病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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魔王返上/許すまじ

 第23.5話 魔王返上

 

 ラフィエル=スノウホワイトについて一悶着あったものの、最終的に魔国連邦(テンペスト)で彼女を預かる事になった。

 リムルとしては大満足な結果である。色んな魔王がこの件に関しては半永久的に根に持つ事だって気にならないくらいに。

 元々魔国連邦に移住すると宣っていたラミリスは本格的に乗り込んできそうだし、ミリムだって騒ぎ立てそうではあるのだが……今は気にしても仕方ない。

 当の本人は、既にバレてしまっては仕方ないと諦めモードに入っているようだし、良い感じに進んでいる。

 後はもうお開きにしてもいいのではないか、という空気が漂いだしたところで、ラフィエル=スノウホワイトが爆弾を落とした。

 

「私が新参の魔王の元で暮らすというのなら、私は魔王を降りた方が良いのでは?」

 

 何言ってんだこいつ、という視線がラフィエル=スノウホワイトの元へ集まる。しかし本人は本気で言っているらしく、語り出した。

 魔王が魔王に庇護を受けるというのはあり得ない。それは魔王に下る事と同義ではないか、と。

 それが通らないのであれば、魔王(リムル)の国へ行く事はしない――と。

 しかし、その要求は絶対に通らない。

 

「ラフィー、お前が魔王を降りるのは許されない。魔王として知られているからこそ、お前の安全は保たれる」

 

 一考の余地もなく、ラフィエル=スノウホワイトの要求は打ち捨てられた。当然である。

 ラフィエル=スノウホワイトの皮を被った悪魔は、各地で人々の命を無為に奪い取っている。その復讐に燃える者も、少なくはない。

 しかし彼女が魔王という名の天災(カタストロフ)だからこそ、彼等は自然災害のように受け止め、復讐を諦めているのだ。

 だというのに、ラフィエル=スノウホワイトが魔王を自ら降りる事で、十大魔王に名を連ねる事が出来なくなってしまったら、彼等は自分達で倒せる相手だと誤認し彼女に襲いかかるだろう。

 それは絶対に、あり得てはならない未来だ。

 故に、彼女の脱退は認められない。

 今現在、酷く弱っている彼女であれば、壊れそうな程に優しい彼女であれば――殺されてあげるかもしれないから。

 

「ワタシもラフィーが降りるのは反対なのだ」

「アンタね、自分がどれだけ危険な状態か分かって言ってるワケ? 却下よ、却下!」

 

 最古の魔王がそう告げれば、ラフィエル=スノウホワイトは困ったような笑みを浮かべる。

 ああ、これは何か誤魔化そうとしている顔だな――と魔王達は察し、彼女が口を開く前に矢継ぎ早に反対の意思を示した。

 魔王達の宴(ワルプルギス)は多数決が通常のルールである。

 ラフィエル=スノウホワイトの要求は、反対多数により棄却された。

 

「――さて、今回の議題は、元々はカリオンの裏切りと、そこのリムルの台頭についてだったが、その問題は片付いた。ラフィーの事も、一応は決着がついたしな。せっかくの機会だ、何か言いたい事がある奴はいるかい?」

 

 仕切り直し、と言わんばかりのギィの言葉に、少し思案した後、フレイが口を開いた。

 

「提案……いいえ、お願いがあるのだけど」

「いいぜ、言ってみろよ」

「私は今日より、ミリムに仕える事にしたわ。というわけで、魔王の地位は返上させて貰うわね」

 

「ま、予想はしてたが……どうだ、ミリム?」

「嫌なのだ! というかフレイ、ワタシはそんな話、初耳だぞ!?」

「ええ、言っていなかったもの。ほんのついさっきまで、どうするか考えていたのよ」

「何ィ!? ギィも予想していたなら何故教えてくれなかったのだ!?」

 

 喚くミリムを無視して、ギィはちらりとラフィエル=スノウホワイトを見やる。

 予想していたとは言ったが、その予想するための材料を揃えるための労力をわざわざ割いたのは、言うまでも無くラフィエル=スノウホワイトのためだ。

 おかしな動きをしていると知った直後から身辺を洗い、彼女が接触した者の情報を集め調べ上げた。結果、その副産物としてミリムとフレイの関係を知り、フレイが言いそうなことを予想していたのだ。

 本命である、ラフィエル=スノウホワイトの目的は終ぞ自分だけでは知ることが出来なかったが。

 

(ラフィーと関係のあるミリムを警戒……いや、ミリムが懐いているラフィーを警戒して、最後まで悩んでいたんだろうが)

 

