ハイスクールD×D/Apocrypha 魔術師達の狂騒曲   作:グレン

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さて、魔術師がらみに事情も説明できて、だいぶ本番に近づいてまいりました。


4 アイネス・エルメロイ・アーチホールことツヴェルフ・シトリーという女王

 先日のトンデモ情報。今頃イッセー達は混乱したりとかしてるんだろうなー。

 

 などとぼんやり考えながら、鶴木はタイミングを見計らっていた。

 

「諸君! 体育祭とは高校生達のイベントだけど、マンネリはいけない!!」

 

 日本の高校に来たのは初めてなはずのイルマが、そう壇上で語る。

 

 まあ、彼女の前世は日本人らしいので、実は経験豊富だろうからこれはいい。

 

 そして、とりあえず勢いに呑まれているので、誰も突っ込まない。イッセー達と仲の良い女子生徒である桐生とか言うのに至っては、とても面白そうに見ている。

 

「ならどうするか? 決まってる! 私達で競技の追加を要請するのだ!!」

 

 そう告げたイルマは、勢いよく黒板を叩く。

 

 そこにはイルマが提案した、とあるマイナースポーツがあった。

 

 それはフィンランドなどで行われる、二人一組で行われる障害物競走。

 

 通称、嫁運びレース。

 

「このイルマさんの素敵な体を堪能しながら、男を見せたい奴は署名しなさい!!」

 

『『『『『『『『『『うぉおおおおおおおお!!!!!!』』』』』』』』』

 

 イッセーの悪友である松田と元浜を代表として、男子達が喝采した。

 

「因みに! 友人に頼んでイケメン王子木場祐斗のクラスの女子は買収済みだ! イケメンにお姫様抱っこしてもらう可能性で買収できたぞ! そいつに頼んでそいつのクラスの男子の署名も確保済みじゃん!!」

 

『『『『『『『『『『いやっほおおおおおおおおお!!!!!!』』』』』』』』』

 

 勝利を確信した男どもが、喝采を上げる。

 

 ちなみに女子達は悔しがっていた。具体的にはこのクラスに木場祐斗がいない事に悔しがっていた。

 

 なんでも公開授業ではリアス・グレモリーの裸婦像のオークションが開かれたらしい。イッセーが何となく作ったら凄いクオリティだったとか。何作ってんだと突っ込むのは野暮だろう。

 

 だが、鶴木が集中するべきはそこではない。

 

 彼が集中する事はただ一つ。

 

 ……この後確実に発生する、「誰がイルマをお姫様抱っこするか」に勝つ事である。

 

 イルマのビッチっぷりはよく知っている。おそらく友人というのはリスンとカタナだろう。

 

 リスンは面白がっているだけだが、カタナはおそらくイルマと同じ事を考えている。

 

 そう、二人は自分達の体と接触して興奮した男子を連れ込んで、体育祭の最中にエロい事をと目論んでいるのだ。付き合いが長いから確実に確信できる。

 

 このチャンスは逃せない。というより、逃してたまるものか。

 

 童貞卒業。それは、男のロマン。

 

 それもできる事ならいい卒業がしたい。エッチな事に手慣れている美少女ならかなりいい。

 

 特にイルマとできるのは最大のチャンスだ。イルマとエッチな事して童貞卒業など、最高の機会だ。

 

 ゆえに次のイルマの言葉に合わせる形で鶴木は一気に名乗りを上げんとする。

 

「さあ、私をお姫様抱っこしたい奴は手を―」

 

「―上げるのはあなたです」

 

 その静かな怒声とともに、教室の扉が開かれた。

 

 入ってくるのは黒髪眼鏡の美少女二人に率いられた、女子比率が多すぎる集団。

 

 ソーナ・シトリー。日本での偽名、支取蒼那が、生徒会を率いて突入してきた。

 

 それに対してイルマは明らかに動揺した。

 

 具体的には、悪戯が見つかった子供の表情である。

 

「そ、ソーナ会長!? い、イルマさんはただ面白い競技を入れたかっただけだよ!?」

 

 そう誤魔化すイルマだが、しかしソーナは指を鳴らす。

 

 その音とともに後ろ側の扉が開かれ、生徒会の一部メンバーに引っ立てられたリスンとカタナが入ってきた。

 

「すんまへんイルマ姉さん。……詰みや」

 

「最悪の事態ですわ。先読みされましたわ」

 

