病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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ラフィエル君 逃亡日記
未来への灯火/思い立てば大凶


 第39.5話 未来への灯火

 

「――目が覚めましたか」

 

 するりと耳の奥へ入っていく柔らかな声で、ギャルドの意識は覚醒した。慌てて起き上がり、周りを見渡せばそこにいたのは一人の少女。

 美しく艶のある、絹糸のような白い髪。それは絡まることなくさらりと肩から背中へと流れている。

 真っ白な髪と白磁のような肌に埋め込まれているのは、大空と太陽――光に輝く青い瞳と、柔らかそうな唇だった。

 彼女の髪とは数段劣る色合いではあるものの、高級であると察せられる純白の衣装を身に纏い、その肢体を隠している。

 思わず魅入ってしまう程の美貌を持つ彼女に、例に漏れず見惚れてしまったギャルドだったが、はっと我を取り戻す。

 そう、彼は彼女の事を知っていた。

 絵姿と同じ、いやそれ以上の容姿を持つ彼女の名は、ラフィエル=スノウホワイトである。

 魔王――暴虐の聖女(セント・アウトレイジ)ラフィエル=スノウホワイトその人なのだ。

 

「な、魔王が、何故この神聖なる場所に……!!」

 

 思わずいつものように炎槍炎獣牙槍(レッドスピア)に手を伸ばし、そしてそれが無くなっている事に気が付いた。

 愕然とした後、ばっと部屋を見渡せばポッキリと折れた己の相棒。目から大量の涙が溢れそうになったが、ぐっと堪えてラフィエル=スノウホワイトを睨み付ける。

 

「くっ……何のつもりだ!」

「何のつもりと言われても困るのですが……」

 

 彼女に困り切った顔をされ、その様子に彼は少し勢いを弱める。

 そして、そこでふと気付く。

 自分は死んだ――殺されたはずではなかったか、と。

 そこまで思い出せば、あとは芋づる式に出て来る記憶。彼女は敵などではなく、命の恩人だったのだ。

 顔を真っ青にし、ギャルドはがばりと頭を下げる。

 

「すまない! 命の恩人になんて真似を……いくら目を覚ましたばかりで記憶が混乱していたとはいえ、槍を向けようなどと!!」

「…………いいえ、気にしないで下さい。貴方はとても良い人ですね」

 

 どこか安心したように微笑むラフィエル=スノウホワイトを見て、ギャルドは彼女との出会いを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、そっ……!!」

 

 奥の院から、少し離れたその場所で。

 ギャルドは七曜の老師の執拗な攻撃から逃げていた。彼と七曜ではその実力が違いすぎる。逃げに徹する事しか出来なかったのだ。

 しかも相手は火曜師アーズ。ギャルドの上位互換といってもいい相手なのだ。勝ち目など皆無である。

 必死に走り抜け、同僚達の名を叫ぶ。

 しかし、これだけ長い間走り回って叫んでいるにも関わらず誰も様子を見に来る気配がない。

 恐らく七曜の誰かが何かしら手を回しているのだろう。このままでは……死んでしまう。

 

霊子聖砲(ホーリーカノン)!」

 

 目眩ましに神聖魔法を放ち、ギャルドは走り続ける。あと十数分走った先にはヒナタの私室がある。無礼千万とヒナタを崇拝するニコラウスにブチ切れられるかもしれないが、もう逃げる先はそこしかない。

 それに、ヒナタかニコラウスがいれば、この七曜を撃退してくれる可能性は高い。

 何とかそこまで行ければ、ギャルドは高確率で生き延びる事が出来るだろう。

 そのためには、この七曜を目眩ましで遠ざけ、転がり、生き続けなければならない。

 自分が七曜に勝てるなどと思い上がるつもりはない。だが、逃げに徹すれば生き延びる事だって出来るかもしれないのだ。

 

「あと、少し……うっ!?」

 