 本人は弁解を一切しようとしないが、彼女の警戒は無用の心配である。ラフィエル=スノウホワイトは、絶対に私欲のために他者を傷付けたりはしない。

 それは、彼女を知る者からすれば絶対の信頼を持つ言葉だ。それ程までに心を預けるに足る人格者なのだ、ラフィエル=スノウホワイトという人間は。

 

「どうかしら、この提案を受けてくれないかしら?」

「だ、だが、ワタシは民は持たぬ主義だし……」

「ちょっと待ってくれや。そういう話なら、俺様にも言いたい事がある」

 

 フレイの提案に、ミリムは狼狽え断ろうとするが、そこでカリオンが割り込んだ。

 

「俺もよ、ミリムとタイマン張って負けた身だ。ここは潔く、軍門に下ろうと思う。建前上は、魔王同士は同格だ。相手が勇者だったならいざ知らず、同じ魔王に負けた以上、その地位は返上すべきだって思うんだ。だからよ、俺が魔王を名乗り続けるのはおこがましいってもんだぜ。てな訳で、俺は今日からミリムの配下になる。宜しくな、大将!」

 

 フレイは提案の形でミリムに迫っているが、カリオンに至っては相手の了承すら得ようとしていない。

 そんな訳で、なんて言われても納得できるはずもないミリムは、慌てて叫んだ。

 

「ちょっと待てカリオン! タイマンはクレイマンが悪いのだぞ! ワタシは操られておったのだ。知らんぞ、そんな事! それに、タイマンで負けたのであればラフィーに先に負けているだろう? 配下になるならラフィーの配下になれば良かろう!」

「えっ……」

 

 巻き込まれ事故に思わず反応してしまったラフィエル=スノウホワイトだが、慌てて口を抑えてなかったことにしようとする姿勢を見せたため、スルーされた。

 リムルがこっそり何も反応しない方が良いとジェスチャーした効果もあってか、ラフィエル=スノウホワイトはその後無反応を貫いていた。

 

「てめえ、しらばっくれるなよ。さっき自分で『操られたフリをしていた』って堂々と言ってただろうがよ! それにラフィエル=スノウホワイトだって、本人じゃなくて偽物だって話じゃねえか。だったらノーカンだ、ノーカン!」

「む!? そ、それはだな……えーと……」

 

 何とか誤魔化そうとするミリムを、フレイが唆し、カリオンが難しい言葉で責め立てる。

 目を回す寸前のミリムが、考えるのを放棄して彼等の提案を受け入れた。

 結果――

 

「いいだろう! たった今より、フレイとカリオンは魔王ではない。貴様達の望みのままに、ミリムに仕えるがいいさ」

 

 ――十大魔王は、現時点で九名となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第23話 許すまじ

 

 気絶して目を覚ましたらベッドで寝ていて、何故か超険悪な空気の真っ只中にいました。ふざけんなカス、くたばれ。

 しかもよく分からんと混乱していたら、リムル(犯人)に「俺の国に来るよね?(威圧)」されて訳も分からず頷いた。

 怖い、怖いよ……人殺しに脅されてるよ……(恐怖)

 何でオレはこんなことになってるんだろう。全ては魔王のせいである。死んで?

 

 つーか……何?

 この金髪の男、何でオレと同じベッドで寝てるの? 頭沸いとるんか?

 ていうかこいつ、さっきまでミリムと互角の殴り合いをしてた奴じゃ……?

 ……ああああああああああ!!(発狂)

 殺される! 初対面な上にゴリラやんけ! こんなん安全保障されてないぞ! 

 助けて! 助けてえええッ!!

 

 中略。

 

 いいか? 耳の穴をかっぽじってよぉーく聞け。

 神は死んだ(悟り)

 何でお前ら、こいつを無視してんの? オレの隣で爆睡してくれてますけど?

 あのさー、オレの意見をガン無視でリムルのところ行けって言うんなら、せめてこいつをどうにかして欲しいんですけど。

 何とかしてくれなかったら、俺が殺されてしまうかもしれないだろうが!!

 そこんとこちゃんと考えてくれない? こちとら、お前らみたいな頭の可笑しい防御力してるわけじゃねぇんだわ。

 リムルのところに行っても損しかないよね本当に。せめて何かしらのメリットがあれば絶望も薄らぐんだけど……っていうかさあ、

 

「私が新参の魔王の元で暮らす(リムルのところで拉致監禁される)というのなら、私は魔王を降りた方が良いのでは?」

 

 だって魔物の世界って弱肉強食がルールなんだろ。

 常日頃から思ってたんだけど、俺が魔王の座についてるのってオカシイんじゃないか?