 涙すら浮かべて震えるリスンとカタナの表情を見て、鶴木は全てを察した。

 

 当然だが、イルマもまた全てを察した。完全に追い詰められた者の表情だった。付き合いの長さで完全に誰が動いたのかまで確信した。

 

 そう、知られたのだ。そしてソーナに告げ口したのだ。

 

 我らイルマ・グラシャラボラス眷属。そのもう一人の主ともいえるあのアマルガムの女王が。

 

「……では、通信を繋いでください」

 

「はい、会長」

 

 そしてソーナの指示に従い、副会長でありソーナの女王である真羅椿姫が、ノートパソコンを開く。

 

 そして、映し出されたのはソーナにどこか似ている少女。

 

 イルマ・グラシャラボラス眷属の女王(クイーン)。ツヴェルフ・シトリーことアイネスその人だった。

 

『イルマ。転校早々いきなりやってくれたな』

 

「な、ななな何のことかなぁ?」

 

 明らかに視線を泳がしているイルマに、アイネスはため息を付く。

 

『お前がビッチである事に拘りがあるのは知っているし、理由が理由ゆえ過度に諫めはしない。年頃の青少年の性欲が強いのは当たり前だし、我らが故郷は少し位淫行をしたところで致命傷になるお国柄でもないしな』

 

 そう理解を示すアイネスだが、しかし明らかに声に怒気が乗っている。

 

 そして、鋭い視線を叩き付けた。

 

『だが相手の性的興奮を促す競技を提案し、それにかこつけて体育祭で淫行を働くのは看過できん。それはブルノウ様も流石に問題だと判断し私に説教を一任された』

 

「………伯父様にまで勘付かれたってのかぁ」

 

 崩れ落ちたイルマを見て、クラスメイト全員が呆れ果てた。

 

 この発言で、クラス内では鶴木だけが勘付いていた本来の目的に気づかれた。

 

 そしてそれゆえに、童貞卒業の可能性を失ったという絶望に崩れ落ちる、松田と元浜という変態はこの際置いておく。

 

 そして画面越しから怒気を放つという難行を成し遂げているアイネスは、ため息を付いた。

 

『ソーナ嬢。本家の者に言う事ではないが、画面を他の生徒達の方に向けてくれないか?』

 

「ええ、構いません」

 

 そしてアイネスの姿が映った画像を、クラスメイト達は確認する。

 

 どこかソーナに似た雰囲気を持つ、そして何というか歳不相応の雰囲気を持つ少女。

 

 実際彼女は前世持ちなので、年齢不相応の雰囲気を持っていても何らおかしくない。

 

 彼女は冷静沈着かつ優美な動きを見せながら、軽く一礼する。

 

『大半の諸君とは初見になる。私はイルマの秘書のような事をしている、ツヴェルフ・シトリー。魂の名をアイネス・エルメロイ・アーチホールだ』

 

 ―なんか凄い中二病だ!?

 

 クラス中の心の声が聞こえてきたのは間違いではない。

 

 実際問題、彼女は前世持ちで、今のはその名前なのだから間違ってはいない。なので厳密には中二病ではない。

 

 しかしこんなこと言われたら大半の者達は中二病だと思うだろう。前世の家系を誇りに思うのはいいのだが、この辺問題である。

 

 だがしかし、それよりもっと差し迫った問題が鶴木にはあった。

 

 ぶっちゃけ逃げ出したいが、既にアイネスは鶴木を発見しているようだったので、逃げられない。

 

『……鶴木。お前は付き合いが長いから勘付いたうえでイルマと事に及ぼうとしていた事は推測するまでもない確定事項だ』

 

 やはり気づかれていた。

 

 だが、アイネスは少し眉間にしわを寄せながらも、あえて口調から険をとる。

 

『だが結果的とはいえ未遂だ。今後同様の行動を実行させない餌として、一つだけお使いをする事で許してやろう』

 

「……具体的には?」

 

 これで荒事だったりするのは勘弁だ。

 

 確かに自分は相応に強いが、しかし最上級悪魔クラスと一対一で戦える実力はない。

 

 最終的な素質は魔王にすら届くと言われている。実際にその根拠も提示されているし、鶴木も納得だ。

 

 だが、そのポテンシャルを引き出すにはまだまだ時間が必須だろう。

 

