ハイスクールD×D/Apocrypha 魔術師達の狂騒曲 作:グレン×グレン
そして、若手悪魔を主役とするパーティが開かれる。
といっても、その実態は大人たちが適当な理由を作って酒を飲むだけのことだ。
実際、リアス達がつくころにはすでに出来上がっている貴族たちが何人もいた。
それに呆れながらも、リアスもあいさつ回りをしてからパーティに深くかかわり始める。
貴族の娘ともなれば、それなりの付き合いがあるのだ。これもグレモリー本家を継ぐ者の宿命である。
そしてリアスは朱乃と祐斗を連れてパーティに混ざっていると、足音が響いた。
「ふっ。赤い髪とドレスがよく似合っているな、リアス・グレモリー」
「あら、スメイガじゃない」
振り返れば、そこにいたのはスメイガだ。
そこには眷属である二人の女性がいる。
長身の女性が二人もいると、なかなか壮観だ。しかも美人ともなれば割とこう、威厳というか風格が備わってくる。
年のころは二十台といったところだろうが、悪魔なので年齢はいくらでもごまかせる。
詳しくは知らないが、大王派かつ血統重視のスメイガなら、おそらく元から悪魔なのだろう。
そう思っていると、スメイガは苦笑した。
「……勘違いしているようだが、彼女たち二人は元人間だ」
「そうなの? てっきり眷属は元からの悪魔で固めているかと思ったけれど」
意外そうにリアスが聞くと、スメイガは苦笑する。
「私は血統を重んじるが、血統以外を軽視しているわけではないよ。有能なものがいるなら他種族からも引き入れるし、彼女たちは特別優れているしね」
そう告げると、二人の女性はそれぞれ挨拶する。
一人は敬礼し、一人は両手を下げて深く一礼した。
「スメイガ・バアル様の
「同じく、スメイガ様の
「あらあら。私はリアス様の
「リアス様の
お互いに眷属たちがあいさつを交わすと、スメイガは不敵な笑みを浮かべる。
「ふふふ。この二人は自慢の眷属でな。ボウゲツは騎士の駒を二つ遣っているし、陸奥は
「………それは本当にすごいわね」
リアスは唖然とするほかない。
駒価値が複数いるのは珍しくはない。リアスの眷属にも
また、通常より駒価値が増えるといってもいい変異の駒も、珍しくはあるがよくある話でもある。リアスの眷属なら、
だが、女王の駒が変異の駒で、更にそれが必須の相手だというのは規格外だ。
その驚きの視線を隠せていなかったらしい。スメイガは結構得意げである。
「彼女たちを眷属にするのは、文字通り命がけだったからな。まあ、だからといって私の将来が安泰だといいきれんのが世の中の残酷さだがな」
「確かにねぇ」
リアスもそれは納得者だ。
変異の駒必須のギャスパーや、兵士の駒八つのイッセーを保有するリアスも命がけの戦いを何度もしてきた。
特にコカビエルが来た時は本当に死の危機だった。
しかも
彼は禍の団において独自のチームを結成しているらしい。悪魔流にいうなら、ヴァーリ・ルシファー眷属といったところか。
将来的な宿敵となるのは確定だ。それも、魔王の血と神滅具の力を宿したとんでもない存在である。
その仲間も相当の実力者の可能性があるらしい。少なくとも、駒王会談の襲撃の時に来たのは孫悟空の子孫だった。
……本当に、強くなりたい。
間違いなく迫りくる脅威に対抗するためにも力が欲しい。それに、夢をかなえるにも力が必要だ。
レーティングゲームは強敵ぞろいだ。ことリアスはトップになることが夢である以上、その道はいばらの道であることは間違いないだろう。
なにせ、現トップ3の戦闘能力は誰もが魔王クラスだ。分家のトルメーは眷属まで総動員しての短期決戦とはいえ、その魔王クラスをレーティングゲームで破っている。
道は険しく、更に相応の成果を見せなければトルメーの存在ゆえに評価は下がるだろう。
だからこそ、強くなりたかった。
