病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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迷い人/友達できた

 第36.5話 迷い人

 

 魔王達の宴(ワルプルギス)から、一ヶ月が経った。

 その間に三獣士の二人が魔国に来たり、ミリムからの依頼が来たりと色々とあったが、そこまで特筆すべき事は無く。

 強いて言うなら、ラフィエル=スノウホワイトのいる教会を開放して欲しいという要望が殺到したくらいである。

 俗に言う懺悔室というものをやっていた彼女に、是非とも話を聞いて欲しいという者が大量にいたのだ。しかし、それはリムルの一存では決められない。

 本人の意向を確認し、一日に数人という(リムルが出した)条件の下で予約制で開放する事になった。

 予約者は殺到し、これで金儲けしたら一山築けるのではとリムルは思ったが、ぽろっと口に出した時の彼女の表情を見て二度と口にしない事を決めた。

 ラフィエル=スノウホワイトは、俗なことに染まらない。それを再確認したのだった。

 

 無論、休み無しで懺悔を聞くわけもない。

 それをリムル達が許すわけもなく、週に二日の休日を取り付けていた。

 といっても、本人は教会でフルートを奏でたり、祈りを捧げたりと休んでいるとは言い難い生活をしているのだが。

 染み着いている社畜根性に危機感を抱いたリムルが、たまには外出でもしたらどうかと提案し、頷いたラフィエル=スノウホワイトが散歩をしていた時のことだった。

 慣れない町を一人で歩いていたせいか、帰り道が分からなくなったのだ。他人に聞くという選択肢が頭に浮かばず、彼女はきょろきょろと周りを見渡す。

 そんな彼女の様子に気付いた紳士が、声をかけた。

 

「ラフィエル様。どうかなさいましたか」

 

 ラフィエル=スノウホワイトが振り返ると、そこには豚頭の幹部がいた。

 彼女と、この幹部――ゲルドは初対面である。にも関わらずゲルドが彼女を知っているのはその知名度と、思念伝達によって彼女について聞かされていたからだ。

 魔王ラフィエル=スノウホワイトを、我が魔国連邦にて保護する。

 彼等の主であるリムルによって伝達され、そして彼女がやろうとしていた自己犠牲について教えられた。

 気を付けて見守ってやってくれ、と。

 だからこそ、ゲルドは困った様子で周りを見ていたラフィエル=スノウホワイトに声をかけたのだ。

 

「……貴方は?」

 

 ぱちくりと瞬きをして、不思議そうにゲルドを見つめるのは、ラフィエル=スノウホワイト。

 彼女は本気で彼のことを知らないのだ。完全なる初対面である。

 しかし、そこは流石ラフィエル=スノウホワイトだろうか。普通の人間であれば、豚頭族(オーク)なんて顔を顰める程度はする。

 ラフィエル=スノウホワイトは、その外見を歯牙にもかけず真っ直ぐにゲルドを見たのだ。

 

「オレはリムル様の配下の一人、ゲルドという者です」

「ああ。リムルの。それで――どうか、とは?」

「困っているように見えたもので、何かあったのではと……」

 

 ゲルドの言葉に、ラフィエル=スノウホワイトは目を丸くした。

 自分の様子に気が付いていなかったのか、とゲルドは思案したが、それは違ったらしい。

 困ったように笑いながら、ラフィエル=スノウホワイトはゲルドの手を取った。

 

「貴方のように疲れ切った人にまで心配させてしまってはいけませんね。上手く取り繕えるようにならないと」

「――いえ、オレは疲れてなど……」

「嘘はいけませんよ。神が見ていらっしゃるのだから」

 

 随分と気苦労されているようですね、と。

 ラフィエル=スノウホワイトはまるで見てきたかのようにゲルドの心労を言い当てた。

 言葉に詰まるゲルドだったが、柔和な笑みを浮かべたラフィエル=スノウホワイトに知らずに強張っていた顔から力が抜けていく。

 それを見て、ラフィエル=スノウホワイトはどこか座れる所に行きましょうか、とゲルドを誘った。

 

「座れる所なら、あちらに」

「ではそこへ」

 

