ハイスクールD×D/Apocrypha 魔術師達の狂騒曲   作:グレン

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イルマ・グラシャラボラスとツヴェルフ・シトリー。

その二人の関係の始まりについて語られます。


8 魔眼、その因果に捕われしある一族

 

「……なんて事を言っていたわね」

 

 リアスは、テレビ局にある喫茶室で、そう漏らした。

 

 前回のレーティングゲームなどで注目され、リアス達はテレビ番組に出演する事になった。

 

 そして、別件で出くわした上級悪魔仲間とこうして話す機会があり、共通の話題になりうる魔術師(メイガス)絡みで説明する事になったのだ。

 

「……専用装備がスーパーコンピューターとか反則ですね。どこのターミネー〇ーですか」

 

魔術師(メイガス)とは一芸特化が基本ではなかったのか? 多芸すぎるだろう、彼女」

 

 ブルノウが三割ぐらい乗っ取った事で進み始めた学園絡みの紹介番組のゲストになったソーナが呆れ、これまた別件でテレビ番組に出演していたサイラオーグも少し引いている。

 

 あと、たぶんにイルマに同情している部分があった。

 

 ビッチ極まりない彼女ではあるが、しかし血統尊重主義派の一員としての意識はある。

 

 だからこそ、貴族の一員として立派に責務を果たそうとしているのだが、相方が有能すぎて仕事をさせてもらえない。

 

 自分から動く事の多い身としては、ちょっと同情してしまった。

 

「王として自ら動く事で引っ張るという在り方もありだろうに。あまり動かないのはあれではないか?」

 

「というより、もはや在り方が窓際に追いやられた中年サラリーマンですね。傀儡政治ですか」

 

 サイラオーグとソーナは、それぞれの観点から同情を見せる。

 

 派閥的には対立しているが、しかしイルマは立派に貴族として頑張ろうとしている。その一環として一生懸命仕事をしようとしている。

 

 それを、「もっとできる者に任せるのも立派な仕事」という正論とはいえ仕事をさせてもらえないというのはちょっと可哀想。

 

 大体そんな感じだった。

 

 これは後で何かアイネスに言った方がいいのではないかとすら思うリアスで、視線が合うと大体同意見な感じになり―

 

「……失礼な。まるで私が虐待一歩手前の行動をしているみたいではないか?」

 

 ―その肝心のツヴェルフ・シトリーの反論がいきなり飛んできた事で、思わずリアスは肩を震わせた。

 

 ちなみに、この喫茶室は上級悪魔限定の喫茶室である。

 

 なんとなく眷属達がテレビ局に興味を見せていたり、イッセーが別件で呼び出されたりしたので、こうして主達は主達で仲良くお茶会をしていたのだ。

 

 そこにいきなりアイネスが出てきたので、割と本気で驚いた。

 

 いや、アイネスも一応上級悪魔の末席である。シトリー家の分家出身なので、入れないわけではない。

 

 だが、何故彼女がここにいる?

 

「……最初から最後まで聞いていたから言うが、ブルノウ様の賛同者である経理担当からの頼みで演算処理を請け負ったのだ。ああ、内容については情報漏洩をする気はないから、しゃべるつもりはない」

 

 事前に釘を刺してから、アイネスはため息を付く。

 

「そもそも主を仕事漬けにする方が問題だろう? 主というのは非常時に動く為の余力が必要だし、代理とはいえど次期当主に収まっている以上、有事の際には動かなければならないのだ。有事以外は少しぐらい暇な程度でなければ、肝心な有事に身動きが取れないかもしれないではないか」

 

「一理ありますが、暇すぎるのも問題では?」

 

 正論という武器に正論というカウンターでソーナが反論する。

 

 こういう時、この三人では一番優位に立ち回れるのは知性派のソーナだろう。

 

 そもそも、彼女はシトリー家の次期当主。派閥は違うといえ分家の分家であるツヴェルフ・シトリーには自動でマウントも取れる。適任であった。

 

「確かにワンマン運営でもない限り、有能な部下を最適な箇所に据える人材運用能力は必須で、できる者に仕事を任せるというのは一種の在り方。そして自分が動かなければならない非常時に備えた余力を残すというのは分かります。ですが、使わない機能は衰えるのが生命体の基本です。あまり仕事をさせないと、動かなければいけない時にポテンシャルを発揮できない可能性もありますよ?」

 

「……むぅ、流石は本家次期当主殿だ。反論できん」

 

 そして、ツヴェルフ・シトリーは有能故に正論には耳を貸してくれる。

 

 そして、ため息を付くと三人と同じテーブルについて、肩を落とした。

 

