病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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或る悪魔の怒り

 第29.5話 誰も傷付かない方法

 

 悪魔は激怒した。必ずや、あの邪知暴虐の眷属を除かねばならぬと決意した。悪魔には(リムルの)思考は分からぬ。

 悪魔は魔界の住人である。気紛れに召喚に応じ、気に入った人間の英雄をマーキングしてきた。そして仕えるべき主を、ようやく見つけ出したのだ。

 かの御方が悪魔を召喚するその時を今か今かと待ち望んでいた、のだが――

 

「あああああああ! ああああああああ!!」

 

 嬉々としてその召喚に応じようとした黒の悪魔は、何と自身の眷属に抜け駆けされてしまった。

 思わぬ事態に棒立ちのまま間抜けな顔を数分ほど晒してしまったが、このままで終われるかとその召喚に無理矢理乗り込もうと力を解放する。

 が、召喚主にあっさりと召喚扉を閉じられてしまい、その目論見は不発に終わった。

 近くで気まずそうに、所在なさげに立っている配下二人を苛立ちのままに殺してしまおうかと考えてしまうくらいには、キレていた。

 この怒りを発散させるため、黒の悪魔はどの世界にも存在しており、存在していない場所――ラフィエル=スノウホワイトの住処へ強引に空間を繋ぐ。

 そして……、

 

「!? ッ!? ~~~!!?」

 

 異空間という名の結界をスルーして教会に入り込んだ悪魔は、苛立ちの余り頭を掻き毟る。

 口からは怨嗟によって言葉にならない絶叫が飛び出し、地団駄を踏んでいる。

 あまりの変わりように、ラフィエル=スノウホワイトですら唖然として後退りするほどの有様だ。彼女の顔が引き攣るなんて、滅多にあることではない。

 ギィが見れば大爆笑して、生涯ネタとして揶揄い続ける事間違いなしの醜態を現在進行形で晒している黒の悪魔には、そんな彼女の姿は見えていないのだが。

 

「ああ……忌々しい、忌々しい! 私の眷属の分際であの方に召喚されるなど……この私を差し置いて!? 出来ることなら私の手で殺してやりたい! しかし、あの者は今やあの方の配下……!!」

 

 すぐに手を下せるものの、リムルの所有物を勝手に壊しては初対面の時の好感度が下がってしまうため実行できない。

 ギリギリと奥歯を噛みしめ、黒の悪魔は必死に殺意の衝動を押し殺す。しかしその身から溢れる妖気(オーラ)は抑え切れていない。

 それは教会のあらゆる物を破壊しかけ、ラフィエル=スノウホワイトが慌ててそれらに防壁(サンクチュアリ)を張って事無きを得た。

 安堵の息を漏らすラフィエル=スノウホワイトに、黒の悪魔は感情を包み隠した笑顔を向ける。どうやら怒りは押し殺せたようで、何時もの彼がそこにはいた。

 

「ラフィエル。貴方に聞きたいことがあります」

「は? はぁ……」

 

 気の抜けた声で応じるラフィエル=スノウホワイトに、黒の悪魔はなんてことない雑談をするかのような気軽な調子で問いかけた。

 

「殺したい程憎い相手を殺さないように仕置きをするには何が効果的だと思いますか?」

「えっ」

 

 驚いた顔を見せるラフィエル=スノウホワイトに、黒の悪魔は詳細を話し出す。

 曰く、主にしたい人物ができたこと。その人物が悪魔召喚をしたので、意気揚々とその召喚に応じようとしたところ、自分の眷属に先を越されたこと。

 その行いがあまりにも目に余るので、何かしらの報復措置を設けたいこと。

 しかし自分が考えたものでは、うっかり殺してしまって主にしたい者の好感度を下げてしまう可能性があるため、ラフィエル=スノウホワイトの考えを参考にしたいこと。

 

