ハイスクールD×D/Apocrypha 魔術師達の狂騒曲 作:グレン×グレン
みんな、m9(^Д^)プギャーの準備だ!!
ディオドラの眷属達は、すぐに攻撃の狙いをイルマ達に変更する。
判断としては見当違いではない。
下手に此処でリアス達を追撃すれば、リアス達は迎撃に移るほかない。しかし、イルマ達は遠慮なくこちらに攻撃してくる事に変わりはない。
挟撃の形になれば流石に不利だ。
蛇の力で全員少なくとも中級には至っている。上の者は上級の中には至っているだろう。元から強大なディオドラは、最上級にすら届いているかもしれない。
だから、真っ向から激突すればこちらが有利だと確信している。しかしそれは真っ向勝負の形の場合だ。
敵も上級クラスはいるのだ。挟み撃ちの状態になればこちらも流石に不利になる。
そも、自分達に蛇を統合した者のコネクションで、ディオドラのいる場所は細工が施されている。
それが発動した状況下なら圧倒的にディオドラが有利。更に最上級にも届くかもしれないほど強化されたディオドラなら、リアス・グレモリーとイルマ・グラシャラボラスを片手間で殺せるだろう。
なら、自分達は余計な被害を出さずに確実に敵を葬るのみだった。
まずはイルマたちを皆殺しにしてから、そのうえでリアス達をディオドラと挟撃する。これが一番確実だろう。
そう思い、そして動くが―
「うっへ~。かわいこちゃんとのマジ勝負とかなんかきっついぜ~」
「イルマ様~。これボーナスあとでほしいんですけどー」
「調教ゲームはフィクションだからいいんだよ。なんでリアルでやるかねぇ。快楽堕ちの女の子を倒すとか、心痛むぜ」
などといい加減な対応をする兵士達を、押し切る事ができない。
同時にアイネスが操る|神霊髄液《ウォールメン・ハイドログラム・アドバンスド》による攻撃が連携を妨害するのもあるが、兵士達一人ひとりの能力が高い。
これまた中級悪魔クラスの戦闘能力を普通に発揮している。駒価値一の下級悪魔の戦闘能力ではない。というか、蛇を使っているとしか思えない。
そして、その武器が厄介だ。
敵の
しかも、此方の渾身の一撃で歪んでも、一瞬で修復する。そういう能力を持っているらしい。
その所為で、向こうは強引な防御を可能としている。この武器、打ち合いによって破壊されることを避ける事に重点を置いて作られているらしい。攻撃用の武器というよりは、迎撃用の防具といった設計思想のようだ。
先ほどイルマが使った、光の刃を作ったナックルダスターも同様の物だろう。おそらく、
それだけの力によって拮抗状態になっている中、イルマは静かに目を伏せて、何かを呟いていた。
「何のつもりか知りませんが! 大口を叩いておいて応援程度ですか!」
あれだけ此方の神経を逆なでするような事を言っておきながら、結局自分が動いていない。
まったく舐めてくれるものだ。
数の差もあって此方に十分勝機はある。
謎の液体金属は速いが、しかし動きそのものは意外と単調だ。これなら時間をかければ回避も楽になるだろう。
兵士達は厄介だが、しかし防戦に徹すればこちらの兵士たちでも一対一で抑え込める。
そう確信し、そして連携の仕方を変えようとし―
「―世界卵、内外反転」
―イルマのその言葉が、やけにはっきりと聞こえた。
「……後十秒。それでこちらの勝ちだ」
そしてアイネスの言葉に、敵兵士達の動きに気合が入り直される。
まずい。これは、マズイ。
ディオドラの眷属達の誰もが理解し、何としてでもイルマを止めようと動き出す。
だが、全てはもう遅い。
「心象風景、浸食開始」
その言葉と共に、世界は塗り替わる。
「―――
その後、わずか一分で決着はついた。
そしてその頃、イッセー達はディオドラのいる神殿最深部へと突入する。
そこには優雅に椅子に座っているディオドラと、磔にされているアーシアの姿があった。
アーシアを磔にしているのは、磔の時にイメージしやすい十字架ではない。円形の巨大な装置だ。あちこちに宝玉が仕込まれ、怪しげな文字や文様が刻み込まれている。
何かしらの術式装置と思われるが、問題はそこではなかった。
「……イッセー……さん?」
顔を上げたアーシアの、赤く腫れあがった目元こそが問題だ。
明らかに精神的の大きなダメージを受けている。しかし、服装は乱れておらず、「契る」などというディオドラの言葉から想定した最悪の事態は起きていない。
故に、想定できるもう一つの惨劇が答えだろう。
「……お前、アーシアに話したな?」
イッセーの怒気の高さゆえに音量の低い詰問に、ディオドラはにっこりと笑顔を浮かべながら答える。
「ああ、全てね。君達にも彼女の最高の表情を見せてあげたかったよ。教会の女が堕ちる瞬間は何度見ても堪らない。勿論、記録映像にも残してるから後で見るといい」
アーシアのすすり泣く声を聴きながら、ディオドラは饒舌になる。
「でも、まだ君達という希望があるのが難点だ。特に君だよ赤龍帝」
ディオドラは、イッセーに対して嫌悪感を浮かべる。
それは、自分の計画を台無しにされた者が浮かべる表情だった。