 神器は亜種だが使いづらい。転生悪魔としては完全人間ベースなので基礎ポテンシャルは低い。魔術回路も魔力量はカタナの次に高いが、運用能力はそのカタナに毛が生えた程度。分かり易く言えば尖り過ぎのカタナを丸くした形だ。

 

 ゆえにこそ、自分の強大さの原点である力を引き出す可能性はある。しかし、それはまだまだかかるだろう。

 

 指導能力にも優れたアイネスから、その力を運用するための魔術指導を受けているのでいずれものにできる。だが色々と前代未聞ゆえに、現段階ではアイネスたちも手探りでやっているのが現状だ。

 

 だから援護無しで難易度の高い仕事はしたくないと不安になった。

 

 だが、アイネスの告げた「お使い」は本当に「御使い」だった。

 

『放課後、夜十一時半までにウィダー〇ンゼリーを三つ買って、下宿している兵藤邸宅に戻ってこい。あとこれはイッセーでもゼノヴィアでもアーシアでもイリナでも構わんが、兵藤夫妻に「イルマとカタナとリスンは、本日夕食を別途で用意するので作らなくて構わない」と伝えておいてくれ』

 

「「「………っ!?」」」

 

 イルマ達、下手人三人が凍り付いた。

 

 今の発言を要約すればこういう事だ。

 

 今回の未遂事件の罰として、三人の夕食は夜十一時半にウィダーインゼリー一つのみという事だ。

 

 そして、アイネスは不敵な笑みを浮かべた。

 

『さて、今日の私の夕食はフランス料理のフルコースだ。本国にいる以上、私達貴族は一定頻度でそういう食事をしなければいけないが、自室で食べるのは久しぶりだ』

 

 更にそんな事を言いながら、アイネスは鋭い視線をイルマ達に向ける。

 

 その目に嗜虐的な色を浮かべながら、はっきりと告げた。

 

『あと、イルマ達三人は放課後すぐに帰宅してイルマの部屋に集合。通信機能付きプロジェクターを用意しておくように。ああイッセー。リアス嬢には「三人は急用ゆえに部活は休む」と伝えてくれ。もちろんこの会話の内容も概要だけでいいから教えてほしい』

 

「あ、はい。……イルマさん、骨は拾います」

 

 イッセーも逆らう事なく従った。

 

 鶴木も無言で敬礼をもってそれを了承する。

 

 まあ、具体的に言うとこういう事だ。

 

 本日のイルマ達の罰は、深夜のゼリー飲料だけという生ぬるいものではない。

 

 放課後から深夜まで説教フルコース。更にフルコース料理を優雅に食べる姿を空腹状態で見せつけられるという二段構えだった。

 

『では失礼する。通信設備を自室に用意しなければならないし、ディアクルス達に空腹感を刺激するフルコースを準備させる為の指示が必要だからな』

 

 その言葉とともに、映像が途切れる。

 

 そして下手人はまず第一段階の説教の為に、生徒会室に引っ立てられた。

 

 ……その後のホームルームは、十分ぐらい黙祷の為に沈黙した事を告げておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして放課後。鶴木達眷属悪魔男子組は、女装少年を除いてファーストフード店でだべっていた。

 

「……俺、今日めちゃくちゃついてる。ゼリー代すら後で送られてきたんだぜ?」

 

「俺もついてるぜ! 童貞卒業のチャンスは遠のいたけど、アーシアと二人三脚とかちょっと夢のようだぜ!」

 

「……ついてる方向性が真逆じゃないかな?」

 

「って言うか、鶴木の場合は悪運が強いって言うんじゃないか?」

 

 ホッとする鶴木とガッツポーズをするイッセーに、祐斗と匙が呆れ半分の表情を浮かべる。

 

 因みに、このだべりはたまに行われている。

 

 三人の次期当主(1人代理)の眷属悪魔で、駒王学園に通っている学友なのだ。更に女性比率が多いので若干肩身が狭い。

 

 そんな感じの交友関係として、交友を深めるために鶴木が提案。イルマとリアスはあっさり了承。そしてソーナも「不順異性交遊でないのなら」と参加を許可したのでこうなった。

 

 そして一連の大捕り物に関わり、更にはアイネスの苛烈さを身をもって思い知っている匙は肩を震わせる。

 

「相変わらず恐ろしい人だぜ。いい人だし中二病じゃないって事も分かったけど、怒らせたくねぇ」

 

「まあ、あれで面倒見はいい人だから安心しとけよ。……やるときは徹底的にやる人だけど」

 

