病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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忘れられた記憶/逃亡しよう、そうしよう

 第37.5話 忘れられた記憶

 

 西方聖教会へ、エドマリスが選んだ臣下がリムルの伝言を吹き込んだ魔法道具を携えて向かった。それから、その臣下の行方は一切不明である。

 という内容の報告がリムルの耳へ入った。

 ディアブロが神妙な顔をして報告してきたのだ。それも、最悪の情報と共に。

 

「ファルムス王国周辺国家に『悪魔の謀略によって真実を伝えに言った臣下が殺された』『聖女ラフィエル=スノウホワイトが魔物の国に監禁されている』という伝聞が出回っております。魔法通信によって拡散され、それに呼応するように各国の神殿騎士団(テンプルナイツ)が動き出しました」

 

 ディアブロは苦々しい表情で語る。

 それもそのはず、もし前者の噂だけならやりようはある。悪魔の証明のようなものではあるが、ディアブロ程の頭脳があれば何とかなるのだ。

 しかし、問題は後者である。

 ディアブロはファルムス王国攻略にあたり、周辺の情報を集めてきた。そして、ラフィエル=スノウホワイトの異常な知名度と人気を、ようやく認識したのだ。

 

 彼女は、人間でありながら魔王である。

 魔王レオン・クロムウェルと違い、人魔族(デモンノイド)に堕ちた訳でもなく、純粋な人間族(ヒューマン)として魔王に認められているのだ。

 そこが、西方聖教会に敵として見られていない理由でもある。彼女は魔物ではなく人だから、敵対されない。

 そして数多の国を滅ぼした人類の敵でありながら、人類から畏敬と崇拝の念を向けられている。

 リムルとの違いは、そこなのだ。

 ラフィエル=スノウホワイトは、人類から好意的に受け入れられている。そこには、彼女の献身があった事が大きい。

 だからこそ、この噂は人類を大きく動かす。

 

 ――魔王リムルは、人類の敵だ。

 

 そういう認識を、人類に与えてしまうのだ。

 例え事実がそうでなかったとしても、既に賽は投げられた。今からラフィエル=スノウホワイトに否定の言葉を言うよう頼んでも、魔王リムルに脅されて言っていると思われるのがオチである。

 人間と友好関係を結びたいリムル達に大打撃を与えることの出来る、効果的な手段だった。

 ラフィエル=スノウホワイトを魔王達から強引にもぎ取ったが故の、ダメージである。

 

「……仕方ない。緊急会議だ、幹部達を集めろ」

 

 感情を無くしたような無表情で、リムルはソーカに命令した。

 外に妖気(オーラ)が漏れないよう感情を抑制し、無表情になっていたリムルだが、その内面では激しい怒りが渦巻いていた。

 その理由は、二つ。

 仲間を殺してくれたファルムス王国が、随分と舐めた真似をしてくれる、と。西方聖教会の思惑だろうが、一枚や二枚噛んでいないはずがない。

 そしてもう一つは、聖女ラフィエル=スノウホワイトを利用した事だ。

 あの心優しい少女を、勝手な都合で振り回すだなんて許される事じゃない。自己犠牲が過ぎる性格が直っていないのに。

 

「あまり舐めた真似してくれるなよ、ヒナタ」

 

 自分だけならまだしも、ラフィエル=スノウホワイトにまで手を出そうというなら――容赦しない。

 その瞳に確かな殺意を宿して、リムルは幹部達を集めるように言った部屋へと向かう。今後の事に対策を立てるため、大切な少女を守るため。

 それが、ラフィエル=スノウホワイトの心のしこりとなっている事に、気が付かないまま。

 あの時、彼女が確かに言った言葉を、リムルが忘れてしまった言葉を、彼は思い出す事はなかった。

 

 

 

 

『貴方は心まで魔物になったと言いましたね。けれど、私は思うのです。貴方が人間だった時の心まで捨てる必要など、ない』

 

『甘さが命取りになる事もあります。冷酷な判断が必要な事もあるでしょう。その事は否定しません、肯定します。けれど私は』

 

 

 

 

『……私は、貴方のように優しい人を好ましく思います』

 

 

 

 

 ラフィエル=スノウホワイトは、リムルが魔王になる前の、その何でもない優しさにこそ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第37話 逃亡しよう、そうしよう

 

 最近、リムルの配下は上の階級になればなる程ピリピリしている。

 何で??(素朴な疑問)

 最初はそう思っていた。だって、そんなリムルの国の事情とか関係なさすぎて興味なかったし。むしろピリピリしてるおかげで人があんまり来なくなって万々歳でしかなかった。

 久し振りに自由を謳歌してしまったぜ……そう、束の間の自由を、な……。

 夢の怠惰生活を送っていた時点で気が付くべきだった。これは嵐の前兆だって。

 でもさあ、しょうがないじゃん? もう最近はストレス溜まりまくって、こっそり教会の便所でゲロ吐いてたんだ。

 分かるか? この苦しみが……。胃の中が大荒れしている人間の気持ちが、お前らに分かるかっ!?

