病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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少女を知る者

 第18話 少女を知る者

 

 リムルが真なる魔王に覚醒し、反魂の秘術によってシオン達の蘇生が完了した後のこと。

 どんちゃん騒ぎを繰り広げ、皆が酔い潰れた真夜中を過ぎた頃。

 今後の方針に思い悩んでいたリムルの元へ、黒い悪魔はやってきた。

 

「お目覚めになられたようで何よりです、我が君。無事に魔王へと成られました事、心よりお祝い申し上げます」

 

 などと言っているが、リムルはこの黒い悪魔のことをまるで覚えていなかった。

 

「誰だよお前。何の用だ?」

 

 そのため、自分の心に正直に、お前のこと覚えてないよと告げる。

 黒い悪魔は激しく動揺し、顔を引きつらせた。二度目のぞんざいな扱いに、改めてショックを受けてしまったようだ。

 

「我が主よ。この者は貴方様が騎士共を供物(エサ)に召喚なされた、悪魔の一体です」

「おお、ランガ殿!」

 

 無意識に辛辣なリムルの影から顔を出し、リムルの記憶を呼び覚ます言葉を放ったランガに、黒い悪魔は救世主を見るように感謝の視線を送っていた。

 それを見たリムルは、記憶を思い出してみる。そういえば宴の最中でもうろうろソワソワしていた。

 合点がいったリムルは、笑顔を見せる。

 

「色々と手伝って貰って助かったよ。聞いたよ、なんでも生き残りを捕獲してくれたそうだね。お陰で、俺もランガも無事に帰還出来たみたいだし」

「いいえ、とんでも御座いません。つきましては――」

 

「長々と引き止めてしまって悪かったね。もう帰っていいよ!」

「――えっ!?」

 

 ぐっとサムズアップしてみせるリムルに、黒い悪魔は泣きそうな顔をした。

 あれ? と首を傾げるリムル。

 

「もしかして報酬が足りなかった?」

「いいえ!」

 

 それは違うと断言される。

 危惧していた事とは違うと言われたため、少しだけ安心する。

 では何か、と問いかける前に先に説明された。

 

「貴方様の配下の末席に加えて頂きたいのです! どうでしょう、検討して頂けないでしょうか?」

 

 うーん、とリムルは考える。

 召喚した時はそんな事言ってなかったのに――と考えれば、それを察したように黒い悪魔が付け加える。

 

「召喚主様に騎士の死体を頂いた事で、私も受肉出来ました。その御恩を少しでもお返し出来れば、と――」

「ああ、そうなの? ……ん?」

 

 かなり強そうだし、配下になってくれるのは有難い。しかしそれは暴走しない前提であり、諸刃の剣である。

 そこまで考えたところで、リムルは目の前の悪魔が召喚当時より上位の存在になっている事に気付く。

 先程受肉したと言っていたので、それで進化したのだろうが……。

 いや、まあそれはいい。

 それよりも、あと二人程いた気がするのだが。そこまで考えたところで、『大賢者』改め智慧之王(ラファエル)が告げる。

 

《解。"反魂の秘術"を行使した際、魔素(エネルギー)量が不足しておりました。その時に、補填に役立ちたいという願いを叶え、魔素(エネルギー)に還元して消費致しました》

 

 さらりと告げる智慧之王(ラファエル)に戦慄するリムル。それを自身の採用か否かを考えていると勘違いした黒い悪魔が、切り札を使った。

 

「聞いたところ、召喚主様は魔王ラフィエル=スノウホワイトにご執心だとか。実を言えば、私はその者と交流がありまして――ああ、彼女から頂いたこの万年筆が証拠です」

「これからヨロシクね!」

 

 思考する暇もなく、リムルは即座に返答した。

 黒い悪魔がさっと胸元にある万年筆をチラつかせた瞬間、満面の笑みで握手したのだ。

 それに感激した黒い悪魔は涙目になって頷く。

 

「おおお! 感謝します、我が君!」

「我が君はやめろ。なんかむず痒い。リムルでいいよ」

「心得ました。リムル――甘美な響きです。それでは今後はリムル様と――」

 

 なんて言っている黒い悪魔をスルーし、リムルは前のめりになりつつ言葉を紡ぐ。

 

「で、お前――いや、名前は? 何て言うんだ?」

「私など、名も無き悪魔で十分で御座います」

 

 あ、名前ないの?