「君がアーシアをレイナーレから助けてしまった事が大きな誤算だったよ。あの堕天使がアーシアを殺したその瞬間に、僕が奴を殺してアーシアを眷属悪魔として転生させるのが筋書きだったのに、あのバカが寄りにもよってグレモリーの管轄区で事に及ぶとは思わなかった」
ディオドラの下劣な計画に、誰もが不愉快という三文字を顔に浮かべる。
アーシアがリアスの眷属になった事件の当事者達は、何故ディオドラがすぐにアーシアを取り込みにかからなかったのか気にしている者もいた。
だが理由は単純明快。そして、ゲスの極みだった。
レイナーレの愚かさが、結果的にアーシアを救った形ともいえるだろう。あの女の愚かさに感謝する事になるとはと思いながら、ディオドラを睨みつける。
「流石にリアス・グレモリーの管轄区で強引に動くわけにもいかなかった。しかも君が赤龍帝だったおかげで、レイナーレも返り討ちに遭う始末。おかげでだいぶ計画が遅れたよ」
「黙れ」
心底うんざりとした口調と表情のディオドラに、イッセーは自分でも驚くぐらい低い声を放つ。
元からいけ好かなかったが、ここまでの奴だとは思わなかった。
外道、鬼畜、悪鬼、醜悪。
これらの言葉を堂々と告げても、誰からも文句は言われないだろう。アスタロト本家も、反論の一つもできない筈だ。
何時殴り掛かりに行ってもおかしくないイッセーに、鶴木は手を置いてそれを押しとどめる。
「落ち着け。とりあえず禁手の準備はしとけ」
「せや。それにこいつの破滅は確定しとるから安心せい」
そう続けたリスンが、心底から軽蔑の感情を込めた目で、ディオドラを睨む。
「おい、ディオドラはん? カッコつけとるところ悪いんやけど、あんた人生詰んどるって気づいとるか?」
「へえ? なんでかな?」
首を傾げるディオドラに、リスンは口元を歪める。
「……スメイガさんが保有する諜報工作部隊「歩き巫女」からの連絡や。この戦闘とタイミング合わせて持ち出そうとした、実家の貴重品とかオタクが堕とした女は全員確保したで。今は尋問もかねて、ブルノウ様の領地に保護されとるはずや」
その言葉に、ディオドラはピクリと震えながら表情を険しくする。
それを見て愉悦の感情を浮かべながら、リスンは更に告げた。
「あと、人間界の銀行の隠し口座の類は11箇所ほど抑えさせていただいたで? 金額の総数的に、あんたの個人資産は全部差し押さえやな」
「馬鹿な!? あいつらには相応の金を渡しているはずだぞ!?」
ディオドラは余裕をなくして声を荒げる。
どうやら、それなりの口止め料を払っていたらしい。それが意味をなさなかったというのだから驚くだろう。
リスンはふふんと得意げに笑うと、背を逸らす事で背の高さの差を無視してディオドラを見下した。
「そのおかげで不正しとった銀行職員もまとめて逮捕や。現地の警察は大忙しやけど、ま、仕事増やした詫びとしてブルノウ様がお菓子の詰め合わせでも送るちゅうとったで?」
その言葉を聞いて、ディオドラは怒りの表情を浮かべてブルブルと震える。
「ぼくの全財産をよくも! いったいどれだけしたと思ってるんだ!!」
「安心せいや。没収した財産はブルノウ様が「これまで悪魔が教会に迷惑をかけたお詫び」っちゅうかたちで、金に困っとる教会に寄付する予定や。……大好きなシスターの生活が救われて良かったなぁ?」
そう言い放つを、リスンは勢いよく中指を突き立てる。
「テロ組織に鞍替えしといて、平然と今まで通りの生活送らせるわけないやろ! これで後ろ盾のないあんたは、逃げられたとしても底辺生活や、ざまぁみぃや!!」
その言葉に、ディオドラは、ギリギリと歯を食いしばる。
「ま、あんな怪しい真似したらそりゃ警戒されるわな。詰めが甘いっての」
「これまで悪魔は教会に迷惑かけてきましたものね。筆頭格が裏切ってくれたのなら、その全資産を寄付に回せばイメージ回復ぐらいにはなりますわね」
と、鶴木とカタナが良い事があったと言わんばかりにうんうんと頷いている。
そして、すぐに全員が戦闘態勢をとった。
それを代表して、リアスははっきりと告げる。
「……禍の団にも居場所がなくなったディオドラ・アスタロト! ここで投降するというのなら命だけは助けてあげるわ!!! 最も、命以外は徹底的に叩き潰してあげるけどね!!」
これは断言である。決定事項である。
大事なアーシアを苦しめた者達にかける情けはない。そも、情けをかけてやるような人物では断じてない。
半殺しでは飽き足らない。生きている事が嫌になるぐらいの苦しみを与えてやろう。なに、ここには魔術師が三人もいるのだから、最低限の救命措置はできる。
アーシアに治療をさせる気はない。もっとも、流石のアーシアも治療する気はないだろうが。
しかし、ディオドラは気を取り直すと、肩を怒りで震わせながら、リアス達を睨みつける。
「いいだろう。なら、君達の首を持ち帰る事で足場を固める事から始めないといけないようだね!!」
その言葉と共に、ディオドラは莫大な魔力を形成する。
まず間違いなく蛇の力を受けたそれは、単純威力ならプロの上級悪魔すら超えている。