 出来ればオレだって味わいたくなかった。永遠に無縁でいたかった。泣いた。

 

 さて、ワンクッション置くのはこれくらいにして。

 そろそろ現実と向き合おうじゃないか(震え)

 リムルの配下がピリピリしだしたと言ったな? あれは本当だ。そしてオレがごろごろしてたのも本当だ。正直あの時のオレを殴ってやりたい。

 実は――リムル達がピリピリしてたの、オレが原因だった。

 いやっ! 正確に言えばオレは全っ然悪くないんだけれども? むしろ被害者と言っても過言ではない!!(断言)

 なんかね、オレが魔国連邦から監禁されてるって噂が流れてるらしい。

 あながち間違いじゃねぇなって、最初は思ってた。むしろ早く誰か助けてくんないかな、って。

 でもさ……それで、戦争が起こるっておかしくない? おかしいよね? オレじゃなくて、この世界の奴等おかしいよね??

 頭の中どうなってんだって思ったよ……(疲弊)

 これで戦争になって誰か死んだらオレのせいみたいじゃん? 絶対嫌なんですけど?

 お前のせいだって責められるかもしれない。オレのせいじゃないのに! 死ね!!(先手)

 まあつまり何が言いたいかというと、だ。

 止めてくれ、戦争を。

 

「それは出来ない。いくらラフィーの言うことであろうと、無理なものは無理だ」

 

 そして今朝言われたのがこの台詞だった。

 わざわざリムルのところに直談判に行ったのに、速攻で拒否られた。しばらく食い下がったけど、リムルは頑としてオレの要求に応える事はなかった。

 他の奴等の前で恥掻かされたわ! もうリムルなんか知らん、くたばれ! 全部お前のせいにされてしまえ!

 なんかすげえ困った顔されたけど、困った顔したいのはオレの方だよ!!

 いい加減にしろッ!!(激怒)

 

 堪忍袋の緒が切れた事なんて一度や二度ではないが、正直今回程勢いよく盛大にブチ切れた事なんて無いんじゃないか?

 そうだ。オレはな、ちょっとキレてるんだ。

 クールタイムもなく何度もオレの意思をガン無視されちゃあ、このオレだってキレるってもんだ。

 無茶苦茶言うのもいい加減にしろよ? 言っとくけどな、オレはキレたら怖いんだからな?

 よーし、あったまきた。オレはもう捕まえられるとか怖いとか、そういうの全部捨てる。

 必要ないものは削ぎ落とせぇッ!! じゃなきゃこの先生き残れねぇんだからな!

 荷物は持ったか?

 不必要な物は置いていけ、自分の持ち物だけを詰め込んだなら準備は万端だ。

 邪魔な髪はしっかり纏めたか? 髪飾りなんて使うんじゃねぇぞ、置いていけ。よーし、良い子だ。久し振りにオレの言うこと聞いてくれてるじゃねぇか、オレの体。

 これなら問題なくいけそうだな。

 教会を捨てて、この国の外へ――魔王とか勇者とか戦争とか、そんなのとは無縁の場所まで走り出せッ!!

 大丈夫、一応オレだって何百年も生きてんだ。途中で力尽きても回復するって信じてる!

 ラフィエル=スノウホワイト、行きます!

 

「――ラフィエル=スノウホワイト。我等が神の神託により、貴殿を神聖法皇国ルベリオスへ招待する」

 

 出鼻を挫かれた。




「ファルムスの件も、西方聖教会の件も――止めるつもりは、毛頭ない」
オリ主「いい加減にしろ!(怒)」

自分のせいで戦争始まりかけてて胃痛がやばいラフィエル君。
周囲がずっとピリピリしてるし、その原因が自分(現実逃避気味)って分かって、ほんともう勘弁してくれ(涙目)
ストレスピーク、もう逃げるしかない。血反吐とまではいかず、しかしゲロはした。

 現在のステータス

 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
   ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
   ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
   ユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)
 secret:『悪魔契約』
     『悪魔共存』
     『禁忌の代償』
 備考:胃痛が止まらない可哀想な人。
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