ハイスクールD×D/Apocrypha 魔術師達の狂騒曲   作:グレン×グレン

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さて、それではようやくオリジナルキャラ側の狂言回しの登場です。


5 魔術師集団、クロックワークス

 

 そして次の日には、上役から新たな発表がなされたのだ。

 

 それは、若手上級悪魔同士によるレーティングゲームでの交流会だ。

 

 ……もしかしたら、これはサーゼクス達によるソーナへの支援の一環なのかもしれない。

 

 ここでソーナが勝利を重ねる事ができれば、ソーナに対する評価が上がる。そうすれば、ソーナの夢に対する理解も深まるかもしれない。

 

 だが、逆に無様な戦いをしたら大変だ。そういう意味では厳しさもあるのか、信頼しているのか。

 

 そんな事があり、そしてそもそもイッセーは白龍皇ヴァーリ・ルシファーに目を付けられている事もあり、トレーニングを行う事となった。

 

 そのトレーニングの指示を出したのは、堕天使総督アザゼル。

 

 神器研究の第一人者であるアザゼルは、和平を結ぶと駒王学園の教師になり、オカルト研究部の顧問の座に収まった。事実上リアス・グレモリー眷属の関係者だ。

 

 三大勢力の重鎮から、神滅具(ロンギヌス)であるイッセーの赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)や、イレギュラーな禁手(バランス・ブレイカー)である祐斗の聖魔剣、強力ゆえに制御が未だできていないギャスパーの停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)の成長を促す為の監督を頼まれたらしい。

 

 将来的な禍の団対策の一環とのことだ。ある意味凄いコーチの誕生である。

 

 イッセーは堕天使にはあまり良い思い出はないが、朱乃やアザゼルは好感が持てる人物なので特に気にしない事にした。

 

 実際、短い付き合いだがアザゼルは良い人だ。

 

 思い付きで人を実験材料に使うところはあるが、しかしそれとは別に面倒見が良くて気の良い人物だ。

 

 実際、一からイッセー達グレモリー眷属のトレーニングメニューを作ってくれたりもしている。

 

 そこは感謝感激なのだが―

 

「いやぁあああああ! 死にたくないぃいいいいい!」

 

『だったらもう少し抵抗したらどうだ?』

 

 イッセーは涙をボロボロ流して絶叫しながら、覆いかけてくる15メートルの人型ドラゴンから逃げる毎日を送っていた。

 

 追いかけるドラゴンの名はタンニーン。これでも異形の世界ではとても有名人である。

 

 イッセーがその身に宿す二天龍のすぐ下の領域のドラゴン、五大龍王。

 

 匙が宿すヴリトラと同格とされる、傑物だらけのドラゴンと同格で、かつては彼を含めて六大龍王とすら称されていた傑物だ。

 

 今では悪魔にくだって最上級悪魔として活動しているらしいが、まあ色々あったのだろう。

 

 話をする限りはとても良い人でかつ高潔な人物なので、少なくとも悪魔にビビってしっぽを振ったとか、悪魔を利用する為にあえて傘下になったとかではなさそうだ。

 

 その辺についてはいつか聞ける時に聞こう。会って間もないのに聞いていい質問でもないだろう。

 

 それに、逃げなければ死ぬ。

 

「うぉおおおおおお! 走れ俺ぇええええええ!!」

 

『だから走るだけでなく反撃しろ』

 

 呆れ顔のタンニーンが、口から火球を放つ。

 

 それに吹き飛ばされながら、イッセーはテンションが一周回って笑い始めた。

 

「ああ、部長のおっぱいがブルンブルン揺れてるよ。……妄想なのは分かってるけど、素敵だな~」

 

『相棒、着地はきちんとした方がいいぞ?』

 

 神器の中のドライグに指摘されるが、妄想は止まらない。

 

 この妄想、現実逃避も兼ねて寝る時とかにしているのだが、最近は逃げている真っ最中でもできるようになっていた。

 

 正直、自分でも頭がいかれている自覚はある。

 

 そして受け身を取りながら再び走りだそうとする。

 

 タンニーンも再び火球を放ち―

 

「『―あ』」

 

 そのタイミングで、イッセーが思いっきりスッ転んだ。

 

