病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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変わり行く運命/驚愕の真実()

 第31.5話 変わり行く運命

 

 温泉からあがり、のぼせたラフィエル=スノウホワイトは食事どころではなかったため、部屋に運んで休ませる。

 食事は暫く休憩してからにしようと、リムルとラフィエル=スノウホワイト二人分の食事は後ほど部屋に運ばれる事になった。

 時間が空いたため、ちょうど良いとリムルは胃袋の中からフルートを取り出した。銀色に輝くそれを見て、ラフィエル=スノウホワイトはリムルとフルートへ交互に視線を移す。

 

「これは……」

「シズさんから預かってたんだ。返したくても教会に行けないから返せなかったんだって」

「シズ……? シズエ?」

 

 気怠げだった瞳が、真剣そうにフルートを見つめる。その視線が傷のある頭管部ばかり見ている気がするが、それは後で謝ろう。

 その前に、リムルはシズエとの出会いから終焉までをラフィエル=スノウホワイトに語った。

 

「この姿と共に、シズさんの心残りまで全て俺が引き継いだんだ」

「そう、ですか……シズエが……」

 

 目を伏せ、落ち込んだようにラフィエル=スノウホワイトは肩を落とした。伏せられた瞳に光る物がある事には気付いていたが、リムルはあえて気付かないふりをしていた。

 しばらく無言のまま俯いていたラフィエル=スノウホワイトだったが、ゆっくりと顔を上げた時には既に立ち直ったように微笑んでいた。

 

「フルートを返して頂きありがとう御座います。これでシズエが心置きなく安らかに眠れると良いのですが……」

「……ああ。その気持ちだけで、シズさんは嬉しいんじゃないかな」

「そうですね……ええ、そうでしょうね」

 

 シズエとの思い出を脳裏に描き、感傷に浸る二人だったが、それも少しの間だけのこと。前を向いて生きていかねばならないのだ。それが彼女のためでもあるのだから。

 ラフィエル=スノウホワイトの体調が戻ってきた頃を見計らって、二人分の食事が部屋に運ばれてきた。

 流石に箸では食べにくかろうと、今日はナイフとフォークで食べられるタイプのものだ。初日から箸で食べろとは流石に申し訳なくて言えない。

 この世界ではスタンダードな食事を楽しみつつ、ふとラフィエル=スノウホワイトは問いかけた。

 

「そういえば……たった一度会っただけの私を、どうして魔国連邦に連れてこようと思ったのですか?」

「あー……。実は、俺からすれば、会ったのはあの宴で四回目なんだよ」

 

 不思議そうに首を傾げるラフィエル=スノウホワイトに、リムルはエルフの店での占いの事から話し出す。彼女がエルフの店に反応した時は慌てて誤魔化したが。

 

「運命の人……私が、ですか?」

 

 疑いの目を向けてくるラフィエル=スノウホワイト。自己評価があまり高くない彼女は、自分が誰かの運命という事が信じられないらしい。

 それから二度目の邂逅、満月の夜の事を語ろうとしたところでリムルは口を閉ざす。

 

(そういえばミリムが、聞いてる事を知ったら怒ってやってくれなくなったとか言ってたよな?)

 

 これ言ったら駄目なやつだ、とリムルが思い出したが、ここでずっと黙っているのも怪しい。適当に何かを言って誤魔化さないといけない。

 が、彼女相手に嘘を吐くのは後ろめたくてやりたくない。となると……。

 

「に、二回目の事は内緒にしておきたいから。三回目が恥ずかしいけど泣いちゃった時な」

 

(どうだ……いけるか!?)

 

 言いたくないなら言わなければいい。ラフィエル=スノウホワイトなら、無理に聞き出すなんて乱暴な事はしないはずだ。

 ドキドキしながら反応を窺うと、彼女はあっさりと流した。興味がなさそうな素振りだが、気遣ってあえてそんな風に見せているのだろう。

 ほっと胸を撫で下ろし、その四回の出会いで彼女を救いたいと思ったのだとリムルは告げる。

 

「救う……? 私を?」

 

 本気で分からない。虚を突かれたような顔をしたラフィエル=スノウホワイトに、やはり自覚していなかったのだとリムルは確信する。

 無意識のうちに伸ばされた救いを求める手。それを絶対に離してなるものかと、リムルは口を開いた。

 