 とりあえず聞きたいことは後回しにして、リムルは黒い悪魔に名前をつけることにした。

 それを告げると、黒い悪魔は嬉しそうに破顔した。少し考えて、リムルは名付けをする。

 

「お前の名前は"ディアブロ"だ。その名に相応しく、俺の役に立ってくれ!」

 

 さしあたり、ラフィエル=スノウホワイトの情報を――と続けようとしたリムルは口を噤む。

 智慧之王(ラファエル)によって知らされたディアブロの性能に、やっちゃった感が湧き上がってきたのである。

 これで謀反とか起こされたらたまったもんじゃないな、と思ったが、どうやら杞憂だったようだ。

 名付けが終わったディアブロは、その服装を執事服へと変えている。それは、リムルへ仕えるという、彼なりの意思表示だった。

 

「うん……まあいいか。ディアブロ、さっそくだがラフィエル=スノウホワイトについて知ってることを教えてくれ」

「勿論ですリムル様! 彼女は……そうですね、お人好しの具現化といったところでしょうか。それと人にしては少々賢いですね」

「うんうん」

「…………」

「………え? それだけ?」

「はい!」

 

 こいつ使えね――!!

 笑顔で頷いたディアブロを見て、リムルは頭を抱えたのだった。

 

 

 

 

 

 魔王になってから、翌々日。

 リムルは、智慧之王(ラファエル)に進化した事によって『無限牢獄』の解析鑑定が終了したため、ヴェルドラを解放していた。

 ヴェルドラ――暴風竜ヴェルドラ。

 最強の竜種が一体にして、天災(カタストロフ)級の魔物である。

 が、今はリムルの『強化分身』を依代として人型になって復活している。ついでに言うと、その膨大な妖気(オーラ)を制御するために修行中なのだ。

 

「……まだか?」

「ムムム! こうか?」

「全然違うよ!」

 

 修業して二日目だが、まるで改善されていない。

 ちょっと飽きてきた二人が妖気(オーラ)を制御する練習をしつつ全く関係のない話を始めた。

 

「そういえば、魔王になるのだったな? リムルよ」

「ん? ああ、そうそう。やっぱ、他の魔王って強い?」

「うむ! 第二世代以降の者は雑魚だが、覚醒魔王は強いのだぞ! 我は結構戦ったな。中々楽しめたぞ?」

「へぇ……あ、もしかしてラフィエル=スノウホワイトとも戦った事ある?」

「いや、ないな。会った事はあるのだが……」

「戦わなかったのか? お前なら滅茶苦茶喧嘩売りそうだと思ったんだけど」

「初対面の時は歌を聴いていたらすっかり戦う気を無くしてしまったのだ。これは何かある、面白そうだ、と思って奴に仕掛けに行ったのだが、他の魔王に邪魔をされてな。うっかりそちらと遊んでいるうちに奴と戦うのを忘れてしまった……というのが何度も続いたので諦めた」

「おい。おい、オッサン」

 

 何してくれてんだ――と怒鳴りたくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 人魔会談を終え、対魔王クレイマン戦について話し合う場所。

 ラミリスの乱入もあり、クレイマン本人についてはリムルが魔王達の宴(ワルプルギス)に直接乗り込んで倒す手筈となっている。

 その作戦のネックとしては、魔王ミリム・ナーヴァが魔王クレイマンに操られている可能性がある、という事なのだが……今は話していても仕方ない。

 が、そこで三獣士が一人、黒豹牙フォビオが告げる。

 