 盛大に躓いたのだ。

 

 そしてタイミングが悪い事に、放たれた火球に方向変換能力や停止能力はない。

 

 とどめに、火球はイッセーがこけずに走る事を前提として放ったので直撃コースだった。

 

 ………あ、死んだ。

 

 イッセーが死を覚悟した、その瞬間―

 

「………うわっとぉ!?」

 

 ―割って入った一人の少年が、その火球を迎撃する。

 

 少年が振るうのは一振りの剣。

 

 莫大な聖なるオーラを放つ、明らかにエクスカリバーやデュランダルに並びそうな聖剣。

 

 その聖剣の腹で、少年は勢いよく火球をぶつけ、野球のように弾き飛ばした。

 

 そして弾き飛ばした少年と、我に返ったタンニーンがイッセーに近づいた。

 

「ちょっと、大丈夫かよ赤龍帝」

 

『すまんな兵藤一誠。目測を誤った』

 

「あ、大丈夫大丈夫。転んだ時に擦りむいただけだから……」

 

 そう言って立ち上がろうとするイッセーに、少年が手を差し伸べる。

 

 それを掴んで引き上げてもらいながら、イッセーはそこで漸く気が付いた。

 

 その少年、見覚えがある。

 

 あったのはつい一週間ほど前。若手悪魔の会合だ。

 

 そう、彼は―

 

「アンタ、イルマ・グラシャラボラスって人の眷属だっけ?」

 

 その言葉に、少年は不敵な表情を浮かべた。

 

「ああ。俺は麻宮鶴木(あさみや つるぎ)。イルマ姉さんの騎士(ナイト)やってるんだ、よろしくな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え、これ特訓!?」

 

 イッセーから事情を聴いた鶴木は、頬を引くつかせながら驚いていた。

 

 まあ当然だろう。

 

 誰がどう見てもこれは特訓ではない。むしろ拷問の類と言った方が遥かにしっくりくるだろう。

 

 思いついたアザゼルは鬼である。受け入れたタンニーンも地獄の極卒である。了承して応援までしてきたリアスは、トレーニング関係には手を抜かなさすぎる夜叉である。ちなみにここは冥界だから地獄である。

 

「っていうか、そっちこそ偵察ってなんだよ偵察って」

 

「イルマ姉さんから頼まれたんだよ。大王派よりのグレモリー血族が「なんかグレモリー領の山で轟音が響いていて、本家に尋ねても「訓練の一環」とか信じられない返答が返ってきたって言われたから、ちょっと様子見をってな」

 

 まあ、確かに気になる事もあるだろうとイッセーは納得する。

 

 確かにこれが特訓と聞いてそうだと納得する方が少ないだろう。

 

 地獄のしごきでもここまでのことにはならないだろう。いや、ここ冥界だから地獄だけど。とイッセーは内心でそう断ずる。

 

「禁手になる為にはドラゴンとのマンツーマンが一番とか言ってきて、俺、一週間ずっとここでサバイバル生活してんだよ」

 

「……イルマ・グラシャラボラス眷属(ウチ)も結構しっかりトレーニングするけど、これはやりすぎだろ。訴えるならイルマ姉さんに相談するぜ?」

 

 本気の声色だった。

 

 そしてそんなことを言いながら、鶴木は袋を開けるとそのまま中身を渡す。

 

「ま、それなら文明人の食事はひさしぶりだろ? 余分に持ってきてるから分けてやるよ」

 

「……ありがとう」

 

 涙をボロボロこぼしながら、イッセーはランチパッ〇を受け取った。

 

 日本円で二百円足らずの安物と笑うなかれ。

 

 イッセーは正真正銘のサバイバル生活を送ってきた。二百円程度のサンドイッチですら食べられなかったのだ。

 

 七十二柱の貴族の本家、その跡取りであるリアス・グレモリーの眷属がである。本家の里帰りに付き添いできたのにである。日本の本州に匹敵する領土を持つ大貴族の跡取りに仕える眷属悪魔がである。

 

 一生懸命頑張って、川魚を捕えたり木の実を拾ったり小動物を狩ったりした。

 

