ハイスクールD×D/Apocrypha 魔術師達の狂騒曲   作:グレン

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とりあえず、ほとんどイルマによる独白で構成されています。内容も基本的にはD×Dメンバーに対する魔術師達の説明ですね。

ただし、この世界における魔術師(メイガス)の優位性や、クロックワークスの設立に関する説明でもあるので、Fateに慣れている方もできれば見てくれると嬉しいです。


3 ビッチなイルマ先生による、ドキドキクロックワークス教室♪

 そこまで思い出したイルマは、そしてある決断をする。

 

 既に了承は得ている。この場の人材になら話してもいいだろう。

 

「……パーティの前に、ここのいる人達に言っとかないといけない事があるんだけど、いいかな?」

 

「……何かしら?」

 

 リアスがイルマに向き合いながら、怪訝な表情を浮かべる。

 

 政治的には対立しているが、私人としてのイルマはフレンドリーだ。彼女のバックにいるブルノウはえげつない手を使う時もあるらしいが、少なくとも大半の旧家とは違う。

 

 だからこそ転入についても許可を出した。一応連携や監視も兼ねてオカルト研究部に所属させる形になったが、余計な事はしないと思う。

 

 ……ビッチである事はこの際置いておこう。エロス度が高いのはイッセーで慣れている。

 

 そのイルマが空気の流れを断ち切って、今この場のメンツに対して言う事があるという。

 

「……それは、堕天使()天界(イリナ)の前で言ってもいい情報なのか?」

 

 アザゼルも、何かあると判断して少し居住まいを質しながらイルマに尋ねる。

 

 それに対して、イルマは気負いなく頷いた。

 

「うん。ブルノウ様も既に各勢力に資料を送る準備はできてるからね。一部の人達にはちょっと早めに話す事が決定したし、ここの人は条件満たしてる人だらけだから」

 

 そして、その条件とは―

 

「三大勢力及び彼らとの同盟に賛同した勢力で、かつ聖書の神の死を知る者にのみ、クロックワークスの結成に至る経緯及びその内情についての説明を行う事を、イルマさん達血統尊重主義派は提案。さっき悪魔政府でも可決されたよ」

 

 そう言いながら、イルマはいつの間にか持っていたスマートフォンを見せる。

 

 そこにはメールで簡潔に、ブルノウからその内容のメールが送られてきていた。

 

 そして、誰もが緊張する。

 

 血統尊重主義派。大王派よりでありながら、アガレス家と連携をとって魔王派と合同で政治を行なう事もある異端の派閥。

 

 しかし同時に、他種族からの転生悪魔に対して一線を引く事を前提として活動するがゆえに、対立する時は徹底的に対立する事もある、あくまで大王派であって、決して魔王派ではない派閥。

 

 大王派でも弱小派閥であった彼らは、しかしクロックワークスという他種族を中心とした下部組織を結成する事で、一気にその勢力を拡大させた。

 

 多種多様な国家の人間がいる。七十二柱や番外の悪魔、下級中級から来た悪魔もいる。果てはアースガルズのヴァルキリーや、オリュンポスの死神が亡命までして参加してきた。

 

 その彼らの集まり、クロックワークス。

 

 共通点といえるものは、調べられる限りではただ一つ。

 

 彼らは魔術師(メイガス)と名乗り、基本的に魔法使いに対して彼らがそう名乗る事に思うところがある事が多いということ。

 

 かなりの者が興味を惹かれる。

 

 故に、誰もが清聴した。

 

 それを理解し、イルマは少しだけ考え込む。

 

「まあ、とりあえずイルマさん達魔術師(メイガス)からするこの世界の現状というか第一印象何だけど―」

 

 そう告げ、イルマははっきりと告げる。

 

「……転生したらインフレバトル世界だった件 ―魔術師として終わったと思ったら、超名門が大貴族転生して受け皿作ってくれました!!」

 

 瞬間、リアスは彼女の頬をかすめるように消滅の魔力をぶっ放した。

 

