病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー 作:昼寝してる人
第32.5話 贈り物
ラフィエル=スノウホワイトにフルートを返還し、死なない約束を取り付けた後。リムルは彼女に休むように告げ、ディアブロの報告を聞き終えていた。
その翌日のことである。
シュナとソウエイが帰ってきて、ラフィエル=スノウホワイトが滞在していると聞いた瞬間に目の色を変えた。
二人はすぐさま彼女に会う許可をリムルに求め、若干引き気味に許可を出せば、失礼ではない程度に走り出した。
落ち着いた二人の変わりようにリムルは呆然とするも、とりあえずラフィエル=スノウホワイトに連絡をいれることにする。
彼女の部屋へ入ると、ちょうど朝食を終えた所のようで、用件を話せば快く頷いてくれた。
「悪いな、朝からうちの奴が」
「いえ。これからお世話になるのですから、私も挨拶をしようと思っていたところですので」
軽く謝れば卒なくフォローをいれてくれる。しかも嫌みなくニコニコと嬉しそうにそう言ってくれるものだから、全然悪い気がしない。
軽く雑談を交わし、リムルは少し恥ずかしそうに切り出した。
「あの、さ……。今更なんだけど、他の魔王みたいにラフィーって呼んでもいいか? フルネームだとちょっと距離があるし」
「? はい、どうぞ。好きに呼んでください」
不思議そうに目を瞬かせたラフィエル=スノウホワイトの返事に、リムルは安堵の息を吐いた。これで断られたら精神に甚大なダメージを負っていたところだ。
ずっとフルネームで呼んでいたのも、実は結構キツかったのだ。
これからはもう少し色々踏み込んだ話とかもしていきたいな、と思いつつシュナとソウエイが待機する場所へ向かう。
そこは、シュナの仕事場――服の製造場だった。
「初めまして、ラフィエル様。私はシュナと申します」
「ソウエイと申します」
二人がそこに入るや否や、シュナとソウエイは跪いた。
慌てた様子でラフィエル=スノウホワイトが彼等に立ち上がるように促し、ようやく二人は顔を上げた。
シュナの顔には歓喜と興奮があり、ソウエイは真顔だったものの、その瞳には憧憬が色濃く映っていた。
「ええと……知っているようですが改めまして。ラフィエル=スノウホワイトです。これからお世話になりますので、よろしくお願いします」
「で、こんなに早く会いたいなんて、一体どんな用事があったんだ?」
同格の魔王であるリムルの配下である自分達にも礼儀正しい態度で接してくれる事に感動していた二人は、リムルの言葉ではっと我に返った。
シュナが慌てて衣装棚から服を引っ張り出し、ソウエイが奥へ引っ込む。
「ミリム様から依頼されていた衣装です。お気に召して頂けたら嬉しいのですけれど……」
シュナの台詞でリムルも思い出した。
かつてミリムがこの国に来ていた時に、ラフィエル=スノウホワイトの歌を聴きに行った。そこでミリムは、ラフィエル=スノウホワイトに服を贈ると言っていた。
それも、親友であるリムルの配下が作ったものなら絶対に喜んでくれると。お揃いならなお良し! と。
つまり、シュナが取り出した服はミリムからの贈り物なのだ。
「ミリムから……? どうして?」
「もっと仲良くなりたいそうですよ」
きょとんとした顔で手渡された服を見たラフィエル=スノウホワイトは、シュナの言葉に理解したのか苦笑した。
わざわざ物を贈らなくても、それくらい普通に言ってくれれば……。そんなラフィエル=スノウホワイトの心情が伝わってくるかのようだ。
「それから、こちらは我々からです。魔国連邦に滞在するのですし、服は沢山あっても困らないでしょう」
「あ、ありがとうございます……」
(……シュナ、張り切りすぎだ)
どさりと山になった服を見て、困惑した空気を纏わせたラフィエル=スノウホワイト。その横では、リムルが服の量に頬を引き攣らせていた。
結局、その大量の服は後日教会を魔国連邦に転移させた後に教会へ運び込まれる事になった。しかし、ミリムとお揃いの服は今日の今から着る事になり、ラフィエル=スノウホワイトは試着室へ。
試着室へ入る前に奥へ行っていたソウエイが戻ってきてラフィエル=スノウホワイトに何かを手渡していたが、それは何なのだろうか。
考えていると、シュナがくすくすと笑いながらリムルに教えてくれた。
ソウエイは、元々ラフィエル=スノウホワイトに強い憧れと尊敬の念を抱いているそうだ。一時期はジュラの大森林近くに住んでいた事もあって当初はただの親近感だったらしいのだが、ある噂と一度目にした絵姿によってそれは憧憬と畏敬に変わった。