「ラフィエル=スノウホワイト。お前は他人を救ってばっかりで、自分のことを疎かにし過ぎている。だから自分が救いを望んでいる事に気付いてなかったんだろうけど……」

 

 リムルの言葉に、ラフィエル=スノウホワイトは目を丸くする。その仕草にぎゅっと心臓を鷲掴みにされたような痛みが走る。

 彼女はきっと、他人を救うという行為が彼女の中では当たり前すぎて、そんな大それた事をしているとは思っていないのだ。そして、自己犠牲を当然のように思い行い、それに何の疑いも持っていない。

 微かに残る常識が、彼女のすり切れた心が、無意識のうちに救いを求めたに過ぎないのだ。

 他人を救うために、自分の命が散ったとしても、それに何も思っていない。彼女は、そんな人間だった。

 

「教会のある異空間は、生命力を削って存在している。それは、ラフィエル=スノウホワイトの寿命を削っているという事だ。なあ……わざわざあんな隠蔽するって事は、分かってたんだろ?」

 

 ラフィエル=スノウホワイト。

 お前が死んで悲しむ誰かがいるって事を。

 

「別に誰のことも思ってないなら、わざわざ隠蔽なんてしないよな。なのに隠蔽するって事は、自分が死ぬ事を隠しておきたかったって事だ。それは何故か? 答えは決まってる」

 

 黙り込むラフィエル=スノウホワイトに、リムルは言葉を重ねていく。彼女が死にたくないと思えるように。誰かのために死ぬくらいなら、誰かのために生きていて欲しいから。

 

「自分が死んだ事で、悲しむ人がいることを知っていたから。その人に悲しんで欲しくなかったから。そうだろ? ラフィエル=スノウホワイト」

 

 ぎゅっと膝の上にある手が握られる。その反応は、きっと隠しておきたかった事実を暴かれてしまったがために。

 震える拳の上に自分の手を乗せて、包み込む。はっと顔を上げたラフィエル=スノウホワイトと目を合わせて、リムルは告げた。

 

「隠すくらいなら、死なずに生きろ。自分の身なんて削らなくていいからさ」

「……」

「異空間なんて消してしまえ。教会は思い入れがあるならそのままウチに転移させればいい。だから生きろ。俺はあんたとやりたい事がたくさんあるんだからな」

「…………私は、この生き方しか知らないんです」

 

 ぽつりと呟くように言われた言葉に、リムルは言葉に詰まる。それでも何かを言おうとして、その前にラフィエル=スノウホワイトは問いかけた。

 これまでのような自己犠牲ではない救いを与えるために。死ぬなと、生きろと言ってくれる、稀有な人のために。

 

「新しい生き方、教えてくれますか?」

「――勿論!」

 

 他人のために死ぬのではなく、目の前にいる人のような誰かのために生きようと、彼女は言った。

 その事が、自然と笑顔になるほど嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第31話 驚愕の真実()

 

 風呂でのぼせた。水じゃあんな事にはならんのに、お湯に浸かるとああなるのか……。オレは学習した。風呂は五分以上は浸からない。

 つーかさ、リムルも先に言って欲しかったよな。長く浸かるとのぼせるってさ。気遣いが足りてないんだよなあ!

 これだから接客素人は……。まあ? 寛容なラフィエルさんは許してあげますけれども?

 その代わり、オレをうっかり殺しかけたりするのは無しにしてね。ほんと頼むからな?

 部屋で服の襟をパタパタさせて涼んでいると、リムルが何処からかフルートを取り出した。何? なんか吹いてくれんの?

 

「シズさんから預かってたんだ。返したくても教会に行けないから返せなかったんだって」

「シズ……? (誰それ? 知らない人ですけど……もしかして)シズエ?」

 

 頷いたリムルを見て、オレはそのフルートを見る。何故か頭管部が細かい傷でいっぱいだけど、確かにオレのフルートだわ。

 シズエの奴、子供に渡すにしても人選もっとちゃんとしてくれない? お前の子供、魔王になってるんだけど??

 と思ったら、リムルはシズエの子供じゃなかった。そういや異世界人って前も言ってたわ。正直ほとんど聞き流してたし、もう会う事なんかねぇだろと思って忘れてた。

 そん時にさらっと言ってたわ。今回はもっとちゃんとシズエの事を教えてくれてるけど、事情聞くの二回目だった……。

 これからはちゃんと人の話聞いとこ(戒め)

 

 ちょうど良いからリムルが喋ってる間に前言ってた事を思い出すか。えーと……。

 んん? そういや仲間を殺されたとか言ってたな。そんで適当に何か蘇生できるYO! とか眠気に負けてオレ言っちゃったな。ごめん、二回も会うと思わなかったからさ……怒らないで許せ。

 ていうかあの話が本当だとしたら、こいつ国と戦って勝っちゃったの? つっよ……。魔王とか別に名乗らなくても良くない?