「……確かにそうだ。私はどうもイルマに厳しくしようとしていながら、妙なところで甘やかすところがある」

 

「この場合、甘やかしているのか厳しくしているのか分からないのだけれど」

 

 リアスはどうツッコミを入れればいいのかが分からない。

 

 どうも前世からの縁らしいが、魔術師としてあまり才能がないらしいイルマと、名門中の名門の生まれらしいツヴェルフとの間にどうすれば縁ができるのかが分からない。

 

 しかも、過保護というべきがスパルタというべきか判断に悩むこの扱い方も、ただの友達というわけでもなさそうだ。

 

 ……貴族社会の経験から言わせてもらえば、アイネス・エルメロイ・アーチホールが前世のイルマを部下にしていると言った方がまだ理解できるのだが―

 

「……厳しくしながら甘やかす。もしかして、駒の件もそうですか?」

 

 ソーナの指摘に、ツヴェルフは肩を少し震わせた。

 

 それは一瞬すぎてソーナやリアスでは反応に確信が持てなかった。

 

 だが、動体視力において規格外が一人いる中で、この動揺は致命傷だ。

 

 若手上級悪魔でもトップクラス。圧倒的なディスアドバンテージを身体能力で補ったサイラオーグは、軽く目を伏せた。

 

「……図星か。まあ、あの一件は見方によっては血統尊重主義派にとって傷になるしな」

 

 サイラオーグとソーナの言いたい事は、リアスも分かる。

 

 ツヴェルフ・シトリーは、悪魔の駒をワンセット持っている。

 

 それは上級悪魔なのである意味当然だが、しかしある意味で問題だ。

 

 彼女は上級悪魔であると同時に眷属悪魔だ。そういう意味では少々問題視されかねない。

 

 実際、リアスの婚約者だったライザー・フェニックスは妹であるレイヴェル・フェニックスを特例で僧侶(ビショップ)の眷属悪魔にしていたが、レイヴェルはそれゆえに悪魔の駒を支給されていない。

 

 これは貰う前に転生悪魔になった事もあるわけだが、ツヴェルフは逆に貰ってから転生悪魔になったのだ。

 

 法的に問題はないが、同時にマナー的には悪い事と取られてもおかしくない。

 

 そして、その後も解せない。

 

 その確保した悪魔の駒を、ツヴェルフは一切使用していないのだ。

 

「……正直、元貴族として従者とか欲しくないの? それに、下部組織として自分の眷属を持った方が、イルマの支援にもなると思うのだけれど」

 

 というより、そうでもないのに態々こんな真似をした理由が分からない。

 

 そんな疑問を言外に込めたリアスの言葉に、アイネスは俯かせながら、軽く息を付き―

 

「……今から私は、卑劣な事をする」

 

 ―そう告げ、そして語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後まで聞いてから、そのうえで判断してほしい。

 

 まず疑問に答えるが、私が悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を手にしてからイルマの眷属になったのは、保険の為だ。

 

 何の為の保険かは簡単だ。イルマが死んだ時の保険だ。

 

 イルマが死ねば、イルマの眷属は主を失う。そうなれば立場が悪くなる事もあるだろう。

 

 だが、一応上級悪魔でもある私が駒を余らせていれば、トレードの形で私の眷属悪魔という立場を持つ事で、そのダメージを最低限にできると思ったのだ。

 

 我ながら問題行動なのは分かっているぞ? まあ、諸君らの想像している意味ではないが。

 

 おそらく、諸君らは「主を死なせる事を前提にする」事を問題行動だと思っているだろう。それもそうだし、それも問題だと思っている。

 

 だが、私がもっと問題だと思っているのは別だ。

 

 ……私はな、これに勘付かれた場合、イルマが死に急ぐ事を問題だと思っている。

 

 はっきり言おう。イルマ・グラシャラボラスは死に急ぎたがりやすい。少なくとも、私なら死に急ぐ人生を歩むだろう。それぐらい、彼女の前世は彼女を追い詰めかねない。

 

 だからこそ保険が必要だと思い、しかしそんな事をすれば逆にイルマ自身の心理的ブレーキを緩めてしまう。

 

 ……イルマの後顧の憂いを断ちながら、イルマを自発的に死地に向かわせようとする。まったく、甘やかしているのか厳しくしているのか分からない。

 

 まあ、ここまで話してしまえば、嫌でも気になるだろう。

 

 だからまあ、話してもいいところまでは話すとするさ。

 

 その前に、長い話になるからお茶とお茶請けを頼んでおこう。まずはそこからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、準備が整ったな。

 

 では、まずイルマと私の前世について説明しよう。

 

 まあ、私については詳細資料にある程度の説明があるから軽く流す。

 

