病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー 作:昼寝してる人
第34.5話 ルミナス
「全く、相変わらず体の弱い奴じゃな」
ラフィエル=スノウホワイトがシオンの料理に倒れ、夜中に高熱を出して割と真面目に生死の境を彷徨ってから数時間後。
容態が落ち着いたラフィエル=スノウホワイトを彼女の所有する教会の寝室へ運んだリムル達が撤退した、その数分後のことだった。
その部屋には、メイド服を着た銀髪の美しい少女が一瞬の間に存在していた。
魔王ロイ・ヴァレンタインの配下のように振る舞っていた少女である。
「起きよ、ラフィー」
「んん……?」
彼女は『
体が楽になった事を自覚したラフィエル=スノウホワイトが目を擦りながら起き上がる。そして目の前にいる少女を見て、欠伸を噛み殺した。
「――こんばんは。何かありましたか? ルミナス」
そう。彼女の名は、ルミナス・バレンタイン。
魔王ロイ・ヴァレンタインが影武者をしている、彼の主にして、本物の魔王ルミナス・バレンタインである。
比較的新参である、リムルの知り合いの魔王では知らない真実である。勿論ミリムは知っている。
ルミナスは、眠たげにこっくりと船を漕いでいるラフィエル=スノウホワイトに呆れの目を向けた。
「本当は攫いに来たというのに……危機感が足りないと何度も言っているでしょう」
「こんなに警戒しているのに……」
「似合わぬ冗談は止めておけ、ラフィー。この国の居心地は良いのじゃな?」
質問の意図が掴めず、不思議そうに首を傾げるラフィエル=スノウホワイトを見て、ルミナスは諦めたように溜息を吐く。
その態度が何よりも雄弁に語っていたのだ。あのスライムはしっかりと彼女をもてなし、宣言通り彼女を守ろうとしているのだと。
それが出来ていなかったのなら、リムルを敵に回してでも連れ去ったのに。
ラフィエル=スノウホワイトを自分の国に連れて帰る口実を失い、ルミナスは舌打ちする。
「頭は回るようじゃな、あのスライム……」
「……リムル、ですか?」
苛立たしげに鼻を鳴らし、ルミナスは何でも無いと頭を振る。ぷよぷよとしたふざけたボディのスライムを思い出し、どことなくイラッとしつつ、ルミナスはラフィエル=スノウホワイトに向き直った。
「……体調はどうじゃ?」
「とても良いです。さっきまでは……」
「言わずとも分かっている。今が良いなら構わぬよ。とにかくあまり無茶はするでないぞ。良いな?」
「分かっています。環境も変わりましたから、しばらくは安静にしているつもりですよ」
「ならば良し。元より体が弱いのだから、気を付けるに超した事はなかろう」
ルミナスは満足げに頷き、ラフィエル=スノウホワイトの顎を持ち上げた。そのまま口内に指を侵入させ、不機嫌そうに眉を寄せる。
「妾がくれてやった血液はどうした?」
「……?」
ラフィエル=スノウホワイトの体内から、ルミナスが
首を傾げ、ちらりと部屋の外へ視線をやった彼女の意図に気付き、ルミナスは部屋から出る。
机の上に置かれた、魔王達の贈呈品が目に入る。
まとめて無造作に置かれた中に、ルミナスが渡した血液が混ざっている。
「……飲めと何度も言ったであろうに、あの馬鹿は」
特殊な加工をした血液は、
特に人間に上手く働きかけるようになっていて、いわゆる害のないドーピング剤である。それは、病弱なラフィエル=スノウホワイトの体をそれなりの強度まで高める効果があるのだ。
まるで効果がないように見えるが、これでも大分マシになってはいる。
が、わざわざ彼女のために手を尽くし作り上げたというのに、当の本人は何故か自分から口を付けようとしない。
臨床実験も済ませ、後遺症も遺らないように計算して作り出したのだ。
それなのに飲まないとはどういう了見か?
