病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー 作:昼寝してる人
第21.5話 不安の理由
リムルが円卓を消し去った時に、ハラハラドキドキしていたのは何もラフィエル=スノウホワイトだけではない。
何だか変な事をしていると感じ取ったギィやラミリス、操られているとされているミリムでさえも内心に不安を隠しながら外面を取り繕っていた。
特にミリムは、自分がラフィエル=スノウホワイトに実際に言った「心配しなくていい」という言葉を彼女がバラすだろうとふんでいたのに、何故か嘘をつくという暴挙をやらかした彼女に唖然としていた。
そして、何か不穏な空気を感じ取ったため、正直、クレイマンをぶっ飛ばしてラフィエル=スノウホワイトを質問攻めしたい気持ちでいっぱいだった。
クレイマンの言っていた"あの方"なんて、ミリムにとってはラフィエル=スノウホワイトと比べれば塵芥程の価値もないのだから、その気持ちも当然といえば当然である。
そもそもの話、"あの方"とやらがラフィエル=スノウホワイトに手出しをするような事を言っていたために、ミリムはクレイマン相手に一芝居うっていたのだ。
当の本人が、それ以外の重要な事をやらかしているとなれば今回のことなんて放り出して、何があったのか聞きたい……の、だが。
(ワタシに隠し事をしていたのか! 許さん!)
怒りで周りが見えなくなったミリムは、クレイマンに「出番だ」と声をかけられた事にも気付かなかった。しかし彼女はタイミングよく癇癪を起こして暴れ出したので、クレイマンもリムルも、ミリムが操られていない事には気付かなかった。
リムルは、一度魔国連邦に来た際に戦ったミリムとは違うあまりにも暴力的な攻撃に防戦一方になってしまう。
しかしそれも、途中から呆れるような理由で登場した暴風竜の参戦により流れが変わる。我を取り戻したミリムが、慌てて演技に戻ったのだ。しかしその視線は相変わらずラフィエル=スノウホワイトに向いている。
幸か不幸か、それは対峙している暴風竜と本人にしか気付かれなかった。
一方、ギィはその戦いにはあまり集中していなかった。横でギャーギャー騒ぐ妖精の相手をしていたのと、無言のまま不安げに瞳を揺らすラフィエル=スノウホワイトを気にかけていたからである。
それとは別に、カリオンとフレイが妙にラフィエル=スノウホワイトを警戒している素振りを見せるため、不可解に思っていたのもある。
現にその二人は、クレイマンとリムルの戦いよりもラフィエル=スノウホワイトを注視している。その理由は分からないが、頭の隅に留めておく程度はしておいた方がいいだろう。
その二人のことがなくても、ギィはラフィエル=スノウホワイトについて思考していたため、戦闘にはそこまで目を向けていなかった。
ラフィエル=スノウホワイトは病弱なる聖女でありながら、異界の悪魔をその身に宿す二面性を持ち合わせている。
しかし、言ってしまえばただそれだけだ。
彼女は他人に対して奉仕し過ぎる性格であるが、その三つを合わせても何か危険な事があるとは思えない。
ラフィエル=スノウホワイトが不安になっている理由の見当がつかないのだ。
様子からして、ラミリスやミリム……他の魔王達にもその理由は分かっていないだろう。
となると、ラフィエル=スノウホワイトが不安がる理由を知っているのは今現在、渦中のスライム――リムル=テンペストのみとなる。
死んでしまえばそこまでだが、妙にラフィエル=スノウホワイトに入れ込んでいる様子から察するに意地でも勝利をもぎ取るだろう。
まあ
(本人が口を割りさえすりゃ簡単に話は進むんだが……まあ無駄だろうな)
昔、ラフィエル=スノウホワイトの身体を使う異界の悪魔と戦った事を思い出し、ギィはため息を吐いた。あの時も、最後まで彼女が悪魔について話すことはなかったのだ。
それならば、今回だってあの聖女は口を閉ざすだろう。嘘をつく、という暴挙にまで出たのだから……余程、知られたくないらしい。
まったく困ったものだと、再度ため息を吐き出したギィだったが、そこで覚醒の気配を感じる。
どうやら、魔王クレイマンが一時とはいえ覚醒したらしい。
ギィは少しだけ本気を出して状況を見てみる。
リムルが思考誘導をクレイマンに仕掛け、不完全とはいえ覚醒するように仕向けたらしい。何故そのような事を――と思えば、自らの消耗していた
呆れつつも、面白いヤツだという印象を、リムルはギィに与えた。
しかし、クレイマンとその配下である
ラミリスが自分の配下をリムルに加勢させようとしてきたが、面倒くさいので却下した。そもそもこの戦い以外にラフィエル=スノウホワイトの事もある。これ以上、今回の件がこんがらがるのは御免だったのだ。
「クレイマンはここで殺す。反対の者はいるのかな?」
「好きにしろ」
第21話 許さんからなァ!
ちょっと待て! 待って下さい!(懇願)
お前こら無視すんな、何気になる事言うだけ言って放置してくれとんねん! ぶっ殺すぞ!
ていうか本当待って。
オレが何かヤバいんじゃないかって聞いてんの!(聞いてない)
なあほんと、そこんとこどうなの? ねえ? もしかして危険な目に遭ったりとかしないよね? しないんだよね?