「もしかしたら――魔王ミリムだけじゃなく、魔王ラフィエル=スノウホワイトも敵になる可能性が有ります」

「は?」

「へっ? 何でラフィーがそんな事するのよ?」

 

 何故、と困惑するリムル陣営とポカンとするラミリスに、獣王国(ユーラザニア)の面々は苦虫を噛み潰したような表情を見せる。

 そして、あの時……暴風大妖渦(カリュブティス)の一件の時に起こった、ラフィエル=スノウホワイトによる魔王カリオンの大敗北を語った。

 その嫌らしいやり方に、リムルもラミリスも信じられないと言わんばかりの顔をする。しかし、獣王国(ユーラザニア)の彼等からは嘘が感じられない。

 

「どういう事なんだ……?」

 

 汚れた十字架のネックレスを、元々以上に磨き上げ、詫びの品を持って謝罪に来た魔王とその配下。

 噂に聞く聖女と名高い彼女であれば、それを無碍にするとは思えない。だというのに、魔王ラフィエル=スノウホワイトは、わざわざそのネックレスを彼等の目の前で壊したのだ。

 それは当然、魔王カリオンにとっては宣戦布告に他ならなくて――

 

「ラフィーがそんな事するわけないじゃないのさ! ……はっ!? わかったわ、きっとそいつは偽者ね! 名探偵ラミリスさんの推理に間違いはないわ!」

「……ラフィエル=スノウホワイトと面識があるお前から見ても、あり得ないと思うんだな?」

「当然よ!!」

 

 ふんすふんす、と鼻息荒く断言するラミリス。

 最古の魔王であるラミリスが言うのだ。信憑性は高い……が、魔国にとっては獣王国(ユーラザニア)の方が付き合いが長い。

 どちらの意見を信じるか、人によって別れるだろう。

 事実、魔国の幹部達は皆が頭を悩ませている。

 

 ラフィエル=スノウホワイトには相反する二つの噂がある。

 一つは恐ろしい魔王であるという噂。もう一つは心優しい病弱な聖女だという噂。

 どうしてこのような真逆の話があるのかは分からない。けれど……火のない所に煙は立たない。

 ラフィエル=スノウホワイトには、その二つの噂がたってしまう確かな事実があったのだろう。

 リムルとしては、ラミリスの意見を信じたい。だが同時に、死歌のフルートというこれ以上ないくらいの反対意見を肯定する物を目にしている。

 あのような呪いの横笛を持つ者が、果たして本当に優しい聖女なのだろうか?

 ――答えは、依然として不明のままだ。

 

「結論は、分からん! 魔王ラフィエル=スノウホワイトが敵に回るか否か――それは魔王のみぞ知る。そもそも俺達の勝利条件は魔王クレイマンとその配下を倒すことだ。他の魔王については臨機応変に対応する! 以上!!」

 

 ラフィエル=スノウホワイトの真意は分からない。

 シオン達が死んで、失意に暮れていたリムルを慰めて、希望を与えて活を入れてくれたのは、間違いなく彼女なのだ。

 同時に――魔王カリオンを陥れたのも、彼女である事に違いはないのだが……その理由だけでも知りたい。

 殴り込みに行く魔王達の宴(ワルプルギス)で、彼女の思いを知れたのなら――どんなにいいだろう。

 

(いや……知りにいく。必ず聞き出す――あの涙の理由だって、まだ分かってないしな)

 

 純白の少女を脳裏に描き、リムルは気合いを入れる。

 魔王クレイマンを倒し、ミリムの洗脳を解き、ラフィエル=スノウホワイトの心を問う。

 それが、今回の目的だ。

 

 




一方その頃。

オリ主「諦めよう。現実は非情なんだよ(遠い目)」
「指輪ごときで何を悟ってるんだキミは?」

ラフィエル君への憶測が飛び交う。ただし本来のラフィエル君のことを告げる噂は一つも無い。当然だよね!(笑顔)
指輪? ラフィエル君はもう諦めた。どうせ魔王達の宴(ワルプルギス)なんて数百年はねぇだろと高をくくっている。
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