 冥界の動植物の知識など保有していないので、タンニーンに食べられるかどうかだけ確認して、頑張って火を起こして焼いて食べた。

 

 拾った鍋と水筒で水を確保するなど、サバイバル以外の何物でもない生活だった。

 

 ……貴族の配下として主の里帰りに付き合ったのに、なんでこんな目に遭っているんだろう。

 

 イッセーは、涙が止まらなかった。

 

 世の中のせちがらさ。特訓の過酷さ。人の小さな優しさ。そして久しぶりの文明の食事の味。

 

 それらすべてがとても染み入って、涙が止まらない。

 

「……大変だったな。ほら、もう一つやるから、元気出せよ」

 

「うん……うん……っ!」

 

 イッセーは涙をボロボロとこぼしながら、ランチ〇ックをガツガツを食べる。

 

 イルマ・グラシャラボラス眷属は良い人達が多いと理解した。

 

 イルマはビッチっぽいが結構ノリがいいところがあるようだ。鶴木も鶴木で優しかった。ツヴェルフことアイネスも、苛烈だがそれだけではない。

 

 リアスが大王派である以上派閥的には敵だが、そんな人達の中にも良い人がいる。それが理解できる。

 

「……ああ、人心地付いたぜ」

 

「そりゃ良かった。流石に見てられなかったしな」

 

 そう言いながら、鶴木は水筒からお茶をコップに入れると、イッセーに差し出す。

 

「ついでに飲みな。なに、こんなことで金をせびる程腐っちゃいねえよ」

 

「ああ、ありがとう!」

 

 イッセーはそう言うと、久しぶりの味のある飲み物をゆっくりと味わう。

 

 ちなみに、タンニーンは気を利かせて少し領地の様子を確認しに行っていた。いいドラゴンである。

 

 そして人心地付いてから、イッセーは鶴木と他愛のない話をした。

 

 冥界での最近のニュースとか言った程度だが、それだけでの十分嬉しい事だ。

 

 最近はタンニーンやドライグとしか話してなかった。同じ人間の姿形をした相手と話せるだけでも、だいぶ気分転換になる。

 

 それに、文明的な会話ができるのはそれだけで癒しだった。

 

「……そういや、イッセーってなんで悪魔になったんだ?」

 

「ん? ああ、堕天使に危険だからって殺された事があってさ、その時リアス部長に助けてもらったんだよ」

 

「……それでよく堕天使と仲良くできるなぁ」

 

 鶴木は少し呆れているが、しかしイッセーからすれば大した事ではない。

 

「ま、アザゼル先生も朱乃さんもいい人だからさ。そりゃ俺を殺したレイナーレはクソ野郎だったから堕天使には苦手意識あったけど、朱乃さんは朱乃さんだからな」

 

「……お前、凄いな」

 

 真剣な表情で感心された。

 

 そんな大したことをしたつもりはないのだが、鶴木からすると感心する内容だったらしい。

 

 鶴木は仕切りに頷くと、イッセーの肩をバンバンと叩く。

 

「マジですげえよ! なんツーか、大物って感じするじゃねえか!! さっすが赤龍帝だな!!」

 

 そう感心した感じでたたいてくるが、正直痛かった。

 

 どうやら結構鍛えているらしい。そう言えば、イルマ眷属もトレーニングを欠かさないとか言っていた気がする。

 

「痛いって! っていうか、連絡しなくていいのかよ! 主の指示で偵察に来たんだろ!?」

 

 イッセーは叩かれるのを避ける為にそう言った。

 

 実際問題、鶴木は大王派のグレモリー家からの頼みで来たようなものだ。それも、主でありイルマの指示で動いている。

 

 事情が分かったのなら連絡ぐらい入れた方がいいのではないだろうか。真面目に眷属としてそれぐらいの方がいいと思うのだが。

 

 だが、鶴木は軽く笑うと立ち上がる。

 

「大丈夫だよ。これもトレーニングを兼ねたちょっとした茶目っ気みたいなもんだ。本気で偵察するならスメイガさんの臣下に諜報部隊がいるから、そっちが動くだろうしな」

 

 今さらりと怖い事を言ってきた。

 

 スメイガ・バアルは自前の諜報部隊を持っているという事実に、軽く戦慄する。

 