「この位置ならそこの化け物の砲撃もできない! つまり撃ち合いなら僕の勝ちだぁああああああああ!!!」
ディオドラのその判断は正しい。
まともに撃ち合いになれば、カタナの
上級悪魔の中では高い部類ではある今のディオドラごときで、超越者クラスのあの砲撃と勝負するなど、身の程知らずを通り越して精神異常者である。自殺志願者でもまだましな死に方を選ぶだろう。
だが、位置取りがアーシアに近い事がそれを防ぐ。
そして、それならまともな撃ち合いで自分が負ける道理などない。
その確信と共にディオドラは砲撃を叩き込み―
「……こんなもんかよ」
―その瞬間、
その表情は心底からの呆れ。
腐っても上級悪魔の血統。オーフィスの蛇で強化された。そして、倒すべき怨敵と思っている。
その、最大火力の砲撃と向き合って、イッセーははっきり言った。
「お前、弱すぎだろ」
そして、真正面から防ぎ切った。
流石に無傷ではない。多少、装甲が欠けていたりしている。
だが、それだけだった。
「……………は?」
唖然とするディオドラにも聞こえるように、ドライグが至極平然と言う口調で告げる。
『何を驚いている? シトリーとのレーティングゲームを基準にしてるんだろうが、あの時は本領なんて発揮できるルールじゃなかったから参考にならん。ついでに言えば、相棒もだいぶ慣れてきたから、装甲も馬力も火力も全て数割増しといったところだ。単純な性能だけなら最上級悪魔一歩手前といったところだな』
その言葉に、ディオドラは唖然という表情をこの上なく体現した顔になった。
一対一でも勝ち目が薄い事に気づいたのだろう。少なくとも、性能においては大幅な開きが出ている事は理解できているはずだ。
「嘘だ。僕は、アスタロトの次期当主だぞ? 魔王ベルゼブブの血族だぞ? オーフィスの蛇だって使ったんだぞ?」
信じたくないと言わんばかりに呟くディオドラに、カタナは侮蔑の視線を向けた。
「愚かな。それを生かさなかったあなたがなにをおっしゃいますか」
そして、三光叫喚の砲口を突き付けながら断言する。
「それを磨き上げ、成果を見せる事こそが貴族の責務! 一切の努力もせずドーピングだけで勝てるなどと息巻いた時点で、貴方の負けは決まってますわ!!」
……この世で最も成果を上げれる可能性がある傾向とは、すなわち勤勉な天才である。
才能が全くない方面で、如何に死に物狂いの努力を積んでも大成する可能性は低い。
才能が豊富であろうと、それを努力で磨かななければ真の意味で光り輝くことはほぼない。
才能と努力、その双方を重ね合わせる事ができる者が、最も成長する可能性があるのは当然の事だ。
歴代最弱ではあれど赤龍帝である兵藤一誠という男は、短期間とはいえ死に物狂いの努力をしてきた。そして、ルーキー悪魔とは思えないほどの質の悪い実戦を経験した。
少なくとも、そんな彼はディオドラ・アスタロトという悪魔と比べて、戦闘という点においてなら劣っている点より勝っている点の方が圧倒的に多い。これはそれだけの話である。
それを認める事ができないのは、ディオドラ・アスタロトただ一人。
それ以外の全員が、ディオドラを叩き潰すべく敵意を向けて構えをとった。
実は固有結界使いだったイルマさん。ちなみに、今回で流れた詠唱は本作品での固有結界使いの最終詠唱として共通のものにしたいところです。ほら、Light作品とかの能力詠唱で「創造」とか「超新星」とか技名発動前に告げるのと同じ感じで。特に現在決定している二人は詠唱が共通していたほうが都合がいいのでなおさらです。
たぶんわざわざ説明することはないのでここで書いておきますと、道間家前当主が日美子を標本にしようとしたのはこれが原因。Fate元祖主人公の士郎が下手すると封印指定されかねないといった話があったはずなので、そこに由来します。あとイルマがアベレージ・ワンなのは、士郎の属性が「剣」なのとほぼ同じ理由です。
そしてディオドラ、すべての真相を知るの巻。ダメ押しで蛇ブーストによる最大火力があっさり敵主力に防がれて詰んでます。
まあ、これで終わると思ったら大間違いです。まだちょっとだけディオドラは悪あがきするんじゃよ。
それにほら、ディオドラ「は」強化しないって言いましたから……ね?
イルマの固有結界、どんな感じの能力かなクイズ! 注:似たようなのもあります
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無限の剣製
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王の軍勢
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死森の薔薇騎士
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ネガフィールド
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虚栄の空中庭園