ハイスクールD×D/Apocrypha 魔術師達の狂騒曲 作:グレン×グレン
頭いかれてチート級の力を手にするわが作品群のボスにふさわしいイカレ野郎トルメーによる現魔王派の大打撃。そしてそのころ旧魔王派も大打撃を受けようとしていた!
さて、これで(予約投稿時点)で書き溜めないぞー! がんばれ自分!!
吹き飛ばされたオーディンは、しかし即座に体勢を立て直すと、即座に大量の魔法とグングニルの一撃を放つ。
それらすべてが最上級悪魔クラスすら深手を負うだろう威力を持つ。まず間違いなく、絶大極まりない破壊力だった。
だが―
「キラルナ。命令だ……「雷神の力を開放して迎撃」」
「いいオーダーだな」
その瞬間、それらすべてに矢が突き刺さる。
そして問題は、その矢がすべて莫大な雷撃をまとっていたことだ。
オーディンの魔法攻撃に激突した矢は、雷撃を開放。その結果魔法はそれてすべて外れる。
その絶大な威力に、誰もが息をのむ。
強敵なのはわかっていた。自分たちではまだ勝てないのもわかっていた。
なにせ戦闘技量が桁違いすぎる狙撃手に、抜き打ちとはいえ主神の攻撃を両断する護衛だ。少なく見積もっても最上級クラスのそのまた上位に配置するだろう。
だが、それでも足りない。
準魔王クラスとでも形容するべき、圧倒的な猛者がそこにはいた。
そして同時に、彼らを近くで見たことで、誰もがその正体と後ろのいる者たちを理解する。
「……あなたたち、トルメーの眷属ね!」
「おうよ!」
リアスの怒気のこもった詰問に、仮面をつけていた槍を持つ女が答える。
騎士の駒二つで転生した、ニスネウスとかいう女戦士だ。レーティングゲームでは槍を使っていたが、それとはまた違う槍を持っている。
そして、隣の男の正体もすぐわかる。
仮面が壊れているから一瞬判別に困ったが、彼もトルメーの眷属だ。名前はキラルナと登録されている。
戦車の片割れを務めている男。こちらも精密狙撃でディハウザーやサイラオーグの眷属を撃破していたが、そんなレベルの技量ではなかった。
トルメーの眷属からうち二人がディオドラの護衛として行動。これはもう、確定事項でいい。
裏切者は、トルメーもなのだ。
「……こりゃまずいじゃん。トルメーは貴賓席の護衛にいたから、下手したら挟撃される形になってるんじゃ―」
イルマがそう漏らした懸念の声に、二人は不敵な笑みを浮かべる。
「まあ、あの人のことだから死人は少なめだろ。ディザストラはともかく、俺たち眷属は「ひどい後遺症を残しながら殺しは絶対しない」って感じじゃねえか?」
そう告げるキラルナは、楽しそうに唇をゆがめる。
「アルテミスが全身の皮をはがされて延命措置だけ済まされてるとか、なってるといいんだけどよぉ?」
その言葉に、誰もが敵意を強くした。
オリュンポスでも有数の女神が、そんな無残な姿になっていることを願っている。それに嫌悪感をにじませた。
しかし、それに対して強い敵意を向けたのはキラルナだった。
まるで、当然のことを言ったらいちゃもんを付けられたかのような表情だ。
「……おいおい。特に赤龍帝にはそんな目で見られたくねえな。お前覗き魔なんだから、あの女はお前を惨殺してきてもおかしくねえぞ?」
「あ? たかが覗きなんて悪ふざけ程度で殺されるわけねえだろ? いや、いつもボコボコにはされてるけど」
イッセーは心底からマジ返しするが、キラルナは心の底から同情の目を向ける。
「優しい世界に育ってんだな。あのガワしか能がねえクソババアはいまさらそんなことで済まして、罪滅ぼしのつもりかねぇ」
その苦笑とともに、どす黒いオーラが流れ出る。
いな、それはオーラではない。
それは、憎悪と殺意。色を感じてしまうほどにまで濃厚な、ただの感情。
その感情に誰もが気圧される中、キラルナは弓を構えつつ静かに告げる。
「冥途の土産に俺の名を知っときな」
雷撃をまとった矢をつがえながら、キラルナは告げる。
「我こそはディアボロス・サーヴァントが一角、ディアボロス・アーチャー、アクタイオン」
その言葉に、オーディンが得心したと言わんばかりに歯を食いしばる。
「なるほど。アルテミス憎しで冥府から舞い戻ったか……っ」
「運よく呼び出されたってのが正しいがな。ま、あのガワだけのくそ女神と手を組んだことを恨むんだな!!」
その言葉とともに矢が放たれようとして―
「いや、オーディン以外は俺がつぶさせてもらう。偽りの魔王の縁者は真の魔王の血族が滅ぼしてこそ意味があるのだからな」
