ハイスクールD×D/Apocrypha 魔術師達の狂騒曲   作:グレン

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はい、プロローグの第二話です。

タイミング的には会合ですね。

さて、いきなり大波乱です。


2 序列12位の動乱

 

 そして若手悪魔と上役悪魔たちとの会合が始まった。

 

 一行が通された謁見の場は、大学の講堂を思わせる、段が後方になるごとに高くなっている場所だった。

 

 一番高いところには、貴族服を着こんだ四大魔王が陣取っており、その下に、階級や立ち位置で区別されているのか何人もの丁寧な衣装が施された服に身を包む悪魔たちがいた。

 

 そして彼らに見下ろされるように、それぞれの眷属の王が前に出る形で並ぶことになる。

 

 そして全員が並んだところを見計らって、サーゼクス・ルシファーが軽く会釈をした。

 

「今日はよく集まってくれた。次世代を担う君たちが縁を結ぶことには意味があると思い、このような場を用意させてもらった」

 

「……まあ、さっそくひと悶着あったみたいだがな」

 

 そう苦笑する男性がいた。

 

 サーゼクスたちの二段下にいるその男性は、黒髪と紫の瞳をしている。

 

 それだけで、上級悪魔の王たちはバアル家のものだということを見抜けた、そうでなくても、サイラオーグやスメイガに似た雰囲気であることに気づいたものは多いだろう。

 

 そして、そのタイミングでイルマは視線をちらりとそらした。

 

 そしてそれを目ざとく見つけ、その男性は困り顔でイルマに視線を向ける。

 

「イルマ。欲望を司る悪魔が色事を楽しむなとは言わない。だが、TPOをわきまえることはしてほしいな」

 

「す、すいません。ブルノウ伯父様……」

 

 そう肩をすくめるイルマに苦笑しながら、ブルノウと呼ばれた男性は立ち上がるとサーゼクスに頭を下げる。

 

「姪が失礼いたしました、サーゼクス様」

 

「構わないよ。あの程度の口論ぐらい、若い時なら珍しくもないさ」

 

 そうサーゼクスは笑って流し、そして皆に視線を向ける。

 

「それはともかく、今前に出た八人は、いずれも家柄、実力ともに申し分ない次世代悪魔の未来を担うものたちだ。ゆえに、君たちには経験を積んで互いに競い合い、切磋琢磨していってほしい」

 

 そのサーゼクスの言葉に、サイラオーグが一歩前に出る。

 

「その経験というのは、いずれ我々も禍の団(カオス・ブリゲート)との戦いに投入されるということでよろしいでしょうか?」

 

 -禍の団(カオス・ブリゲート)

 

 無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)という、世界最強の存在を盟主として結成された、各勢力のはぐれものがあつまったテロ組織である。

 

 少なくとも、悪魔の内乱で追放された先代魔王の末裔とそのシンパが参加していることは確定で、そのうちの一人が、三大勢力の和平会談となった駒王会談に襲撃を仕掛けてきていた。

 

 更にその中には、神滅具の一つである白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)を保有する旧ルシファーの末裔という、何かの冗談かといいたくなるような存在までいる。

 

 ほかにも神滅具の保有者が数名いるとの報告もあり、その規模は下手な神話体系なら滅ぼしかねないほどだ。

 

 そしてサーゼクスの言葉から逆算すれば、最も経験を積むのなら禍の団との戦いもまた考えられるものだろう。

 

 だが、サイラオーグのその言葉にサーゼクスは首を横に振る。

 

「確かに最高峰の経験にはなるだろう。だが、それはできるだけ避けたいの言うのが私個人としての意思だ」

 

 その言葉に、サイラオーグは努めて隠そうとしていたが眉をしかめていた。

 

 納得できない。そう態度で示している。

 

「なぜです? 若いとはいえ我らは次期当主として責任があります。そもそもここまで育てていただいたご厚意を受けておきながら、何もしないというのは良心に反します」

 

 その言葉にサーゼクスは、苦笑しながらもしかし首を横に振る。

 

