病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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お誘い/待望の引っ越し

 第38.5話 お誘い

 

 目の前にいる美しい少女を見て、七曜の老師が一人、日曜師グランは思い返す。何のためにここへ来たのかを。

 日曜師グランの正体は、西側諸国を裏から牛耳るロッゾ一族の首領――グランベル・ロッゾである。彼は、西方聖教会が信仰する神ルミナスを隠れ蓑にして利用し、いずれ世界を手に入れようとしているのだ。

 そのための障害が、西側最強と名高い異世界人ヒナタ・サカグチなのだ。彼女を排除するために、東の商人と手を組み魔王リムルを利用してあの女を排除する。それが彼の当面の目的だった。

 しかし、やはり新参とはいえ魔王である。中々思い通りにいかなかった時、ある情報を手に入れた。

 あの聖女と呼ばれる魔王ラフィエル=スノウホワイトが魔国連邦に滞在しているというではないか。その上調べたところ、神ルミナスがこっそり会いに行っていた。

 これは使える。

 自分の立場を最大限に活かして、魔国連邦を陥れる噂を流し、反魔物の国の運動を高める。そして、疑いの目を魔国連邦に向けられて対応に追われている隙に聖女を掠め取る。

 魔国連邦は、更に混乱するだろう。その時点でラフィエル=スノウホワイトが魔国連邦にいなくても構わない。何故なら既に種は芽吹いているからだ。

 故に、真実を知るラフィエル=スノウホワイト本人には目の届く所で監視しておかなければならない。それこそ噂と同じように監禁くらいはしておいて。

 

「神……神聖法皇国?」

「既に知っているであろう、我等が神――魔王ルミナス・バレンタインこそが、西方聖教会が崇める神ルミナスの正体であるという事を」

 

 ラフィエル=スノウホワイトは、驚いたように目を見開いた。何故それを、教会の人間が口に出すのか……そう暗に責めているかのように。

 無言のまま一体何が目的なのかと勘繰るようにじっと目を合わせてくる彼女に、本来の目的を悟られないように、慎重に言葉を重ねる。

 魔王という存在の扱いづらさを、彼は知っているのだ。

 

「貴殿と魔王ルミナスは旧知の仲。そして、魔王リムルの元にいれば、これから厄介事に巻き込まれるは必至。故に、我等が神はラフィエル=スノウホワイトを我が国で保護せよと仰せなのだよ」

「……なるほど。お話はよく分かりました」

 

 既に、自分と魔国連邦を取り巻く環境については把握済みなのだろう。西方聖教会についても、その内情を掌握しているのかもしれない。

 たった一言二言交わした会話で、ラフィエル=スノウホワイトの瞳には理解の色が宿っているのだから。

 それに戦慄するのは、グランベルだ。既に自分の真の目的すらも見透かされている――その可能性に。

 

(いや。そんなわけがない。いくら魔王といえど、そこまで見透かせるはずもあるまい)

 

 そのはずだ。何せ、ラフィエル=スノウホワイトと、このグランベルは完璧に初対面なのだから……。どれだけ神算鬼謀が得意な者であっても、初顔合わせの人間をそこまで見透かせる訳がない。

 そんなことが出来るのは、本当の神や神霊の類いであろう。そう考え、グランベルは沸き起こった不安感を振り払った。

 

「よく分かった、という事は……神聖法皇国に誘われてくれるという事で良いのかね?」

「ええ、そうなります」

 

 グランベルが問い掛けると、ラフィエル=スノウホワイトはこくりと頷いた。そこに嘘はない。抵抗された場合は強引に連れて行く予定だったが、そうならずに済んで良かった。

 懐に隠し持った麻酔銃をそっと服の上から撫でて、グランベルは警戒を解かずに彼女を見やった。

 

「理由は聞かせて貰えるのであろう?」

 

 こうも簡単に事が進み、警戒するなという方が無理な話だ。グランベルはそこまで単純ではない。

 訝しげに理由を問えば、ラフィエル=スノウホワイトは憂いを帯びた顔で目を伏せた。

 

「私がここにいる事で、沢山の影響が出ています。それも……悪い方ばかり。これ以上、私はここに居てはいけないのです」

 

 ラフィエル=スノウホワイトの言い分だった。

 彼女は、自分がこの魔国連邦に滞在した事によって様々な事が起きていると認識しているらしい。それは全てが的外れという訳ではないが、ほとんどが彼女には関係のない事だ。

 

(ふん。噂に聞く偽善者よな)

 

 少しの呆れと嫌悪感を抱きつつ、グランベルはその理由を理解出来ないままに納得した。噂で流れ聞く聖女ラフィエル=スノウホワイトそのものだったからだ。

 無論、全てを信じた訳ではないが……信じたフリをした方が、グランベルにとっても都合がいい。

 故にそれ以上ほじくり返す事なく、グランベルは話を進めることにした。

 

「だからこそ、貴方に誘われる事は渡りに船だったのです」

「……ならば、気が変わらないうちに」

 

 一瞬の違和感。しかしグランベルは気のせいだろうと放置し、ラフィエル=スノウホワイトの手を取る。

 そして先日のルミナス同様、二人は空間転移によって一瞬でその場から消え失せたのだった。

 ――その数十秒後、ラフィエル=スノウホワイトの気配が消えた事を心配したソウエイの部下が、リムルに報告した事によって事態は深刻化する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第38話 待望の引っ越し

 

 ちょっと待てよ、このジジイなんつった??