「ふざけているのかしら? いくらブルノウ様の姪とはいえ、限度があるわよ?」

 

「待ってストップちょいたんま! 最近はやりの長文ラノベタイトル風に例えただけだって! ちゃんと説明するから落ち着いてほしいとイルマさん思ってるじゃんよ! あとこの題名だと主人公なスメイガだし!」

 

 そう慌てながら、イルマはすぐに話を続ける。

 

「事の発端は大体六年ぐらい前。リアスちゃんが朱乃ちゃんを眷属にしたぐらいの時だったね」

 

 そういいながら、イルマは過去を懐かしむように遠い目をし、そして語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イルマさんとスメイガは、その時になってお互いが魔術師だという事に初めて気づいた。

 

 そしてお互いに簡単に事情を話し合って、この世界に自分達以外にも大量に魔術師(メイガス)がいる可能性に気づいて、伯父様に相談したわけだよ。

 

 ……もうこの辺もぶっちゃけるけど、魔術師(メイガス)ってのは一昔前まで「真っ当な人間性を保有するなんて飛んだ欠陥品だ」とか堂々と言われちゃうぐらいやばい連中が集まってるんだよねぇ。

 

 大前提にして基本原則は「神秘は秘匿するもの」。これさえ守ってれば大抵のことは許されるっていうか、問題にもならないじゃん。そしてこれがあるから情報化発達社会で変な凶行に出る奴はいないけど、逆にこれさえ守れるのなら、最悪人口数十万人の大都市を滅ぼす事すら必要ならやってのけれる連中がイルマさんがいた時ですら結構いる。

 

 まあ最近は若手を中心にすっごいまともな人間性を持つ魔術師も増えてるんだけどね。基本的でドライで道徳心に欠けてる連中が過半数。あげく異能を持たない人間の記憶を操作するとか基本中の基本だから、監視役は必須なわけじゃん。

 

 とどめに、この世界にいる魔術師達は大事なものを色々失ってるの。

 

 先祖の頃から頑張って手に入れた、研究に適した土地。研究資金を何世代も前から用意する過程で培ってきた、名門としての家柄。そしてその歴史の中で手に入れた、オークションでかるく数百万ドルとかは出せる絶大な資金力。それらを使って集めてきた、数百年前の羊皮紙や宝石などの研究資材。更には先祖代々少しずつ強化しながら受け継いだ、当主の証である魔術刻印っていう家宝を、文字通り、完膚なきまで、徹底的に全部失ってる。文字通り追い詰められた状態なのが大多数なわけ。

 

 しかもさっき言った「神秘は秘匿するもの」っていう原則は、魔術師(メイガス)が使う神秘の特性ゆえにそうしないといけないってだけで、しかもその必要がなくなっちゃってる。そんな状態で精神的にも権力的にも財力的にもそもそも研究続行が困難なレベルで追い詰められてる。今まで魔術師が自棄を起こして表社会を混乱状態にしなかったのが奇跡ってレベルなわけじゃん。

 

 まあ、ここまでならいっそのこと駆除するって方法もあったんだけど、幾つかメリットも存在するの。

 

 一つは簡単。魔術師は貴族主義にして実力主義。

 

 基本的に魔術師ってのは一定の傾向があるの。

 

 一つ。魔術師と言うのは魔術回路っていう生命力を魔力に変換し、そして運用する疑似神経を持っている事が絶対条件。厳密にはそれを代々研鑽して研究する人が魔術師(メイガス)で、ただ金儲けができればいいって人は魔術使いって明確に区別されてます。

 

 一つ。魔術師は大抵の場合、様々な魔術の中から初代が選んだ魔術を代々研究して発展させる。この辺はこの世界の代々続く魔法使いも似てるね。

 

 一つ。魔術師は跡継ぎにさっき言った魔術刻印ってのを代々継承させる。代々当主が強化して継承させる一族専用の内蔵型マジックアイテムって感じで、物によっては宿主の魔術を自動的にサポートしたり、宿主が失神してる時とかに自動的に治療とか延命とかしたりしてくれる。