 …………そういやクレイマンの奴、リムルの国にちょっかい出してたんだっけ? 人の話は聞き流す物って認識してるから、あんま覚えてねぇな。でもオレのこの記憶が確かなら、悪いのはクレイマンじゃね? つまりリムルは正当防衛……? オレの死亡確率が大幅にダウンするんじゃねえの?

 これは……意外と良い住処なのでは??

 

「この姿と共に、シズさんの心残りまで全て俺が引き継いだんだ」

「そう、ですか……シズエが……」

 

 話半分で良く分からなかったけど、つまりシズエは死んでリムルの作った異空間的なとこがお墓って事でいいな?

 はー……まあ人間は普通死ぬよね。誰だって100年生きれたらすごいよ。長生きしたよシズエは。その点はオレは何時になったら寿命がくるんですか?(真顔)

 いや、別に死にたい訳じゃないんだよ? たださ、だらだら生きて痛い思いして死にたくないんだよ。寿命までいって、穏やかに眠るように安らかに死にたい。当然だよなあ?

 誰だって刺されたり殴られたりして痛みに悶絶しながら死にたくなんかないじゃんよ。

 で、オレは?

 何でオレは年をとれないのかな。老衰が出来ないだろ! いい加減にしろ!(涙目)

 まあ老衰は最終目標だからいいとして……今はシズエを悼もう。クロノアを除いて、オレが唯一一緒にいて安心できる奴だったんだから。

 

「(何故か傷がついてるけど、)フルートを返して頂きありがとう御座います。これでシズエが心置きなく安らかに眠れると良いのですが……」

「……ああ。その気持ちだけで、シズさんは嬉しいんじゃないかな」

「そうですね……ええ、そうでしょうね」

 

 シズエは物欲のない良い子だった。それに穏やかで優しいから、教会の物を壊したりしないし。お礼と謝罪がちゃんと出来るし。

 何であんなに真っ当な子が死んで、魔王とかいう歩く災厄が長生きしてるんですかねえ……。

 

 そんな事を思っていると、部屋に食事が運ばれてきた。この料理、オレ好きじゃないんだよね。肉が固くて食べにくいし。ナイフで切る時にすげえ力いるし、顎が疲れるから。

 生存確率が高まった気がしたけど、これ普通にリムルに嫌われてるんじゃね? 嫌がらせされてるもん、オレ。

 嫌そうな顔をしてやろうかと思ったが、オレの表情が言うことを聞いてくれるはずもないので諦めた。最近はちょっとは言うこと聞いてくれてたんだけどなあ。反抗期はこれだから駄目だ。

 ていうかこれ普通に美味くない? 何時もより柔らかくて普通に食べられるんだけど。

 …………。

 飯時に無言ってちょっと困るわ。ほぼ初対面の人と無言だと気まずくてしょうがない。なんか話題を提供しないと死ぬ。

 

「そういえば……たった一度会っただけの私を、どうして魔国連邦に連れてこようと思ったのですか?」

「あー……。実は、俺からすれば、会ったのはあの宴で四回目なんだよ」

 

 初耳ですけど??(驚き)

 え? エルフの店での占いが初対面? そんなわけあるか! それ初対面じゃねぇから! 出会ってないからね、大丈夫?

 つーかその占い絶対に間違ってるから。

 

「運命の人……(ギィじゃなくて)私が、ですか?」

 

 だってお前の運命の人、ギィじゃん。付き合ってるじゃんお前ら。何処が良いのか分からんけど。アレだね、破れ鍋に綴じ蓋ってやつ。

 あの寒い孤島に引きこもってるギィにどうやって会ったんだろうな、リムルは。まあ魔王になるような奴だし、頭のおかしい事をいくらでも思い付くんだろう。

 ほんと関わり合いになりたくないよね(本音)

 

 二回目に会ったのは何故かはぐらかされたが、四回会う過程でリムルはオレを救いたいと思ったらしい。お前頭わいてるんか? と口に出さなかったオレは褒められていいと思う。

 だってお前、オレは魔王のせいで苦しい思いをしているんだよ? その魔王の中に、お前も入ってるからね?