「……レーティングゲーム、ぶつかるときは負けないわよ」
「いやいや、いかに君が72柱本家の娘とはいえ、負けてやる気はないぞ?」
スメイガはそう返すが、リアスはむしろうれしかった。
「当り前よ。接待で勝ちを譲られるなんてされたら、私は使える権力をすべて使ってでもあなたの足を引っ張ってあげるわ」
「怖い怖い。だが、そういう高潔な人物なら挑みがいがある」
スメイガはそう言って片手に持っていたグラスをあおる。
そしてそのグラスが鏡のように光って、ある人物を映し出した。
「………ごめんなさい、ちょっとお手洗いに行ってくるわ」
そういうと、リアスは少し足早に歩きだす。
「あらあら、私もついて行った方がよろしいかしら?」
「そこまでしなくていいわよ。あなた達もこの場で交流を深めてきなさい」
そう朱乃たちに返すリアスを横目で見ながら、スメイガはぽつりとつぶやいた。
「……ボウゲツ」
「皆まで仰られるな。歩き巫女の一人が動いております」
その小声に、スメイガはうなづいた。
「……イルマ、外で反応があった。どうも仙術の心得があるようだ」
「そりゃ怪しいねー。ちょっと様子見に行ってきて。イルマさんは伯父様につたえてくるよ」
兵藤一誠は、明らかなピンチというものを体感していた。
きっかけは、パーティ会場を足早に出る小猫の姿を確認したからだ。
その前に、小猫の特殊な事情を知ることができた。
小猫はもともと白音と呼ばれており、黒歌という姉とともに両親を失っていたところを、とある悪魔に姉がスカウトされたことで眷属悪魔とその妹として生活をしていた。
その姉は僧侶の駒を二つも使用するほどの素質を持っており、わずかな期間で仙術すら使えるようになっている逸材だった。
だが、その仙術がすべてを狂わせた。
仙術は生命に関する術式であり、万物に存在する気を操る。物理的な破壊力は低いが生命体に干渉するといった能力は高く、殺傷性能は高いうえに、感知能力としても優れている。
だが、仙術は周辺の気を取り込む都合上、取り込む気の種類においては精神に悪影響が出かねないデメリットが存在する。
そして、黒歌は急激に力を高めすぎたため、そのあたりの調整が全くできていなかった。
彼女は力にのまれた。もとより享楽的な側面があった彼女は、血の快楽にすら飲まれるようになてしまった。
その果てに、彼女は自分の主を殺して逃亡。はぐれ悪魔になる。
当然の如く討伐隊が組織された。しかし才能を急激に開花させた黒歌は最上級悪魔クラスにまで己の力を高めており、追撃部隊はことごとく文字通りの全滅。結果として追撃命令は取り下げられ、黒歌は行方をくらますこととなる。
問題はその後だ。
妹であった白音もまた同様のことを起こすのではないか。そう邪推する者が出るのは当然の流れだった。ゆえにこそ、そうなる前に殺すべきではないかという意見もまた出てきたのだ。
そこをサーゼクスが「妹にまで罪はない」とかばった結果。言い出しっぺの責任として監視する形になるが、サーゼクスの庇護下に置かれることで白音という少女は命をつなぐ。
だが、白音は信頼した姉の暴走による凶事にショックを受けていた。その後の悪魔たちからの攻め立てる視線にも疲れ果てていた。精神的に限界だったのだ。
そんな白音を救うべく、サーゼクスは慈愛にあふれる妹のリアスに彼女を預ける。
結果としてそれは一定の成功を上げ、白音は徐々に生きる希望と感情を取り戻す。そして、リアスがそんな彼女に心機一転も兼ねて名付けた名前が「塔城小猫」である。
アザゼルは今後を見据えた指導方針として、小猫には「自分を受け入れろ」という単純なオーダーを出した。
それができないのなら足手まといになる。自分の本質を生かす戦い方をしろ。そう告げたのだ。
ハードトレーニングで倒れたりしたが、それは単純にその指示を受け入れきれなかったからだ。
