病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー 作:昼寝してる人
第2.5話 心優しき弱者
始まりは、とある馬鹿な国が、星王龍ヴェルダナーヴァの一粒種である
ミリムは大層、そのペットを可愛がっていた。故に、キレた。その国を怒りのままに蹂躙し、冷めやらぬ怒りをそのまま辺りへ破壊として撒き散らした。
けれど、そこへ来たのが魔王ギィ・クリムゾンである。怒りの衝動のまま、我をなくして暴れまわる彼女の相手を努め、全力で迎え撃つ。それが一番手っ取り早いと思ったからだ。
そして戦いは続けられ、場所は変わり、とある草原にまで変わっていた。そこで周りの被害など気にせず暴れ回り、見かねた妖精女王たるラミリスが仲介に入った。余波で世界が崩壊しかねなかったからだ。
ギィというよりも、ラミリスの仲介のおかげでようやく冷静になったミリム。それでも怒りは治まらないようで、ふぅふぅと荒い息を繰り返している。
そんな中で、目に止まったのが、とある少女の住む教会である。
喧嘩のあとは休憩。当然の事だ。
故に、その教会へ休憩しに入ったのも――当然といえば、当然なのかもしれない。
「邪魔するぜ」
そう言って、ギィは教会へずかずかと入り込んだ。家主の応答など気にもしていない。それは他の二人も同じだったようで、教会の椅子に思い思いに座り込んだ。
そして――ようやく、家主である少女を見た。
純白の衣装を身に纏った、まるで戦いを知らぬ弱っちそうな少女。彼女は穏やかな笑みを浮かべて三人を見ていた。
しばらく、無言のまま時が過ぎた。
そして何を思ったのか、彼女は徐に立ち上がると家の奥へ姿を消した。
「そりゃ逃げるか。しかしよく持った方だな」
「……今は、どうでもいいのだ」
楽しげに笑うギィとは対象的に、ミリムは怒りと悲しみがない混ぜになったような顔で言った。その声は普段よりとても低く、近くにいたラミリスが肩をビクつかせた。
そんな雰囲気の悪い場所へ、少女が戻ってくる。
お? と驚いた顔を見せるギィの前に、ティーカップが置かれる。それからミリムとラミリスの前にも、色違いのティーカップが。
困惑の色を強くする三人に、少女は微笑んだ。
「落ち着きますよ」
ただ一言そう言うと、少し離れたところに座った。
無言のまま、ミリムがゆっくりとそれに手を付ける。一口、二口……半分ほどそれを飲んだところで、ミリムの両目から涙が零れ落ちた。
それに驚いたのはギィとラミリスである。あのミリムが泣いた? どうして? いや、答えは知っている。あのペットはもういないのだ。……
そして、今は怒りではなく、悲しみがミリムの感情の大半を占めているという事だ。
「辛い事があったのですね」
まるで、自分もその悲しみを共有しているかのような顔を見せる少女に、ミリムは頷く。そして、吐き出した。ペットのことを。今までの思い出。そして殺されるまで。
泣きながら、時には思い出した怒りで物を破壊しながらも、すべてを吐露した。
我を取り戻した時には、気が付いた時には、優しい温もりが全身を包み込んでいた。少女に抱き締められていたのだ。
その、少し力を入れたら簡単に壊れてしまいそうな、弱い体で抱きしめられている。微かに震えている身体はきっと、自分と同じく悲しみを感じているからで。
自分に深く共感して、一緒に背負おうとしてくれているからで。
初対面なのに。今日、初めて出会ったのに。
――でも、泣きたくなるほど嬉しかった。それと同じくらい悲しかった。
だから泣いた。みっともないくらいに泣いて、抱き締めてくれる少女に縋り付いた。
「もっと一緒にいたかったのだ!」
「たくさん遊んで、これからもワタシとずっと一緒だと思っていたのに!」
泣いて泣いて、叫んで、喚いた。
それでもずっと、優しく包み込んでくれた温もりは逃したくなくて、離したくなくて。
少女の震える体を抱き寄せて、縋り付く。みっともなくても受け入れてくれる優しい少女を、壊さないように。
翌日。
赤く腫れた目を擦りながら、ミリムは目を覚ました。そこは白い壁と天井がある部屋だった。
部屋を出て、知り合いの気配と、弱っちい気配が一つある部屋へ向かう。そこは、昨日見た教会だった。
ギィとラミリスの対面に座っているのは、昨日の少女だ。駆け寄ろうとしたところでラミリスに声をかけられ、中断する。
「あっ、ミリム! 起きたのなら声をかけるのよさ!」