その言葉とともに、光の柱がアーシアを包み込んだ。
「………え?」
その、何が起こっているのかわかっていないアーシアの声が聞こえ―
「まったく、ゲオルグのやつめ手を抜いたな? やはり人間などに頼るのはよくないということか……」
左右愚痴をこぼしながら現れたのは、貴族服と軽装の鎧に身を包んだ一人の男性悪魔。
オーフィスの蛇で強化されたと思しきオーラは魔王クラス。単純な性能ならキラルナことアクタイオンや、ニスネウスより上だろう。
そんな男が、明らかに殺意を向けてイルマたちをにらんでいる。
「忌々しいグレモリーの娘よ。俺は偉大なる真なるベルゼブブの末裔、シャルバ・ベルゼブブだ」
そう告げるシャルバは、心からの殺意を込めてリアス達をにらみつける。
「……我々の作戦を台無しにしてくれた礼もある。細切れにしてからサーゼクスの前にまき散らしてやろう」
「………私の目の前でアーシアを殺し、更に相手を直接狙わず親族から手にかける? ………外道っ!!」
状況を理解したことで、リアスの怒りは即座に限界を突破する。
そして、それを見てシャルバは明らかな嘲笑を浮かべた。
「ふん。あいつら偽りの魔王共は、まず血縁から殺して絶望を見せねば気がすまん。それに早くしなければトルメーが殺してしまいそうだからな。少しでも絶望させるために死んでもらわねば」
そのシャルバの言葉に、アイネスが怪訝な表情を浮かべた。
明らかにおかしい。そう言わんばかりの表情だ。
「……トルメー・グレモリーが本気を出してないことはわかっていた。だが、あの超越者であるサーゼクス・ルシファーを殺しかねないだと? ……眷属でも総動員したのか?」
当然の疑問である。
なにせ、ブルノウ・バアル子飼いのイルマの側近であるツヴェルフ・シトリーは正真正銘冥界の裏の裏まで知っている。最低でも、超越者であるサーゼクスの戦闘能力の大まかなところはわかっている。
あの戦闘能力は悪魔の領域でいうことがまずおかしいのだ。少なく見積もっても主神クラスはある。
今まで本気を出さないようにしているのは分かっていたが、それにしたってサーゼクス・ルシファーを殺しかねないというのは冗談にしても限度がある。
そう思った次の瞬間、映像が浮かび上がる。
そこには激戦の様子が浮かび上がっていた。
そこでは小柄な少女をけん制するようににらみつけているタンニーンがいた。
そして、龍王の鎧を身に着けたアザゼルが、槍と盾を持ったトルメー相手に押されている。
あのカテレア・レヴィアタンを一蹴した鎧状態のアザゼルが押されている。
しかも、彼がかばっているサーゼクスは、虫の息といってもいい状態だ。
「………お兄様!?」
リアスが悲鳴寸前の声を上げる。
それに愉悦の表情を浮かべるシャルバの視界のなか、大半の物が唖然となっていた。
あの最強の魔王が、悪魔の力の象徴たる紅の魔王が、今の冥界の象徴である最強の存在が、瀕死になっている。
その事実に絶望すら覚える中、しかしイルマとアイネスはそこに注目してなかった。
かろうじて動けるサーゼクスは、時折消滅の魔力を弾丸にして放とうとしている。
だが、トルメーがそれに気づいて視線をそらした瞬間に、それが消え去った。
ゆえに、サーゼクスが一蹴された理由を理解する。
彼が超越者たるゆえんを知っているイルマとアイネスからすれば、今の現象だけでトルメーの秘密に気づくことは容易だった。
「………最低でもノウブルカラーの強奪の魔眼だと!? くそ、よりにもよって相性が悪すぎる!!」
「どういうことですの!? たしか、リアスにあなたが話した特殊能力がそんな名前だった気がいたしますが―」
アイネスが歯噛みし、断片的な情報しか知らない朱乃がそれに気づく。
それに気づき、アイネスは絞り出した。
「……発動中に視認した魔力を強奪もしくは霧散させる魔眼だ。超越者としての特性が「消滅の魔力そのものへの変化」であるサーゼクス様では、相性が致命的に悪すぎる……っ」
「その通り。そしてあの独裁者の聖遺物保有者としての側面を取り込んだあの男は、悪魔にとって絶対的な天敵足りうる」
そう補足するシャルバは、故にこそといわんばかりに、魔力を全身から放ち始める。
当然のごとく蛇の力を利用した魔王クラスの領域。リアス達が現状で対抗できる戦力ではない。
