ハイスクールD×D/Apocrypha 魔術師達の狂騒曲   作:グレン

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ディオドラ・アスタロトの逆襲が始まる。









そして、魔術師(メイガス)を怒らせたディオドラの(ある意味)終焉も始まる……。







しかしアンケート、非モテ能力の比率が意外とでかいな。ネタで入れたんだけど、Lightネタを詠唱に取り入れたのが原因か……?


16 ディオドラの逆襲   その結果:男衆「もうやめて! ディオドラのライフは0よ!?」 アイネス「○ジェネかけてるからあと五分」

 完膚なきまでに、ディオドラは不利だった。

 

 なにせ、自身が圧倒的優位に立ち回れるという確信を与えていた力は、敵最強戦力であろう赤龍帝に対してかすり傷しか与えられてない。

 

 そして、今眷属達はイルマ・グラシャラボラス他数名が足止めしている……どころか、撃破された事が分かった。

 

 この神殿に仕掛けておいた細工のおかげで分かった事だ。幸い、リアス・グレモリー達は気づいていないし、イルマ・グラシャラボラス達も消耗したのか動きは見られない。

 

 だが、眷属の助けは期待できない。

 

 元々リアス達を蹂躙する予定だった旧魔王派の悪魔達は、現在スメイガ・バアル達他の若手悪魔眷属に追い込まれている。

 

 というより、スメイガの女王と騎士、そしてサイラオーグが無双状態で、増援要請が送られてきた。

 

 どう考えても上位神滅具(ロンギヌス)である魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)を使っているとしか思えない、スメイガの女王(クイーン)である陸奥鳩羽。魔獣創造の持ち主は禍の団にいるので、あり得なさ過ぎて何が何だか分からない。

 

 また、行方不明の獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)を使用して、全身鎧型の禁手となったサイラオーグ・バアル。これまた初耳である、この手の情報共有を行うという、三大勢力の同盟はどこに行ったのだ。

 

 そしてある意味一番酷いのがスメイガの騎士(ナイト)だ。気づいたら旧魔王派の精鋭の首が切り落とされており、更に砲撃で雑兵をかき消しているとか。神滅具抜きで神滅具級の成果を上げるとか反則である。

 

 ゆえに、旧魔王派の助けは期待できない。

 

 そして、神殿の外側では主神が暴れている。

 

 不幸中の幸いだが、此方の足止めは成功している。というより、想定外の増援によってむしろ押され始めていた。

 

 だが、これも当分かかるだろう。

 

 最後に。目の前の敵は兵藤一誠だけではない。

 

 リアス・グレモリー達は一対一なら敵ではないと思う。だが、最大火力という一点において超越者級のカタナがいる以上、下手に動けば消滅が確定する。しかし動かなければ赤龍帝が殴りに来る。

 

 状況はディオドラに圧倒的に不利だ。

 

 ゆえに―

 

「まさか、よく分からない最終手段に頼る羽目になるとはね!!」

 

 その瞬間、ディオドラは魔法陣を展開してある機能を具現化する。

 

 正直半信半疑だった。それが本当なら圧倒的に有利になるが、その必要もないと思っていた。

 

 だが、状況は明らかに自分に不利。それも、絶望的だ。

 

 よしんば逃げても、手土産をすべて持ち出しに失敗した以上居場所がない。手柄を上げる必要はある。

 

 だから、ディオドラはそれに賭けた。

 

 そして、それは絶大すぎる効果を発揮した。

 

『『『『『『『『『~~~~~~っ!?』』』』』』』』』

 

 声にならない悲鳴を上げ、目の前の敵のほぼ全員が悶絶する。

 

 一瞬何が起こったのか分からない。だが、好機である事だけは理解できた。

 

 ゆえに、遠慮なく魔力攻撃を叩き込もうとし―

 

「貴様、何をした!!」

 

 ただ一人、平然としているゼノヴィアが割って入ってデュランダルを振るう。

 

 それをディオドラは回避して、すぐに魔力砲撃を放つ。

 

 デュランダルの一振りでそれは薙ぎ払われるが、しかしディオドラは距離を取る事に成功する。

 

 そして同時に、悶絶しているイッセーに向けて砲撃を叩き込んだ。

 

「イッセー!? 貴様、卑怯だぞ!!」

 

「卑怯? 動かない的を狙う事の何が問題なのかな?」

 

 奇跡が起きたとすらディオドラは思っていた。

 