「その勇敢さは無謀と表裏一体だ。なにより成長途中の君たちを戦場で倒れさせるような未来は、冥界にとっての害になる。君たちは君たちが想像しているよりも尊い宝なのだ。より安全な成長をしてほしいというのが、私の本心だよ」

 

「……承知いたしました」

 

 明らかに納得できていない表情だが、しかしサイラオーグは引き下がる。

 

 それに苦笑しながらも、サーゼクスは話を切り替える。

 

「さて、それでは簡単な話をしよう。もちろん、できる限り長くならないようにさせてもらうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてはっきり言って大半の者にとってつまらない話だが、重要性がそこそこある話をしてから、お開きとなる少し前だ。

 

「では最後に、君たちの夢や目標を聞かせてほしい」

 

 その言葉に、真っ先に動くものがいた。

 

 一歩前に出たサイラオーグは、胸を張り、堂々と、恥じることなく告げる。

 

「俺の夢は、魔王になることです」

 

 そう断言するその姿に、上役たちも感心するやら呆れるやらの表情を浮かべる。

 

「大王家から魔王か。なかなか前代未聞だな」

 

 その言葉にはどこか抵抗のようなものが感じられたが、しかしサイラオーグはさらに告げた。

 

「民が必要だと感じれば、そうなるでしょう」

 

 若手悪魔の中でも上位に位置する、大王家の第一位継承者、サイラオーグ・バアル。

 

 その男の言葉には説得力があり、思わず誰もが一瞬押し黙る。

 

 そして一歩下がったサイラオーグに続き、今度はリアスが前に出る。

 

「私はレーティングゲームでタイトルを取ることですね。最終的な目標としては、皇帝(エンペラー)すら下してレーティングゲームのナンバー1になりたいと思っております」

 

 リアス・グレモリーのレーティングゲームはお家騒動でやった一度だけだ。それも、その後イッセーが活躍したことで盛り返したが、ゲームそのものは敗北している。

 

 そのうえで、あえて告げるリアスの決意。イッセーたちグレモリー眷属は、心身を共に気合を入れなおした。

 

 そして次にソーナが一歩前に出る。

 

「私の目標は、冥界にレーティングゲームの学校を建てることです」

 

 学び舎の設立。

 

 イッセーたちから見ればこれまた立派な夢だと断言できるだろう。

 

 だが、同時に何名かが額に手を当ててため息を付いた。

 

 上役たちの何人かに至っては、怪訝な表情を隠そうともしない。

 

「レーティングゲームを教える教育機関は、既に存在しているはずだが?」

 

 お前は何を言っているのだ。そう言外に込め、その上役は尋ねる。

 

 それを真正面から見返しながら、ソーナははっきりと告げた。

 

「それは上級悪魔だけのものです。私が作りたいのは、下級中級がレーティングゲームを学べる学び舎です」

 

 その言葉に、上役たちは沈黙し―

 

『『『『『『『『『『はははははは!!』』』』』』』』』』

 

 嘲笑の合唱を響かせた。

 

「はっはっは。全く、ソーナ嬢、何を愚かなことを語っているのやら」

 

「全くだ。下級中級の選抜は、我ら上級悪魔が行ってこそ。無駄にどいつもこいつも育てるなど、金の無駄だろうに」

 

 明らかな嘲笑の言葉に、しかしソーナは表情を変えない。

 

 彼女にとってこれは想定の範囲内なのだ。そんなことは当たり前のこととして認識している。

 

 だが、それがわからないものは数多い。

 

「……なあ、今のなんでそんなに笑われなきゃいけないんだよ?」

 

 一応空気を読んでこそこそと祐斗に尋ねるイッセーだが、祐斗は静かに首を横に振る。

 

「これが現実だよ。グレモリー家のような情愛の深いものたちは数少ない。政治の実権を握っている者たちの多くは、自分たちを至高として下級中級を下等生物のように扱っているものたちだらけさ」

 

 その事実に、イッセーはかつての戦いを思い返す。

 

 かつて闘ったライザー・フェニックスは、明確にイッセーたち下級悪魔を見下していた。

 

 だが同時に、イッセーの情けない姿を見て「リアスに恥をかかせるな」という意味の忠告を残していった男でもある。それにその後との戦いでは明確に脅威と認定して本気で挑んできた。