 それらを言い終え、黒の悪魔は期待に満ちた表情でラフィエル=スノウホワイトを見つめる。

 そんな熱視線を受けたラフィエル=スノウホワイトは、瞳を揺らして返答を迷っていた。当然ながら、聖女たる彼女はそんな非道な真似を推奨するような発言など出来るわけもない。

 それくらい黒の悪魔だって分かっている。

 つまりこれは、黒の悪魔の八つ当たりである。不満の捌け口にラフィエル=スノウホワイトという人間を選んだに過ぎない。

 この質問に困り切った彼女を見て愉しみ、気持ちを上昇させようという悪魔の考えに基づいて実行した嫌がらせだ。

 

「ええと……そ、そうですね。えっと……あの……」

 

 だが、それでもラフィエル=スノウホワイトという人物は、どれだけ困難な質問であろうと答えようとする人間なのだ。

 暴力的ではない、何か前向きな解決法はないかと頭をフル回転させて必死で言葉を紡ごうとしている。

 そんな彼女の姿に、黒の悪魔は思っていた反応ではなかったためあまり面白くはなかった。が、それでも話を振った以上は何を言うのか気になったようで、彼女の言葉を最後まで待つ。

 

「えっと……その主という方に、より貴方が近付けば良いと思います」

「ほう?」

「貴方よりも先に召喚された眷属よりも、貴方がより主に近い位置までいけば、その主は眷属よりも貴方を重用しているという事ですから。貴方のことを優れていると主は思ってくれているという認識を眷属の方に与えられるのではないでしょうか。そうすれば――」

「勝手に相手がダメージを受けてくれる、と」

「はい。そうなります」

 

「ふむ……なるほど。では私は失礼します」

「え?」

 

 主にも、自分にも、眷属にも、誰も怪我をさせない方々を必死に考えたのだろう。精神はどうあれ、それなら肉体に傷はつかない。

 無理難題を解決させるために、知恵を振り絞ったのだと見える。それも、見ず知らずの誰かを助けるために。適当に言えばそれで済むのに、わざわざ。

 全く、噂に違わぬお人好しである。

 黒の悪魔は呆れの感情を笑顔に隠しつつ、長居は無用とばかりにさっさと立ち去ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第29話 

 

 最近は穏やかな日々が続いている。

 どこぞの魔王がアポ無し訪問してきてオレの胃が荒れる事も無く、もはや嵐の前の静けさ的な奴なのではないかと危機感を募らせてたり。

 そんな愛して止まない平和な日常が壊れるのは、いつも死の気配が濃厚に漂っている時だ。

 そう――

 

「あああああああ! ああああああああ!!」

 

 ――目を血走らせ、言葉になっていない叫び声を撒き散らしながら地団駄を踏む人外が、殺気をオレに叩き付けながら現れた時、とか。

 頭を掻き毟って発狂している三度目ましてな黒の悪魔は、何故か怒り心頭である。

 ……正直に言っていいか?

 怖い。むしろ怖い。

 だって三回目なんだぞ、こいつと会うの。その三回目でこんなに変わり果てた姿を目にするだなんて、思わないだろうが!!

 しかもいつもは真っ黒な笑顔が常だから、余計にこの取り乱しようが怖い!

 何? 何なの?

 もしかしてオレ何かした? してないよね?

 毎度毎度、何でオレがこんな目に遭わなきゃいけないんだ!(怒)

 いい加減にしろ、世界! めッ!!(錯乱)

 

「ああ……忌々しい、忌々しい! 私の眷属の分際であの方に召喚されるなど……この私を差し置いて!? 出来ることなら私の手で殺してやりたい! しかし、あの者は今やあの方の配下……!!」

 

 え……?(正気)

 お前それ、オレは関係なくない? 何でわざわざウチに来て暴れてんの? 嫌がらせなの?

 お前の眷属なんか知らねぇよ。お前のおうちの事情なんて、オレには関係ないだろ! どっか行け!

 なんて思っていたら、黒の悪魔は急に静かになった。

 あれ? もしかしてオレの迷惑をちゃんと考えてくれた? 遅すぎない?