「分かってるのだ。そんなことより、オマエ、名前は何ていうのだ? ネームドか? ないならワタシがつけてやるぞ! 特別なのだ!」
ラミリスの言葉をほとんどスルーし、怒涛の勢いで少女に詰め寄る。たった一晩、されど一晩。ミリムはこのか弱い少女をとことん気に入ったらしかった。
だが当の本人はパチパチと瞬きを繰り返し、ミリムの勢いに呆けていた。痺れを切らしたミリムがもう一度口を開こうとすると、ギィが楽しげに口を挟んだ。
「そいつ、異世界人だぞ」
「……何だと?」
驚いて目を見開くミリムが少女に顔を向けると、肯定するように頷かれる。この時代、異世界人は珍しいのだ。そして何より、こんな辺鄙なところで住む異世界人に驚いていた。
こんなところに住むのだから人間ではないだろう。それに人間らしい魔素でもない。恐らくは魔人だろう……と当たりをつけていたのだから。
まさか異世界人だとは。
「じゃあ、……名前は何ていうのだ?」
一番聞きたかったこと。
少女の名前は一体何なのか。それが、聞きたい。ミリムにとって異世界人というのは驚きだが、重要なことではなかった。
返って来た名前を、ミリムは繰り返した。そして、嬉しそうに笑った。
「うむ! じゃあワタシはオマエのことをラフィーと呼ぶのだ! ラフィーも、ワタシのことはミリムでいいぞ! ワタシとラフィーの仲だからな!」
ミリムはふふんと胸を張ってそう言った。
『泣いて、目一杯悲しんで。思い出を
彼女がそう言ってくれたから、ミリムは笑うのだ。心の中に思い出を大事にしまいこんだまま。
第2話 瞬間移動したら異世界だった件
カ――ッ! やってらんねぇ、オレは帰らせてもらう! いやオレの家ここだからお前らが帰れよ! マジで!
重苦しい教会の雰囲気に、オレは胃が痛くなりそうだった。オレが何をしたっていうんだ。なんだってこんな危険そうな奴等がウチにいるんだよお……。
帰れ! 帰ってくれよォ! お願いだから!
まあ帰ってくれないんだけど。何しに来たの? 座るだけなら外に座ってくんない? 営業妨害だボケ! 何も営業してねぇけどな!
あー泣きたい。
というか、何だろう。赤い奴と金色の奴と妙に目が合うんだけど。何が言いたいわけ? ちゃんと言えよ、目で話してんじゃねぇ、わからんだろうがッ!
……もしかして茶を要求してんの? え? 無断でずかずかと入り込んで来た癖に、お前ら茶まで要求すんの? とんだクソ野郎じゃねぇか!!
でも逆らえない怖いから! だっておま、空飛ぶような人外に面と向かって「嫌です♪」なんて言えんの? オレは無理。
すごすごと部屋の奥のキッチンでお茶を淹れてきた。はあーあ、この紅茶お気に入りだったのに……。何であんな頭のおかしい奴等にくれてやらなきゃならんのだ……。
グチグチ文句を心の中で言いながら、オレの表情筋はいつも通り仕事放棄で微笑んでいる。何なんですかね、お前の主は誰だと思ってんの?
はーっ……やってらんねぇわ。
お茶を持っていって、なんかめっちゃ雰囲気が険悪になっていた。え、怖……短時間で何があったん? これだから人外は……。
つーかオレの家で一触即発の空気やめてくんない? 落ち着けって、な?
必死の思いでそれを口に出す。ピンクの奴だけは黙って紅茶に口をつけた。お前は今、この場で最も空気を読めているぞ。褒めて遣わ……何で泣いてんのォ!?
な、何も入れてないぞ! 正直毒を入れてやろうとは何度も思ったけど、バレたら後が怖いからやってないもん! 本当だぞ!
うおおおヤバイ、どうしよう。とか思ってたら、金色の奴の独り言のおかげで理解した。なんか悲しい事があったらしい。ああ、わかるよ。泣いちゃうよね。そういう事あると。
「辛い事があったのですね(オレも現在進行形で辛い事があるからわかるよ)」
わけわからん奴等に家を占拠されてたりすんだよね。辛いよね、めっちゃ分かる。オレも泣きたい。そしてさっさと出ていってほしい。
なんて思ってたら、ピンクの奴が語りだした。正直聞きたくないっす。勝手に話し出すの止めてくれない? お悩み相談室じゃねぇんだわ。金とんぞゴルァ。
まあ言えないんだけどね。怖いし。あんな幼い子供の姿してっけど、さっき地形が変わるような規模でステゴロしてたのオレ知ってるからさ。
だからあんな大規模な喧嘩する理由とか知りたくないから。なんか、知ったら殺されるとかありそうだし。ないかもだけど。つか聞きたくないっつってんだろ! やめろ、話すんじゃねぇ!
