病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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 ヒーローは遅れてやってくる。
 だから原作主人公のリムル視点なら、遅れても許される(はず)


それぞれにとっての聖歌者 Ⅳ

 第11話 リムル=テンペストの場合

 

 その日、リムルは訝しげにミリムを見ていた。

 何時もなら外へ飛び出してリムル達を振り回して楽しげに笑うあの破天荒娘が、そわそわと落ち着かない様子で空をよく見ているからだ。

 いつもならエレン達冒険者三人組と狩りに行ったり、シュナの料理を食い散らかしたりと好き放題しているというのに、今日といえばゆさゆさと身体を揺らして空を眺めている。

 

(おかしい。絶対におかしい……)

 

 何か変なものでも拾い食いしたのでは、と勘繰ってしまう程の豹変ぶりに、リムルはミリムを猜疑心に満ちた目で見つめていた。

 それはいつも振り回されている他の者達も同じだったのか、ついに我慢出来なくなったシオンが問いかけた。

 

「ミリム様! 今日は落ち着かない様子ですが、何かあったのですか?」

「む!?」

 

 好奇心と心配に満ちた面々を見て、ミリムはビクリと肩を震わせ……下手くそな口笛を吹いて明後日の方向を見た。

 

「べ、別に何もないのだ!」

「いや絶対何かあるだろ」

「!?」

 

 あからさまな態度に食い気味でリムルが否定すれば、ミリムは驚愕の表情でリムルを見た。

 何故分かった!? と言いたげな顔でリムルを見るミリムに、呆れ気味にリムルは告げた。

 

「そんなんで俺が騙されると思ったのか?」

「ラフィーは騙せたのだ……」

「そうかそうか。気遣ってくれたんだな、きっと」

 

 項垂れるミリムを見て、あんまり無遠慮に聞きすぎたかと少し罪悪感に苛まれるリムル。いくら親友(マブダチ)と言われようとも、まだ出会ってから数週間。

 踏み込まれたくない事の一つや二つあるだろうと、リムルが引こうとした時だった。

 

「むむむ……。しょうがないのだ。リムルはワタシの親友(マブダチ)だからな。特別だぞ?」

「ん? いいのか?」

 

 リムルの問いに、ミリムが大きく頷く。

 瞳だけでなく、顔全体がキラキラと輝いている所を見ると、満更でもない……どころか話したくてウズウズしていたと見える。

 その様子に、引かなくて良かったなと、リムルは心の中でそう思った。

 

「今夜は、ラフィーの歌が聴けるのだ!」

 

 

 

 

 

 どういう事だ、リムルはミリムに詰め寄った。

 何せ、ミリムがラフィーと呼ぶのは魔王ラフィエル=スノウホワイトその人である。その人物に、リムルは大事な用がある。フルートの返却だ。

 そして何より、ラフィエル=スノウホワイトはリムルの運命の人である。あの涙の訳を聞きたい。そして救えるのなら、救いたい。

 リムルにとって、まだ会った事もないはずのラフィエル=スノウホワイトは、とても大きな存在となっていたのだ。

 故に、直にラフィエル=スノウホワイトの歌を聴ける――会う機会があるという情報は、リムルからすれば喉から手が出る程欲しい情報だった。

 

「何だ、リムルもそんなにラフィーの歌が聞きたいのか?」

「いや、そういう次元じゃなくて……」

 

 ワタシは何度も聴いているぞ、と自慢げなミリムに苦笑して、リムルは続きを促した。

 何でも、ラフィエル=スノウホワイトは満月の夜に歌を歌うらしい。ただし、誰かがいる時には絶対に歌わない。

 わざわざ隠れてやる必要があるのだろうか。人に見られるのが恥ずかしいとか?

 リムルは首を傾げたが、ミリムの言い分を信じるなら彼女はとても歌が上手いようだ。ならば、わざわざ密やかに歌う必要はないだろう。

 疑問はあるが、隠れるだけでラフィエル=スノウホワイトを直に見る事が出来るのであれば問題はない。欲を言えば、そのまま話してみたいとは思うが、流石に無理だろう。

 日を改めてまた訪ねればいい。

 リムルはそう呑気に考えていたが、ラフィエル=スノウホワイトの支配する異空間へ跳ぶには、事細かな手順を踏まなければいけない。意識して最大限に気を使わなければ、跳べないのだ。

 