 息を切らせながら、ギャルドは必死に走り続けていた。しかし七曜はそう簡単に逃走を許すほど甘くはない。

 ギャルドの足下へ仕掛けを施し、予想外のタイミングでの転倒を引き起こす。それだけで、ギャルドは大きすぎる隙が出来る。

 疲れ切った体でそれに対応など出来まい。

 床を這うギャルドに、七曜と呼ばれるだけある高火力の攻撃が叩き込まれる。

 いくら十大聖人の一人とはいえ、何百年も生きている七曜には敵わない。

 しかし、それだけで諦める程ギャルドは落ちぶれていない。味方であるはずの七曜の老師たる火曜師アーズに狙われたのだ。

 何とか一矢報い、誰かにこの事を伝えなければいけない。

 ならば……この一人では制御すら不可能な技を暴走させてやる。

 不自然なそれは、せめて一人でも気付いてくれるだろうと、そう思って。

 

極炎獄霊覇(インフェルノフレイム)――ッ!!」

 

 火のギャルド。

 そう呼ばれる所以を今、見せよう。

 炎の精霊王(エレメンタルロード)の力を一部借り受けて行使する、精霊魔法の究極。核撃魔法:熱収束砲(ニュークリアカノン)をも凌ぐ熱量を持つ。

 魔素を構成する霊子をそのまま利用した、純然たる破壊エネルギー。

 それが、ギャルドの奥の手だった。

 

(これなら……きっと、レナードが気付いてくれるはずだ)

 

 ほっと、安堵の息を漏らして、ギャルドは目の前の光景を眺めた。

 いとも簡単にその奥の手を、自慢の炎槍と共に打ち消した、火曜師の姿を。

 制御不能の奥の手である極炎獄霊覇(インフェルノフレイム)を放ち、今までの火曜師の攻撃も合わさって満身創痍であるギャルド。

 そんな彼に向かって、火曜師は攻撃の手を止める事はなかった。

 ボロボロの彼を近くの茂みへと投げ込み、火曜師は去って行く。あと数分で息絶える彼の死体を処分するのは後回しにされたようだ。

 ギャルドへ認識阻害やその他諸々の工作を仕掛けた後で、火曜師は去って行ったのだから。

 何かがあるのだろうと、薄れつつある意識の中でギャルドはそう確信した。

 このまま息絶えるのだ……そう思っていた彼の顔を、白い少女が見下ろしていた。

 

「こんばんは。星がこんなにも美しく輝く夜には、()は似合いませんね――そうは思いませんか?」

 

 少女が微笑んだように見えたその時、全身を苛む激痛が綺麗に消え去った気がした。

 そして、時間は今に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第39話 思い立てば大凶

 

 奥の院とやらに部屋を用意された。ありがとう、愛してるよジシイ。オレの事は孫だと思って可愛がってくれても構わないけど?(チラ見)

 この部屋は何より人がいない。人が来ない。完全隔離状態にも関わらず飯は3食ちゃんと出て来る。

 最高かな?(笑顔)

 もうほんと、オレここに住むわ。いや住んでるけど。なんて幸せなんだ。

 他人のいない生活の開放感。たまりませんな! 人目を気にせずゴロゴロしてても良いし。

 リムルのとこみたいにこっそり見張ってるようには見えんしな! あそこはね、まるで牢屋みたいだった。四六時中監視されてんだぞ? 死ぬから。

 その点ここは良いよ、好きです(直球)

 

 しばらくの間ベッドでごろごろして食っちゃ寝する生活(至福)してたら、窓を見てそういや外に出てねーなと思い立つ。

 ぐうたらするのも好きだけど、外で自然を感じないと落ち着かない困った体質なのだ。まあ聖歌隊の奴等はみんなそうだけど。

 オレ、何年も前に聖歌隊止めてるはずなんだけどな……元の世界の影響はいまだに残っている。

 さっそく外に出ようと気持ちスキップしながら外へ出て、やっぱ止めときゃ良かったと即座に後悔した。

 ああ、今日は星が綺麗だなあ……(現実逃避)

 

 目の前で見知らぬジジイが赤髪の兄ちゃんを虐めてるけど、空はそんなん知るかとばかりに星を輝かせている。いいよね、お前らは。関係ないもんね。

 オレだって無関係でいたかったよ……。

 あいつら、オレがふんふん機嫌良く散歩してたらいきなり走ってきよってな?