 

 一つ。魔術師は魔術回路の質と数でほぼ才能が決まるから、魔術師ってのは基本的に、自分より自分の魔術を研究し運用するのに向いている魔術回路を持つ後継ぎを生む為に色んな手段を行使する。跡継ぎになれなかった同ジャンルの名門の子供と政略結婚する優生学なんて基本中の基本。ぶっちゃけ子供の内臓を増やすようなもんだから、親になる自分の体をいじくるなんて珍しくも無し。

 

 一つ、これらの理由から魔術師ってのは血統と歴史が才能にほぼ直結してる。家紋について調べれば何が得意でどれぐらいできるかすぐ分かる。勿論例外はあるけど、大抵の実力のある魔術師は、専門分野に優れた歴史のある家系の跡取りと相場が決まってる。逆に代が浅い若手とか、基本的に才能も底が知れるから舐められやすい貴族主義的環境。

 

 一つ。だけどここ最近は血統が浅くても才能があるのなら取り入れるべきって人達も多い。特に今の現状だと条件がだいぶ平均化されてる上に復興の為に手段選んでられないから、クロックワークスではこの思想が主流になってる。

 

 一つ。だけど歴史の長さに悪い意味で不釣り合いな回路や刻印しかなかったり、刻印を発展させる事が出来なくなったり弱体化させたり、そもそも刻印を事故で失ったりした連中は基本ディスられる。

 

 ……まあ、ここまで言えば分かると思うけど、魔術師(メイガス)って人種は性質としては大王派よりで、特に血統尊重主義派とぴったりの方向性があるわけなんだよね。もう血統尊重主義派がこの世界の魔術師の受け皿になる為に生まれてきたみたいな。

 

 と、いうわけで私とスメイガの説明を聞いて、それを鵜呑みにするんじゃなくて検査とかをしたうえで信じてくれた伯父様は、二つの事を考えた。

 

 一つ。魔術師達は誰かが監督しないと何をするか分からない。それも、血統に理解があり、メリットをしっかり提供できる人達じゃないと、逆に食い殺される。

 

 一つ。彼ら魔術師お呼び魔術使いの力を借りる事ができれば、一気に勢力を増す事ができる。

 

 これまさにドンピシャ。実際魔術師(メイガス)の力を利用しようとした連中はごろごろいた。大抵は強引に言う事を聞かせようとして暗示や記憶操作で破滅したり、神秘の秘匿に無頓着で秘匿最重視の魔術師達に集団で叩き潰されたりしてるけど、上手く付き合えたとあるマフィアはアメリカ合衆国の運営にも干渉出来て、かつ危険視する魔術師達も迂闊に手が出せない勢力になったとか。

 

 そして、魔術師達の血統と歴史を尊重する方向性に理解を示し、かつ大王派有力分家っていう小国に匹敵するコネと財力とか資材とか持ってる伯父様は、見事に共生関係に成功。

 

 これに関してはスメイガやイルマさんが懇切丁寧伯父様達に魔術師達の考え方とか交渉の定番とか教えた事もあったけど、最初の大勧誘の時に来た魔術師の1人がアイネスで、彼女が真っ先に賛同してくれた事も大きいね。

 

 ぶっちゃけ、魔術師(メイガス)的にイルマさんとかぶっちゃけレアスキル持ちって程度だけど、あの二人はレーティングゲームのトッププレイヤーレベルの影響力が元から魔術師(メイガス)の世界であったから。クロックワークスメンバーだと、あの二人が魔術師(メイガス)のツートップ。

 

 ぶっちゃけ血統尊重主義派が大王派有力派閥になれたのは、魔術師(メイガス)達のおかげ。

 

 もうクロックワークス以上にこの世界で魔術師達が研究しやすいところないから引き抜かれる事を気にする必要薄いって伯父様も言ってるから、具体的にクロックワークスに協力してもらった事とかも言っちゃうね。

 