 鶴木がフォローになってないフォローをぶちかまして、イッセーと祐斗を苦笑させた。

 

 その苦笑っぷりを見て、鶴木はシェイクを飲みながらうんうんと頷いた。

 

「お前ら、なんでアイネスさんがイルマ姉さんの下についてるのかすっげえ不思議って顔してるだろ」

 

「「「うん」」」

 

 異口同音で即答だった。

 

 だがそうだろう。

 

 イルマは完全にアイネスの尻に敷かれている。それどころか、そもそもイルマ・グラシャラボラス眷属の頂点に君臨している節がある。

 

 それに、魔術師(メイガス)としてもイルマを圧倒するほどにアイネスの方が格上だ。それについてはイルマ自身断言している。

 

 そして、詳しめの資料を貰って読んだ事で、誰もが納得している。

 

 エルメロイ一門。

 

 本来の魔術師(メイガス)達の世界における魔術師達の相互監視組織、魔術教会。

 

 その運営陣と言ってもいい、十三の学部。その学部長は事実上の領主として君臨し、独自の法すら敷ける絶対的な存在だ。

 

 そのロードの一角であるアーチボルト家。彼らが率いる一門こそがエルメロイ。そして、アーチホールはその分家の中でも本家筋に近い、バアルで言うならブルノウ・スメイガ親子のような立ち位置なのだ。

 

 そのエルメロイは亜種聖杯戦争で当主が魔術刻印ごと惨殺された事で落ちぶれてはいるらしい。だが、分家のアーチホール家の魔術刻印は無事だったから、それなりの権力は保有。ついでに言うと彼女が死んだ後から死んだ者達の話によるとエルメロイ一門はそれなりに持ち直したらしい。

 

 なんでも一門の長と揉めた新米魔術師が当初の予定である触媒を盗んで参加した事がその当主の敗因の一つらしいが、その聖杯戦争で大化けしたらしい。

 

「先生は紛れもなく優秀であり、彼が死んだ事で成長する機会が失われる人達が出てきてしまう。戦死の一因を担った者として、その責任を取らねばならない」

 

 そんな、イルマが説明してくれた魔術師像からすれば「馬鹿じゃねえの」と言われそうな理由で、その人物は一念発起。

 

 借金して彼が講師をしていたエルメロイ教室を買い取り、引退したり居場所がなくなった講師に頭を下げて協力してもらい、そして自らも一生懸命努力して、教室を存続させた。

 

 そしてその過程において「鶴木と同程度の運用能力に、イルマより下の魔力量」という魔術教会的にひいき目に見て凡人極まりないと評価するしかない彼は、魔術業界的にそのディスアドバンテージを間接的にひっくり返す才能「魔術に対する知識と考察能力」に覚醒。

 

 かつて揉める原因となった「家柄の古さがなくても才能ある魔術師はきちんと教えれば大成する」を自分以外にことごとく実践。「ちゃんと学んでも大成しない自分は正真正銘魔術師として凡人」という証明を行い続ける公開自傷行為と引き換えに、教え子達の才能をきちんと引き出す事に成功する。

 

 立派な血統の魔術師はそのポテンシャルを最大限に発揮。家柄が悪い魔術師も、才能を見抜いて教室に引きずり込んで覚醒させる。更に突然変異じみた「血統に合わない魔術に才能ある者」を発見して新たな可能性まで引きずり出す。たまに真の才能を引き出し損ねる事もあるが、それも「実家の魔術とハイブリッド体制にもっていこうと思って実家の魔術と合わない原因のフォローをしたら、他の諸事情と化学反応を起こして実家の魔術でも大成してしまった」という変則事項で、どちらにしても大成はしているという始末。

 

 結果、彼の教えを受けた魔術師は自立する頃には全員上位位階に到達。教え子達を煽れば時計塔の勢力図を変えるとまで言われてしまう。

 

 当人が権力闘争に興味が薄く、逆に自分の凡才っぷりを徹底的に突き付けられる日常ゆえにそんな気はないが、そんな彼がエルメロイ一門の代表代理「ロード・エルメロイ二世」に収まった事で、エルメロイは首の皮一枚繋がったらしい。

 

 その情報提供をした魔術師達は、「アイネスが焦って自滅しなければ、彼女はエルメロイ二世の指導によって真の意味の王冠に届いていた」「よしんばそうはいかなくても、特別待遇としてどちらにしても王冠として彼と双璧をなすエルメロイ一門の最終防壁になっただろう」「二人が手を組めばエルメロイ一門は全ロードのトップに立っていたかもしれない」とまで称されているそうだ。

