病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー 作:昼寝してる人
第24.5話
「前から思ってたけど、何で十人じゃないのに十大魔王なんだ?」
――それは、新参の魔王の素朴な疑問から始まった。
彼……新たなる魔王リムル=テンペストの言葉に、魔王達がピクリと反応したのである。
「うむ。実はな、十大魔王という呼び名が定着した頃、ラフィーを病弱の聖女として認識する人間が多かったのだ」
「そのせいで、ラフィーを除いた魔王で十大魔王なんて付けられちゃったのよね」
へえ、そうなんだ。
問いを投げかけた本人としては、それだけで十分満足する答えだったのだが、そうは問屋が卸さない。
この名称には、魔王全員が納得などしていないからだ。
「今日は魔王が三人減り、一人が加入した。――これを機に新たな名称を考えようと思う」
真面目な顔でギィがそう宣言すると、他の魔王達まで大真面目に相槌を打った。
「幸いにも、今は
冗談なんて言いそうもないヴァレンタインが、そんな事を言ったために、リムルは唖然とする。
え? これ本気で言ってんの? ――と。
ギィが始めた茶番か何かだと思っていたリムルは、大真面目に名称を考えなければいけないようだと頰を引き攣らせる。
「前回は散々だったからね。名称を決める度に増えたり減ったりしてさ、何度も
そんなにくだらない事で何度も呼び出されてはたまったものではない。
その時のことを思い出したのか、ラフィエル=スノウホワイトですら疲れた顔をしていた。その様子に当時の苦労が垣間見え、リムルは同情した。
同情したところで、はたと気付く。
これはもしや、今回の一回で決めなければその時と同じように何度も開催されるのでは?
たらりとリムルの頰を冷や汗が伝った。
「そうそう。前回の"十大魔王"って名称もさ、結局は人間が呼び出したんだぜ? 俺達が必死に考えたのも無駄になったんだよな。だから俺はもう無理。考える気力が沸いてこねーわ」
「まあ待て、ディーノよ。今は文句を言うのではなく、建設的な意見を出そうではないか」
「何言ってんだよダグリュール。お前は息子に考えさせた名前を持ってくるだけで、自分では一度も考えてなかったじゃねーの」
大人な態度で執り成すダグリュールを一蹴し、言葉を詰まらせる彼にディーノは勝ち誇った顔を見せた。
ちょっとした小競り合いが発生したが、他の魔王は我関せずの態度を貫いていた。
「落ち着け、お前達」
そんなマイペースな連中のリーダーをしているギィが、円卓をバンと叩きながら小競り合いを鎮める。
その態度に、リムルはギィをちょっとだけ尊敬した。やはり魔王のリーダー格は、ちゃんとした感性を持っているのかと。
「こんな時こそ、普段は見せない協調性で乗り切ろうじゃねーか!」
「え、でも……今回は、九大――」
わざわざ考えなくてもいいじゃない、と百パーセント善意で言おうとした言葉を、ラミリスは飲み込む。
それ以上は言うなよ、という無言の圧力に屈したのである。そして先程の発言を無かったことにするためにギィの発言を全力でよいしょし始めた。
「そうよ。今、ギィがいい事言った! 皆で頑張るのよ!」
「……また増えるかもしれませんし、十大魔王のままでも――だ、駄目ですよね」
ラミリスに続き、今後増えるかもしれない魔王がいれば、また考えなければいけないから……と控えめに新たな名称を考えるのを拒否しようとするラフィエル=スノウホワイトに、先程よりはかなり弱いものの、無言の圧力が加えられる。
流石のラフィエル=スノウホワイトもそれには耐えられなかったのか、涙目で意見を引っ込めた。
その姿に庇護欲を大いに刺激されたリムルが慰めると、彼女は困惑しつつもその慰めを受け入れた。
それを視界にしっかりと捉えていたギィが、笑顔で口を開く。
「今日、新たな魔王として立つリムルよ、君に素晴らしい特権を与えたい」
「え? いや、いらないけど……」
ラフィエル=スノウホワイトを慰める事に集中していたリムルは、ギィの言葉に嫌な予感がして即座を断る。しかし、それは見込みが甘かった。
