病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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魔国連邦の洗礼/料理とは??

 第33.5話 魔国連邦の洗礼

 

 シュナとソウエイがラフィエル=スノウホワイトと対面した翌日。

 ラフィエル=スノウホワイトは、リムルとその配下であるシオンと共に教会の転移を行っていた。

 朝の9時頃から、ある程度リムルが絞った候補地を順に巡り、ラフィエル=スノウホワイトが気に入った土地に教会を転移させようという試みである。

 既に三ヵ所に絞られており、そこから一つ一つメリットとデメリットを説明していく。

 

 まずは幹部達が暮らす幹部用住居区画にある土地。

 リムルが公的に暮らす宮殿である執務館(ホワイトハウス)の隣に位置していて、何が起きてもリムル側が対処しやすい。

 が、中央広場や商工業地区など娯楽のある区画へは距離があるため、利便性はそれほどよくない。

 

 次に、中央広場のすぐ近くにある居住地区の土地。

 娯楽性としてはかなり高く、人通りも多いため飽きることは早々ないだろう。

 空間転移系の能力を持つ者であれば、何があってもすぐに飛んでこれるが、それ以外の者は初動がかなり遅れる。そのため安全面では先の土地と比べると少し危険ではある。

 

 最後に、迎賓地区の土地。

 中央広場よりはリムル達の居住区と近く、温泉施設などでのんびりと寛げる。

 しかし、他国の地位ある者が数多く利用する予定のため少し居辛いかもしれない。あるいは聖女たるラフィエル=スノウホワイトに無理矢理接触を図る輩も出る可能性がある。

 

「……と、こんなところかな」

「ふむ。なるほど」

 

 三つの土地を回り、一度あてがわれたラフィエル=スノウホワイトの部屋へと戻ってきた三人。

 それぞれの場所で彼女の反応を窺っていたリムルだったが、全てリアクションがほぼ無かった。いや、正確にはあったのだが、それでも「綺麗ですね」「良い景色です」程度だったのだ。

 確かにラフィエル=スノウホワイトが暮らしていた異空間の景観と比べれば劣っているだろうが、気に入る土地が一つも無いとは……。

 どの土地にするかで頭を悩ませているラフィエル=スノウホワイトを見て、むしろリムルの方が申し訳ない気持ちになっていた。

 

「あー……その、別に三つから選ばなくてもいいんだぞ? 何か希望があったら見繕うし。遠慮するなよ?」

「それは有難いのですが……土地にはあまり拘りがなくて」

 

 そもそも教会が大切なのであって、土地に関しては大した思い入れはないのだという。そのため、どれが一番良い選択なのかが分からないと。

 無欲というか、何というか。

 もっと我が儘とか甘えたりだとかして欲しいと思いたくなるような彼女の言葉に、リムルは根気強く話してラフィエル=スノウホワイトの潜在意識にある要望を取り出していく。

 結果、自然のある穏やかな場所が、ラフィエル=スノウホワイトが一番好む空間である事が分かった。人の多さや、娯楽などは特に必要としていないようだ。

 となると、今まで紹介した土地は全て没である。

 この国で一番穏やかで自然のあるところといえば……?

 

「あっ! リムル様の庵のある辺りが、一番ラフィエル様の要望に近いのでは?」

「それだッ!!」

 

 シオンの閃きにより、リムルが喜色を浮かべる。

 娯楽も人も必要としないのなら、わざわざリムル達の住居から離れた所に住んで貰う必要もない。となると一番良いのは幹部用住居区画かと思われたが、そこはあまり自然がない。

 が、リムルの庵は日本の侘び寂びを意識して作られた家屋である。自然がいっぱいなのだ。

 というわけで、目を白黒させているラフィエル=スノウホワイトに事情を話し、着いてきて貰う。

 

「ここだ。どうだ、気に入ったかな?」

「……自然の良い香りがします。とても魅力的に思いますね」

「おお! そうかそうか!」

 

 今までの特に反応しなかった時とは違い、今回はかなり喜んでくれているようだ。

 さっそく気の変わらないうちに、異空間へ行って教会をリムルの庵の近くに転移させる。勿論、ラフィエル=スノウホワイトが元々の一割に満たない生命力を使わないようにリムルが転移させた。

 それから異空間は二度と使わないように釘を差してから、その異空間を完全に消し去るまで見守る。

 見守っている最中、リムルはシオンを褒めた。

 

「シオン、今回はナイスだったぞ。素晴らしい閃きじゃないか」

「リムル様! ありがとうございます!」

「うむ。何かご褒美でもやろう、欲しい物はあるかね? 包丁とかまな板とか包丁とか?」

「では、料理を! ふふん、私、また腕を上げたんですよ?」

「…………え?」

 

 食えって言ってんの? あの料理を?