「だから、連れて行くのはいいが、絶対に騒いだりするのは許さんぞ?」

「おう。でも、そういう事なら大勢ではいけないな……。誰を連れて行こうか……」

 

 ちらり、と配下を確認してみれば、ほぼ全員が行きたそうにしている。普段は控えめなシュナさえも、今回ばかりは譲れない、と言わんばかりに瞳を輝かせていた。

 

「ラフィエル=スノウホワイトって、魔物に人気なのか?」

「それは勿論。強さも然ることながら、その心根も素晴らしい人格者だと聞き及んでおります。まさにリムル様の女性版といったところでしょうか? 是非一度拝見したいものです」

(リスペクトが辛い……、というかどう考えても俺の上位互換では?)

 

 シュナが、さりげなく自分をアピールして連れて行って貰おうとしていた。

 最も、リムルからすればその前のよいしょに引き攣った笑みを浮かべるしかないのだが……普段リムル様リムル様と言っている彼等がこうも称賛するとなれば、本当に人気なのだろう。

 俄然、"微睡みの暴虐者"説よりも"病弱の聖女"説が有力になってきた。やはり恐ろしい魔王というのはガセネタなのだろう。

 けれど、念の為にリムルはその暴虐者説も頭に入れたままにしておいた。

 

「うーん……それならバレても、怒られたりしないだろうから……」

「だっ、駄目だぞ!? バレたらワタシが他の魔王に怒られるのだ!」

「えっ、他の魔王も来てるの?」

「古参の魔王は皆来てるのだ。当然だろう?」

 

 当然なんだ……、と思ったが、リムルは口に出さなかった。というか、魔物だけじゃなくて魔王にも人気なのか。リムルはラフィエル=スノウホワイトに驚愕した。

 ミリムだけでも、魔王というのはかなり曲者というか個性が大爆発していると感じていたからだ。

 そんな魔王達に気に入られるとは、一体どれ程の人格者なのか……。

 しかし、他の魔王まで来ているとなれば危険がヤバイ。騒ぎそうなシオンやゴブタは連れていけないだろう。とすれば、連れていけるのはソウエイあたりだろうか。

 万が一騒いで、他の魔王にブチ切れられたりしたら目も当てられない。聞いた限りではラフィエル=スノウホワイトが庇ってくれるかもしれないが……希望的観測に頼るのは良くない。

 念には念を入れるべきだ。そうなると、やっぱり自分一人で行った方が確実ではある。が、

 

「ううん…、どうするか……」

「悩むのならシュナを連れて行くのだ。裁縫は得意だったろう?」

 

 やはり最低でも一人は連れていきたい。仲間にも、直にラフィエル=スノウホワイトを見てほしかった。運命の人的な意味でも、救済が必要なのかどうかを見極めるためにも。

 そんな時にミリムが言うものだから、リムルが口を挟む前にシュナとシオンが反応してしまった。

 

「え? よ、よろしいのですか、ミリム様!?」

「そんな! シュナ様だけズルイです!」

「でもシオンは服が作れないのだ。シュナなら、ラフィーを見れば服の一つや二つ作れるだろう? ワタシとお揃いでもいいな!」

 

 ミリムの言葉にショックを受けるシオンと、不思議そうに首を傾げるシュナ。

 ミリムの意図としては、普段あの純白の服しか着ない故に、違う服でも持っていけばラフィエル=スノウホワイトは喜ぶのではないか? という単純なものである。

 しかも、親友(マブダチ)の配下に作ってもらった服だったら文句無しの一品だ。きっとラフィエル=スノウホワイトだって気に入るだろう。

 まあそれと、リムル(シズエ・イザワ)にだけ贈り物をしている事に少し不満だった。だから、まずはミリムの方から贈り物をしてやろうと思ったのだ。

 そんなミリムの意図を聞いたリムルは、それならと同行者をシュナに決定。

 後は時が来るのを待つだけとなった。

 

 

 

 

 夜が来て、ミリムがドアを開け閉めしたり変なところで曲がったりしながら歩くのを黙ってついていくこと、数分。

 唐突に視界に入る風景が変化する。

 そこは、緑に囲まれた異空間。満月に照らされた木々が揺れ、その先には開けた草原がある。その草原のど真ん中には白亜の教会が一つ、荘厳に聳え立っていた。

 

「アレがラフィーの住む教会なのだ。これからは静かにしているのだぞ?」

 