 

 そのライザー・フェニックスをはるかに上回る醜悪な態度に、イッセーは頭痛すら感じる。

 

 そして、我慢しきれないものはもう一人。

 

「……こ、この……っ」

 

 ソーナの眷属悪魔である匙は、我慢できなかったのか一歩前に出る。

 

「なんでそこまで馬鹿にされなきゃ―」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―切り裂け《Scalp》」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、匙は地面に倒れ伏す。

 

 匙は何が起こったのかわからなかったが、すぐに足元を見て、真っ青になった。

 

 まるでバターを日本刀で切り裂いたかのように、匙の両足は膝のあたりで切り裂かれていた。

 

「匙っ!?」

 

 その光景にシトリー眷属やグレモリー眷属はもちろん、いきなりの事態に上役たちすら目を見張っている。

 

 そして、そんな匙に対して冷徹な視線を向けながら、わざわざ近づいて見下すものが一人。

 

「愚か者が。私の家の名にまで傷がつくようなその愚行。仮にも高等教育を受けているものとは思えないな」

 

 そう冷徹に告げた女性悪魔は、イルマの眷属だった。

 

 女王を担当していたアイネスと呼ばれた少女は、しかしかがみこむと小瓶を取り出してその中身を傷口に振りかける。

 

「止血はしておいた。あとでグレモリーの僧侶(ビショップ)にでも治してもらえ。……適当に外に投げ飛ばしていろ」

 

 最後の言葉は匙に告げたものではない。

 

 いつの間にか少女の足元に広がっていた銀色の水たまり。それが触手のように動き出すと、匙の下に滑り込んで、そのまま風船のように膨らむ。

 

 そしてまるでトランポリンのように匙を部屋の外へとかちあげ―

 

「そこまでにしてもらおうか」

 

 -それをかすめ取ったサイラオーグが、即座にアーシア・アルジェントのもとに着地した。

 

「すぐに治してやれ。止血はされているようだが、それでも早くつないだ方がいい」

 

「は、はい!!」

 

 そしてアーシアが我に返って治療を開始するころには、その場にいたものたちも次々に我に返る。

 

「……ツヴェルフ・シトリー。……どういうつもりですか」

 

 絶対零度の視線が、ソーナから放たれる。

 

 当然といえば当然だろう。いま彼女は、目の前で眷属を傷つけられたのだ。

 

 そして、告げられた名前の通り、それをなした者の名はツヴェルフ・シトリー。シトリー家の分家出身の物である。

 

 本家の眷属に分家が害をなしたのだ。この時点でお家騒動が起きてもおかしくない。

 

 だがしかし、その時点ですでに動き出している者がいた。

 

「いや、過激ではあるが対応としては間違ったものでもないだろう」

 

「あーゴメン。ちょっとここはアイネスの味方しちゃうかなー」

 

 多少間が悪そうにしながらも、しかしスメイガおよびイルマが、眷属とともにソーナの視線をツヴェルフから遮る。

 

 一触即発といってもいい状況下に、ソーナに味方するものたちはそれに立ちふさがる。

 

「さすがに今のは見過ごせんな。それに、上役たちの対応にも思うところはあった」

 

「サイラオーグに一票。そもそも、彼は私の可愛い後輩でもあるのよ?」

 

 サイラオーグとリアスがソーナに並び立ち、そして激怒の視線を向ける。

 

 その視線を真正面から受け止めながら、ツヴェルフ・シトリーはしかし平然としていた。

 

「……偉大なる貴族たちに対して、まがい物の下級悪魔が舐めた口をきいたのだ。本来なら即座に首をはねるのが当然だろう」

 

 そして銀色の水たまりを操作して自らのもとに引き寄せると、一歩前にでる。

 

「……実に愚かなことをしたものだ。本家の跡取りがここまで愚者だったとは涙が出る。飼い犬ならぬ飼い蛇をしつけてやったのだ。礼を言ってもらえないか、次期当主殿?」

 

「……匙が分をわきまえなかったのは詫びましょう。ですが、それとこれとは話が別です」

 