 すっと移動して、ラフィエル=スノウホワイトとゲルドが店先で座る。

 軽いお茶を頼んで、彼女はゲルドと目を合わせた。

 

「どうぞ話してください。これでも口は堅いんです」

 

 優しい声音が、するりと耳に入っていく。まるで魔性の声だとゲルドは思う。

 しかし、それは抗えるものではなく。そして抗おうと思うものでもない。

 気が付けば、ゲルドは新参者に対する愚痴を語っていた。

 口下手で職人気質が多いゲルドとその部下達は、新参者に上手く説明出来ないのだ。彼等も理解出来ない。

 新参者にしても命令に従う事に不満を持っているようで素直に従わない者も多いのだと。

 

「それは大変でしたね。初めてのことですから、上手く出来なくても当然なのでは?」

 

 お互いに、と口に出さずに言われ、ゲルドも少し考える。あの新参者達も、何か……。

 うっかり思考の海に沈んでしまったゲルドを怒るでもなく、ラフィエル=スノウホワイトは静かに待ち続ける。

 はっとゲルドが我に返った時には、かなりの時間が経っていた。

 

「申し訳ありません。長い時間……」

「いいえ、気にしないでください。ですが、そうですね。気にするというなら――」

 

 茶目っ気たっぷりに微笑んで、ラフィエル=スノウホワイトは手を差しだした。

 

「――教会まで案内して貰っても? 実は迷子だったのです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 第36話 友達できた

 

 この国に閉じ込められて(主観)から一ヶ月が経過した。今の所、脱走成功の見込みは限りなくゼロに近い。だがオレは諦めない。

 そう、エデンは必ずあるのだから――!!

 

 ――っていう現実逃避をしてた。

 もうね、そうでもしてないと精神がぶっ壊れるんじゃないかって。そう思うんだよね!(発狂寸前)

 この一ヶ月、色んな事があった。

 ゴリラもとい暴風竜ヴェルドラとかいう歩く天災が気軽に隣の家屋で漫画読んでたりして、正直気が休まらない。止めろお前ほんと止めてください!!

 他にも、カリオンとこの三獣士とやらがやって来たり。何故か警戒MAXでまともに話が出来ない状態で、いっそ帰れと思った。何でわざわざ教会に来たの? 来なくていいけど??

 

 そして何より一番の問題がこれだ。

 教会の開放とか何それ。いい加減にしろ!!(激怒)

 あのさあ、オレの教会は、オレの安住の地なんですよ。いや、魔王とか普通に侵入してくるんだけどね? それは無しにしたら全然安心できる唯一の場所なんだ。

 それを開放だなんて、許されんからな? 分かってるよな?

 許されないんだからぁ!(号泣)

 週に二回しかオレの時間がないとか、リムル、お前は鬼か!? このっ、ばっかやろーっ!

 

 交渉に破れ、泣き寝入りを決め込んだオレはしばらくの間、枕を洗濯したため使えなくなった。それもこれもリムルのせいだ! 許さん!(逆恨み)

 おかげで眠りは浅くなる一方だ! 睡眠妨害なんて小癪な手を使いおってからに……っ! オレは枕が代わると上手く寝れないと知っての行いか!?

 もうこんな国にはいられない。実家に帰らせて貰う!!

 ……そんな実家があればいいのに(願望)

 

 リムルがそろそろ外にも出ろと言ってきたので、仕方なしに散歩に出かけることにした。もうそろそろ外も暑いし、正直家でごろごろしたい。

 うちの教会って四季の季節に上手に対応してくれるんだよね、もう十メートルくらい歩いたし帰って良いかな?(出不精)

 あー……辛い。もう歩けないよ……頑張って町の中心くらいまで行ったけど。もういいだろ帰って。帰ろう。そうしよう。

 で、教会はどっちだ??

 ……ふむ。どうやら迷子になったらしい。

 死ね!(直球)

 だから外になんて出たくなかったんだ! くそっ、リムルめ!(八つ当たり)

 

「ラフィエル様。どうかなさいましたか」

 

 渋い声に振り返ると、そこには厳つい顔の魔物が!(驚愕)

 気絶したかった。だがここで気絶なんてしたら絶対に食われる。殺されちゃう……。

 い、いや、ここは町中だ! 大丈夫、こんな所で襲って来たりしない。だから、人目のない所に行かないようにすれば万事解決だ。

 

「……貴方は?」

「オレはリムル様の配下の一人、ゲルドという者です」

 

 んっだよリムルのとこの奴かよ!

