ハイスクールD×D/Apocrypha 魔術師達の狂騒曲   作:グレン×グレン

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そろそろ戦闘回。まずは前哨戦です。


7 本作火力ぶっちぎり悪魔、カタナ・フールカス

 ツヴェルフの痛々しいセリフ回しに呆れ果てる一同だが、しかしそれはそれとして事態は窮地であることに変わりはない。

 

 その前にツヴェルフが徹底的にこき下ろした黒歌も、このまま黙って帰るつもりなど欠片もなかった。

 

「……めんどくさいから殺すにゃん」

 

 そう言い放つと同時に、何かが歪む。

 

 イッセーはよく分からなかったが、ツヴェルフとリアスは舌打ちや歯噛みをする辺り、相当高位の事象が起こったらしい。

 

「……黒歌。あなた、ついに空間を操る術まで覚えたのね?」

 

 そのリアスの言葉に、黒歌は得意げな表情を浮かべた。

 

「時間は流石に無理だけどねー。結界を作る術の応用ってやつよ」

 

「……ところ変われば品変わるとはよく言ったものだ。この森一体の空間を外界から遮断する結界とはな」

 

 得意げな黒歌にツヴェルフも感心するが、しかしすぐに冷静な表情になる。

 

「だが残念な事が二つある。一つは展開するのが遅すぎた事だ」

 

「え?」

 

 黒歌が首を傾げると同時に、それは来た。

 

 ただでさえ夜ゆえに暗い森の中に、更に影が差す。

 

 その影を生み出したのは、全長15メートルは届くだろう巨体を誇る人型のドラゴン。

 

 最上級悪魔が一画、元龍王タンニーンが、警戒の表情を浮かべながら舞い降りた。

 

 その雄姿に、彼の強さを一か月間無理やり感じさせられたイッセーは歓喜の表情を浮かべる。

 

「おっさん! 来てくれたのか!?」

 

『お前達が何人も出ていくのでな。気になってきてみればこの結界だ。流石に驚いたぞ』

 

 そう告げたタンニーンは、鋭い視線で黒歌と美候を睨む。

 

禍の団(カオス・ブリゲート)の黒歌と美候だな? 白龍皇ヴァーリ・ルシファーと行動を共にしていると聞いたが、まさかこんなところにのこのこと出てくるとはな………!』

 

「うっひょぉ! 元龍王のタンニーンじゃねえかい! こんなのとやり合えるなんて、来たかいがあるってもんだぜぃ!」

 

 気圧されるどころか歓喜すらする美候。神々と戦ってみないかという誘いを持って禍の団に鞍替えしたヴァーリと同じく、強敵との戦いに歓喜を感じる手合いらしい。

 

 だがしかし、それに水を差すようにツヴェルフは告げた。

 

「第二の誤算を忘れているぞ」

 

 そして、その言葉に釣られて黒歌と美候は視線を向けー

 

「チャージ完了ですわ」

 

 -そこに、絶望を見た。

 

 栗色の髪を何割か後ろでまとめている少女悪魔。その少女は、両手であるものを構えていた。

 

 三つの砲身で構成された、巨大な開放型の砲身。そんな大砲としか形容できないようなものを、彼女は構えていた。

 

 そして開放型砲身には莫大な魔力が込められている。それはもう、無造作に解き放てば核兵器並みの大破壊をこの辺一帯にぶちかますであろう、とんでもない破壊力が込められている。凝縮され圧縮されそして開放されようとしている。

 

 とどめにもう一つ。

 

 その砲身、ものの見事に二人に向けられていた。

 

「全力全開ですわよ! 死にたくなければ避ける事ですわね!!」

 

 ドヤ顔で断言するのも当然だろう。

 

 タンニーンですら冷や汗を流している。それが雄弁に威力を物語っていた。

 

「やっべ! カタナがでかいのぶっ放すからみんな伏せろ!!」

 

「おー、カタナの本気砲撃とか久しぶりやでぇ」

 

 鶴木と関西弁の少女がそれぞれ違った反応をしめし、そしれツヴェルフは冷徹に告げる。

 

「もう一つの見誤りはこれだ。……この程度なら力技でどうとでもなる」

 

 次の瞬間、盛大すぎる魔力砲撃が空間遮断結界をあっさりと吹き飛ばし、ついでに射線上にあった山を片手では数えられないぐらい吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おいおい、覇龍状態のヴァーリだって、もろに食らったらやばいんじゃねえか?」

 

「嘘でしょ? たかが若手上級悪魔の眷属が? 主神クラスよ、あの火力……!」

 