 聖剣デュランダルは伝説中の伝説だ。単純な攻撃力なら神滅具の禁手にも匹敵するだろう。

 

 だが、ゼノヴィアだけならどうとでもなる。少なくとも、赤龍帝よりは遥かに容易い相手だ。

 

 ゆえに、ディオドラはゼノヴィアを倒す事に全神経を集中させる。

 

 そもそも、何故ゼノヴィアにこの切り札が効いていないのかを理解しないまま………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、鶴木達は悶絶していた。

 

 理由は単純極まりない。

 

 悪魔は非常に弱点の多い存在である。

 

 こと、聖書の神のシステムによって聖書の文面を読んだりそらんじたりするだけで酷い頭痛を味わう事になる。

 

 そして、今彼らの脳裏には一つの歌の合唱が響いていた。

 

 端的に言おう。讃美歌である。

 

 普通に聞いても激痛が走るのだが、何故か激痛のレベルが桁違いに上昇している。このレベルは、かつてイッセーがライザーを倒す為に神滅具の力で強化した十字架に匹敵するだろう。

 

 鍛え上げられた若手の精鋭である鶴木達だからこそ生存しているようなものだ。下手な下級悪魔なら一瞬で死んでいても不思議ではない。

 

 そして、ゼノヴィアだけがまともに動けている事もそれで納得できる。

 

 彼女はイッセーにぞっこんだが、それはあるきっかけがあったからだ。

 

 駒王会談が終わった時、イッセーはミカエルに直談判した。

 

 それは、信仰心が強かったがゆえに時折悪魔になっても祈ってしまうアーシアとゼノヴィアを気遣った直談判だ。

 

 それによって、二人は聖書の神のシステムに対して耐性ができている。特例によるスルーともいえるだろう。

 

 それが結果として、讃美歌の影響すら防いでいるのだ。

 

 そして悶絶する中、かろうじて鶴木は魔術による痛覚干渉で状況確認ができるだけの冷静さを取り戻した。

 

 全力戦闘など不可能だが、それでも全力を出せば一回ぐらいは支援できる。そういうレベルだった。

 

「……鶴木! う……動けるか?」

 

「なん、とか……っ」

 

 同様の手段を行使したリスンと共に、反撃の機会を窺い始める。

 

 まともな戦力はゼノヴィアのみ。それも、ディオドラが接近戦闘を避けている事から不利である。

 

 魔術によって感覚制御を行っている鶴木とリスンも、ろくに動ける状態ではない。一回不意打ちを行うのが精いっぱいだろうし、失敗すれば瞬時に片手間で始末されるほどの状態だ。

 

 ちなみにカタナも魔術師だが、此方は最初から計算に入れてない。彼女の魔術回路のへっぽこ具合は尋常ではなく、この悶絶状態で痛覚干渉魔術を行使するのは不可能だ。

 

 そして、痛覚干渉を行う事ができないリアス・グレモリー眷属では戦う事もできない。

 

「くそったれ……っ。カタナを悶絶させるとか許せねえ……っ」

 

「いや……、俺達……の、心配も……して?」

 

「すまんなぁ。鶴木、イルマ姐さんとカタナのこと大好きでなぁ」

 

 鶴木の言葉に対する文句に、リスンは代わりに謝ったその時だった。

 

 二人は同時に気が付いた。

 

 この悶絶激痛状態で、なんでそんな余裕が残っているやつがいる?

 

 視線を逸らしてみれば、イッセーは悶絶しながらも立ち上がろうとしていた。

 

「……なんで、無事なん?」

 

「無事なわけねえよ。……死んだ時と同じぐらい痛いって……」

 

 そう言いながらも、イッセーは鶴木やリスンよりも立ち上がっている。

 

 動くのも困難だろう。だが、最低でも数発は殴り掛かれる。

 

 その精神力に畏怖すらいだきながら、鶴木は妙案を思いついた。

 

 この状況下をひっくり返すには、ディオドラの戦闘不能が必要不可欠。

 

 そして、ゼノヴィアだけではそれは困難。

 

 自分たちが介入するにしても、一発だけだ。それを外せば、自分達は足手まといにしかならない。

 

「……リスン、お前、()は使えるか?」

 

 魔術という道理を知らぬ者では分からぬ言葉。

 

 だが、それだけでリスンは全てを察した。

 

「安心せい。睨み付けるだけなら余裕や。……イッセー!」

 