 

「そりゃ、アイネスさんはシトリー家じゃ分家中の分家の出身だって会長から聞いたぜ? だから大王派的にグラシャラボラスとしてもバアルとしても本家直近のイルマさんが主になった方が体裁はいい」

 

 匙はそう言うが、しかし同時に首をひねる。

 

「でもブルノウさん達は「才能がない本家筋は当主の座を才能のある分家筋に継がせるべき」だろ? これ、矛盾してないか?」

 

 匙の言う事はもっともだろう。

 

 少なくとも、魔術師としてアイネスはイルマを凌駕している。それどころか、クロックワークスでも二強に属するそうだ。

 

 最終的に双璧をなすスメイガと、今はブルノウが兼任しているクロックワークスの理事と盟主を分け合って存続させるらしい。

 

「確かに、ブルノウ様は姪だからって理由だけでそんなひいきをするような生易しい方ではないらしいとは伺っているよ」

 

 祐斗もそう言うが、実際その意見は間違っていない。

 

 無能なりに努力する者には慈悲を向けるが、怠惰な無能は落ちぶれるべきというのがブルノウだ。それは鶴木も良く知っている。

 

 だから、アイネスに聞いた事はあるのだ。

 

「アイネスさんはこう言ってたよ。「あいつは魔術師としては凡才だが、魔術使いとしてはクロックワークスでも最強格になれる」ってさ」

 

 そう、魔術師と魔術使いは違う。

 

 魔術師は魔術を研究させる事が本懐。魔術を道具として使用する場合においては、魔術使いと条件は大差ない。

 

 そして、それ以外にも理由がある。

 

「あと、アイネスさんとイルマ姉さんは前世からの知り合いだってのはイルマ姉さんが言ってただろ? で、イルマ姉さんはアイネスさんより先に死んでるそうなんだ」

 

 その辺りについて、何故かアイネスもイルマも深くは教えてくれない。

 

 あまり深入りしていい内容でもないし、鶴木達も深く聞こうとはしていない。

 

 だが、アイネスはその時の事を思い出しながらこう語った。

 

「「私はイルマに友情も負い目も怒りも感謝もある。だから、私はイルマを従えたくない。イルマに仕えたい」ってさ」

 

 きっと、アイネスとイルマには二人にしか分からない事があるのだろう。

 

 だから、鶴木はそれ以上は聞かなかった。

 

 それを察したのか、三人もなんとなく納得の表情を見せた。

 

 そして、イッセーは何となく気になったといった表情で、鶴木に質問する。

 

「それ、イルマさん的にはどんな感じなんだ?」

 

 その質問に、鶴木は苦笑を浮かべた。

 

「「イルマさんはアイネスに心から感謝してるし、本当に迷惑をかけたと思ってる。だから、アイネスが心から望んでるなら、そうするしかないじゃん」だってよ」

 

 お互いに負い目と感謝を持ち、そしてそんな二人だからこそある絆がある。

 

 きっと、そういう事なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さて、それでは早めの夕食を開始させてもらおう。まずは前菜を十分かけてゆっくりと味合わせてもらう』

 

「この悪魔ぁああああ!」

 

「イルマ姉さん、それ只の事実や! 何の意味もあらへん!!」

 

「……く、空腹感が凄まじく刺激されますわ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時進行でこんな事が起きていると知れば、誰もが一瞬疑問を浮かべるだろうが。

 




 イルマとアイネスの過去に何があったのかは、アイネス視点である程度ホーリー編の段階で語られる予定ですが、まあイルマの紹介とかである意味ネタバレしてますので、あまり深入りはしないでね。

 そしてアイネスは本当に天才。魔術師としてはクロックワークスにおいてスメイガに並ぶ二強だし、Apo世界なら特例としてですが王冠になることは難しくないでしょう。官女がエルメロイに残存してさえいれば、ライネスとウェイバーはだいぶ楽にノーリッジを運用できたでしょうね。


 まあとにかく、アイネスとイルマの間には本気の友情があるわけです。そしてそれゆえにアイネスはイルマの眷属悪魔であることに固執しています。明日辺りにその辺の話を書き始める予定です。具体的にはアイネスが何で死んでこっちに来たのかの事情がある程度語られる予定です。

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