スメイガに対して、ブルノウはそう言い切った。

 

 いがみ合っていた大勢力が和平を結び、その流れを他の勢力にも向けようとしている。

 

 これだけなら、三大勢力に信仰を奪われてきたうえに鎖国的な体制をとっている各神話体系の腰は重かっただろう。

 

 世界最強の存在が率いるテロ組織が、堂々と活動を開始した。

 

 これだけなら、手を組むにしても足並みは揃わず、足の引っ張り合いが行われる可能性もあっただろう。

 

 だがしかし、その二つが同時に起こってしまった。

 

 大いなる冷戦状態を終わらせるきっかけと、大いなる対テロ戦争の元凶となる存在。

 

 その二つの歯車がかみ合えば、各勢力の和平は急激に進むだろう。

 

 そう、急激に進んでしまうのだ。

 

 急激すぎる変革は、大抵の場合停滞した現状などを打破するからこそ、反動なども大きくなる。

 

 既に思慮の足りない下の者達には、禍の団と接触を行う者達が出ていることだろう。この辺に関しては、そもそも戦争継続派を追放した悪魔側が一番安全かもしれない。

 

 だが、善と正義を謳う教会では、悪魔祓いを中心に悪徳と定義される者達との和平に反対意見が頻発。教会を去る者達も数多い。

 

 まず間違いなく、そのうちの何割か独断で悪魔を殺す凶行に出てくるだろう。そして、それ以外の者達もこの苛立ちを三大勢力そのものに向けかねない。

 

 他の神話体系に関してもその通りだ。真っ先にオーディンが動いたアースガルズはもちろんのこと、オリュンポスもまた和平に賛同する者が多いが、反対勢力も相応に出てきている。

 

 そして最悪な事に、世界最強の存在が率いる和平を結ぶ者達の敵がいる。禍の団という、急激な変革の反動で弾き飛ばされた者達の受け皿が存在する。

 

 同盟の首脳陣は、戦争そのものが本格的に始まるのは数年間かかると踏んでいる。それまでの準備期間があると踏んでいる。

 

 しかし、それは禍の団が賢者の組織だった場合の話だ。

 

「これは間違いなく大きな時代の変化の始まりだ。賢者達が連携をとるとっかかりができすぎ、愚者達が集まる旗頭が同時に名乗りを上げている」

 

 ブルノウは確信している。断言できる。

 

「禍の団と同盟の戦いは、急速かつ短期間かつ高密度で行われる」

 

 三人は息をのんだが、しかし納得する。

 

 別のベクトルで急激な変化のきっかけになる者が発生し、それが相乗効果で更に互いを加速させているのが、この現状。

 

 そして奇縁ともいえる事に、二つのきっかけには相対する一対の存在がいた。

 

「初代ルシファーのひ孫である、白龍皇ヴァーリ・ルシファー率いる禍の団の特殊部隊ヴァーリチーム」

 

 ツヴェルフが会敵したその強敵達を思い起こし、そしてスメイガは将来の好敵手達の一角である、紅い髪と赤い籠手を思い起こす。

 

「そして対をなす赤龍帝兵藤一誠は、現ルシファーの妹であるリアス・グレモリー率いる同盟の若手眷属、通称オカルト研究部……か」

 

 かつて三大勢力が共同戦線を組む事になった、二天龍が、それ以上の共同戦線が組まれるだろう対テロ戦争においても主力になりうる可能性を持っている。ましてや、双方ともに異なる形でルシファーにかかわる存在。止めにいえば、その二つの大きなきっかけのそのまたきっかけであるコカビエルの暴走にも深く関わっている。

 

 偶然も何度も続けば必然という言葉がある。これはもはや、運命の必然と言っても過言ではない。

 

「考えすぎかもしれないが、禍の団との戦いにおいて、赤龍帝兵藤一誠は特異点になりうる可能性がある」

 

 そうブルノウは告げ、そしてイルマの肩に手を置いた。

 

「……だから、その運命の流れの近くに寄り添って見る者が必要だと思うんだよ」

 

 つまりこう言う事である。

 

 ちょっと主人公に関わってきなさい。

 




今回、ちょっとあとがきで補足説明するので長くなります。


スメイガの発言を簡単にまとめると。

三大勢力による和平ムーブ:賢者たちは必要性を認めるが、愚者の類は反発する。

オーフィスを象徴とする禍の団:賢者たちは警戒するが、愚者たちは集まろうとする。

スメイガはこの二つが相乗効果を発揮すると踏んでいるわけです。

 原作でも各神話勢力の大半は「他の神話とか死ねやクソが! でも人類滅びかねんし禍の団とかいるから一応和平すっか」てきな感じだと帝釈天が言っており、当人も禍の団を当面の敵として和平に参加しています。反面ディオドラのような大馬鹿野郎は「和平すると趣味ができないしオーフィスの蛇があれば裏切っても勝てる」という結論の元禍の団につきました。結果として「本格的な戦争は数年先」というアザゼルの想像は大外れして、一年足らずの激戦頻発で、禍の団は壊滅し同盟も主要神格などが下手すれば一万年隔離されたのは、原作を読んでいる方なら知っての通り。

 もし禍の団がいなければ、和平の価値を認めている賢者たちも各勢力間でのいがみ合いなどが理由になって、ここまで和平は進まなかったでしょう。

 もし和平ムーブがここまで進んでいなければ、少なくともクリフォトによる悪魔祓いたちによるクーデターが起きる可能性は低く、それまでにガス抜きのイベントの側面があるアザゼル杯が間に合っていたでしょう。

 まあ結果として、禍の団を警戒して各勢力の賢者が和平を結ぶことで同盟が強化され、それに反発する愚者たちがオーフィスの力を頼りに禍の団に集まって禍の団が肥大化という結果になる。

 逆に言えば。オーフィスという絶対的な力の象徴を事態打破のカギとして愚者たちが集まることで、それを警戒して賢者たちは本音はともかく和平を結んで対処することになるともいえます。

 ブルノウはこの相乗効果を心底懸念しており、ゆえにできるだけの対策を取りたいのが現状。








 結果として、すぐに始まってとても激しくなるだろうこの戦争のなかでも、特に重要な戦いに巻き込まれそうな人物に信頼できる人物を送り込んでつなぎを取ろうと考えたわけです。






 その対象となったのは、かつての三大勢力を一時的にとはいえ共闘させるほどの影響を与えた二天龍。

 どちらも「これまでの二天龍とは何かが根本的に違い」、「悪魔の王であったルシファーに縁のある存在」。しかも何の因果か激突する二大勢力にすでにそれぞれ所属している。

 なので、同盟側ゆえに比較的楽に接触できる赤龍帝である兵藤一誠を気にして、彼女の主が納得するメンバーを送り込もうというわけですね。何が起こるかわからないなりに、今後の布石を打ったわけです。


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