「なんだよ……っ。ぶっちゃけ、痛いのにかわりはないんだぜ……?」

 

 だが、イッセーもまたにやりと笑う。

 

 逆転の秘策を思いついた者がいる。それを理解し、自分のすべてを託す覚悟を決めた者の目だ。

 

 そして、自分たちの、アーシアの、仲間たちの命を懸けた大博打が始まる。

 

 その最初の言葉を、鶴木は静かに唱えた。

 

抜刀術式(ブレイドコード)透明(トランスペアレンシー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪龍覚醒(アウェイクン)!!」

 

 その声に、ディオドラとゼノヴィアは同時に視線を向けた。

 

 リスン・ブネが震えながらも立ち上がり、そしてディオドラを睨み付けている。

 

 とても戦闘が可能な状態ではないにもかかわらず、その()()に輝く瞳がディオドラを見据える。

 

「ディオドラ! あんたはここでぶちのめしたるわ!!」

 

「やめろリスン! 今のオマエでは―」

 

 無理だと、ゼノヴィアは理解する。

 

 当然だ。見ればわかるぐらいリスンは無理をしている。

 

 体中震えており、ひざが笑っている。額には脂汗すら浮かんでいる。

 

 これでは戦闘などできはしない。それが一目でわかる。

 

 これは陽動だ。ディオドラの注意を自分に引き付けるための、命がけの陽動だ。

 

 しかし、ディオドラはゼノヴィアへの警戒を崩さなかった。

 

 そして同時に、魔力攻撃の準備をきちんと向けながら、はっきりという。

 

「ふふふ。そんな様子でどうやって―」

 

 その瞬間、ディオドラの肩に赤い鎧に包まれた右手がのせられる。

 

 そして、鶴木を背中に背負ったイッセーが、姿を現した。

 

「―うちやないけどな?」

 

 してやったり。その表情を、心の底からリスンは浮かべる。

 

 そして、ディオドラはすぐに振り返ろうとし、すべては遅い。

 

抜刀術式(ブレイドコード)祝福(ブレッシング)!!」

 

 鶴木がそういうと同時に、イッセーの左腕が光り輝く。

 

 その絶大なオーラは、左腕に封じられている一つの聖剣。

 

 龍殺しの聖剣、アスカロン。

 

 駒王会談の前に、天使長ミカエルがゲン担ぎも兼ねたイッセーの強化として授けた、伝説の聖剣である。

 

 それを前に、ディオドラはガードの構えをとる。

 

 イッセーが動ている事は驚きだが、明らかに絶不調だ。本当の威力は出せない。

 

 そして、如何に伝説の聖剣とは言えアスカロンはデュランダルに比べれば威力で大幅に劣る。

 

 ガードさえ間に合えば、確実に防げる。如何に悪魔にとって聖剣が天敵とはいえ、限度はある。

 

 そう、その判断は間違っていなかった。

 

 今のディオドラが、リスンに睨まれている。その真の意味を理解してないのなら当然の判断だ。

 

 故にこそ、この一撃こそが文字通りの最後の切り札。

 

 一撃で、ディオドラの右腕は粉砕。その勢いのまま、ディオドラは壁に叩き付けられた。

 

「……………っ!?」

 

 悲鳴すら上げる事ができず、ディオドラは悶絶する。

 

 全身が焼けるように痛い。それも、聖剣の痛みだけとはとても思えない。

 

 そんな激痛に悶えるディオドラに、ゼノヴィアがぽかんとなってしまったのも無理はない。

 

 いくらイッセーがディオドラを圧倒している性能があるとしてもだ。いくらアスカロンが、伝説の聖剣であるとしてもだ。

 

 この状況下で、その真の力を発揮する事はできない。アスカロンの全力は、相手が龍でなければ発動できない。

 

 その理解不能に思考が停止したゼノヴィアに、イッセーは崩れ落ちながらもその手を掴む。

 

「―っ」

 

「ゼノヴィア……。俺達は、これ以上はきつい」

 

「リスンが、あいつを睨んでるうちに決めろ! 説明してる、余裕もない……っ」

 

 倒れこんだイッセーも鶴木も、余裕がないのは明らかだ。

 

 しかし、全力をもってここまで頑張ってくれた。

 

 このチャンスこそ、千載一遇。

 

 それを理解したゼノヴィアは、両手に聖剣を握りしめる。

 

 右手には、愛用の聖剣であるデュランダル。

 

 左手には、イッセーから託されたアスカロン。

 