 そもそもオレはクレイマンの配下にも勝てる気しないよ。勝てるとしたらラミリスあたりかな……ほら、だって弱そうだし。

 クレイマンに勝った程の強さと、何の躊躇もなく殺人を犯せるリムルに拉致監禁されるんなら……オレが魔王っておかしいだろ。

 リムルってあれで新参なんだぜ? オレは結構古い方だけど、絶対勝てる気しないし。

 

 これはもう止めるしかないな!!(笑顔)

 前々から思ってたんだよね、何でオレは勇者に襲われるんだろうって。魔王だからだろ(断言)

 だってさあ、オレは何も悪い事してないのに殺されかけるんだぞ? 何も悪い事してないのにッ!!

 魔王だからって、ただそれだけの理由で。だったら止めてやるわ魔王なんかよォ!

 

「ラフィー、お前が魔王を降りるのは許されない。魔王として知られているからこそ、お前の安全は保たれる」

 

 は?(絶望)

 何訳分からん事言ってくれてんねん、ぶっ殺すぞ? 魔王やってるから、命の危機に晒されてるんですけど??

 馬鹿野郎お前、ほんとお前は馬鹿だ!

 言ってる事と事実がまるで合っちゃいないんだよ! ちゃんと現実を見ろや!!

 何でこんなに話が通じないんですかねえ……。

 

「ワタシもラフィーが降りるのは反対なのだ」

「アンタね、自分がどれだけ危険な状態か分かって言ってるワケ? 却下よ、却下!」

 

 お前らオレの事嫌いなの?

 皆揃ってオレの意見を……そんなにオレを殺したいんか! 絶対に許さない、死ね!(直球)

 もういいよ、好きにしてくれ。諦めるよ、色んな事を。

 だが忘れるな。オレは何時だってこの地獄から逃げ出す隙を窺っているという事をな……!

 

「――さて、今回の議題は、元々はカリオンの裏切りと、そこのリムルの台頭についてだったが、その問題は片付いた。ラフィーの事も、一応は決着がついたしな。せっかくの機会だ、何か言いたい事がある奴はいるかい?」

 

 この話は終わりだと言わんばかりの態度で、話題を一気に変えたギィ。

 お前のそういうところが嫌いだよ。

 何でこう、……オレの要求や意見を無視しようとすんの? だから嫌いなんだよお前らのこと。

 ていうか今回の議題なんか知らねぇから。誰も教えてくれないからね(皮肉)

 帰りたい。帰って寝たい。

 何もかもを忘れて、教会のベッドで惰眠を貪りたい。

 ここで寝ろって? 馬鹿を言うな!(迫真)

 忘れてるかもしれないけどな、オレがいるベッドにはミリムと互角に闘ったゴリラがいるんだ。そんなんと一緒のベッドで寝てみろ……死ぬから(確信)

 

「タイマンで負けたのであればラフィーに先に負けているだろう? 配下になるならラフィーの配下になれば良かろう!」

「えっ……」

 

 何か自分の名前が出たから聞いてみれば、何時の間にかタイマンでカリオンを倒した事になっていた俺氏。訳が分かりません。

 うっかり反応してしまい、視線が飛んでくる。やめろ見るな注目するな。

 必死に何も言ってませんけど? というアピールを成功させる。戦闘能力化け物レベルの魔王に注目されるとか自殺行為だからね。

 ていうか今、何の話してんの?

 周りを見て何の話か察しようと努力したが分からなかった。リムルが『しーっ』というジェスチャーをしていたことしかわからなかった。

 オレに話に入るなって事? 一応リムルの先輩なんですけど……あっいやなんでもないですハイ。

 

「ラフィエル=スノウホワイトだって、本人じゃなくて偽物だって話じゃねえか。だったらノーカンだ、ノーカン!」

 

 え? 何、オレの偽物が出回ってんの? オレの知らないうちにそんなのが誕生してたの!?

 えっじゃあカリオンとタイマンして勝ったのはその偽物ってこと? つっよ……。

 立場を交換した方がいいんじゃねぇの?

 

 ――いや、ちょっと待てよ?

 もしかしてもしかしなくても、それって、おい冗談だろふざけんなよ(怒)

 オレが勇者に襲われてたのって、その偽物がやらかした悪行のせいか!!

 




「ラフィーは悪魔の事を全然話さねーからな。悪魔の悪行も肩代わりしやがるしよ」
オリ主「偽物のせいでオレが襲われたんか!(激怒)」

 お前のせいだよ。
 そろそろ悪魔の存在に欠片でもいいから気付いてあげても良いんだよ?
 そんなんだから嫌われるんですよ(悪魔に)

 現在のステータス

 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
   ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
   ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
   ユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)
 secret:『悪魔契約』
     『悪魔共存』
     『禁忌の代償』
 備考:第二世代以降の魔王(カリオンとフレイ)の警戒は完全には解けなかった。
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