ドゴン! という轟音と共に、皆が囲んでいた円卓が真っ二つに割れたのだ。
ギィは笑顔のまま、リムルの断りを無視して続ける。
「そうだとも。我等の新たなる呼び名を付ける権利、それを君に進呈する。これは大変名誉な事だから、当然引き受けてくれるよな?」
リムルの隣まで歩み寄り、頰を撫でながら告げるギィ。
無言のままのリムルに、ラフィエル=スノウホワイトが心配そうな眼差しを送ってくる。彼女にそんな顔をさせる訳にはいかない。ここはハッキリ断っておかねば。
そう決意したリムルが口を開こうとすると、ギィがすかさず追い打ちをかける。
しかも、ラフィエル=スノウホワイトに聞かれないように耳元で囁くように。
「お前が人数を減らしたのが原因なんだぜ? 勿論責任取って、名前くらい考えるよな? というかよ、ラフィーを連れて行くんだから、これくらいは快くやってくれるよな? ラフィーを連れて行くんだから」
ラフィエル=スノウホワイトの件は、やはり根に持っていたらしく、ギィはリムルに脅迫した。
新たなる呼び名を考えないのであれば、ラフィエル=スノウホワイトを魔国連邦に連れて行く事は許さない――言外にそう告げたのだ。
そう言われてしまえば、リムルは拒否など出来ない。
「わかったよ。考えるけど、気に食わないからって文句を言うなよ?」
不承不承、リムルはその役目を引き受けたのだった。
そして間もなく、九柱の魔王の名称は決定する。その名も、
――以上、九名。
第24話 良い奴かもしれない
「前から思ってたけど、何で十人じゃないのに十大魔王なんだ?」
若干一名――オレだけは納得なんて欠片もしていないにも関わらず、全て一段落したという空気が流れた。何人かがのほほんとお茶をすすり始めた、そんな時。
リムルの疑問に、オレは首を傾げた。
え、だって……魔王って十人だろ? リムルが来る前の人数な訳だから。
何言ってんだこいつは?
全く、魔王ってのは人数を数える事も出来んのか。
「うむ。実はな、十大魔王という呼び名が定着した頃、ラフィーを病弱の聖女として認識する人間が多かったのだ」
「そのせいで、ラフィーを除いた魔王で十大魔王なんて付けられちゃったのよね」
えっ!?
オレ、無理矢理仲間に引き込まれた挙げ句、周囲からは仲間外れにされてんの!?
ていうかオレを外して十人……? ギィとミリム、ラミリスで三人。第二世代が三人。その後に入ってきたのが魔王引退した三人と、もう一人。
合計十人。
…………いや、だって、他人とか興味なかったし。入れ替わりも激しかったし、人数間違えるとかしょうがないよ。ねえ?
第二世代以降の魔王って魔王になったすぐ後で死ぬとかザラだったしさ。これはオレ全然悪くないな!
全く魔王ってのは本当に自分勝手で困る。
「今日は魔王が三人減り、一人が加入した。――これを機に新たな名称を考えようと思う」
嫌です(即答)
もういいじゃん、前回みたいに人間側で勝手に決めて貰おう。どうせお前ら、中々意見出さないし反対ばっかするしで終わねぇだろ。
「前回は散々だったからね。名称を決める度に増えたり減ったりしてさ、何度も
本当だよ。
一日ごとに何度も何度も呼び出されるオレの身にもなれよ。わかってる? オレはね、普通よりも身体が弱い凡人なんだからな?
それをお前、何度も呼び出しておってからに……あの時のオレの睡眠時間知ってる? 一日三十分だ。
死んでくれ。
まあ、お前らみたいな睡眠が必要なさそうな人外には分からないとは思うけれども?(皮肉)
分からないなりに、なんとなくでいいから理解はして欲しい。そこんとこ本当頼むから、何とかしてくれ。
だから嫌だ。
あんな地獄を見るのは一度だけで十分だ。二回目なんて本気で死んでしまう。
「落ち着け、お前達。こんな時こそ、普段は見せない協調性で乗り切ろうじゃねーか!」
「え、でも……今回は、九大――」
ばん、と円卓を叩いて注目を集めるギィだが、その視線はオレに向けられている。やれってか? またオレに考えさせようってか?
嫌だからな! お前ら、オレに考えさせるだけ考えさせて、結局は賛成しなかったの、オレ覚えてるかんな!