「ペットが死んだのだ」
は? しょうもな。
「殺された」
そうなんすか……ペット殺されたからってあんな喧嘩するってマジモンペ。やっぱり頭がクレイジーな奴なんだあ。関わりたくねぇ。
あーマジで話すの止めてくれないかな。オレは聞きたくないんだよォ!
話すたびに教会の備品っつーか家具壊すの止めて!! 誰が直して補充すると思ってんだ? オレだよ!! めっちゃ手間かけてんだぞ壊すんじゃねぇ! 聞けや!
あっ今顔掠めた怖い何でもないです。どうぞ好きに壊していってくださいフォーエバー。
嘘です止めて壊さないでえ! オレ、ここが破壊されちゃったら何処で寝泊まりすればいいの!? やめて! 教会を壊すのはもう止めたげてよお!
殺されるかもしれないという恐怖で震えつつ、オレは決死の覚悟でピンクを止めるために動き出した。怖い、マジ怖っす。
よ、よーし行くぞ! あいつを捕まえるんだ! 羽交い締めしろ! 出来なきゃとりあえず捕まえりゃ何とかなる。たぶん。きっと。めいびー。
死ぬかおもた……。
ようやっと落ち着いてくれた。いや落ち着いてるかは知らんけど。なんかものっそい号泣してっけど。何? そんなにペット大事だったん? だったらちゃんと見張っとけよ……事故ってのは突発的に起こるもんなんだぜ? オレの転性とか瞬間移動みたいにな…。
まあオレ、性別とか聖歌隊にいた頃から気にしたことなかったし、誰かに見張られない生活を望んでたから事故ったのはオレにとってはラッキーだったけど。
とりあえず慰めとくか……。服汚れるし……。
「(持論だけど、)泣いて、目一杯悲しんで(とりあえず一旦気持ちリセットしてあらかた忘れるといいぞ。悪い)思い出を心の中に(永遠に)しまったら(いつか全部忘れてるからな)――(それで)次の日には前を向きましょう(忘れようと思ったら忘れらんないからな)」
どうだ、完璧な慰めだろう。
はーっ……オレって本当優しさの塊。感謝してくれよな! 家に無断上がり込むような輩にまで優しさを振り撒くオレ、こんな神対応する人間いる? いやいない。優しすぎるぜオレ!
自画自賛していると、いつの間にかピンクは眠っていた。えぇ……どうすんのこれ。
結局ピンクは教会の奥の部屋に寝かせた。赤い奴が勝手に運んだ。家主の意見無視か、おお? お前ほんと失礼な奴だな! ムカついたから、絶対に寝室は使わせなかった。だだっ広いだけの部屋を貸してやった。
それで、何故かオレは赤い奴と金色の奴と同じテーブルを囲まされていた。何なの? 帰れよ。何がしたいんだよ。
自己紹介された。
今更かよお前ら、何なんだよ!
あ? 魔王? 何それ……えっ、怖い。国一つ簡単に滅ぼせる? オレ何でこんな化物と同席してんの? 帰ってくれよ……。
え? オレは別に普通の元聖歌隊ですけど……。は? 違う世界? ここは都がある世界じゃない? ドユコト?
え!?
へぇ、ふーん……。
星王竜とか言われても訳わからんぜ。とりあえずお前はルドラとかいう奴と喧嘩してんのな、把握。でもオレにそんなん関係ないよね。すぐ忘れるわ。
ていうか何でオレにめっちゃ話してくんの? 止めてくんないかな……。オレお前らと関わりたくないんだわ。
うん、うん。ところで金色の奴、なんか縮んでるけど何で? 力使いすぎた? 何でそんなんで縮むん? ああ、異世界……。
なんかもう疲れたから、とりあえず適当に聞き流した。聞き流してたら、なんか太陽が一周していた。
朝になったら、ミリム(
二度と来るんじゃねぇぞ!!
一週間に一回、あの三人がうちでお茶会し始めた。
なんなの?(怒)
「ワタシとラフィーの仲なのだ。いつでも遊びに来てもいいのだぞ? ……遠くは行けない? まったく、しょうがないのだ! ワタシがたくさん遊びに来てやるぞ!」
オリ主「来なくていいです。来ないで…マジで…」
本編にはなかった会話。ラフィエル君の台詞? ああ、お口が言う事を聞かなかったから、言えなかったらしいっすよ。
現在のステータス
name:ラフィエル=スノウホワイト
skill:ユニークスキル『
ユニークスキル『
secret:『悪魔契約』
『悪魔共存』
『禁忌の代償』
備考:最古の魔王勢に関して、文句言ったら殺される可能性がある(悪意なしの殺害も含む)ので心の中でしか苦言を呈せない。