 時計塔という魔術師達の総本山。その中で、天界でいうならセラフの十四天使に近しい立場である、十二のロード。そのロードの一人である、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトに仕えるエルメロイ一門の有力分家、アーチホール家。その次期当主だったのが私、アイネス・エルメロイ・アーチホールだ。

 

 まあとりあえずエリートだと言っておこう。私は生前、時計塔の魔術師の位階において上から二番目の色位(ブランド)の末席だった。まあその中でも下の部類だが、主であるケイネス殿は上位クラスの上位とはいえ、同じ色位だからこれは凄い事だ。悪魔でいうなら魔王クラスと肩を並べられる最上級クラスになったようなものだ。

 

 真の最高位である王冠(グランド)ははっきり言って幻の称号であり、悪魔でいうなら超越者クラスだから、ロードでもごく一部しか到達できん。あの時代は魔術師の数が亜種聖杯戦争でごっそり減っていたから、ケイネス殿や私も「本来の意味とは違う名誉階級」として王冠に届いていた可能性はあるな。……いや、ケイネス殿ならいずれ正しく王冠に至っていたのであろうが。

 

 まあとにかく、私は超名門一族の有力分家の次期当主。こちらで言うならスメイガのような立ち位置だったわけだ。

 

 で、我らアーチホール家だが、エルメロイ一門でも本家であるアーチボルト家をしのぐある一面があった。

 

 ああ、魔術的な事ではない。どちらかというまでもなく俗的なものだ。

 

 ……日本通だったのだよ。

 

 源流魔術刻印の株分けをしてもらい、初代がエルメロイ一門に入った頃から、日本の文化に興味があったそうだ。私も自慢じゃないが、時々日本に行った時に卵かけご飯を食べるのが好きで、前世では多くて年数回だったから、もはやごちそうレベルだったが、これは蛇足だから話を戻そう。

 

 そんな日本通のアーチホール家は、とある日本の魔術師一族と縁を持つ事になった。

 

 本来、冬木の聖杯戦争の源流が行われたという事以外では西洋魔術世界において辺境な日本だが、しかし利点もある。

 

 そのうち一つは鎖国政策だ。これは、当時の魔術社会において「入りにくいがゆえに、外部からの干渉から逃れやすい」という利点があった。冬木が源流の聖杯戦争の開催地に選ばれたのも、アインツベルンとマキリが時計塔や聖堂教会の影響を最小限に抑えたかったからだろう。

 

 そして、その魔術師一族は厳密には帰化外国人だ。

 

 鎖国前までは普通に西洋魔術社会の出身だ。とある事情で家系間での神秘の独占をしてなかったので、魔術回路と刻印が歴史に比べると弱めの一族ではある。その反面、魔術的に貴重な特性を持っている一族だった。しかしその所為でとあるオークション組織に狙われて、彼らから逃げる為に鎖国を利用したのさ。

 

 だが、時は進んで黒船来航という出来事が発生。サイラオーグ殿には悪いがソーナ嬢とリアス嬢は確実に知っているだろうし説明は飛ばすが、その結果鎖国が終わる事をすぐに察する事ができたその一族は、とても困った。

 

 そのオークション組織が自分達を狙う理由はまったくもって健在。そいつらは金を持っているうえに様々な権威をもっている者達からも愛用されているので、日本が開国さえすれば強引な手段で自分達を狙ってくるかもしれない。質の悪い事に、そのトップはマキリとは別の方法で延命措置を行っており、たかが日本が鎖国していた期間程度では絶対死んでないし、たぶん性根が歪んでるから同じ事をしてくる事も想定できた。

 

 故に、大博打感覚で彼らは時計塔のロード達に後ろ盾になってもらう事を求めた。

 

 これに関してはそのオークション組織の影響力が凄まじい事と当時のロード達が現バアル並みに血統主義だったので失敗したが、しかし準ロードであるアーチホール家は、彼らを日本での窓口にする事が可能である事や、彼らの協力を得る事によるメリットから、後ろ盾になる事になった。

 

 結果として、オークション組織と「当人の了承をきちんと得る」「断られても強引な手段を取らない」「適正価格できちんと買い取る」などの条件を結び、なんとか彼らは一方的に狩られる側になる事はなくなった。私が死んだ後の話だが、そのオークション組織のトップは正真正銘の王冠(グランド)に選ばれた魔術師にぎゃふんと言わされて、最近だいぶ丸くなったとか。なんでも殺した後死体をミンチにしていたら後ろからそいつに襲われたとか言う、わけの分からない不死を体現している、忌み名をいう奴は恋人でも殺す事をモットーとする、実に魔術師らしい頭のねじの外れた女だとか。