ていうかね、そもそもオレを除かれていたとはいえ、十一人で十大魔王だったんだからさ、九人で十大魔王でも良いと思うんだよ。
「……また増えるかもしれませんし(というか絶対増えるだろ経験則で)、(考えるの面倒だし)十大魔王のままでも――」
そこまで言ったところで、とんでもない殺意に晒されている事に気付く。
ギィやミリムですら、目を細めてオレを睨んでいた。
……駄目だこれ、殺される(恐怖)
「――だ、駄目ですよね」
ガタガタ震え出す身体の存在感を必死に薄める。そう、今のオレは空気だ。空気になるんだ。
これ以上いらんこと言ってみろ、あの世へ旅立つ事になるぞ。泣きそう。というか漏らすかもしれない。名誉のために何がとは言わないが。
「大丈夫か?」
ふぁい!?
な、何だよ、お前もオレに文句があるって言うのか!? 文句があるなら、そっと心の中にしまっておけよォ! 怖いから!
もうほんと止めて。サボろうとして悪かったと思ってるから、これ以上責めないでくれ。
お願いだから殺さないで……(震え)
何を言われるのかと戦々恐々していたら、そっと背中を摩られた。……え?
一体何をされているのかと困惑しつつリムルの顔を窺う。なんだかすごく心配そうな顔をしていた。
…………。
…………あれ?
もしかして、リムルってものすごく良い奴なのでは?
今までリムルに言われた言葉を思い出してみる。聞きようによってはオレを案じている言葉ばっかりな気がしないでもない。
……よく見たらリムルって誰かに似てるな。オレの知り合いなんて数える程しかいないんだから、ちょっと考えたら分かるはず。
シズエか!!
も、もしかしてリムルってシズエの娘とかそんな感じなんじゃねぇの? 結婚の報告なんてされてないんだけど。シズエめ、ビックリしただろうが!
まあ、シズエの血縁なら悪い奴じゃないだろ。ということは、リムルは良い奴なんだな?
だったら怖がる必要はないな! 例え簡単に人を殺すような奴でも――いや無理だわ。
普通に怖いから。
出来るだけ怒らせない方向で接していこう、うん。
「今日、新たな魔王として立つリムルよ、君に素晴らしい特権を与えたい」
「え? いや、いらないけど……」
心の中で決心すると、ギィが気味の悪い笑顔でリムルに話しかけた。と思ったらいらん事をリムルに押しつけようとして普通に断られていた。
笑うしかない――瞬きの後、オレ達が囲んでいた円卓が割れた。
は?(呆然)
ギィを見ると、足を振り上げた体勢からゆっくりと足を下ろしていた。
蹴るだけで円卓壊したの? 頭おかしいよ。
ギィはそのまま悠然とリムルに歩み寄ると、恋人に接するような仕草でリムルの頰を撫でた。お前ら付き合ってんの?(驚愕)
「そうだとも。我等の新たなる呼び名を付ける権利、それを君に進呈する。これは大変名誉な事だから、当然引き受けてくれるよな?」
オレを散々怖がらせてるこの場で、よくイチャイチャできるな、ぶっ殺すぞ。
死んでくれないかな、と思いながらギィを見る。余所でやれよ。
……ん? 何か、リムルが滅茶苦茶冷たい目でギィを見てるんだけど。しかも、なんかやばいくらい無表情で怖い。
何なの? ギィとの温度差激しくない?
オレ、こんな奴のところでこれから監禁されるの? 不安しかないんだけど。オレの未来が心配でならない。
あ、ギィが耳を甘噛みし始めた。
「わかったよ。考えるけど、気に食わないからって文句を言うなよ?」
諦めたように了承するリムル。
やっぱり、世の恋人ってのは彼氏彼女に甘えられたらどんなお願いでも聞いてしまうものなのか。
オレには出来ないな。恋人よりも自分のことが大切だからさ。
「ラフィエル=スノウホワイトのためなら、しょうがないか……」
オリ主「ギィとリムルって付き合ってたんだ……」
その勘違いは正直ない。
それをディアブロ辺りに言ったらギィ諸共殺されること間違いなしの暴挙。言うなよ、絶対に言うなよ?
多分リムル本人に直接漏らす。そして全力で否定される。
現在のステータス
name:ラフィエル=スノウホワイト
skill:ユニークスキル『
ユニークスキル『
ユニークスキル『
ユニークスキル『
secret:『悪魔契約』
『悪魔共存』
『禁忌の代償』
備考:ちょっとだけリムルへの警戒を緩めた。
次回は幕間で
『或る勇者の話』(ラフィエル君の対の勇者)
『或る未来での話』(クロエとの雑談)
『或る悪魔の怒り』(眷属に怒る原初の黒)
の予定(未定)です