 やれるなら最初からやれよな!(上から目線)

 

 黒の悪魔から漏れる何かが教会に設置している家具に触れた瞬間にヒビが入ったりし始めた。

 これ、オレの迷惑を考えてくれたんじゃなくて、単純に嫌がらせのやり方変えただけじゃね?(名推理)

 お前ふざっけんじゃねぇぞ悪魔この野郎!!

 死ね!!(直球)

 

 これどうするんだよ……何とかして止めなきゃ。じゃないとオレの教会が潰れる!

 聖書、聖書に何か守るもの……まも、守護、結界的なあの……えっと、あっあっ、壊れて……あっ、防壁(サンクチュアリ)

 よ、よーしセーフ。少なくともアウトではない。よってセーフ判定だ。

 ふぅ……心の中で額の汗を拭うと、黒の悪魔は笑顔のまま話しかけてきた。

 

「ラフィエル。貴方に聞きたいことがあります」

「は?(本音) はぁ……(建前)」

 

 質問するためだけにオレの教会壊そうとしたんか。お前、許さんからな?(静かな怒り)

 いつか目に物見せてやる……絶対に許さない。

 そもそも三度目ましてなのに、何でこんなに迷惑かけられなきゃいけないの? 二度目ましての時だって相当失礼だったからね、あれ。

 オレはあの時のことまだ忘れてねぇからな?

 

「殺したい程憎い相手を殺さないように仕置きをするには何が効果的だと思いますか?」

「えっ」

 

 …………だ、誰にやるつもり?(怯え)

 まさかオレにやるつもりじゃないよね? だってオレ何も悪い事してないし、ねえ?

 三度目ましてなオレに、そんな酷い事なんてしないよね?

 と思ったらオレではなく黒の悪魔の眷属らしい。へー、ふーん、そう(他人事)

 いや、待てよ?

 

「ええと……そ、そうですね。えっと……あの……」

 

 間が保たないので、もごもごとさせつつ、必死に頭を回転させながら黒の悪魔の様子を窺う。

 ニコニコと笑顔を貼り付け、黒の悪魔はオレをじっと見つめている。目が笑ってなくてとても怖いです。外見といてくれる?(震え声)

 あのさ……あのさ、これでこいつがオレが言った事を実行したらさ……その眷属とやらに、オレが恨まれるんじゃねぇの?

 それは駄目だ!(迫真)

 なんとか、なんとか回避する方法を考えないと、オレが死んじゃう!

 やぱいぞ……灰色の脳細胞を活性化させろ!

 

「えっと……その主という方に、より貴方が近付けば良いと思います」

「ほう?」

「貴方よりも先に召喚された眷属よりも、貴方がより主に近い位置までいけば、その主は眷属よりも貴方を重用しているという事ですから。貴方のことを優れていると主は思ってくれているという認識を眷属の方に与えられるのではないでしょうか。そうすれば――」

「勝手に相手がダメージを受けてくれる、と」

「はい。そうなります」

 

 どうよ!(ドヤ顔)

 これなら完璧だろ! これなら黒の悪魔が眷属に実行しても、オレが恨まれる事はない。

 ありがとう灰色の脳細胞!

 

「ふむ……なるほど。では私は失礼します」

「え?」

 

 聞くだけ聞いて、黒の悪魔はさっさと帰って行った。

 お前それはないんじゃないの?(正論)




「聞きしに勝るお人好しですね。まあだからこそあの方に気に入られているのでしょう」
オリ主「もう来ないでね(笑顔)」

二次被害で自分が害される事を危惧したラフィエル君。
自分可愛さの必死な様子が勘違いを引き起こす……! そんなんだから魔国連邦に拉致ら(保護さ)れるんだって。

 現在(過去)のステータス

 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
    ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
    ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
    ユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)
 secret:『悪魔契約』
     『悪魔共存』
     『禁忌の代償』
 備考:嵐の前の静けさだと感付いていたのに何の対策も立てなかった馬鹿。
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