 まずは治癒魔術。ぶっちゃけ神の奇跡とかで直したりする治癒魔術とかより、損傷した体組織で体組織の代用品を錬成するっていう絶対成功する臓器移植みたいなやり方の方がまだ定番だから、神の祝福を受けられなくても問題なし! 腕利きなら内臓破裂とかの命に係わる傷も十分ぐらいで治療できるし、超一流の魔術師なら再生治療とかもできるわけじゃん。

 

 次に残留思念の再生! 魔術師なら対抗策とかはきちんと取れるけど、敵が魔術師じゃないならやるだけなら簡単! 拷問とかで殺された人の末期の視点とか文字通り体験できるから、殺人事件とかの参考資料とかにぴったり! 下手人の顔とかすぐ分かるから、あとは叩いて埃を出すだけじゃん!

 

 他に特徴的なのは宝石魔術! これは鉱物に魔力を込める魔術で、宝石を魔力タンクや魔力製爆弾に変える魔術! 基本的に使い捨てだから金はかかるけど、連戦とかで減った魔力を回復したり、チャージ時間なしで大技できたりと結構便利! 基本的に人の手に渡って長い宝石の方が持ち主の念とか籠ってる影響で効率がいいんだけど、クロックワークスでは若手が研究しやすいように、伯父様が宝石の加工してる業者から、カッティングで出てくるかけらや粉末を仕入れてきて、特殊パレットにして使ってます! イルマさんも緊急回復用に持ってるよー!

 

 因みに! リスンは専門家の家系じゃないけど、獣性魔術っていう魔術を利用して戦ってます。

 

 これは自分の内側から獣性を引き出し、魔力を纏って獣性に見合った能力を得る魔術。雑にまとめると「M.O(モザイク・オーガン)手術っぽい魔術」ってイメージでいいよ! だいたい引き出す獣性に近い魔術能力と身体能力強化がされるから。

 

 この魔術、人間性を失ったり発狂したりするから知名度はあるけど使い手は少なかったんだけどねー。ヴァプラ家とか獣を司る悪魔の家系と複合させるとデメリットが激減する事が発覚してからは、まだ家系の方向性が定まってない若手女性魔術師から凄い勢いで「妾に紹介して!」とか「愛人前提の眷属悪魔として薦めてください!」とか「そういう家系から精子買ってきてください!!」とかうるさいです! 魔術師って業が深いよね! ちなみにリスンはたまたまブネ家の血が流れてたから戦闘用に専門家に教えてもらいました!

 

 ま、そっから先は公式発表時に出てくる資料とか見てねー。クロックワークスはこの世界に合わせて魔術師の在り方も変わってるから、概要ぐらいはすぐに知れるから安心して! あ、力借りたいなら血統尊重主義派を通してね。イルマさんが引き受けるじゃん!

 

 ちなみに魔術師(メイガス)にとって魔術と魔法は明確に区別されています。

 

 魔術ってのはぶっちゃけると「金と時間さえあれば現代でも似たような結果ができる神秘」で、魔法は「現代の科学技術だとどれだけ頑張っても真似すらできない神秘」って明確に区分されて、魔術師達にとっては自分達の完全上位互換。秘匿前提の魔術師業界だから具体的に何なのか分かってる魔法は滅多にないんだけど、いわゆる並行世界(パラレルワールド)関係は第二魔法って言われてて、他にあと四つ指定されてるらしいじゃん。

 

 クロックワークスの人達が、この世界の魔法使いを嫌ってる事が多いのはそれが理由。自分達と似たような事しかできないくせに、魔法とか名乗ってんじゃねえ!! ってな感じかな。この辺は相互理解が重要だから時間は必須って感じかねぇ。一応割り切って交流してる人も結構いるけど、歴史ある家計の出身は、最低でも一線引いてるかな。

 

 さて、それじゃあそろそろ最大の疑問だね。

 

 そもそも魔術師はどこから発生したのか。

 