 それを握りしめ、ゼノヴィアは起き上がろうとするディオドラに向き直る。

 

「私は、アーシアに酷い事を言った事がある」

 

 そう、それは初めて会った時の事。

 

 聖書の神の死を知らず、和平を望むミカエル達の意思も知らず、神の名の元に悪魔を皆殺しにする事こそ正しいと思っていた時の事。

 

 悪魔を癒し、そのうえ悪魔に成り下がった魔女。そのアーシアにある信仰心ゆえに、善意で彼女を解釈しようとした事がある。

 

「だが、アーシアは私を友だと思ってくれている。それがどれだけ嬉しかったか、貴様には分かるまい」

 

 心の底から大事だと、そう断言できる友がいる。

 

 信仰というよりどころを失った自分にとって、それがどれだけの宝だったか、目の前の屑には分からないだろう。

 

「がぁああああ!? 痛い痛い痛い痛いぃいいいいいいい!?」

 

 実際、激痛に悶えて聞いていないディオドラに言っているわけではない。

 

 それでも、ただ言いたかった。

 

「その友を助ける為ならば、命の一つぐらいかけてやろう。そして、友を苦しめた貴様だけは断じて許さん!!」

 

 故に、邪悪なるもの一切よ。この聖罰を喰らうがいい。

 

「吠えろ、デュランダル! 輝け、アスカロン!!」

 

 相乗効果で膨れ上がる聖なるオーラは、イッセーのドラゴンショットの全力砲撃にも届くだろう。

 

 その威力、最上級天使クラス。

 

「私の友を苦しめた男を叩きのめす力を! そして、私の友を助け出す為の力を、私に与えてくれぇええええええええ!!!!!」

 

 そして、ディオドラがようやく立ち上がるそのタイミングをもって―

 

「消し飛べ、腐れ外道がぁあああああああああああ!!」

 

 その聖なる斬撃は、ディオドラを包み込んで神殿を縦に両断した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「索敵、解呪」

 

 魔術詠唱が響く。

 

 そして失神しかけたその瞬間、イッセーの脳内に響く讃美歌が消え失せた。

 

 激痛が消えた事で、一気に体が軽く感じる。

 

 そして、起き上がろうとすると、手が差し出された。

 

「遅れてごめんね。イルマさん達が来たからにはもう大丈夫じゃん」

 

「イルマさん!」

 

 その笑顔をに元気を与えられながら、イッセーはその手を掴んだ。

 

 そしてイルマはイッセーを起き上がらせると、同じく鶴木にも手を伸ばす。

 

 それを掴んで立ち上がりながら、鶴木は脂汗を吹きながら微笑んだ。

 

「助かったぜ、イルマ姉さん。っていうか、あれなんだったんだろうな」

 

「簡単な魔術工房化と言ったところだろうな」

 

 鶴木に答えるのは、アイネスだった。

 

 |神霊髄液《ウォールメン・ハイドログラム・アドバンスド》を神殿中に伸ばして張り巡らせながら、アイネスはそう言いながら辺りを見渡す。

 

「……専門用語を飛ばして効果だけ説明すると、指定した対象以外の脳内に、念話の類で賛美歌を聞かせるになっているようだ。それも、魔術師(メイガス)の術式体系の一種と併用することで出力が増幅するように設計されているな」

 

 そう説明するアイネスは、感心と呆れと懸念を混ぜ合わせた息を吐いた。

 

「やはり、クロックワークスに付かない魔術師(メイガス)も出たか。それも禍の団(カオス・ブリゲート)に就くとは質の悪い事態だな」

 

 イッセーは理解できなかったが、どうやら魔術師の技術らしい。

 

 その所為で全滅寸前まで追い詰められたようだ。恐るべし魔術師と、戦慄する。

 

 そしてそんな時、ガバッという音が聞こえてきた。

 

 激痛の影響でふらつきながら起き上がるリアス達の中、イルマはリスンを強く抱きしめていた。

 

「……無事で良かった………っ!」

 

「い、イルマ姉さん? ちょっと痛いから離してくれへんか?」

 

 戸惑うリスンに、イルマは苦笑しながらその要望に応える。

 

 そして、起き上がってきたカタナに半目を向ける。

 

「っていうかカタナはへっぽこすぎじゃん。流石に痛覚干渉ぐらい、即興でやってほしかったじゃん?」

 

「へ、へっぽこで申し訳ありませんわ……っ」

 