 

 そして、まずイルマの来歴を説明するには、そのオークション組織と彼らが競売するものについて説明するべきだろう。

 

 オークション組織の名は、魔眼蒐集列車(レール・ツェッペリン)。駅から出発し霊脈に沿って駆動する巨大な蒸気機関車。ちなみに内部は異界化しているのでだいぶ広くなっているなど、いろんな意味で凄まじい代物だ。

 

 彼らは魔眼という特殊な目の摘出や移植技術を事実上独占。それらを最大限に発揮して、オークションを定期的に開いている。

 

 その過程で殺し合いが起きる事もあるが、まあこれに関しては魔術世界の業だから深入りは厳禁だ。それが分かっていてもなお、常連客はもちろん売却希望者は招待状をもらって参加するし、顧客拡大を目論んでいるのかフリー枠が用意されて争奪戦も開かれているしな。

 

 という事で、オークション組織についてはこれだけあれば十分だから次に行く。まあ少し触れ直す事もあるが、それについてはまず知識が必要だ。

 

 次は魔眼について説明しよう

 

 ……サイラオーグ殿のリーバン・クロセル殿や、リアス嬢のギャスパー・ヴラディが持っている神器のようなものが、魔術世界にも存在する。

 

 外界からの情報を得る、受動的な感覚器官が眼球というものだ。しかし、極稀にだが逆に外界に働きかける事ができる、魔眼と呼ぶ能力を持つ者が出てくるのだ。

 

 この魔眼、魔術師・一般人関係なくランダムで発現するタイプである天然物と、魔術師が意図的に作り替える事で発現する人工物が存在するが、オークション組織が競売するのは当然の如く前者中心だ。

 

 これは単純に性能の差だな。

 

 魔眼というのは簡単に言えば、見るという工程だけで、視界にいるものに問答無用で魔術をかけるものだ。相手と目が合うのが一番だが、大抵の場合、視界に収めてさえしまえば効果を発揮する。

 

 隠匿性と手軽さゆえに、保有する者は大抵一流。そして一流の魔術師なら人工的に魔眼を作る事ができるのはさっきも説明したが、レーマン家などの大家でなければオークションで売買されるレベルのものは作れん。それも、眼球サイズの宝石を加工して作る加工魔眼として―すなわち自分の眼球そのものは取り換える必要がある―というのが大半だ。

 

 そしてそれ以上の魔眼は完膚なきまでに天然もの。大家の全力レベルで漸く作れるレベルの、強大な能力を発揮する魔眼はノウブルカラーと呼ばれ、希少特殊能力としてカテゴライズされる。

 

 先ほどの列車のフリー枠が争奪戦になるのはこれが理由だ。もちろん参加に金がかかる上に、オークションなので更に大金を叩く必要が。しかしあの世界では、唯一金さえあれば確実に強力な魔眼を手にする機会だ。力を欲する者達が集まってくるわけだな。中には魔眼を使いこなせなかったりする者もいて、そういう者は金を貰っても手放したいからこれまたやってくる。まあ、最近になるまでは強引に摘出にやってくる事もあったらしく、件の家系はそれゆえに鎖国の壁を盾にしたのだが。

 

 で、その魔眼というのは強力なものは本当に強力なので、オークションでも莫大な金が動く。

 

 ノウブルカラークラスは強力だから当然といえば当然だ。「束縛」「強制」「契約」「炎焼」「幻覚」など、他者の運命そのものに介入する特権ともいえるものまであり、これを魔術で再現しようとしたら、魔術発動まで時間がかかるが、それなりの高級な道具を必要とする。

 

 故にノウブルカラークラスの魔眼保有者は、一芸特化型とはいえ凄まじい力の持ち主だ。さきほども言ったが眼球そのものだから携帯性も隠匿性も上、しかも一流の魔術師でも発動時間がかかる物を、見るという一工程だけで発現できるからな。

 

 ……そして、さっきも言ったが当時は強引に押し売りならぬ押し買い強盗までするオークション組織から逃げる為、鎖国確定の日本に逃げ込み、最終的にアーチホール家が仲介に入って最低限の安全を確保し、しかし組織が強引な手段を避ける頃にはアーチホール家と縁を切る事になった、魔術師および魔術使いを多く保有する、魔眼に深く関わる魔術師家系。

 

 性は道間(どうま)。イルマ・グラシャラボラスは道間日美子(ひみこ)という、本家の家に引き取られた、魔術の素養を持った孤児の少女だった。

 




一方そのころ、イッセーは子供たちと一緒におっぱいおっぱい言いながらお遊戯してます。




























………自分で書いててなんだけど、シュールだなぁ。

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