「そ、そうなのよん!!」

 

 そしてセラフォルー・レヴィアタンが立ち上がり、激怒の視線を辺りにまき散らす。

 

「さっきから黙ってたらソーナちゃんのことおじ様たちがいじめてばかりで、挙句の果てにツヴェルフちゃんまでそんなこと! ちょっとレヴィアたんもぷんぷんなの―」

 

「セラフォルーさま。怒気をおしずめください」

 

 と、そこで声をかける者がいた。

 

 激怒する女性悪魔最強の存在。そんな死を覚悟しなければならないほどの存在に、しかし冷静に声をかけるもの。

 

 会談の最初の時にイルマをたしなめたブルノウが、立ち上がるとセラフォルーに毅然とした声をかける。

 

「此度の件、元をただせば下級転生悪魔の匙元士郎が狼藉を働いたことが要因。即座に治療できる怪我を負わせる程度の制裁で、魔王様まで動かれては困ります」

 

「……むー。ブルノウちゃんまでそんなこと言うの!?」

 

 一種の正論に若干押しとどまるが、セラフォルーの怒気はまだ冷めていない。

 

 だがブルノウは静かにそれをスルーすると、匙に対して視線を向ける。

 

「……たしか、匙元士郎くんだったね」

 

「へ? お、俺の名前……?」

 

 まさか上役にフルネームを覚えられているとは思わず、治療を受けている匙は戸惑う。

 

 だが、ブルノウは微笑を浮かべるだけだ。

 

「一応呼びだしたメンバーの名前と顔ぐらいは目を通しているよ。主を馬鹿にされて怒りを感じるのは忠臣の証。今回の件、確かに少々私たちの意地も悪かった」

 

 そう牽制球を上役たちに叩き込みながら、しかしブルノウは鋭い視線を匙に突きつける。

 

「だが民主主義である君の故国とはちがい、厳格な階級社会であるこの悪魔社会で先ほどのような真似はいただけない。場合によってはこの場で首をはねられても文句は言えないし、下僕の無礼は主の失態だ。あの行動は明確にソーナ・シトリーの害にしかならない。浅慮は慎みたまえ」

 

 そうしっかりとくぎを刺してから、ブルノウは席を立つとソーナの前に立つ。

 

 そして、背の高さを考慮して軽くかがみ、ソーナに目線を合わせながらブルノウはまっすぐに目を合わせた。

 

「ソーナ君。まずは君がそう思うようになった理由を聞かせてほしい。此処まで大ごとになったのなら、それ相応の筋を通さなければならないよ」

 

「……父上。いくら本家の次期当主が相手とはいえ、さすがに気を使いすぎでは?」

 

 スメイガがそう苦言を呈すが、ブルノウは静かに首を横に振った。

 

「いや、有益かどうかを判断するには材料が足りない。まずはそこを判断するための材料を知るべきだろうね」

 

 そのことばに、スメイガは一歩下がる。

 

 それを確認してから、ブルノウはソーナに改めて向き直った。

 

 そして、ソーナ・シトリーは決意を決める。

 

 ……どうやら、ここが一種の正念場だということだ。

 




 イルマの女王(クイーン)であるツヴェルフ・シトリー、愛称はアイネスで主武装は謎の流体金属。これだけで訓練された型月ファンなら彼女についてある一族を思い浮かべてくださることでしょう。

 いきなりすさまじい激戦が勃発しかけましたが、そこは新キャラブルノウによって仲裁され、しかしソーナが正念場に。

 ブルノウは大王派のできる重鎮としてのオリキャラで、スメイガの父親にしてイルマの伯父。二人の事情をよく知っている後援者でもあります。

 この三人とその眷属は派閥的には魔王派と対立していますが、イッセーたちと対立することはあっても不倶戴天の敵にはなりません。政治的な事情が絡まない場合では話の分かる大王派ともなるでしょう。アイネスに関しても、プロローグの範囲内できちんとフォローを入れる予定です。

 ……ですが、政治的な事情が絡んでいるときは敵対することも辞さないしたたかな人物でもあります。

 そんなブルノウに目を付けられたソーナの明日はどっちだ!?

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