 自分は常識人ですみたいな態度止めろ。お前も十分、オレの中では迷惑枠ですけど?

 

「ラフィエル=スノウホワイト。お前は他人を救ってばっかりで、自分のことを疎かにし過ぎている。だから自分が救いを望んでいる事に気付いてなかったんだろうけど……」

 

 そ、そうだったのか……!?(驚愕)

 オレは自分を殺して他人のために生きていたのか……そんなわけねぇだろ、目ん玉節穴か?

 オレの何処を見たらそんな事を思えるんだ。オレは何時だって自分を第一に考えて、これまで生きてきたんだけど。

 

「教会のある異空間は、生命力を削って存在している。それは、ラフィエル=スノウホワイトの寿命を削っているという事だ」

 

 ふあ?(呆然)

 ちょっと待ってちょっと待って。何それ、聞いてない。

 異空間を作るのに、オレの生命力を使っていただって……? そんなの聖書に書いてなかった!! え、じゃあオレ死ぬの??

 こんなにあっけなく死ぬの!? いや、死にたくない訳じゃないんだよ? でもこんなあっさりはちょっと嫌っていうか……痛くないなら別にいいけど、もうちょっと猶予が欲しいっていうか、ね?

 

「なあ……わざわざあんな隠蔽するって事は、分かってたんだろ? ラフィエル=スノウホワイト。お前が死んで悲しむ誰かがいるって事を」

 

 え? 知らんけど。

 オレが死んで悲しむ奴は今、永遠の眠りについてるのとバレンタインのとこで眠ってる奴だけだし。

 

「別に誰のことも思ってないなら、わざわざ隠蔽なんてしないよな。なのに隠蔽するって事は、自分が死ぬ事を隠しておきたかったって事だ。それは何故か? 答えは決まってる」

 

 つーか隠蔽なんかしてねぇし。

 …………もしかして、オレじゃない誰かが隠蔽していた? オレに死んで欲しくて、オレが異空間の代償に気付かないように隠蔽してた?

 だ、誰がやったんだ!(恐怖)

 衝撃の真実に気付いてしまったオレはリムルの話を聞くどころじゃなかった。

 オレを殺して得する奴なんて、一体どこにっ…? いたわ。そういや言ってたよね、オレの偽物さんがいるって。

 偽物さんからすれば、本物って殺して存在ごと消してやりたいんじゃねぇの? つまり犯人はそいつだ!

 はやく逃げなきゃ(使命感)

 恐怖で握り込んでいた拳が、いきなりリムルの両手に包み込まれる。ぎょっとして顔を上げたら、リムルが真剣な顔でオレを見ていた。

 

「隠すくらいなら、死なずに生きろ。自分の身なんて削らなくていいからさ」

 

 え? なに? どういう事?

 オレも自分の身を削ろうなんて思ってないけど? 

 

「異空間なんて消してしまえ。教会は思い入れがあるならそのままウチに転移させればいい。だから生きろ。俺はあんたとやりたい事がたくさんあるんだからな」

 

 う、うん。オレも生きたいよ、老衰したいんであって殺されたいとは思わないからさ。

 ていうか至れり尽くせりじゃね? 異空間の事を教えてくれて消せって言ってくれてるし、爺さんの形見の教会ごとココに引っ越していいんだろ? 

 しかも、この流れからして、リムルがオレを守ってくれるのでは……?

 ――決めた。オレ、魔国連邦に住むわ。

 

「…………私は、この(一人での異空間で過ごしてた)生き方しか知らないんです。新しい(この国での)生き方、教えてくれますか?」

 

 




転スラ二期一部 2020年10月~
転スラスピンオフ 転スラ日記 2021年1月~
転スラ二期二部 2021年4月~


全裸待機しておきましょうね!!(やらんけど)

「一緒に生きよう」
オリ主「オレだって死にたくないんだよォ!」

相変わらず人の話を聞かないラフィエル君。
これからはちゃんと話を聞くとか言ってる癖に、舌の根も乾かぬうちにリムルの話を聞き流していくスタイル。そんなんだから勘違いが止まらないんだよ!(怒)

 現在のステータス

 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
   ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
   ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
   ユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)
 secret:『悪魔契約』
     『悪魔共存』
     『禁忌の代償』
 備考:戒めの効果を無効化する特殊な人間(皮肉)
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