小猫という少女の最大級のトラウマなのだ。当然といえば当然ではあるだろう。だが、将来的にヴァーリチームと相対することを考えれば、必要な成長でもある。
なので結構気になっていたので追いかけたのだ。
そしてイッセーがそうするところを見たリアスもまた合流して、ホテルの外に出て小猫を追いかけたのだが―
「……はぐれ悪魔、黒歌。よくのこのこと小猫の前に姿を現せたわね……っ!」
「姉が妹にあうのに何か問題でもあるのかにゃん?」
魔力を漏らしながら殺意をたたきつけるリアスに、そう余裕しゃくしゃくの態度をとる、和服を着崩した黒髪の女。
目の前にいるこの女が、黒歌である。
「おいおい、なんか因縁の出会いってやつか? 見ものだねぇ」
その黒歌の隣で、これまた楽しそうにしているのは美候。
孫悟空の末裔でありながら、禍の団に参加したテロリストの1人。そして、ヴァーリ・ルシファーのチームメイトの一人である。
その二人から小猫をかばうように立ちふさがりながら、イッセーは二人をにらみつける。
「よう、クソ猿野郎。ヴァーリは元気かよ?」
「もちろんだぜぃ。……お、そっちはだいぶ鍛えたみたいだな。グレモリーの姫さんも、なんだかんだで少しは強くなったみたいだな」
美候のその評価は当たっている。
リアスもイッセーもひと月ほど鍛えている。それも、堕天使総督という傑物が用意したトレーニングメニューでだ。
少し位強くなっていなければ泣きたくなる。実際、イッセーはだいぶ体力がついたと自負している。
だが、それを一瞬で見破られるとは思わなかった。
ゆえに怪訝な表情になるイッセーに、美候と黒歌は得意げな表情を浮かべる。
「これも仙術ってやつだよ。魔力や魔法とは違って生命力そのものに干渉するからな。こういう感知系能力としちゃぁ優れてるんだぜ?」
「それに、自分や相手の気の流れに干渉することも可能だニャン♪ 対処方法が魔力や魔術とは違うし、使い手が少ないから対処されにくいのも殺しには便利なのよねぇ」
……習得難易度が高いだけあって、優れた汎用性能があるということだろう。イッセーはとりあえずそう判断する。
問題は、そんな厄介な術を使える二人がこんなところにいるということだ。
今このホテルには、悪魔の上役がごろごろ集まっている。さらにゲストとして三大勢力の重鎮も何人かいたはずだ。
一歩間違えれば、かなりまずいことになる。
「それで、あんたらはテロでもやるのかよ!!」
テロリストがこんな要人の集まりに来る理由などそれぐらいしか考えられない。
だが、美候は軽く手を振ってそれを否定した。
「いんや、俺たちは今は非番さね。で、暇してたら黒歌がパーティ会場をこっそりのぞきたいって言ってきたから、俺も暇つぶしについてきたってわけよ、OK?」
超がつくほどふざけた話だが、嘘とも思えなかった。
そして、黒歌はイッセーを見ると怪訝な表情を浮かべる。
「っていうか、この子誰?」
どうやらまったく知られていないらしい。
そして、美候は美候で適当な態度で答えた。
「赤龍帝」
「……え、このさえないのが?」
「さえなくて悪かったな!!」
目を丸くしての黒歌の暴言に、イッセーはとりあえず吠えた。
だが自由人二人はスルーすると、美候はあくびまでする。
「んじゃ、俺らはもうお
「それもそうね~。あ、でも白音はいただいていくにゃん? あの時一緒に連れていけなかったからね?」
その言葉に、小猫が体を震わせる。
だがそれに気づいていないのか美候も黒歌も平然とした態度だった。
「おいおい、勝手につれてきたら、ヴァーリの奴もいい顔しねえんじゃねえかい?」
「この子の才能は私なみよ? オーフィスもヴァーリも納得してくれるニャン」
「いや、そうかもしれんけどさ」
そんなことを平然と話す黒歌と美候に、リアスとイッセーは前に出る。