 ソーナの発言から来たトラブルを利用して、割とうまく立ち回っていたスメイガだが、どうやらそのあたりのことを全部把握していたのではないだろうか。

 

 帰ったらリアスに相談しよう。

 

 スメイガ・バアル。悪い人ではないのだろうが、しかし油断できない相手なのは間違いない。眷属以外に自前の諜報部隊を組織している若手悪魔なんて、彼以外にいないと信じたかった。

 

 イッセーが戦慄している間に、鶴木は軽くストレッチをする。

 

 そして、ふと視線をイッセーの膝に向けるとかがみこんだ。

 

「っと。物のついでだ、ちょっと治療するから少しだけじっとしてろよ?」

 

 治療する。その言葉に、イッセーは首を傾げた。

 

 これはただのかすり傷と打ち身だ。いちいち治療するのは明らかにコストパフォーマンスが悪い。

 

 なにせ、悪魔の傷を即座に治療する力なんてそうはない。堕天使も含めて種族的に回復できる方法が限られていて、その希少さからアーシアは殺されかけたほどだ。

 

 一応フェニックスの涙というアイテムはあるが、あれはとても高価なものだ。到底軽傷の治療に使っていいものではない。

 

 そう思ったその時、鶴木は今度こそ立ち上がった。

 

「じゃ、治癒魔術をかけたから俺は帰るわ」

 

「へ?」

 

 イッセーが首を傾げた瞬間、今度こそ鶴木は走り出していた。

 

 腐っても騎士(ナイト)の駒で転生しただけあり、祐斗に匹敵するほどの足の速さだ。あっという間に見えなくなった。

 

 それに一瞬ぽかんとしたイッセーは、しかしふと気づく。

 

 そういえば、足の痛みが全くない。

 

 見てみれば、傷がきれいさっぱり消えていた。転んだ時に破けたジャージはそのままなので、なんというは違和感がある。

 

「なんだ、簡単な治療ならできる方法があるんじゃん」

 

 この時、イッセーはそうとだけ考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………あり得ないわ」

 

 そう、リアスは断言した。

 

 時間は数週間ほど移り変わって、グレモリーの城。

 

 その前に一度城に戻って小猫のハードトレーニングがらみでひと悶着あったが、それは置いておく。

 

 数週間のそれぞれの特訓を終え、そして合流したリアス・グレモリー眷属はそれぞれ合流して特訓の成果を報告しあっていた。

 

 その際、イッセー以外は城もしくは別の生活拠点を用意してもらっていたという。

 

 つまり、一人だけ生活まで過酷な状況で一月近く過ごさなければならなかったのだ。

 

 断言してもいい。酷過ぎる。

 

 だが、その過程で話した鶴城による治療で、リアスは明らかに目を見張った。

 

 見れば、悪魔歴の長い者達は誰もが驚いているし、アザゼルも興味深い表情を浮かべていた。

 

「……スメイガの眷属にはフェニックス家の奴がいたはずだ。そいつの協力で涙の亜種でも作ったのか?」

 

「いえ、そんなものが開発できているのなら堂々と公表するはずだわ。でも隠しているにしてはイッセーのかすり傷程度で使うのもおかしいわね」

 

 アザゼルの思い付きを否定したリアスは、しかしすぐに思案顔になる。

 

 そして、視線を朱乃に向ける。

 

「もしかしたら、彼らが開発した魔法ではないかしら?」

 

「かもしれませんわね、ただ、魔法と形容するのは止めた方がいいかもしれませんわ」

 

 朱乃がそう言うと、悪魔歴の長い者達がはっとなった。

 

 どうやら、悪魔の社会ではそれなりに有名話らしい。

 

「あの、スメイガさん達って何かしてるんですか?」

 

 分からないなら聞くしかないので、イッセーは素直に問うた。

 

 そしてリアスは頷くと、口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私がまだ朱乃しか眷属にしていなかった頃の話になるわ。

 

 バアル分家の中でも有力な家系だったブルノウ様は、その頃から急激に人員を集めだしたの。

 

 それそのものは今でも細々と続いているけど、その年は一気に千人以上の人材が集まったわ。

 

 特に話題になったのは、その彼らに共通点といえるような共通点が欠片もなかった事よ。

 