 そして、それが聖書の神の死を知る者にしか詳細を説明しない理由。一緒に表向きのカバーストーリーを考えてくれないと、聖書の神の死が広まる恐れがあるから、その辺一緒に考えさせる事もあって教える事が決定したんだよね。

 

 一応言っとくけど、これはあくまで仮説じゃん。そこだけは間違えないように。

 

 まず第一に、この世界が聖書の神の死で色々とバランスなどが歪んでいて不安定な事。そして、ある世界でとある大魔術儀式が頻発した事でその世界も不安定になった事。

 

 その二つが絡んだ結果、その在る世界から魔術師達の魂が輪廻転生して、この世界に生まれる時に魔術的影響を与えたという説が一番有力。

 

 根拠は簡単。クロックワークスに所属する魔術師(メイガス)及び魔術使いの大半が、ある世界での前世の記憶を持っている事。そして、一番古い人達でもこっちの年齢は数十歳程度―その魔術儀式の頻発化した時のちょっと前ぐらいの生まれだという事。

 

 因みにスメイガやイルマさんがそのパターン。イルマさんの眷属にいる魔術回路持ちだと、アイネスだね。あ、兵士達はちょっと特殊だからこの場合は完全例外ってことで。

 

 で、鶴木にカタナにリスンは記憶なし。これに関しては既に転生した魔術師が子供をなしていてそういうパターンとか、魔術回路を持っていたけど物心つく前に死んだとか、魂に干渉する魔術を喰らって死んで記憶の継承ができなかったとかいろんなパターンが考えられてる。

 

 ……あ、アザゼル先生が怪訝な表情になってるから、その辺の説明もするね。

 

 うん、たぶんソーナちゃんとかも気になってると思うよね。

 

 そもそも、イルマさんやスメイガが魔術師だと分かって、伯父様が危険性と有用性と親和性から後ろ盾になる事を決めたのはいい。それがクロックワークスの始まり。

 

 だけど魔術師は秘匿が前提で、迂闊にばれるような真似はしない。しかも地球全土の人間を調べるなんて真似、どの勢力だってできない。とどめに、クロックワークスに参加する為に亡命してきた人達の中には冥界で繋がってる堕天使はともかく、当時鎖国中のオリュンポスの死神やアースガルズのヴァルキリーがいる。

 

 それだけの人数に対する勧誘をどうやって行ったのか。そもそも、どんな手段で接触したのか。

 

 それは、さっき言ったあの世界側の歪みの理由。ある儀式にある。

 

 ……その儀式の名は、亜種聖杯戦争。

 

 魔術師の世界で聖杯って言うのは基本的に「何らかの形で願いを叶えるマジックアイテム」。聖杯って言っても神の血を受けた受けた杯ってわけじゃなくて、そういう能力を持った凄いアイテム全般を魔術業界じゃ言うんだよ。

 

 で、それをゲットする為の競争行為全般の事を、魔術世界では聖杯戦争って言う。

 

 例えば「人生で初めて孕ませた女性の体を変質させ、その者の強い願いを叶える異能保有者に変質させる特異体質」の事も聖杯と形容できるわけ。で、その初懐妊の座をゲットする為に行われるハニートラップ合戦とかお見合い合戦、最悪逆〇イプによる種絞り〇レス合戦とかも聖杯戦争というわけ。

 

 ……ただし、亜種聖杯戦争っていうのは、たった一つの聖杯戦争を模造した魔術儀式。

 

 その始まりは西暦1800年あたり。鎖国中の日本が九州にあった、その世界の日本で二番目に凄い霊地、冬木。

 

 その冬木の管理者である遠坂という新興の魔術師に、二つの魔術師の家系が接触した。

 

 一つは世界でもトップクラスの錬金術師。悪魔で言うならアジュカ様やサーゼクス様達、魔王クラスすら超えた超越者の領域にいる、超引きこもりで超お金持ちなアインツベルンという魔術師の家系。

 