 黒歌も美候も度肝を抜かれる大砲撃。

 

 その射線上にチリ一つ残さない圧倒的な破壊の本流を放ったカタナと呼ばれた少女は、ドヤ顔で胸を張っていた。

 

 これほどないぐらいどやぁである。

 

「思い知りまして? これこそ、イルマ・グラシャラボラスが僧侶(ビショップ)、それも駒価値二つのカタナ・フールカスの魔力量ですわ! 一割も減ってませんことよ?」

 

 その断言に、大半の者が冷や汗を流した。

 

 身内で知っているはずの鶴木やツヴェルフまで流している。改めて威力を確認して、戦慄したらしい。

 

 悪魔の駒における僧侶は、魔力を強化する側面がある事は知っている。

 

 大抵の場合は何かしらの異能保有者がなる駒であり、また魔力運用が基本の元から悪魔だった者が転生する事も数多い。

 

 だが、流石のイッセーもこれは異常なレベルだと断言できる。

 

 というより、砲撃の威力が前代未聞だ。今までそれなりに火力の大きな相手を見てきた事はあるが、これだけの火力を放った者はいなかった。

 

 上級悪魔であるライザー・フェニックスでも出した事はない。堕天使最高クラスの存在であるコカビエルでも出してない。元龍王であるタンニーンも、こんな一撃は出していない。

 

「……おっさん。おっさん、これ出せる?」

 

『無理だな。俺は火力だけなら魔王クラスと称されたが、あれはもはや主神クラスだ』

 

『封印される前の俺やアルビオンでも楽には出せんぞ、あんな火力』

 

 自分の中に封印されている、龍王の更に上の存在である二天龍ドライグ迄もがかなりの高評価を叩き出している。

 

 ……とんでもなさすぎるじゃねえか!

 

 イッセーは内心で頭を抱えた。

 

 あんな砲撃を出されたら、一発で戦局がひっくり返る。しかも本人の言う事をうのみにすれば、あれを最低でも十回はぶっ放せるのだ。

 

 負ける。リアスとイルマのレーティングゲーム。火力に制限がなければまず間違いなく圧殺される。パワータイプが多いリアス・グレモリー眷属が、パワーで圧殺されたらもう絶望的である。

 

 本気でへこみたくなるイッセーとリアスだが、そんな二人にツヴェルフは諦観の表情で微笑む。

 

「絶望しろ。砲身が焼け付いているから一時間は発射不可能だ」

 

「え?」

 

 ぽかんとするイッセーに、ツヴェルフは苦笑を浮かべる。

 

「カタナは魔力量だけなら魔王クラスすらしのぐのだが、それを運用する能力が絶望的なまでに欠けているのだ。例えるなら、扇風機一つ動かすのに火力発電所を占有しているようなものだ」

 

 軽く頭痛を堪える様な表情で、ツヴェルフはそう告げる。

 

 実際そういうレベルならシャレにならない。溜め込んでいる魔力を運用できないのだから、才能の無駄遣いと言っても過言ではない。

 

 どれだけ絶大な魔力があっても、それを運用できなければ無駄遣いだ。魔力が欠片もないイッセーより、考えようによっては酷いだろう。

 

 それを理解しているのか、カタナと呼ばれた少女はそっと視線を逸らした。鶴木ともう一人の少女は、その肩にそっと手を置いている。

 

 断言してもいい。癖が強すぎる。

 

「今はあの三光叫喚(ディストラクション・スクリーマー)で補っているが、最大出力ではすぐに砲身が焼け付くので連射ができん。当面は役に立たないと考えていいぞ」

 

 残酷な現実である。

 

 だが、一番厄介な結界が破壊された事で事態は大きく変わるだろう。

 

 あれだけ派手な事が起きたのだから、すぐに悪魔達も駆けつけてくるはずだ。

 

 そうなれば、此方の勝ちだ。魔王クラスや最上級悪魔クラスが何人もいるのだから、いくら黒歌と美候が最上級悪魔クラスであろうと押し切れる。

 

 そう思った、次の瞬間だった。

 

「―何をしているのですか、美候も黒歌も」

 

 呆れ果てた声と共に、二人の後ろの空間が割けた。

 

 そこから現れるのは、一人の眼鏡をかけた青年だ。

 

 手には長剣を持ち、更に腰のもう一人振りの剣が携えられている。

 

 そして、その剣が問題だ。何故なら、二振りの剣はどちらも絶大な聖なるオーラを放つ、聖剣なのだから。

 

『全員気を付けろ! そいつの持っている聖剣は厄介だ!!』

 