それはよくある魔王の暴虐なる噂であったのだが、その裏にはラフィエル=スノウホワイトの優しさがあった。聖女たる彼女の噂を信じる者なら分かってしまうそれに、ソウエイはいたく感動してしまったのだ。
まあ、その感動のせいで彼は今、ものすごく冷徹な性格になったりしたのだが、それは割愛。
そのため、長年尊敬していた人が来ると知って何とか顔を覚えて貰おうと奮闘しているとか。
「それで髪飾りを作ったんですよ。ちなみにリムル様とお揃いにしているので、後ほどリムル様にお渡しすると言っていました」
「へ? 俺と?」
「はい。服はミリム様とお揃いなら、髪飾りはリムル様とお揃いが良いんじゃないか、と」
「ふ、ふーん。そっか、お揃いか……」
髪飾りというのがちょっと微妙だが、ラフィエル=スノウホワイトとお揃いの物。ちょっと、いやかなり嬉しいかもしれない。
ニヤけそうになる頬を制御して真顔を作っていると、試着室の扉が開けられた。
そこには、白いブラウスに、くるぶしまである黒のフレアスカートを纏ったラフィエル=スノウホワイトがいた。
足はシンプルなブーツに覆われ、上品な髪は美しく結われ、細かい糸で縫われた髪飾りが結び目を隠している。
神に愛されたかのような、その容姿。
室内であるのにも関わらず、きらきらと光り輝いているような――
「……あまり、似合っていないでしょうか。ミリムのような快活な容姿をしていませんし」
見惚れていた沈黙を誤解したのか、ラフィエル=スノウホワイトが気落ちしたように、そんな事を言うので慌てて褒めちぎる。
素直に思った事しか言っていないのだが、どうやら最初の沈黙のせいで無理に褒めていると思われたらしい。落ち込むシュナとソウエイは適当に慰めておいて、今日の所は挨拶回りは終えることにした。
(数日後には残りの皆も戻ってくるだろうし、明日あたりに教会を転移して貰おう。そのための土地はこれから見つけるとして……そうだな、俺や幹部達の住居と近くて利便性も高いところ、かな)
第32話 いらねぇから
久し振りに朝に目が覚めた。多分慣れないベッドで寝たせいだ。出来るだけ早く教会をこっちに持ってきたい。ふかふか過ぎて寝にくいんだよなあ、これ。沈むから息出来なくなるじゃんよ。
教会というプライベート空間じゃないため、欠伸をかみ殺して髪を整えることにした。
…………他人の国にいるって、めちゃくちゃ気を遣うからクソ怠いんだけど。いや別に文句を言ってる訳じゃないんだけどさ、オレには合わない。
誰か元凶を倒してくれたらオレは別にここに居なくてもいいんだよな。なんかもう既に帰りたくなってきたわ。
身支度を調えて数十分、部屋に緑の人が朝食を持ってきてくれた。あっでもリムルに祝いの言葉を浴びせてた人じゃねぇな、こいつ女だし。
ていうか何で肌緑なの? スライムだって肌色してんのに、何で緑なの?
訳が分からないよ……。
まあご飯は美味しかったから何も言う事はないです。
「起きてるか?」
ご飯を食べ終えると、ノックの音が聞こえて返事をする前に入ってこられた。は? ノックの意味ある?
お前ね、これでオレが寝てるときだったらどうすんの? うっかり何かオレがやらかしちゃうかもしれないだろうが!
だが許そう(上から目線)
今は守って貰う身だからね、寛大になろうじゃないか。用件を言ってみたまえ。
……え? 挨拶?
そっか、そういやそんなんあったね。普通はしないといけないよね。いや、決して忘れていたわけでは!(焦り)
「悪いな、朝からうちの奴が」
「いえ。これからお世話になるのですから、私も挨拶をしようと思っていたところですので(早口)」
そうだよ、忘れてなんかないから。
オレは先輩魔王だからさ、リムルが言ってくるのを待ってあげていたんだよ! オレは優しいなあ!
だからオレは悪くない。実力はともかく、一応はオレの方が身分的には上だからね。そこんとこ覚えておいてくれよな。
「あの、さ……。今更なんだけど、他の魔王みたいにラフィーって呼んでもいいか? フルネームだとちょっと距離があるし」
「? はい、どうぞ。好きに呼んでください」
別にわざわざ聞かなくて良いけど。
そもそもあいつらなんてオレが許可する前に勝手に呼び始めよったからな。親しくしたくないのに、愛称で呼ばれたオレの気持ちが分かるか?(諦め)
本当に魔王ってのは横暴で困る。あいつらの理不尽とか我が儘とか、殆どをオレが引き受けてると思う。他の奴等にやれよ(真顔)
部屋から出てリムルに案内されるままに歩いていると、何かの工房らしき建物に入れられた。何で?