 思わぬ攻撃に唖然としているリムルの隣にいるシオンはご満悦だった。

 そんなシオンは、笑顔のまま善意100%でラフィエル=スノウホワイトを誘った。

 

「そうです! ラフィエル様もどうでしょうか? 朝から動いていますし、お昼とかに!」

「お昼? 私はお昼は断食ですので……」

 

 何も知らないラフィエル=スノウホワイトが、無知故に華麗に危機を回避しようとしていた。しかし、そこに待ったをかけるのはリムルだった。

 勿論、リムルだってラフィエル=スノウホワイトを道連れにしようなんて思っていない。ただ、普通に疑問に思ったのだ。

 

「断食? なにそれ」

 

 ダイエットでもしているのかと思ったが、むしろ食えと言いたくなるような華奢な体がこれ以上細くなるのはヤバいだろう。

 流石におかしいと質問すれば、彼女は普通に答えた。

 元々の習慣だと。

 

「毎朝ご飯を食べる前に一時間祈りを捧げて、昼は断食で2時間祈りを捧げて、夜ご飯を食べて冷水で身清めし、寝る前にお祈り(最低一時間)をするんですよ」

 

「それはおかしい」

 

 へ? と気の抜けた声を出すラフィエル=スノウホワイトに、リムルは懇々と説明した。

 百歩譲って後半はいい。ご飯食べて風呂入って祈ると解釈すれば問題ない。だが前半は駄目だ。せめてご飯を食べてから祈るべきだし、昼もちゃんとご飯を食べるべきだ。

 断食なんて以ての外である。そんなに痩せてるのに!

 

「という訳で、昼食はちゃんと食べるように!!」

「は、はあ。まあ、お世話になりますので貴方の言う事はなるべく聞きましょう」

「ではラフィエル様の初昼食は私がご用意しますね!」

「お世話かけます」

「い、いや、シオンの料理は――!!」

 

 その後、ラフィエル=スノウホワイトはシオンの料理を口にした瞬間に倒れた。

 彼女はちょうど風邪を引き始めていたようで(無症状)、その夜は高熱と頭痛、吐き気を訴え、リムル達を盛大に慌てふためかせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第33話 料理とは??

 

 昨日の挨拶で疲れてんのに、今日は中央都市リムルの町中を歩き回るらしい。お前らの体力無尽蔵なの? オレをお前らと一緒にしないでくんない?

 ていうか歩いて疲れたから、土地がどんなだったとか見てねぇから。それに、どこも同じような感じだったし、正直どうでもいいんだわ。

 教会さえあれば何とでもなるしさ、もう本当どこでもいいんだ。

 メリットとデメリットを教えて貰ってる手前、そんな事は言わないけどね。一応オレにだって良識くらいあるんだよ。

 あ、でも、安全な所がいい。だから二番目は却下だな。

 となると最初と最後だが、どっちもどっちだと思う。あんまりリムルのところの配下と近付きたくないし。特にソウエイとか、ああいう手合いはもういらん。

 が、人間も人間でなんか面倒な事してくるしな。具体的には勇者を差し向けてきたりするしな!(皮肉)

 だから嫌いなんだよお前らのこと。

 ……なんか、考えるの面倒になってきたな。

 

「あー……その、別に三つから選ばなくてもいいんだぞ? 何か希望があったら見繕うし。遠慮するなよ?」

「それは有難いのですが……(この国の)土地には(どうでもよすぎて)あまり拘りがなくて」

 

 元凶の偽物がいなくなったら出て行きたいくらいだ。ソウエイみたいなのいるし。

 いや、リムルがシズエの恩人だから、リムルが悪い奴ではない(多分)ってのは分かってるんだけどさ。他人の家にいるみたいで気遣わなきゃだから、クッソ怠いんだよなあ!(本音)

 自分勝手に生きていたい。他人とかね、いらなくない??

