病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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 第16話 優しくしてあげましょう

 

 最近は平和だ。ここ数ヶ月間は、まるで嵐の前の静けさといったところか? だから、たまにある小さな嵐はちょっと安心する。

 最近でいえば、あの黒い悪魔が怒り狂って現れて散々叫び散らしたりしていた。何なのあいつ? いきなり現れて怒鳴って帰って行ったんだけど。

 頭沸いてるんだろうね、きっと。

 あいつ、オレの万年筆で満足したんじゃないんかい。そーゆーとこだぞ、ギィにウザがられるの。

 でもギィの嫌がる顔はものすごく嬉しいから正直もっとやれ。

 今日は特に何もねーかなーって思ってたら誰か来たっぽい。結界をぶっ壊して来た訳じゃねぇから、多分迷子だ。

 外に出れば、殺気だった様子の少女(?)が座り込んでいた。声をかけてみれば、少女はギロリと睨み付けて……怖いんだけど……。

 え? 何でオレ睨まれてんの? 何も悪いことしてないじゃんよ。

 ブルブルとオレの身体が震えだす前に、少女は呆然とした顔を見せた。そしてその後、顔を横に振る。何してんの?(素)

 まあいいや。さっさと話を聞いて帰って貰おう。

 

「何かあったのでしょう? 話くらいなら、私にも聞けますから――どうか聞かせてください」

「……今はそんな暇ないんだ。悪いけど、ここから帰してくれないか?」

 

 そんなん出来るならオレだってやってるよ!!

 出来ないから、こうやって面倒臭いけど興味の欠片もない奴の話を聞こうとしてるんじゃん? わかるぅ? わからないよねぇ、オレだって半分も分かってねぇし!

 

「帰れません。貴方の心が救われるまで」

「は?」

 

 それな(共感)

 オレも最初に知った時は「は?(死ね)」って思ったよ。ムカつくよね、ほんと。

 聖書にあるヤツってこんなんばっかだ。さきにさぁ、教えてくれてもよくない? こうこうこんなデメリットもあるんですよーってさ。

 サービス悪すぎんだよお前らはさぁ!! もっとオレに優しくしろよ! なぁ!?

 ちょっとオレに対してだけ厳しすぎるんじゃない? この世界。

 

「貴方の心は今、(何でか知らんけど)絶望に染まっています。ですから、貴方はここに喚ばれたのです。――私は、貴方を救うために(ここから出てって貰うために)ここにいます」

「どういう……事だ?」

 

 どういう事だろうね。

 オレも分からない……つまり聖書の作者にしか分からない世界なんだよワトスン君。これだから頭のおかしい人種は困るんだ。

 もっと、後世の人に分かるような表現をして貰わないと困るんだけど? そこんとこホント駄目だよ。特に悪魔のくだりとか意味分からんかんな、マジで。

 ……うん、オレにも分からん。

 

「貴方はどうして、……悲しんでいるのですか? (なんでオレに)怒っているのですか? どうか私に、教えて下さいませんか。(ほんと、この世界の奴らは説明するのを忘れすぎなんだよ!)」

 

 つーか真面目に言っていい? オレに八つ当たりするの止めてくれない?

 そういうとこね、オレは良くないと思うんですよ。みんなそうなんだけど、何でオレに怒るかな?

 死ねばいいのに……(本音)

 大体お前、何? 怒ってないでさっさと言ってくれよ。そしたら帰れるんだからさぁ!

 オレだって見知らぬ他人の話とかいう、聞きたくもない話を聞かなきゃいけないんだからお相子だろ!? え? 違う?

 ………。そんなことはどうでもいいんだ。

 とにかく話をしたまえ、ワトスン君。

 

「……つまらない話だ。どうしようもない、馬鹿の話」

「構いません。聞かせて下さい。私が、貴方のことを(元の場所に帰すために)知りたい(だけな)のですから」

 

 だからさっさと話せほらハリーハリー!!

 少女の手を取ってさりげなく座らせて、オレもようやっと座れた。相手が立ってると座れなくなるよね。

 ふいー。

 あーマジ疲れた。まだ話聞かなきゃだけど、ほんと疲れた久しぶりに。

 でも魔王共よりよっぽどマシか。あの黒い悪魔よりも数億倍は良いな、うん。

 

 で、話を聞いていると。

 なんとこの少女は少女じゃなかったらしい。それだけで驚きなのに、元々は男で異世界人で転生者で、今はスライムで王様で……。

 属性てんこ盛りかな? そんなに言われても覚えられねぇわ……覚える気もないけど。

 しかも、リムルと名乗ったこのスライムはミリムと知り合いなのだとか。初耳ですけど?

 あいつ、オレのことを唯一とか言ってた癖に、オレに何も言わなかったの? よし、絶交な!

 

 うんうん、それで襲撃を受けたんか……。まあ、当然ちゃう?

 だって新しく国を作ったら、そりゃ他の国からキレられるわ。うちの特権(特産物とか)奪ってんじゃねぇよってな。

 てゆーか、何で真っ先に潰されなかったのか……。他の国のトップ、頭おかしいんじゃねぇの?

 ファルムス王国だっけ? そこが普通にしか見えんのだが……。ドワーフ王国は中立だからともかく、ブルムンドは馬鹿なのかな?

 でもこれ言ったら駄目だろうな。適当に言っとこ。

 

「それは……酷い話ですね」

「…………」

 

 何で無言やねん。

 相槌くらい打てよォ! オレが一人で喋ってるみたいじゃん!