 まだ激痛でふらついているカタナを、イルマはそっと手を伸ばして痛みを和らげるように頭をなでる。

 

 その眼には、心からの労わりが籠っていた。

 

「でも、無事で良かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――全部、終わったと思ってるのか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、ディオドラの声が響く。

 

 振り返った全員の視界に、ボロボロのディオドラの姿が映る。

 

 目を血走らせたディオドラは、アーシアに向けて魔力の塊を向けていた。

 

 全身の骨はいくつも折れている。体中ボロボロで、骨すら見えている個所がある。何より、明らかに冷静さを失っている。

 

 そんな状態で、ディオドラは唾をまき散らしながら吠えた。

 

「全員消えろぉおおおおおお! ぼ、僕から離れなければ、アーシアを殺してやる!!」

 

「て……めぇ……っ」

 

 その狼狽ぶりと醜悪ぶりに、イッセーが切れかけるが、しかしすぐには動けない。

 

 大半の者達は讃美歌の影響から回復しきっていない。動けたゼノヴィアも全力開放でバテ切っている。そして、アイネスやイルマも疲労の色が濃い。

 

 ついでに言うと、何故かイルマの兵士達は誰もいなかった。

 

 この状況下では、ディオドラを無力化する前にアーシアが殺される。これではどうしようもない。

 

 そんな歯噛みする状況の中、しかしイルマは一歩前に出た。

 

 それに対して、ディオドラは魔力の出力を増幅させる。

 

「来るなって言ってるだろぉおおおおお! 本当に殺してやるぞぉおおおおお!!」

 

 恐慌状態のディオドラに、イルマはゆっくりを態度を示す。

 

 ゆっくりと、ゆっくりと右腕を前に出し、人差し指を動かす。

 

「そんな三流通り越して三十流の脅しにビビって魔術師(メイガス)と殺しあえるわけないじゃん。……なめてんの? それとも精神障害? あ、シスターフェチって病気こじらせてたね」

 

 人差し指を突き付けて。絶対零度の最終通告を叩き付けた。

 

「やめれば許してやる。だけどアーシアちゃんにかすり傷でも追加した瞬間に、あんたの命を消し飛ばす」

 

 平然と、平坦に、平静の声で告げる。

 

 ディオドラの破れかぶれの脅しとは違う。

 

 正真正銘本気の殺意を込めた、全力の警告。

 

 その宣言に、未だ意識が朦朧としているリアスは、アイネスが言った事を思い出す。

 

 彼女はかつて、道間日美子と呼ばれていた時に、自分より才能のある魔術師や魔術使い、そして彼らの私兵を皆殺しにして、幼馴染と幼子(おさなご)二人を、自分の命と引き換えに守り切った。

 

 踏んだ場数が圧倒的に違う。ディオドラの完全な状況を考慮していない、そしてリアス達は知らないがこの作戦の前提を崩壊させる愚か極まりないその場しのぎで破れかぶれの脅しは、イルマには一切通用しなかった。

 

「や、や、やれないとで思ってるのか!? なら、まず指か―」

 

 そして、ディオドラが動こうとしたその瞬間―

 

「まあ、もう終わってるけど」

 

 そのイルマの言葉と同時に、ディオドラは痙攣した。

 

 とっさに胸を手で掴んでいる辺り、まるで心臓発作でも起こしたかのような状態だ。

 

 そして、この状況下でそれは致命的すぎる隙だった。

 

「包み込め、我が血潮」

 

 アイネスがそう告げるとともに、神霊髄液がディオドラを包み込む。

 

 そして動きを完全に封じ込められたディオドラに近づきながら、イルマは指先を振る。

 

「ガンドっていう、フィンランド発祥の魔術って知ってる? 人差し指で突きつけたらいけませんって話の理由の一つ。一工程(シングルアクション)でできるから、結構便利なんだよねぇ」

 

 そう言いながら、イルマはナイフを一本取り出し―

 

「―壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 

 ディオドラに叩き付けて、爆発させた。

 

 その理屈は分からない。だが、そんな事は問題ではない。

 

 爆発した箇所は、ディオドラの股間部分。男の絶対的急所があるところだ。それも、半分ぐらい刺さってから爆発している。結論を言えば、内側から竿が吹き飛んだだろう。

 

 イッセー、鶴木、祐斗、ギャスパーが顔を真っ青にして絶句する。そして、ディオドラに対する殺意や敵意の類を、一瞬とはいえ完全に忘れ去った。

 