 吠えるタンニーンの声には警戒に色がある。

 

 その視線は、新たに現れた男の手に持っている剣に向けられていた。

 

『通りのいい名ではカリバーン。異形社会では聖王剣コールブランドと呼ばれている、エクスカリバーやデュランダルすらしのぐ地上最強の聖剣だ』

 

「はい、我がペンドラゴン家の家宝を持ち出させていただきました」

 

 そう得意げに答える青年は、更に腰に差している聖剣にも視線を向ける。

 

 コールブランドに比べれば劣るが、しかし強大な聖なるオーラが漏れているあの聖剣もまた強大な聖剣だろう。

 

 少なくとも、以前戦ったエクスカリバーでも合一前では届かない。それだけで相応の聖剣であることの証明だ。

 

「これは支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)。禍の団同士での情報交換で漸く見つける事ができた、最強のエクスカリバーです」

 

 最強の聖剣だけではなく、最強のエクスカリバー。その持ち主が禍の団に所属しているという事実に、一同は警戒心を強くする。

 

 特にツヴェルフは嫌悪の感情すら強くして、その青年を睨み付けていた。

 

「コールブランドはペンドラゴン家の家宝。貴様、名門ペンドラゴン家の名に泥を塗ったか」

 

「これは手厳しい。聖王剣コールブランドを受け継ぐ者として、それがどこまで届くのか試すのはある意味で当然の行動では?」

 

 平然とそう語る青年に、ツヴェルフは心の底からの軽蔑の感情を浮かべる。

 

「貴族の責務も果たさず思うが儘に動く狂犬が。可能ならここで殺してコールブランドをペンドラゴン家に戻してやるのが貴族としての良心か」

 

 その言葉と共に魔力を流すツヴェルフに、青年は面白そうな表情を浮かべながら、コールブランドを構える。

 

 その目には強敵との戦いに歓喜する表情が浮かんでいる。どうやら彼もまた戦闘狂の類らしい。

 

「一応名乗りましょう。私はアーサー・ペンドラゴンと申します。以後お見知りおきを」

 

 自ら名乗ったアーサーは、更にもう一つ付け加える。

 

「それと悪いお知らせを。他の派閥のご厚意で、少しの間足止めをしてくれるそうです。なので私も少し遊ばせていただきましょう」

 

 その言葉と共に、戦場が動く。

 

 そう、その瞬間、避けた空間から百を超える人数のどこか虚ろな表情の透けた体の戦士達が、飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 飛び出した戦士達は魔法によるものか宙をかけ、ホテルに向かって突撃する。

 

 そして、ホテルから警戒しながら出てきた悪魔達と激突する。

 

 衛兵達は場所が場所故に相当の訓練を受けている。その結果高い練度を持ち、相応の戦闘能力を保有している。

 

 にも関わらず、戦士達はそれと互角以上に渡り合っている。

 

 その戦闘能力は中級悪魔クラスなら余裕をもって相手ができるレベルだ。上級クラスとも太刀打ちする事ができるだろう。

 

 そんな高い戦闘能力を持つ百を超える戦士達。彼らが足止めに徹すれば、すぐに突破される事はありえない。

 

 そしてそれを良い事に、ヴァーリチームは即座に動き出した。

 

「じゃ、面倒だから殺すにゃん」

 

 黒歌がそういうとともに一歩前に出て、そしてそれに合わせて小猫もまた、一歩前に出る。

 

「……姉様、そちらに行けばいいんですね。なら、部長たちは見逃してあげてください」

 

 その言葉に、迎撃態勢をとっていた誰もが目を見開く。

 

「何言ってるんだ、小猫ちゃん!」

 

「そうよ、何を言っているの!」

 

 イッセーとリアスが強く反応するが、小猫は静かに首を振る

 

「姉様の力はよく知っています。最上級悪魔クラスの姉様を敵に回せば、いくら部長たちでもとらえきれません」

 

 塔城小猫という少女は、年齢不相応に冷静で知恵が回る少女だ。

 

 だからわかってしまう。足止めが成立している短時間で、黒歌はこちらに大きな被害を生み出してしまうことを。

 

 へたをすれば、主や同胞であるリアスやイッセーが死ぬ。そうでなくても、最上級悪魔のタンニーンや大王派の希望の星であるイルマ・グラシャラボラスの眷属が死ねばリアスに大きな影響が出る。

 

 敬愛する主が、自分のせいでそんなことになるのは耐えられない。

 

 だが、そんな小猫の自己犠牲こそリアスには耐えられなかった。

 