アーシアの死を連想する状況。サーゼクスの完敗。オーディンの苦戦。そして、シャルバの今の力とニスネウスとキラルナことアクタイオン。
状況が最悪すぎて、誰もが動けず―
「………強奪の、ノウブルカラー以上の……魔眼………っ」
イルマが、絞り出すようにそれが見えてないかのように声を出した、その時だった。
『……おい、リアス・グレモリーにオーディン。ついでにトルメーの眷属とかいうそこの連中』
突然、ドライグが声を出した。
そして、イッセーがふらつきながら動き出す。
『死にたくなければ今すぐそのシャルバとかいった悪魔から離れろ。いいか、できる限り全力で離れろ』
そう告げたドライグは―
『その馬鹿は選択を間違えた』
その刹那、イッセーから絶大すぎるオーラが放たれる。
まるで、鮮血のような赤色のオーラ。
それを目にした瞬間、オーディンが歯噛みした。
「これは……
『我、目覚めるは―』
〈はじまったよ〉〈はじまってしまうね〉
そんな声が漏れ始め、ニスネウスとアクタイオンが素早く飛び退る。
「さすがにこれはまずいな」
「ああ、特に俺たちは、神以外にはちっとばかし押し切れねえしな」
そういうなり走り出す二人を意に介さず、イッセーは詠唱を続ける。
『覇の理を神より奪いし二天龍なり―』
〈いつだって、そうでした〉〈そうだな、いつだってそうだった〉
呪詛以外の何物でもない声色で放たれるそれは、明らかに危険な兆候だ。
『無限を嗤い、夢幻を憂う―』
〈世界が求めるのは―〉〈世界が否定するのは―〉
『我、赤き龍の覇王となりて―』
〈いつだって、力でした〉〈いつだって、愛だった〉
「「「「「「「「「「「―汝を紅蓮の煉獄に沈めよう―」」」」」」」」」」
その光景を、しかしイルマは目に収めてすらいなかった。
トルメー・グレモリーの圧倒的な力に目を奪われていたわけではない。
だが、あの魔眼だけは彼女にとって見過ごすことができるものではなかった。
強奪の魔眼。魔眼使いの家系といっていい道間家の養子になった彼女にとって魔眼は縁あるものだが、その中でも最高峰に縁がある代物だ。
そう、彼は彼女が壊したのだ。
彼は、彼女に壊されたのだ。
道間
その彼と同じ魔眼を持ち、彼のような力を発揮する。
それ以外の圧倒の理由はまったくもってわからない。
だが、あの魔眼がサーゼクスの天敵であることは間違いない。
そして、本来なら彼はこんなことをする人ではなく、しかしこんなことをするような人物へとなり果ててしまっている。
だから、もし彼が生まれ変わってこの世界にいるのなら、このような凶行を起こすだろう。
そして、より最悪の結末を作るためだけにこのタイミングを見計らって動いたとしてもおかしくないのであり―
「イルマ!」
その額に、全力でアイネスが額をぶつける。
その激痛で我に返ったイルマは、そして状況が非常にまずいことに気が付いた。
すでに神殿が消滅している。因みにディオドラは一応引っ立てられていた。
そしてイルマたちの眼前には、ボロボロになったオーディンが気を失って倒れている。
さらに大規模なクレーターの中心部には、巨大な赤い龍が存在する。
その隣には、大規模な損傷を受けた、アーシアを拘束していた結界装置があった。
そして、あの赤い龍には少しとはいえ慣れたオーラがあった。
「………イッセー? まさか、覇龍を?」
ようやく状況を呑み込めたイルマに、多くの者が怪訝な表情を浮かべる。
「イルマさん? どうしたんですか?」
「気にするな。強奪の魔眼保有者が凶行を起こすのは、イルマにとってトラウマなんだ」
比較的冷静さをたもっていた祐斗に、アイネスはそう告げる。
そして、その冷静さが状況の危険度を速やかに告げている。
「どうする? このままでは、兵藤一誠は………死ぬぞ?」
ダイジェストすらされずフルボッコされたシャルバ。余計な事せずにキラルナとニスネウスに任せていればよかったのに、自分で動いたせいで勝手に自滅といってもいいです。
そしてとりあえずキラルナの真名は明かされました。かのヘラクレスの兄弟弟子にして、「たまたまエロコメハプニングしたら惨殺された男」アクタイオンです。そりゃ神殺しを対価に協力してくれます。当然のごとくアーチャーです
因みにアクタイオンとニスネウスの相性は最高です。いろんな意味でオーディンは相手が悪かったです。
そして精神的打撃でショックを受けたイルマの視点に移ったことで、一気に話は進みました。
そしてくるぜぇ、頭痛タイムがくるぜぇ……。