 バレると歌ってくれないのだ、と言うと、ミリムはそれきり黙って教会を見つめていた。

 あのミリムでさえも、大人しくラフィエル=スノウホワイトの歌が始まるのを待っている。その事実を目の当たりにして、リムルもシュナも驚愕に目を剥いたが、騒いだりはしなかった。

 これを見たのがゴブタあたりだったら、絶対にこの時点で終わってるな……なんて失礼なことを考えつつ、リムルは無言のまま教会を見やった。

 

 あの占いの時に見えた背景。真っ白な壁は、あの教会の壁と瓜二つ。であれば、本当にあの教会で寝泊まりしているのだろう。

 この目で、ラフィエル=スノウホワイトを見ることが出来る機会。絶対に無駄にはしない。

 少しでも、ラフィエル=スノウホワイトの事情を持ち帰る。そう決意して、リムルはじっとその時を待った。

 十数分後、教会の扉が開く。

 純白の衣装を身に纏った、美しい少女が、その手に聖書と譜面台を持って出てきた。その姿は、占いで見た当時と変わらない。

 違う所があるとすれば、青い瞳が涙で潤んでいない、というところだろうか。

 

 譜面台に聖書を置き、ばらぱらと頁をめくり、ラフィエル=スノウホワイトはある頁で手を止めた。

 そして、その頁を少しだけ強張った顔で見つめると、両手を組んで大きく息を吸い込んだ。

 

「〜〜〜〜〜♪」

 

 その口から、歌と思わしき音楽が奏でられた瞬間、空気が一気に染め上げられた気がした。

 どくん、と既に無い心臓が大きく跳ね上がったような錯覚を受けて、リムルは胸を抑えた。

 その歌は、まるで――感情をそのまま放出したかのようで。ラフィエル=スノウホワイトの内側の世界に入り込んだかのような、そんな気持ちになってしまった。

 激しい感情のままに歌われる。その歌で、リムルは大津波に飲み込まれ、海の底まで沈む。ラフィエル=スノウホワイトの深層感情まで読み取れるほど、奥へと沈む。

 

 それは、悲しみ。

 激しい怒りと、どうしようもないほどの哀れみ。

 そして――包み込むような優しさ。安心感、と言い換えてもいいかもしれない。

 

 その歌は、ラフィエル=スノウホワイトが溜めに溜め込んだ、感情の発露だったのだ。

 そして、沈み込んだその先で、リムルはその感情を見つけてしまった。

 何時でも、どんな時でも誰かを救おうと、助けになろうとする、そんな彼女から。

 自らの救いを求める、そんな感情を。

 

(……これで、手を伸ばさなかったら男じゃないだろ)

 

 ぐっと、今この瞬間にでも出て行きたいのを抑え、リムルはその場に留まった。まだ、その時ではない。

 ここで出ていけば仲間に被害が出る可能性がある。だから、次だ。

 必ず、今度は自分の力で会いに行く。そして、ラフィエル=スノウホワイトが無意識に伸ばした手を掴んで引き上げてやる。

 そのために、自分達の基盤を整える必要がある。魔王とよばれる少女を救うには、まだ自分には力が足りないのだ。

 彼女を救うためにはまず、この異空間が存在する意味を見つけ出さなければいけない。本来なら、この異空間は彼女に必要ないものなのだから。

 

(異空間の解析……頼んだぞ、『大賢者』!)

《了。解析を開始します》

 

 




溺れそうになる(どうしようもない)の強い感情(救いを求めて)……だから、誰にも見せたくなかったのか」
オリ主「オレの人生超クソゲー!!(歌)」

 まあ、ストレス発散してる現場とか普通見られたくないよね。
 ラフィエル君は歌ってると見せかけて、叫びまくる事でストレス解消してます。一度でも誰かに見られたら引き籠ること間違いなし(ただし喉元過ぎれば熱さ忘れる)

 現在のステータス

 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
    ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
    ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
    ユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)
 secret:『悪魔共存』
     『悪魔契約』
     『禁忌の代償』
 備考:悲しみ→胃薬を愛用してしまうため。過去の健康優良児ぶりが懐かしいぜ…
    怒り→魔王も勇者も出禁にしたい。
    哀れみ→何でオレばっかこんな目に(泣)
    優しさ(安心感)→現実逃避。いつか穏やかな日々がくるって信じてる。妄想時だけ得られる感情。
    救済→誰かオレを歩く理不尽共から助けてくれ(不可能)
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