 慌てて置物の陰に避難したら、なんか赤髪の兄ちゃんが何も無いところですっころんだんだ! しかもオレの目の前である。いい加減にして?

 そこからジジイの虐めが始まり、ブチ切れ兄ちゃんがとんでもない事しやがるから目を瞑ってガクブルしてたら、知らん間に雑巾になった兄ちゃんがジジイに引き摺られていた。

 何なの??(真顔)

 そういう事はさあ、オレのいないとこでやれってんだ! 何でわざわざオレの目の前でやるの? 嫌がらせなの? 死ね!(半ギレ)

 

 いい加減にしろよお前ら……この世界の奴等は何かオレに恨みでもあんの? 巻き込むな!!(絶叫)

 ふぅ……とりあえず帰ろう。そうしよう。

 もうほんと嫌だ、こういうなんか面倒臭そうな事態の目撃者になるの。

 行きとは違って重い足取りで帰っていると、途中で妙に霧がかかっているような変な場所があったから気分転換にでもと覗き込んでみる。

 

 赤髪の兄ちゃんが瀕死で横たわっていた。

 

 あんのジジイ、やるならやるでちゃんと始末しろよ!! 何適当しとんねん、ぶっ飛ばすぞ!!

 どうすんだよこいつ、ばっちり目が合っちゃったじゃねぇか! これで助けなかったら、もしこの後誰かが助けたらオレに共犯の罪が被せられるくない? 冤罪いくない!

 だーからちゃんと後始末しろと……中途半端が一番迷惑かかるんだよクソが!!

 奥歯をギリギリしてたら、兄ちゃんが何かを言おうとしたのでテンパって訳分からん事を言った。後悔している。

 

 とりあえずリムルのとこでかっぱらってきた回復薬をかけてみたら全回復した。ので、とりあえず奥の院のオレの部屋に放り込む。

 近くに落ちてた兄ちゃんの槍っぽいの(折れてる)も拾って回収しておいた。趣味悪いね、どうやら君とは合わないようだ。

 はー……疲れた。

 思い立ったが吉日って言葉があるけど、オレはもうその言葉を信じない。考えた奴は豆腐の角に頭ぶつけて死んでくれ。

 疲れたから椅子に座って机に倒れ伏してぼーっとしていると、兄ちゃんが身じろぎする。声をかけてみれば、慌てて跳ね起きた。

 

「な、魔王が、何故この神聖なる場所に……!!」

 

 いや、バレンタインに呼ばれたんやんけ。

 何で知らないんだよ……お前、もしかして下っ端? これだから下っ端は! はー、つっかえ!

 礼儀がなってないんだよ。オレ、お前の、命の恩人。理解できてますか?(煽り)

 

「くっ……何のつもりだ!」

「何のつもりと言われても困るのですが……」

 

 もー……この思い込みの激しい馬鹿をどうにかしてくれ。何故か折れた槍を見て泣きそうになってたけど、こいつほんと何なん?

 困るんだよね、こういう話通じない相手と話すの。慣れてるけどさ。

 と思ったら、兄ちゃんは真っ青になって頭を下げてきた。

 

「すまない! 命の恩人になんて真似を……いくら目を覚ましたばかりで記憶が混乱していたとはいえ、槍を向けようなどと!!」

 

 ………おお?(困惑)

 

「…………いいえ、気にしないで下さい。貴方はとても良い人ですね」

 

 久し振りにまともに話せる奴が来たかもしれない。

 




「人でありながら魔王へ至った者、か」
オリ主「外に出るとロクな事ないよね(死んだ目)」

ラフィエル君が何となくで行動すると、こうやって酷い目に遭う。
ようやく学習したようだ……しかし、その学習と反省が活かされる事は決してない(断言)

 現在のステータス

 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
   ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
   ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
   ユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)
 secret:『悪魔契約』
     『悪魔共存』
     『禁忌の代償』
 備考:ギャルドとの邂逅により、ニート生活は終わりを告げる。
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