 それにさあ、酷い話だって思ったのは本当だぞ? そりゃ、オレだって仲の良い奴が死んだら落ち込むわ。

 それは分かるよ。分からんけど。

 うん……あの、気まずいんだけど。

 そんな今にも泣き出しそうな顔で無言っていうのは、すごく気まずいんだけど。泣けばいいじゃん(真理)

 あっごめん泣けないんだっけ……え? ここでも? なんかこの異空間に喚ばれた人は、普通の人になるらしいんだけど。

 ……ハッ! そうか、知らないのか!

 そりゃそうだわ。オレも最初は知らなかったし。

 

「……。――リムル、ここは私の支配する異空間です」

 

 まあ、他の魔王にめっちゃ侵入されて荒らされてるけど。あいつら締め出してぇな……。

 とりあえず、ぼんやりレベルでしかない知識を披露する。この異空間のことなんて、そんなに詳しく覚えてるわけねぇじゃんよ。

 オレは記憶力が悪いんだ。舐めんな。

 だから、これくらいの説明で勘弁してくれ。一応リムルに同情してるって伝えてヘイト下げておこう。

 

「貴方は心まで魔物に(冷たく)なったと言いましたね。けれど、私は思うのです。貴方が人間だった時の(優しさ)まで捨てる必要など、ない」

 

 完璧だな(ガバガバ)

 それに、さりげなく自分の要望も伝えてるオレ賢い。そうだよ、みんな優しくなるべきなんだ。主にオレに。

 リムルもさ、ウザい奴にはぐしゃってしてもいいんでない? でもオレにはしないでね、優しく接してくれ。

 あとは……あっ。

 ちゃんと言うの忘れてた。

 

「いいですか――ここでは、貴方は泣けるのです」

 

 はい説明終わり!

 ここで泣き終えたら多分リムルも帰れるんじゃねぇの? 知らんけど。

 泣き始めたリムルを今までと同じように抱き締めて、よしよしと宥める。早めに終わらせるにはね、放置よりもこうして寄り添ってやるのが一番なんだ。

 オレは学べる人間なんだ(疲れた顔)

 

「う、ぐ」

「今は、(涙が)出なくなるまで泣いてしまいましょう」

 

 そしたら早く帰ってね(笑顔)

 なんだか、リムルを抱き締めていると悪寒が走るんだけど、どういう事なの?

 どことなく、角のある美人二人が笑顔でキレている気がする。一刻も早く離れた方がいい気がするんだけど、気のせいだったらいいな。

 泣いているリムルが、ちょっとよく分からない質問をしてくる。何のことだ?

 考えてたら、なんか質問を続けざまにしてくるのでもう訳わからん。思考が追いついたのは最後の質問だけだった。

 

「なぁ……俺が間違っていたのか?」

「その答えは――肯定であり、否定です」

 

 どういう意図の質問なのか分かったけど、正解が分からないから適当に答えておこう。

 とりあえず過去のことを引き合いに出して、ちょっと良い感じに言ってみた。やばい……何も考えずに言ったけど、すげえ良い感じに着地してない? 話術の天才かもしれんな……。

 まあ悪い子な口は、ちゃんと思ってることを口に出してくれないけどね! 出来ない事くらいちゃんと分かってるっつーの。

 

 まあでも、これだけ言っても帰りそうにないね。

 普段ならこの辺で身体が透けだして、ひゅーっといなくなるんだけど。

 そりゃ、友達いなくなった奴がこの程度で帰るわけねぇわ。でもオレ、昨日徹夜したからめっちゃ眠いんだよな。

 正直もう眠いから帰って欲しいんだよな。頼むよ、帰ってくれないか?

 無理? 知ってた。

 

「……(なんか適当に言って帰って貰おう)」

 

 うん。

 それがいいね。そうしよう。

 オレは眠れる。リムルは束の間だけど希望を持てる。ウィンウィンじゃねぇか……!

 完璧だな(二回目)

 

「――知っていますか?」

「? 何を……?」

「蘇生が可能かもしれない方法のことです」

 

 驚愕の表情を見せるリムル。

 わかるよ、ビックリするよね。オレも驚いている。自分の適当さにな。

 眠いんだ。何も考えられないくらいに。

 

「――!? ど……どうすればいいんだ?」

 

 知らねぇ。

 

「貴方の友人なら、きっと知っているはずです」

 

 妖精さん(おまえら)とかな。

 いるじゃんほら、何でも知ってる奴とかさ。歩く辞書的な奴。

 そんな友達がいたら、きっと教えてくれるよ(適当)

 

 あっ、リムルの身体が透けてきた。

 よーし帰るんだな? 帰るんだな!? おめでとうございます!!(歓喜)

 どうせもう会わないだろうし、眠いからって適当に対応しちゃったし、嬉しいからなんか言っておこう。

 えーっと……。

 

「……私は、貴方のように(オレに)優しい人を好ましく思います」

 

 




「助けたい人に救われたんだけど……(羞恥)」
オリ主「久し振りに常識人来たけど、超眠い」

リムルへ。気にしてはいけない(警告)
そもそもラフィエル君が自分の影響力を自覚していないから、こんな悲劇が起こる。しょうがないね。
まあいつかは改善すると思われる。

現在のステータス

 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
    ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
    ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
    ユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)
 secret:『悪魔契約』
     『悪魔共存』
     『禁忌の代償』
 備考:"勘違い"がアップを始めました。

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