 オレの聞き間違いじゃなければ――オレをナントカ国に招待すると、そう言ったな? 間違いない、これは嬉しいお誘いだ。

 この国からさっさとオサラバしたいオレを、わざわざ迎えに来てくれるなんて……なんて素晴らしいタイミングなんだ!

 もしかしてこのジジイは天に愛された稀有な豪運の持ち主なのかもしれない。向こう側だって、あっさり乗ってくれるなんてラッキーだろうし。

 これは良い取引だ。

 是非行かせてください!(歓喜)

 

「既に知っているであろう、我等が神――魔王ルミナス・バレンタインこそが、西方聖教会が崇める神ルミナスの正体であるという事を」

 

 ………えっ、知りませんけど??

 そ、そうだったのか。バレンタインってば、魔王と神を兼任してたのか。じゃあオレをこっちの世界に連れてきたのは、まさか!?

 いや、ないか。異世界なんだし、オレが怒らせちった神様とは別神だろ。

 ていうか魔王と神って相反する存在じゃないの? なんで兼任してるんだ。うーん……まいっか。

 ここから出て行けるなんて関係ないし……。

 

 

「貴殿と魔王ルミナスは旧知の仲。そして、魔王リムルの元にいれば、これから厄介事に巻き込まれるは必至。故に、我等が神はラフィエル=スノウホワイトを我が国で保護せよと仰せなのだよ」

「……なるほど。お話はよく分かりました」

 

 バレンタイン、様子見とか言ってたけどちゃんと本当に見ててくれたんだな……。感動した。何で魔王なんかやってんの??

 まあいいけど、本当にバレンタインだけだよ。オレをちゃんと助けてくれる魔王は。流石クロノアが友達してるだけはある。

 ありがとう、愛してる!

 オレはお前のそういうところが好きだったんだ。知らなかったろ?

 全くツンデレなんだから……もっと早くに来てくれても良かったんだけど?

 まあ他の奴等は様子見にさえ来ないけどな。はー、つっかえ! 来なくて良い時には超来る癖に、こういう時は……。

 あいつらホント役に立たねぇな。知り合い甲斐のない奴等だ。そろそろ絶縁しよ。

 

「よく分かった、という事は……神聖法皇国に誘われてくれるという事で良いのかね?」

「ええ、そうなります」

 

 むしろ断るって選択肢がないよね。

 だってほら、元々逃げようとしてたし。でもオレの体力ゴミカスだから、楽に逃げられる方法があるならそっち行くよ。当たり前だよなあ?

 そんなことわざわざ確認しなくていいよ、面倒臭いな。そんな事より早く連れてってくれ。ほら、ハリーハリー!

 あいつらにバレたら終わるだろうが!! オレが! 分かってるんだろォ!?(半ギレ)

 はよ! はよ!

 もうクッソくだんねぇ問答はここから出たらいくらでもしてやるからさぁ! 頼むから早くしてくんない??

 

「理由は聞かせて貰えるのであろう?」

 

 そんなん聞かなくても分かるだろ、頭イかれてんのか?(真顔)

 

「私がここにいる事で、(オレの体調に)沢山の影響が出ています。それも……悪い方ばかり。これ以上(オレの体調を悪化させないためにも)、私はここに居てはいけないのです」

 

 そういう事だ、わかったね?(圧力)

 わかったなら、さっさとここからオレを連れ出してくれ。頼む、このスリリングな状況にオレの精神は秒単位でゴリゴリダメージを与えられてるんだ。

 あーもうおっせぇな、あくしろよジジイ!

 

「だからこそ、貴方に誘われる事は渡りに船だったのです」

「……ならば、気が変わらないうちに」

 

 よしきた!

 ジジイがオレの手を取ると、さっと何かが発動した。

 視界がぐるりと一回転したかと思うと、そこは既にオレの教会じゃなかった。

 むしろ、聖歌隊として暮らしていた時のあの厳かな――

 

「ようこそ、ラフィエル=スノウホワイト。奥の院へ」

 

 ジジイが言うには、ここはバレンタインが運営する地域らしい。で、バレンタインの寵愛を受けた七人の住処、みたいな……。

 ここなら滅多に人も来ないため、不用意に誰かに接触する事もないという。

 は? 最高かよ……。

 天国はここにあったんだ! 何でもっと早く教えてくれなかったの? 許さん。罰としてオレをここに永住させろ、異論は認めない。

 というわけで、オレはあのストレスマッハな国からこのニート生活まっしぐらな環境で過ごす事になったのだった。

 

 ありがとう神様!! これはオレを許してくれたって事でいいんだよな!(有頂天)




「存外上手くいった――だが、油断は出来ぬな」
オリ主「やったぜ! 祝☆魔国連邦脱出!(歓喜)」

ラフィエル君、ついにリムルから逃走!
噂が原因の魔王&上層部のイライラが配下に伝染したのと、各国への対応に忙しく、ラフィエル君の警備が少し緩んだ。
その隙を突き、グランがラフィエル君に接触介入。ラフィエル君の精神状態は完全逃走モードだったため、逃走成功が決まりました。

 現在のステータス

 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
   ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
   ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
   ユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)
 secret:『悪魔契約』
     『悪魔共存』
     『禁忌の代償』
 備考:何も知らずに敵国へ(さら)われ、永遠に真実に気づけないかもしれない馬鹿。
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