しないって言って!!(涙目)
いやでも魔王共と出会っている時点で既に危険だな。タスケテ……タス……ケテ……。
オレの何かが覚醒する前に危険から助けてくれないと覚醒したオレが逆襲してしまうからな? わかってるよな?
ところでオレのすぐ目の前で戦いだすの止めてくれない? 怖いんだけど。怖いんだけど!!
髪の毛がね、オレの髪の毛がお前らの戦いの衝撃でふわふわしたり、数本が切れて宙を舞ったりしてるんですよ。
あと、オレの目が傷付けられそうで泣きそ……砕けた床の欠片が目に入ったんだけどォ!
ああああああっ! あああああああッ!? 目が! 目がアアァァ!!
ふざけんじゃねぇぞお前ら!! 死ね! 床に頭から転んで死んでしまえ!!(怨嗟)
許さん! 許さんからなァ!!
特に
お前、何なの?
オレはさぁ、お前を慰めてあげたのにさぁ! 泣いてるお前を、見知らぬ他人でありながら、一生懸命慰めてあげたのに!
おまえ、お前これ、恩を仇で返しやがって!!
訳分からん事言い出して詳しく説明もしないで放置した挙げ句? 嫌がらせのようにオレのすぐ目の前で戦闘しやがって。
これで怒らない奴なんていないからね?
そこんとこ分かってる??
あとミリム、お前もだ。
お前さあ……何で戦闘してるの?(素朴な疑問)
お前みたいな周りのことを考えない戦闘能力化け物の馬鹿がね、こんな狭いところで戦闘してみろ。二次被害がくるだろうが!! オレみたいに! オレみたいに!
ところでお前、戦うなら戦う事に集中すれば? 何でオレを見てんの?
……もしかして褒めて欲しいとか思ってる? 褒めないからね。むしろ怒るよ。
あれ? あの金髪の男って何時からいたっけ? ……まあいいか。何時ものことだ。知らない間に知らない奴が増える。常識だよね!(錯乱)
戦闘が怖くてガクブルしながら必死に現実逃避する事、?時間。
帰っていいかな……もう、帰っていいかな?
何時になったら終わるんですかね。え? まだ五分しか経ってない? ……いい加減にしろよお前ら! 何時までやってるつもりだ!?
とか思ってたら、リムルがクレイマンをフルボッコにし始めた。紫髪の女が黒フードと戦ってる隣でやっている。
ちなみにオレの目の前はやっぱりミリムと金髪男がやりあっている。死んで?(本音)
ていうかリムルってえげつないね……。あの時の泣きじゃくってたスライムは何処? 純粋だったあの頃に戻ってください。
怖い。成長が怖いよ。
男の弱点と言われている伝説の部位、股間を集中して狙っている……。あと顔面と鳩尾。
一体何の恨みがあるんですか……?
文字通りの踏んだり蹴ったりである。手も使おうね。
クレイマンが盛大に顔を引き攣らせ、内股になりながら目を血走らせ始めた。
おっ、どうした?(他人事)
リムル達が会話しているのを聞くに、どうやらクレイマンは覚醒したらしい。……えっ? ど、どどうやって覚醒すんの!? オレも覚醒したい!
盗み聞きしててもやり方は分からなかった。泣いた。
でも魔王ってみんな覚醒する可能性を持っているらしい。つっよ。オレもいけんのかな?
あれ、じゃあクレイマン、リムルに勝つのか。いいぞやったれ! 多少痛い目みせてやるといい! オレを混乱させた報いを受けろ!
…………え?
なんか、普通にやられてるんですけど……。覚醒してこれ? がっかりだよ! お前にはがっかりだ!
でも殴られて痛いのは分かるよ。痛みってほんと辛いよね。ところで髪の毛ジジイになってるけど大丈夫?
ストレスでハゲたり色素抜けたりするって聞いたことあるけど、こんな短時間でそこまでストレス感じたりするんだ。
変に感心していたら、リムルが魔王を見回した。
「クレイマンはここで殺す。反対の者はいるのかな?」
えっ。
オレの目の前で殺すの?
「好きにしろ」
嘘だと言ってよ……。
お前らホント許さんからな? この恨み晴らさいでか……!
オレはね、死体は大丈夫なんだ。見慣れてるから。だが殺戮、てめぇは駄目だ。
目の前で流血沙汰はムリ! ほんと無理! 頼むから止めてくれない? 後生だから。
というオレの内心は、やっぱり表に出てくれなかった。表情、お前だけは許さない。
リムルは普通にクレイマンをぶっ殺していた。
おやすみ(気絶)
「
オリ主「(気絶する)覚悟はいいか? オレはできてる」
おやすみ(ただし騒がれるため即起き)
ラフィエル君の影響で非道(?)になったリムルだったら、急所狙いとか普通にやるんじゃないかなっていう。
合理的というか、そんな感じも原作でちょいちょい出てる気がする。
現在のステータス
name:ラフィエル=スノウホワイト
skill:ユニークスキル『
ユニークスキル『
ユニークスキル『
ユニークスキル『
secret:『悪魔契約』
『悪魔共存』
『禁忌の代償』
備考:リムルの言葉は、嫌がらせで適当に言われたんじゃないかと疑っているため、既に不安を消し去った馬鹿。