 一つは大昔から生きてきたという蟲使い。レオナルド・ダ・ヴィンチやヴァン・ホーエンハイム・パラケラススとも顔見知り……つまりその時点ですら何百年も生きてる超年寄り、自分の体を蟲の集合体に作る変えるする事で、更にそのあと第二次世界大戦直前までは生きていた事が確認されている、マキリ・ゾォルケンという魔術師。

 

 彼ら御三家が作り出した、願望成就機能を保有する魔術礼装「聖杯」を完成させる為の七組のバトルロワイヤル。そのデッドコピーが亜種聖杯戦争。

 

 私達の世界には英霊という概念がある。

 

 簡単に言うと歴史上の偉人が死後精霊に昇華した存在。ほら、日本とかで徳川家康とかが神格化される事あるでしょ? あれみたいな感じ。

 

 その英霊は人間より格上だから魔術師でも召喚できないけど、RPGとかでいう職業とかみたいに、一部の側面だけを用意する事で、その分霊を召喚する事は理論上可能で、それをサーヴァントと呼ぶの。

 

 そして御三家はそのサーヴァントを生贄にして魔力に変換。その魔力を蓄え、更に方向性を与える事でちょっとした国家の一年間分の電力とかを用意できちゃう、汎用性でも出力でも他を遥かに超えるタイプの聖杯を作っちゃったの。

 

 最も、「俺達の願いを叶える為に生贄になってください!!」なんて身勝手極まりない理由で召喚に応じるサーヴァントなんていると考える方がおかしいじゃん? いや、実際のところは「条件付きでおk」とかいう奇特な人とか少しはいたらしいけど、そんな前提とか非現実的だしね。

 

 と、いうわけでその御三家及びその話に乗った魔術師合計七名が、それぞれ別々のクラスのサーヴァント七騎の依り代兼魔力供給元のマスターとなり、七組のバトルロワイヤルで他のサーヴァントを叩き潰し、そのリソースをもっていして最後の一組が願いを叶える蟲毒的な魔術儀式。……聖杯戦争のオリジナルが開催された。

 

 その規模は魔術的にはまさに戦争。サーヴァントは基本的に歴史に名を残しているから傑物揃い。一流の武闘派なら最上級悪魔にも匹敵するわけ。そんなのが鎖国中の日本の一地方でぶつかり合ったらもはや当時なら戦争レベル。願望機としての性能も、さっきも言ったけど桁違いと凄まじいレベルなわけじゃん。

 

 ただ、60周年周期で行われていた冬樹の聖杯戦争は、三回目まで魔術師達の世界ではマイナーな儀式だった。

 

 魔術師達の世界では当時の日本は色んな意味で偏狭だった事が原因なんだけど、それも第三次聖杯戦争で一変する。

 

 第二次世界大戦ちょっと前に起きた第三次聖杯戦争。この聖杯戦争は本当の意味で戦争だった。

 

 とある没落した魔術師がオカルティズムに傾倒していたナチスドイツをそそのかしてその聖杯戦争に参加して、その影響か大日本帝国軍もついでに参加。その頃にはその世界の聖書の教えも「偽物なのは確実だけど「聖杯」として機能するものをほっとくわけにもいかない」と、隠れキリシタン絡みで恩があった遠坂家の伝手で監督役として参加するとか、もう色々と大混戦。

 

 ……で、これはイルマさん達も最近入ってきた魔術師から聞いた話なんだけど、その所為で冬木の聖杯戦争はその根幹がとん挫。

 

 なんでも冬木の聖杯戦争、願望機は偶然で来た副産物で本命は別にあった魔術儀式らしいんだってさ。いや、その人も詳細を知ろうとして口封じに殺されたから本命については知らないんだけどね。

 

 で、冬木の聖杯戦争での聖杯は実は二つあって、願望機はあくまで小聖杯。開催場所の冬木にある霊脈の重要ポジションであるある山の中の洞窟に大聖杯ってのがあって、霊脈とくっついたそれがあるからこそ冬木の聖杯は凄い効果を発揮した。

 