怒気も殺気も隠していない。それぐらいには二人とも怒り狂っていた。
「……この子はリアス部長の眷属で、俺たちの仲間だ! やらせると思ってんのか!!」
「その通り。指一本でも触れれると思ってるのかしら?」
返答次第で即座に戦線が開かれる声色だが、二人の態度は余裕のままだ。
「勇ましいのは認めるけどよ、今のアンタラじゃ俺らの相手は無理だぜぃ? その子もらえれば俺っちたちもさっさと帰るし、それで良しとしようじゃねえかい」
「そもそもその子は私の妹よ? 私には可愛がる権利があるはずにゃん」
そう告げる黒歌は不敵に笑い―
「下らん。貴様にその娘の姉を名乗る資格はない」
その言葉と同時に、新たなる乱入者が現れる。
足音とともに現れるは、黒髪の少女の連れられた三人の少年少女。
その四人とはひと月前にあったばかり。それも、イッセーはさらに一度会っていた。
「つ、鶴木!?」
「よ、イッセー。助っ人はいるかい?」
片手をあげて挨拶をしながら、麻宮鶴木は聖剣の切っ先を黒歌と美候に突きつける。
「禍の団の構成員とは驚いたぜ。首をはねて魔王様に献上すりゃ、俺たち何人か昇格できるんじゃね、コレ」
そんな挑発をぶちかます鶴木の方に、栗色の髪をポニーテールにした少女が、たしなめるように手を置いた。
「いえいえ。あの二人はどちらも最上級悪魔クラスのつわものですわ。そんな皮算用はしてはいけませんわよ?」
そう言いながら少女は空間をゆがませると、巨大な大砲のようなものを取り出す。
そしてそれをかばうように、今度は茶髪を二つ結にした少女がため息を付いた。
「歩き巫女から報告が来たんで見に来たんやけど、こりゃちっとばかしめんどうやなぁ」
そう言いながら魔力を身にまとう少女に苦笑を浮かべながら、最後に黒髪の少女―ツヴェルフ・シトリーが前に出る。
「家族なら、テロ組織に連れて行くのが何の問題もない? ……笑止千万。その腐った脳髄は役に立たんから、日本に行って八丁味噌でも代わりに入れてもらってくるがいい」
そう告げると同時、ツヴェルフは空間をゆがめる。
一部の戦士などが武器を格納する異空間。リアスの眷属なら、ゼノヴィアがデュランダルを格納している。
そして、そこから現れたのは液体金属。
水銀を思わせるその金属は、十リットルほどの体積が現れ、そして球体となってツヴェルフの隣にとどまる。
そして、それと同時に後ろの三人も戦闘態勢をとる。
そして彼女らを率いるように、ツヴェルフは蔑みの視線を黒歌にたたきつけた。
「血を分けた家族だから愛情があるなどとは言わん。だが、家族というものには一定の節度がいるものだ。それすらない貴様が家族などという言葉を使うな」
冷徹に吐き捨てながら、ツヴェルフは敵意の感情を向ける。
「家族とは血のつながりではない。血族とは次へつなげるための宿命がある。貴様と塔城小猫は、そのどちらの関係にも合致しない。……お前はこの少女にとってただの害獣だよ、野良猫」
「へ~。家柄だけの悪魔が言ってくれるじゃない」
とことんまでこき下ろされ、黒歌は軽く殺意をたたきつける。
それを真っ向から受け止めながら、ツヴェルフは毅然と宣言する。
「これは戦闘ではない、誅罰だ。……だが、その能力にだけは敬意を払い、我が誇りである魂の名を知るがいい」
そして一呼吸おき、ツヴェルフは告げる。
「アイネス・エルメロイ・アーチホール。この名を刻んで
「………中二病?」
「上級悪魔で邪気眼系の中二病って、痛々しいの通り越してなんか寒気を感じるよな」
緊張感という三文字が完全に吹き飛んだ。
まあ、液体金属でぶった切る魔術師関係者とくれば、エルメロイ一派ですよね。各スキはこちらもなかったです。名前もケイネスやライネスからとりましたし。
次回から、メインキャラクターであるイルマ・グラシャラボラス眷属が大暴れします。お楽しみに!!