 そしてそれを意に介さず、イルマはアイネスに告げた。

 

「アイネス。あとお願い」

 

「「「「更にとどめ!?」」」」

 

 男衆が悲鳴を上げるが、アイネスは半目を向けてきた。

 

「人をなんだと思っている? ちゃんと治療をしてやるだけだ」

 

 そう言いながら、アイネスはすぐに術式を操作する。

 

「死なれても困るから治癒魔術はかけるさ。それに、東洋に古くから伝わる治療方法も併用する」

 

「………具体的にどんな?」

 

 後半に痛烈な嫌な予感を覚えて、付き合いの長さから鶴木が代表して質問する。

 

 それは、東洋の治療方法として中々有名なもの。

 

 ツボを刺激する治療方法。その中でも、器物を利用する方法。

 

 そう、それは―

 

「―――鍼治療だ」

 

 ―その言葉と同時に、ディオドラの全身から、形状変化で形成された針が突き出た。

 

 しかも、ジュージュー音が鳴っている。

 

「二百度ぐらいに熱しておいた。これで温灸としての効果も期待できるだろう。治癒魔術で火傷はすぐに治るから、より効果的だな」

 

 そう、すがすがしさすら感じさせる表情で、アイネスは告げた。

 

 そのままイルマに視線を向けると、何かに期待する表情を浮かべる。

 

 そしてイルマも、にっこりと微笑むと親指を突き立てた。

 

「100点満点! これでディオドラも生きたまま確保できるし、伯父様から褒められるね!」

 

「ああ。良い事をすると気持ちがいいな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いや、そこまでするならいっそのこと殺してやれよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大半の者達の心が一つになった。

 




 ディオドラは強化しないとは言った。

 だが、ディオドラの陣地を強化しないとは言ってない(ドヤァ

 あ、待って待って石投げないで
 
 簡単に説明すると、音楽魔術を併用した念話を発動する魔術工房化していたのがあの部屋です。結果として音楽魔術との併用で効果が大幅増大している讃美歌をダイレクトに聞かされたことで味方の大半が悶絶しました。ジャイアンリサイタル(テレパス)とでも思っていただければ。









 まあ、結局負けましたけど。

 蛇パワーでゼノヴィアだけなら勝算あったのですが、イッセーの根性とイルマ眷属の支援(へっぽこなカタナを除く)の連係プレーがクリティカルヒット。ゼノヴィアの全力攻撃を喰らって、ぎりぎりで生き残ったディオドラもとい蛇の力はすごかった。ただ相手が悪かった……。

 個人的にオリ主勢で原作勢食うのは好きじゃないし、これがホーリー編での主人公側のラストバトルなのでね。それなりに頑張りました。小物極まりないディオドラ相手に苦戦させる方法はいろいろ考えないとね。毎回ディオドラ魔改造ってのも味気ないし。










 そしてよせばいいのに逃亡も投降もしないで悪あがきしたディオドラは(男として)完全死亡。世界でも類を見ないダイナミック去勢手術を受けました。

 やけくそ状態で作戦の根幹まで投げ捨てた馬鹿の脅迫に対するイルマの脅し返しは、ジョジョ五期のブチャラティを参考にしました。まあ、魔術師なんてマフィアとサイコパスとマッドサイエンティストを足して割ったような人種だし……ね? そんなの何人もぶち殺した人がこんなしょぼい脅しにビビってられません。

 あと、ガンドを物理攻撃じゃなく呪いとして有効活用したのが個人的にひと手間です。原作シリーズでは大抵物理攻撃に使ってますが、こういう運用方法もあるということです。

 そして、スティレット投擲噴進対装甲貫入弾(これわかる人いるのか?)……もとい壊れた幻想によるダイナミック爆発去勢からの鍼治療による応急処置。お灸も参考にした東洋医療の極致を併用した魔術治療なので、絶対に死なせないぜ!!

 ……まあ、これにより男衆のディオドラに対する同情心が思わずMAXになりかけましたがwww









 ちなみにリスンや鶴木が使った能力や、別方面で大絶賛無双タイム中の鳩羽とボウゲツの能力については、エピローグ部分で説明しますのでお待ち下さい。

ディオドラざまぁ?

  • ざまぁwww
  • さ、さすがにこれは―
  • いや、もうちょっとこうあれをああして…
  • 魔術師を怒らせないようにしよう

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