 ……それをナチスそそのかした魔術師が持ち逃げしちゃったんだよねぇ。しかも、事前に組織していた魔術師の集まりを利用して協力してくれたドイツ軍皆殺しにして大聖杯を奪っちゃった。

 

 ……最終的に七十年ぐらいかけて調べたりして準備を整えてそのユグドミレニアって組織は魔術世界的に大戦争を開催して、魔術師達の総本山である時計塔とサーヴァント使って殺し合いが勃発。

 

 最終的に第三次聖杯戦争のどさくさに紛れて第二の生を手にしたサーヴァントが色々と裏で動いた所為で大聖杯がまた行方不明。その過程でユグドミレニアも詰みになったけど、時計塔に至っては対ユグドミレニアの為に派遣された超名門家系の魔術師が「闘う前から味方に毒盛られてアッぱらぱー状態」なわけで赤っ恥。最終的に「ユグドミレニア解散するなら全部当主の所為って事で御咎めなし」で決着ついたそうです。……なんか色々と残念な結末だよねぇ。

 

 まあ、大聖杯の行方は脱線だね。重要なのはそれまでの間。

 

 たぶんそのユグドミレニアが大聖杯を探させない為のかく乱情報としてばらまいたんだろうけど、第三次聖杯戦争がうやむやに終わってから、大聖杯とかの情報を意図的に削除した状態で、願望機としての冬木式聖杯の作り方とか願望機としての仕組みがめっちゃばらまかれた。

 

 超一流の霊地と超一流の魔術師達が組み合わさって初めてできる肝心のシステム。そういうのが基本的に欠けてる亜種聖杯は冬木の聖杯の完全デッドコピー。神器(セイクリッド・ギア)でいうなら禁手(バランス・ブレイカー)になってるかなってないかぐらい格が違う。それでも、願望機として十分すぎるぐらい高性能。

 

 その願望機としての力に目を付けた魔術師達は、冬木式聖杯戦争の模倣を頻発。

 

 勿論規模はオリジナルより遥かに格下。最小で二騎による一騎打ちから、大きくても五騎によるバトルロイヤル。そしてそもそも参戦人数に関わらず成功するのは精々100分の一。大抵そもそも形にならず、半端に出来てると爆発オチ。

 

 そんな亜種聖杯戦争で魔術師がどんどん死んでいく世界。そんな世界で様々な死因で死んで、その魂と力を引き継いだのがイルマさんやスメイガ、アイネスとかクロックワークスの魔術師達の大半だよ。

 

 ……で、さっきも言ったけど「こいつら監視しないとやばい」「こいつらの力めっちゃ欲しい」の二つの理由で伯父様は彼らを集める組織の結成を決定。

 

 ……イルマさんとスメイガが、この世界の異能とかを併用して徹底的に安全重視で作った一騎打ち形式の亜種聖杯戦争。その願望機としての機能で「記憶と能力を引き継いだ魔術回路持ちに、クロックワークスという形での居場所をブルノウ伯父様が用意してくれる事及び、伯父様達血統尊重主義派への接触方法を伝える」って事。

 

 そして生まれたのがクロックワークス。魔術師達の暴走を抑え、魔術師達の研究を助け、魔術師達の力を借りる、血統尊重主義派の相方ってわけ。

 

 ……あ、亜種聖杯戦争はクロックワークスでは原則禁止になったから安心して。

 

 あの後二回ほどやったんだけど、亜種聖杯作ろうとして失敗した人の失敗理由とか、そもそも二回成功した事でのノウハウの獲得とかで調子ぶっこいて最高規模作ろうとして合計六騎の前代未聞の亜種聖杯戦争作ったんだけど、三騎ぐらい「悪魔に願望成就なんてさせられるか!!」って感じでマスター無力化して強襲しかけられちゃって。幸いこっちが優勝して願望機で「負傷者の完全回復」に大半使ったから死人は出なかったけど、「これやっぱ危険」って事でもうしない事にしたから。

 

 ま、優勝したサーヴァント三人は全員受肉としたうえで転生悪魔になってるけど、その辺は交渉の結果だから文句は聞かないじゃん?