 じゃあもういいです。帰って、どうぞ。

 

「ああ。リムルの。それで――どうか、とは?」

 

 まああんな事言える訳ないので、オレは愛想笑いを絶やさない事を意識して話を続ける。

 早く帰ってくれ(本音)

 

「困っているように見えたもので、何かあったのではと……」

 

 はーん?(困惑)

 お前もしかして良い奴か?

 何だよ、そういう事は早く言って貰わないと困るんだよ。全く……良い奴ならちょっとくらい話してもいいか。

 ていうか、今気付いたけどよく見たら隈濃くない? 寝てないの? 疲れてるの?

 …………あっ!!(閃き)

 そうか……お前、良い奴だもんな。この国の非常識な奴等に振り回されてるのか。そしてその後始末に奔走していると。

 お前、本当に不憫な奴だなあ(同情)

 分かる、分かるよ。オレも魔王とかいう頭のおかしい奴等の被害を、盛大に被ってるんだ。辛いよね、しんどいよな。

 それなのに、オレの心配まで……!

 

「貴方のように(非常識な奴に振り回されて)疲れ切った人にまで心配させてしまってはいけませんね。(お互い)上手く取り繕えるようにならないと(理不尽共にちょっかい出される)」

「――いえ、オレは疲れてなど……」

「嘘はいけませんよ。(オレが怒らせちゃった)神が見ていらっしゃるのだから」

 

 お互い苦労人同士、仲良くやろうじゃないか!

 さっとゲルドの手を取って、堅い握手を交わす。よーし、これでオレ達は友達だ!

 今回はゲルドの方が溜まってそうだし、オレが愚痴を聞こう。オレも溜まったら愚痴らせてな?

 というわけで、

 

「どこか座れる所に行きましょうか」

「座れる所なら、あちらに」

「ではそこへ」

 

 ゲルドが指した店先で、店員にお茶を頼む。

 お酒は聖歌隊的に飲めないので、お茶で勘弁してくれ。お茶だって美味しいし、良いよね。

 

「どうぞ話してください。これでも(脅されない限りは)口は堅いんです」

 

 オレがそう言うと、ゲルドがぽつぽつと話し出した。

 そうか……部下とかそういうの、縁がなさ過ぎてまるで分からないけど、とにかく大変なんだな。全然分からんけど。

 うんでもあれだ、頑張って!(無責任)

 

「それは大変でしたね。初めてのことですから、上手く出来なくても当然なのでは?(適当)」

 

 働くとかした事ないから、知らんけど。

 オレだって、元の世界じゃいきなり聖歌やれとか言われて「は? 出来るわけねぇだろボケ」と思ったし、最初は全然出来なかったけど、まあなるようになったし?

 ゲルドのとこの奴等も、そのうちなんとかなるんじゃねぇの? ……という思いを込めて言ってみる。

 

 するとゲルドは何かを考え出したので、オレも長時間歩いて足がボロボロだったからちょうど良いと休憩。

 お茶を飲んでのんびりしていると、我に返ったゲルドが慌てて謝罪してきた。真面目か。

 ……ん、いや待てよ。うん、そこまで気にするなら仕方ないな!

 

「――教会まで案内して貰っても? 実は迷子だったのです」

 




オリ主「開放? 毎日(休み)でいいですよ」
「はあ!? 駄目に決まってるだろ! 休みは週に二回入れる。これ以上は妥協しない」

恐らくこんな会話があったと思われる。
リムルはラフィエル君が毎日開放すると言ったと認識しており、これは要改善と心のメモにチェックを入れた。これから休みと娯楽について徹底的に教えられるかもしれない。

 現在のステータス

 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
   ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
   ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
   ユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)
 secret:『悪魔契約』
     『悪魔共存』
     『禁忌の代償』
 備考:クロノア、シズエと続いて三人目の友人(一方通行)を確保した。
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