「ラフィー」
「はい? ……むぐっ」
試験管に入った血液を、試験管ごとラフィエル=スノウホワイトの口に突っ込んで無理矢理飲ませる。
喉が上下したのを見届け、ルミナスはようやく試験管を口から抜いて投げ捨てた。
「ふん。毎度毎度、妾が手ずから飲ませてやらねば血を摂取出来んのか?」
咳き込むラフィエル=スノウホワイトの背中を摩りつつ、ルミナスは悪態をついた。
病弱故に、薬ですら副作用があるものは飲めないラフィエル=スノウホワイト。だからこそ、ルミナス自身がわざわざ時間を割いて研究者達と共に開発したというのに。
不満はあるが、ラフィエル=スノウホワイトが意味も無くそんな事をするとは考えられない。そのため、ルミナスは不満を零しながらも何度も足を運んで手ずから血液を飲ませているのだ。
「……これだけのために来たんですか?」
「馬鹿め。妾がそこまで暇なはずがないであろう。あのスライムが下手な対応をしていれば、そなたを連れ去ってやるつもりだったのじゃ」
「えっ?」
予想だにしていなかったのか、ラフィエル=スノウホワイトがぽかんとした顔を見せる。
「今の所は様子見じゃな。そろそろ妾は戻る故、そなたはゆっくり休むと良い」
そして、ルミナスはまるで最初からそこに居なかったかのように消えた。
第34話 夢見るお年頃
最悪だ。これからのオレの人生灰色でしかねぇわ。
シオンの殺人料理を覚悟キメて体内に収めた結果がこれです。いい加減にしろ!(怒)
ゲロ吐きそうなくらいの頭のおかしい料理で意識を失い、気が付けばシュナに看病されていた。
ここまでいい。いやよくないけど。でもね、ここからだったんだよ本番は。
オレが目を覚まして起き上がった直後、半泣きのシオンが入ってきて謝ってきた。お前、さ……謝り方ってもんがあるだろ?(真顔)
前よりはすごく良くなったって、お前、全然良くなってないからね? 万が一アレで良くなってたら、お前に料理の才能はないッ!!(断言)
あと頭を下げる時の風圧で意識が飛びそうになったわ、気を付けろ。オレはお前らみたいな戦闘民族じゃねぇんだよ。
しかしそれもまだ序章だった。
そこから流れで他の奴も入ってくるよね、普通に考えて。リムルなんかはシオンのすぐ後に入ってきて、止められなくてすまんかったってよ。
お前、今更謝ったって絶対に許さんからな?(クワッ)
止められなくてすまんじゃねぇだろ、お前絶対逃げただろ! 騙されると思ってんのか!?
それでも魔物の国の主か!!
……だ、だがまだ大丈夫だ。ここでオレが寛容になれば済む話。大丈夫、まだギリギリオレの許容範囲内だ。
おおらかになれ、大丈夫、オレならやれる。
教会をここに持ってきちゃったから逃げ場はないが、まだ精神に余裕はあるはずだ。そうだろ?
今まで理不尽の権化たる魔王共と戦ってきたじゃないか。いける、オレならいけるぞ!(激励)
リムルに続いて入ってきたのは、ソウエイと赤い髪の角がある男。
リムルの紹介で、その赤い奴はベニマルという名前だと分かった。あとリムルの右腕なんだって。怒らせちゃ駄目な奴な、把握。
責任持ってオレの容態が安定するまで面倒見るとか言い出したシオンを、シュナが一刀両断。ナイスだ!
しかしシオンはそれを認めず居座ろうとしたため、ベニマルとソウエイが外へ連れ出した。
だけどリムルお前、何やってんの? ここはお前が止めるべきだろうが! 何でしれっとオレの看病に加わろうとしてんの? 馬鹿なの?
なんて思ってたら、外から轟音が聞こえてきた。
ギョッとして思わず外の扉を開ける。シュナとリムルが制止してきたが、うっかり見てしまった。
でっかい剣を持って暴れ回るシオンと、それに対応するベニマルとソウエイ。
…………うん。もう、ほんと勘弁して(涙目)
が、オレの願いも虚しくそこに新たな爆弾が投下されてしまった。
「クアーハッハッハ! 我、参上!」
「ヴェルドラ!? お前、まさか……!」
リムルが慌てて止めに入ろうとするが、時既に遅し。
何時の間にか現れた、あのミリムと互角に殴り合っていたゴリラが、先の三人の戦いに乱入しやがったのである。これはもう泣いてもいいんじゃないか?
ていうかそうだよ。あのゴリラがいたんだったよこの国には。いくらなんでも喧嘩してる仲間に割り込んで更に乱闘にするとか頭沸いてるとしか考えられない。
異空間の中よりも、ここで暮らしてる方が危険なのでは?
特にあのゴリラ、気絶しちゃって誰かが貸してくれたベッドに寝てたオレを無視してベッドで大の字になって寝るような奴だぞ?
あかん、これはもう駄目だわ。
ここはオレみたいな弱っちい奴がいちゃ駄目な世界だ。無理、帰ろう。
さっきから頭ガンガンするし、ふらふらするし、これはもう本格的にやばい。全身がこいつらは危険だって警報を鳴らしているとしか思えない。
うん、逃げよう。そうしよう。
教会の事はもう諦めようか。あの爺さんは教会を大事にしてたから怒られるかもしれないけど、背に腹はかえられない。新たな拠点を探そう。
そして今度こそは魔王とかそういうのと関わりの無い人生を送るんだ!(決意)
周りの奴等が乱闘に気を取られている隙に逃げだそうと一歩踏み出すと、そのまま座り込んでしまう。
え、っと……あれ? これもしかして……
「うっ……ぷ」
風邪拗らせたな(確信)
と、まあこんな感じで意識を失ったら教会の寝室の天井が目の前に広がっていた。静かすぎる教会は、さっきの喧騒とは真逆だ。
もしやアレは夢だったのでは?? いつも通り異空間の中の教会で目を覚ましたんだ。あれらは全部夢だったんだ!(歓喜)
だってそうだよな、異空間がオレの生命力を削ってるとかあり得ないし。だって聖書に書いてないんだぜ? 全く騙されちまったよ……。
目元の涙を拭いながら起き上がると、目の前にバレンタインがいた。何で?(困惑)
よく分からないが、とりあえず怒らせないように挨拶をする。ていうかクソ眠いな。
何でいるか分からんけど、さっさと用件話して帰ってくれないかな……。
「本当は攫いに来たというのに……危機感が足りないと何度も言っているでしょう」
あん?