 

 ちなみに、鶴木やカタナやリスンはその時のあまりで「記憶のない魔術師」を探して見つけた子達。責任もってイルマさんが眷属にしてるんだよ。……あ、アイネスはさっきも言ったけど最初の願望機効果で接触図ってきた魔術師だよ。イルマさんとは前世で顔見知りです!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、信じるかどうかはそっち次第だけど、魔術回路と亜種聖杯に関しては詳細データ送るから、そっちは信じといてねっと。

 




因みにこの作品の転生者は、全員がApocrypha世界の出身という設定です。タグまでつけてるのは全員その世界線の出身だからというわけです。






 あとこれは事実上の裏設定ですが、第三次クロックワークス聖杯戦争において、ブルノウ達運営陣の本命は、「第二次クロックワークス聖杯戦争によって適合クラス及び能力、そして召喚に応じる理由から受肉及び長期契約を取る方法まで把握しているサーヴァントの確保」です。そいつについては登場は確定していますがだいぶネタバレになるので今は言えません。

 確実性を高めるためにイルマ・スメイガの二回経験しているベテラン組と、完全協力体制かつ魔術師として最強格のアイネスがそのサーヴァントを召喚するマスターとして参加。サーヴァントのシステムを最大限に利用して、それぞれ別のクラスで召喚することになりました。ちなみに該当する三クラスの内一つがバーサーカーなのですが、それだと長期契約をとってもメリットがほぼないので、バーサーカーが優勝した場合は受肉時に狂化スキルを消去することが確定済み。
 残り三名の有志魔術師には「触媒確保にかかる費用をブルノウ達が負担する」ことなどを条件に、まずイルマ達が召喚することなどを認めさせました。因みにこれはそのサーヴァントが単純戦闘能力は低いが、時間・資金・資材がそろえばすさまじい効果を発揮するアヴィケブロンのような聖杯大戦向きサーヴァントであり、かつ召喚に応じる目的が目的なので色んな意味で準備期間が必要だという事情もありました。

 ……が、肝心の三人の有志魔術師がそろいもそろって大問題。魔術師としてはスメイガやアイネスより格下とはいえ、全員イルマよりは格上で、歴史ある魔術師の家系の典位クラス。クロックワークスでの貢献度もそれなりにあったから選ばれた奴らではあります。しかしどいつもこいつもサーヴァントを「所詮は使い魔。英霊本人ではなくその陰なんだから敬意もいらないし、令呪という首輪もあるからどんな言うこともこれを盾にすれば聞かせられる」という発想のもと、人格面を全く考慮せずに触媒を捜索して、ゲットしてしまいました。
 質の悪いことに、ある程度はフェアに行くべきだと理由で、触媒の費用は提供してもどんなサーヴァントが呼べる触媒か調べないというミスを運営側がしたうえ、有志側も上記の問題だらけの考え方を前提とした気遣いで「転生悪魔として受肉させれば、魔王クラスがいない血統尊重主義派のアドバンテージとなる=対悪魔戦において優れている」サーヴァントを選ぶという余計なお世話を敢行。
 結果的に全部が悪い方向にかみ合って、運営側が奇襲喰らってあわや血統尊重主義派とクロックワークスの命運が尽きかけたので、基本的にクロックワークスと血統尊重主義派は亜種聖杯戦争を禁則事項にしました。

 因みに、召喚された有志側のサーヴァント、以下三名

 アヴェンジャー:ブディカ

 セイバー:ゲオルギウス

 バーサーカー:ジャンヌ・ダルク

 真実を知ったブルノウはこう思いましたとも

「なんでそいつらが悪魔(私たち)に協力すると思った!?」

 理由が気になる方は、自分のほかの作品を見てくれると嬉しいですと、ダイレクトマーケティングします。









 あ、明日はサーヴァント風ステータスや設定資料集の更新を主体にする予定であります。できれば見に来てUA数を増やしてくれると、グレンうれしいです!

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