お前挨拶って言ったじゃん、こんなところで誰と挨拶しろってんだ!
「初めまして、ラフィエル様。私はシュナと申します」
「ソウエイと申します」
おう、止めろッ!
跪かれたりなんかして、もしリムルが怒ったらどうしてくれるんだ。ふざけんな死ね!(直球)
必死になって立ち上がらせると、二人は対照的な表情を見せてくれた。
ピンクの方……シュナは大人しそうで、魔物から魔王への尊敬という普通の感じ。魔物がみんなこうだったらいいのに(願望)
が、青いのであるソウエイは駄目だった。
なんか、すげえ目つき悪いし。え? これ目つき悪いんじゃなくて睨まれてね?
しかも顔が無表情だし、お前なんかがリムル様の御側にいるなど認めん的に思われてるんじゃねぇの?
ま、まあこういう奴の一人や二人はいるよね。許容範囲許容範囲。
「ええと……知っているようですが改めまして。ラフィエル=スノウホワイトです。これからお世話になりますので、よろしくお願いします」
感じ悪い奴がいても笑顔で対応するオレは本当に人間が出来てる。褒めてくれていいんだけど?(ドヤ顔)
何の用でここに呼んだのか、とリムルが聞くと、シュナが慌てて服を引っ張り出した。つーかリムルも知らなかったの? 主なのに??
「ミリム様から依頼されていた衣装です。お気に召して頂けたら嬉しいのですけれど……」
え? ミリムが服とか贈ってこようとしてたの? ほぼ全裸みたいな服で年中過ごしていた、あのミリムが?
随分愉快なジョークじゃねぇか(失礼)
「もっと仲良くなりたいそうですよ」
絶対に嫌ですけど??(真顔)
思わず顔を顰めてしまうが、表情は苦笑程度で収めてしまった。はー、つっかえ!
ミリムとこれ以上の関係になりたくない。知り合い以上になりたくないんだ!
これ以上の関係になったら厄介事に巻き込まれる予感しかしない。だからこれ以上はいらない。
……いや、別に服もこんなにいらないんだけど。関係も以上にはなりたくないが、服もこれ以上はいらねぇから。
が、押し切られて貰うことになった。こんなに着ないって……。しかもミリムとお揃いの服はここで着ることになったし。
ゆるゆるの服が好きなんだ。締め上げられるような服は嫌なんだけど、これは大丈夫なのか?
「ラフィエル様」
「はい?」
試着室に入ろうとすると、大分前に引っ込んだソウエイが話し掛けてきた。お前何で話し掛けてくるの? 顔が怖いからあんまり近付かないでくんない?
無遠慮に近付いてきたかと思ったら、何かを渡してきた。よく見てみると、髪飾りだった。
……え? これで何をしろと?
おい! 無言でどっか行くな! 説明しろ! お前ほんと何なんだよォ! 嫌いだ!(絶叫)
まるで分からないが、髪飾りを渡してきたという事は髪を結べって事か? 何でオレがそんな事しなきゃいけないんだ。
でも怒られたら怖いから言われた(言われてない)通りにやっとこ。
着替えて髪を結うと、試着室から出る。
反応は無言だった。
「……あまり、(この服がオレに)似合っていないでしょうか。(だってミリムに似合うように作ったんだもんな。オレは)ミリムのような快活な容姿をしていませんし」
ミリムとお揃いって事はミリムみたいな破天荒娘に似合うように作られてるからな。大人なオレには似合わないのも無理はないな。
と思ってたらリムル達から慌てて褒められた。
分かりきったお世辞とかいらねぇから。
「髪飾りかぁ……ま、付けてみようかな」
オリ主「押し付けって本当止めてくんないかな」
見事にすれ違う心。
別に髪を結わなくても髪飾りは使えるタイプのものがあるので、リムルは普段使いするかもしれない。ラフィエル君は適当に「大切にしたいから(大嘘)」って言い訳して箱に放り込んで忘れる。
現在のステータス
name:ラフィエル=スノウホワイト
skill:ユニークスキル『
ユニークスキル『
ユニークスキル『
ユニークスキル『
secret:『悪魔契約』
『悪魔共存』
『禁忌の代償』
備考:リムルに気を許しているため、多少心に余裕がある……?