 種族も、年代も、出身地もバラバラ。気になって調べてきた者もいたけど、全体の共通点といえるものは本当に分からなかったわ。

 

 72柱の悪魔もいた。それらとは別口の上級悪魔である、番外の悪魔もいた。貴族とは全く縁のない、下級中級の悪魔もいた。多種多様な国家から多種多様な年代の人間も参加した。中には堕天使やヴァルキリー、更には死神から吸血鬼までもが亡命してきて、ブルノウ様の庇護下になったのよ。

 

 中にはブルノウ様やその臣下の眷属悪魔になったものもいるけど、その大半は基本的に悪魔にならずにあくまで臣下や人間界での下部組織に名義を入れているわ。

 

 ブルノウ様はそんな彼らに資金援助をしたり、揉め事になった時に弁護士を紹介するなどの後ろ盾になっているの。

 

 そしてそこから、ブルノウ様は一気に権力を拡大した。

 

 彼の発言力は大王派の中でも最有力。元七十二柱の本家当主に真っ向から反論する事もできるだけの発言力があるの。これは大王バアルの分家とはいえ異例な事だわ。

 

 そして、彼はその集めた人材達の集まりをこう呼称しているわ。

 

 ………魔術師(メイガス)の集まり、クロックワークス……とね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それ、魔法使いとは違うんですか?」

 

 イッセーは何となく思いついた疑問を聞いてみる。

 

 魔法使い。悪魔の能力を再現する事を試みて、独自の異能を手にした人達の総称である。

 

 様々な派閥がいるらしく、中には禍の団(カオス・ブリゲート)に与している者達も数多い。

 

 イッセーが会ったのはその禍の団の下っ端達だ。ギャスパーの停止の力とイッセー自身の乳技で一蹴した事を覚えている。

 

 魔術も魔法も呼び方の違いぐらいで同じものだと思うのだが、しかしリアスは首を振った。

 

「残念だけど違うみたい。魔術師(メイガス)達は魔法使いと取引する事もあるみたいだけど、人によっては毛嫌いしている者もいるらしいわ」

 

「なんでも「あの程度の事しかできないのに「魔法」使いを名乗る事が不快だ」と言っていたそうですわ」

 

 朱乃がそう言うと、アザゼルは首を捻る。

 

魔術師(メイガス)達にとって、魔術と魔法の間には大きな違いがあるって事か? だが、実際魔法と魔術なんてとんじるとぶたじるの呼び名程度なんだがな」

 

 どうやらアザゼルですら分からないらしい。だが、すぐに思考を切り替えたのか、アザゼルはリアスに向き直る。

 

「まあいい。流石に和平も結んだんだし、どの越えた後ろ暗い真似はしないだろう。今度会う時があったらそれとなく聞いてみるさ」

 

「そうね。腹芸はするみたいだけど、悪事を積極的に行うような方ではない筈だわ」

 

 リアスの言葉には、一定の信頼があった。

 

 ソーナの夢を賛同する振りをして、自分達が主導権を握るように話を持って行ったり、純血貴族主義の老人達に気に入られるように他種族からの転生悪魔をまがい物呼ばわりしたりはしていた。

 

 だがそれは冥界の未来を心からよりよくしたいから動いているのだと思う。少なくとも、大半の老害達よりはずっとまともな筈だ。

 

 なにより、その息子であるスメイガと、姪であるイルマのあの言葉と笑顔は信じたい。

 

 イッセーも、そこに嘘はないような気がしている。

 

 それに鶴木があっさり傷を治した事もある。

 

 後ろ暗い事をしているのなら、軽傷を治す程度の事などしないだろう。

 

 だから、きっと大丈夫。

 

 イッセーは、なんとなくそう思っていた。

 




プロローグはイッセー主体で進めますが、一章になるホーリー編からはこの鶴木も主要視点の一つにする予定です。

D×Dでは神の祝福なので本来あり得ない悪魔の異能による治療。ですが魔術師からすれば軽傷程度簡単に治療できて当然なのであります。

ブルノウの発展もこう言った能力があってこそ。Fateシリーズでいうのなら、スクラディオファミリーが一番近いですね。

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