攫いに来た? 何を言ってるんだこの魔王は?
しかも危機感が足りないだと!? どの口が言いやがる魔王この野郎!
「(オレはお前ら歩く理不尽に)こんなに警戒しているのに……(オレの警戒は何の意味もないと!?)」
「似合わぬ冗談は止めておけ、ラフィー」
は? 冗談なんかじゃないんですけど??(怒)
お前ほんと、オレだって怒るときは怒るからな? ずっとニコニコしてると思ったら大間違いだ!
「この国の居心地は良いのじゃな?」
……何を言ってるんだお前は。訳分からん事言うの、止めてくれない?
ここはね、オレの教会なんですよ? 何を言ってるんだ。国の中なんてな、もう変な誤解されるし何年も行ってねぇから!
「頭は回るようじゃな、あのスライム……」
スライムゥ?
それってリムルのこと? あいつ何かした……っていうか、何処からが夢だったんだ?
国にいる訳がないから、リムルがクレイマンを殺した時に気絶して。多分そこからが夢だな!
いやーリアルな夢だった。最後の吐き気なんてやばかったが、今はそんなんねぇから確実に夢だと言い切れる。たった一晩でここまで回復するはずがない。
「……体調はどうじゃ?」
「とても良いです。さっきまでは(夢のせいですこぶる悪かったけど)」
「言わずとも分かっている。今が良いなら構わぬよ。とにかくあまり無茶はするでないぞ。良いな?」
「(言われなくとも)分かっています」
あの
しかも、それで結局リムルが勝ってたし多分魔王の勢力もまた変わっちゃったよな。環境が激変してしまう。だから魔王の世代交代って本当に止めて欲しい。
「環境も変わりましたから、しばらくは安静にしているつもりですよ」
「ならば良し。元より体が弱いのだから、気を付けるに超した事はなかろう」
分かってる分かってるって。
魔王は全員漏れなく迷惑かけてくるけど、バレンタインって無駄に心配してくるんだよな。心配するくらいならオレに迷惑かけるの止めてくんない?(真顔)
うん……そうやって、口の中に指突っ込んでくるのも迷惑の部類だからな? 分かってる??
「妾がくれてやった血液はどうした?」
え? 知んない。
だってどうやって教会に帰ってきたか覚えてねぇし。その辺にないの?
視線を部屋にやって探していると、バレンタインはすたすたと部屋の外に出て行った。もしかして探してる? えっ、オレも探さなきゃ駄目?
しょうがない、か。
バレンタインが探してるのにオレが探してなかったら怒られるかもしれないもんな。面倒臭いけどやるしかないか。
仕方なく腰を上げ、部屋を探してうっかり発見。
窓の外にある、見覚えのある
――夢じゃなかった(絶望)
「ラフィー」
なんだよ、今はちょっと落ち込んでるから放っておいて……むぐっ!?
こ、これお前またかっ! このキモいの飲まされるオレの身になってみろ!
………、いや。シオンの料理に比べればなんてことなかった。むしろ美味しいかもしれない。
でも無理に飲ませるのは止めろ。普通にしんどい。背中を摩るくらいならやるんじゃねぇ!
「ふん。毎度毎度、妾が手ずから飲ませてやらねば血を摂取出来んのか?」
飲みたくねぇから飲んでないんですよ(迫真)
確かにシオンの料理と比べれば美味いよ。でもそれは底辺以下と比べているからであって、普通に考えたら不味いからな。
ていうかお前、
「……これだけのために来たんですか?」
「馬鹿め。妾がそこまで暇なはずがないであろう。あのスライムが下手な対応をしていれば、そなたを連れ去ってやるつもりだったのじゃ」
「えっ?」
そ、それってオレをこの地獄から救ってくれるということかっ!?
ありがとう、オレ、バレンタインなら助けてくれるって信じて……!
「今の所は様子見じゃな。そろそろ妾は戻る故、そなたはゆっくり休むと良い」
は??(重低音)
ばかっ、様子見なんてしなくていいから!
今……今この瞬間に連れ去ってくれよおおおお!!
「誘拐ではなく勧誘に切り替えるとしよう」
オリ主「何でも良いから連れてって!(懇願)」
リムル達の日常を垣間見て、これは絶対に自分とは合わないと確信したラフィエル君。逃亡を企てるも風邪により失敗。
これからちょくちょく脱走する。ただし普通に見つかる。
現在のステータス
name:ラフィエル=スノウホワイト
skill:ユニークスキル『
ユニークスキル『
ユニークスキル『
ユニークスキル『
secret:『悪魔契約』
『悪魔共存』
『禁忌の代償』
備考:シズエの身内フィルターが破壊され、現実逃避した後に、ルミナスに上げて落とされた人。