「そんなことは認められないわ! あなたが絶望にさいなまれていた時、目の前の猫又は助けようともしなかった!」

 

 そう言い切り、殺意すら込めて黒歌をにらみつけるリアスに、黒歌は動じることなくとぼけた態度を見せる。

 

 何を言っているんだあの女は。態度でそれを雄弁に語っていた。

 

「妖怪がほかの妖怪を助けるとかないにきまってるじゃない。ただ手駒は欲しいのよねぇ、同じ猫魈どうし、私の方が白音の力を理解できるし引き出せるニャン」

 

 そう吠えた黒歌に、リアスは明確な敵意をたたきつけた。

 

「……その在り方が、小猫の心をどれだけ傷つけたと思ってるの!! 私がはじめてであったこの子に感情なんてものはなかった。肉親に裏切られ、敵意にさらされたこの子がどれだけ苦しんできたことか! 認めないわ、この子はこれからたくさんの楽しい物を見て味わって体験するの。いい、覚えておきなさい!」

 

 そして、堕天使筆頭格であるコカビエルが評価するほどの絶大な魔力をまき散らしながら、リアスは宣言した。

 

「この子の名前は塔城小猫! 私の、リアス・グレモリーの大事な家族よ! あなたみたいなやつに指一本だって触れさせたりはしないわ!」

 

「よく言った、リアス・グレモリー!!」

 

 そして、その言葉にツヴェルフも吠える。

 

 よくぞ吠えた。よく断言した。そう言い切ってくれたことに感謝する。

 

 お前こそ主の好敵手にふさわしい。そんな感情をこめて、ツヴェルフは吠える。

 

「血の繋がりは確かに重要だ。だが、そこには確かな敬意や絆、責務がいる。そのどれ一つすら持っていない貴様のような野良猫に家族など存在せん!」

 

 そう断言し、ツヴェルフは殺意すら込めて黒歌をにらみつける。

 

 失せろ獣畜生。此処は文明と知性を持つものだけがいることを許される場所だと、視線で告げる。

 

「ああ、そうだ。そうだぜ小猫ちゃん! リアス部長は本当にいいこと言いました! 俺はいろいろ感動してます!」

 

 本当に感動で涙を浮かべながら、イッセーもまた吠える。

 

 大事仲間を、彼女を想う主を大事に思いながら、イッセーは告げる。

 

「小猫ちゃんはいろいろ大変なことがあって、それで苦労してるけど、俺たちの大事な仲間だ! だから、俺たちは小猫ちゃんが困っているときは愚痴ぐらいは聞いて見せるし、小猫ちゃんを奪おうってやつがいるなら、俺たちが守る!!」

 

 そしてこぶしを握り、兵藤一誠という男は一歩前に出る。

 

「アンタが小猫ちゃんのお姉さんだろうと、小猫ちゃんが望んでないのに小猫ちゃんを連れて行かせたりなんてしない!! 無理やりにでもそうするって言うなら、俺たちがぶちのめす!!」

 

 その断言に、鶴木たちもまた微笑みを替えす。

 

「OKOK。その啖呵、気に入ったぜ」

 

「かっこええな自分。じゃ、力貸したるわ」

 

「貴族としてか弱き善人を守るは当然の責務。及ばずながら手を貸しますわ」

 

 グラシャラボラス眷属たちもまた、小猫を守るべく構えを見せる。

 

 その彼らの心強い背中を見て、小猫はぽろぽろと涙を流した。

 

 そして、心からの本音を吐露する。

 

「……行きたくない。私は塔城小猫、白音じゃない。私は……リアス部長はイッセー先輩と一緒に生きるの!!」

 

 それが、小猫の本心だった。

 

 そしてそれを聞いた黒歌は、一瞬沈黙してから苦笑し―

 

「そう。―――じゃあ死になさい」

 

 冷笑ととも放たれた宣言。それが、黒い霧とともにリアス達を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「包み込め、我が血潮」

 




今回動いたカタナは、魔術回路も悪魔としての魔力適性も魔力量特化型。ガンダムで例えるなら、Vガンダム世代の核融合炉を搭載しているのに装備はGMと同程度という超絶無駄使用。型月で例えるならイリヤの魔力量とウェイバー(zero時代)の運用能力です。約束された勝利の剣だって連射させれます。

ですが、それをとある手段で手に入れた装備で半ば克服した超絶パワータイプ。まだまだ武器は調整段階なので今回は決壊を吹き飛ばすだけで戦線離脱状態ですが、これが完成に至れば龍神化状態のイッセーと砲撃戦を可能にする砲手となります。






そして次はイッセー禁手かまで行きます。

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