 はー……一人って、すごく良いよね(諦観)

 

 とか思ってたら、リムルがマシンガン並みに話し掛けてきた。そんなに早く対応できねぇだろ、もっと落ち着けよ!

 何なの? 生理なの?

 わかるよ、オレも生理の時はお腹痛くて布団にくるまってるもん。……ごめん、正直わからんかった。

 もう考えるのがしんどくなってきた。適当に答えていたらリムルの配下のシオンが、はっと思い付いたように声を上げた。

 

「あっ! リムル様の庵のある辺りが、一番ラフィエル様の要望に近いのでは?」

「それだッ!!」

 

 何が??

 立ち上がったリムルがオレの手を引いて外に出て行く。また歩くの? まだ歩くの?

 もうオレの足は筋肉痛で動きたくないって叫んでるのに!? いい加減にしろ!

 また数時間歩くのかと絶望に浸っていると、ほんの数分歩いた先で止まった。

 

「ここだ。どうだ、気に入ったかな?」

 

 ん? ここは……。

 

「……自然の良い香りがします。とても魅力的に思いますね」

「おお、そうかそうか!」

 

 教会に近くにある茶葉の原料や、作ってたお菓子の素材が溢れる森。が傍にある家屋。

 この家屋が教会だったらオレここに住むのもいいな。人も全然いないし、すごく楽そう。

 

「じゃ、教会をここに転移させるか」

 

 ほう。つまり、どういうことだ?(真剣)

 ……なるほど。この家屋の近くにオレの教会を持ってくると。つまりここに住めと。

 悪くないんじゃね? これなら人との接触は必要最低限で済むし。

 偽物とか関係なく、ここに永住するのもいいかもしれんな!

 ――なんて思ったのは、間違いだった。

 

「こ、これは? 何ですか?」

 

 声が震えるのを自覚しながら、ソレを指差して問い掛ける。

 器に乗ったソレは、ぷるぷると震えながらも硬質な見目をしている。そして、妙に表情を変えるのだ。

 その上、時折呻き声を発しており、その口(?)からは頼りない炎を吐き出している。

 そんな謎の生物を、オレはスプーンを持ちながら見つめる羽目になっていた。

 

「これはですね、シチューです!」

 

 嘘ぶっこいてんじゃねぇぞてめぇ!!

 こんなもんがシチューであるはずがないだろうが! ふざけるのも大概にしろ! 舐めてんのか!?

 ……という文句をぐっと飲み込み、オレは意識的に笑顔をキープすることにした。

 だってこいつ、リムルの秘書なんだってさ(涙目)

 そんな重役に文句を言って、守ってくれなくなったらオレ死んじゃうからね。これが教会を転移させる前だったら嫌って言えたのに……。

 ていうか誰か助けろよォ!!(絶叫)

 

ぐるぬぉぉう

 

 ひっ!(恐怖)

 また呻き声をあげよった!

 こ、これを食わないといけないのか? オレが、この化け物料理を!?

 で、でも食べなかったらもっと酷い目に合うかもしれない。だったら、だったら食った方がマシなんじゃないのか?

 

「い…………いただき、ます」

 

 うっ!! 食感が、食感がぁ……っ!!

 味は良いのに、食感が死んでいる。というか、これ、普通に……。

 

「ま、ま、……うっ」

 

 この国の奴等なんて、もう信じない。




「ここなら、俺も何時でも来られるな」
オリ主「あの野郎! オレを見捨てやがったなァ!」

リムルが他の道連れを探している間に、ラフィエル君はシオンの料理の餌食になってしまいました(合掌)
まあそのおかげで本来の生贄であるリムルは助かったと言えるでしょう。聖女的には、まあいいんじゃない?(適当)

 現在のステータス

 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
   ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
   ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
   ユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)
 secret:『悪魔契約』
     『悪魔共存』
     『禁忌の代償』
 備考:シオンの殺人料理によって移住を考え始めた。

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