病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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勇者の導き

 41話 勇者の導き

 

 ギャルドにとって、ラフィエル=スノウホワイトと日曜師グランの会話はまるで理解が出来なかった。

 ラフィエル=スノウホワイトがグランを牽制したかと思えば、あっさり自分を殺そうとした者の同僚であるグランにギャルドを引き渡そうとする。

 しかし、何故かグランはギャルドを連れて行かず、ラフィエル=スノウホワイトに預けるなどと宣った。

 訳が分からなかった。

 頭が良いとは自分では思わないが、それでもそこらにいる一般人よりは賢いはずのギャルドですら何がどうなったのか分からなかった。

 混乱している間にグランは出て行き、ラフィエル=スノウホワイトは穏やかな笑みを浮かべたままだ。

 

「ラフィエル様……これは、どういう」

「どういう事なのでしょうね」

 

 変わらない微笑みのまま、ラフィエル=スノウホワイトは試すようにギャルドを見つめた。

 すぐに答えを求めるのではなく、自分で考えろ――そう暗に言われた気がして、ギャルドは口を噤んだ。

 そして、思考を燃やす。

 一体何がこのルベリオスで起こっているのか。何のために七曜の老師達は自分を殺そうとするのか。何故、グランはラフィエル=スノウホワイトの下へ自分を留め置いたのか。

 

 一つずつ整理していこう。

 まず、このルベリオスで何が起こっていたのか思い出せ。

 事の発端は新興国家、魔国連邦――ジュラ・テンペスト連邦国についての問題だった。かの国の頂点に立つのは新しい魔王リムル=テンペスト。

 西方聖教会聖騎士団団長ヒナタ・サカグチが殺害に失敗した、異世界より転生してきたとされるスライムである。

 件のスライムは現在、ファルムス王国へ魔の手を伸ばしている。

 それへの対処に、ヒナタ・サカグチが魔国連邦へ赴くという話だったはずだ。その後に火曜師に襲われ、この目の前の少女に救われ――

 

(待て。何故、彼女はここにいる!?)

 

 そうだ。

 最初に疑問を出したはずだった。すっかり忘れてしまっていたが、ここに魔王たる彼女がいるのは可笑しな事なのだ。

 どうやって、いやそれはいい。

 何の目的があって、魔王ラフィエル=スノウホワイトはここにいるのか。

 大きく跳ね上がった心臓を抑え、ギャルドは脳内の引き出しをこじ開けていく。

 ラフィエル=スノウホワイトは、今――魔国連邦に監禁されている。そんな話ではなかっただろうか。

 会議に乱入した七曜が、確かにそう言っていたはずで……ッ!?

 

(まさか、まさか……嘘だったのか!? 魔国連邦を陥れるために、彼女をここに閉じ込めておいて――人間側に、魔王リムル=テンペストは悪だと刷り込むために!)

 

 なんて事だ。

 魔国連邦はラフィエル=スノウホワイトと無関係。だというのに無実の罪を着せられて、その冤罪を晴らすために動き回り……その隙を、七曜に狙われている。

 何故、七曜が。自分が信じていたこの信仰は全て嘘だったのだろうか。神ルミナスの寵愛を受けているという七曜の老師が、自分を殺そうとし無実の国を陥れようとしている。

 そんな事を許していいのか。

 否、断じて否である! 事実は詳らかにし、作りあげられた虚構を打ち砕かなければならない。

 

 ルミナス教は、魔物を悪と断じている。

 しかし……武装国家ドワルゴンのように魔物と交流する国もある。そして、それをギャルドは悪とは思っていない。

 人間を傷付ける魔物は許せない。だが、無実の罪を着せられている魔物を悪と断じて斬る事は、ギャルドには出来ない事だった。

 特に――人間でありながら魔物の頂点に立っている、目の前の少女の存在を知った時からは。

 だからこそ、七曜あるいはルミナス教が為しているこの悪事を見過ごす訳にはいかない。

 そのためには、目の前の少女――世界最強の一角たる魔王、暴虐の聖女(セント・アウトレイジ)ラフィエル=スノウホワイトの協力が不可欠だ。

 七曜は新参とはいえ魔王を相手取っている。ならば七曜を相手にするならば、魔王と同等の力を持たねばならない。

 だが、ギャルドにそんな力は無い。思い知らされた。だからこそ、目の前の少女に希望を見出す。

 彼女は病弱の聖女と名高い、魔王でありながら徳の高い人物なのだから。

 

「魔王ラフィエル=スノウホワイト。どうか、七曜を倒すため……魔国連邦を彼等に滅ぼさせないために、力を貸してくれないだろうか」

「…………」

 

 ラフィエル=スノウホワイトは、頭を下げるギャルドを無言で見下ろしていた。その沈黙は、ギャルドにとって永遠のように感じてしまう。

 けれど、決して彼は頭を上げることはなかった。

 静寂が包み込み、二人の呼吸音だけが部屋に響き渡り、ギャルドの額からは汗が流れ落ちる。

 断られるかもしれない――そんな不安な過った直後に、ラフィエル=スノウホワイトは立ち上がった。

 

「馬鹿な事を言ってはいけませんよ。疲れているのでしょうか? 今日はもう休んで下さい」

「………!? そんなっ……俺は疲れてなど! 話を聞いて――」

「休みなさい、ギャルド」

 

 有無を言わせぬ強い口調で、ラフィエル=スノウホワイトはベッドを指し示す。

 反論しようとしたギャルドは思わず閉口し、強い意志を感じるラフィエル=スノウホワイトに逆らえず、ベッドへ向かう。

 協力を断られるどころか、話すら聞いて貰えない事に苛立ちと不安が広がる。

 じっと見つめられる事が嫌で、ギャルドは大人しくベッドに潜り込んだ。眠れる訳が無い。そう思ったギャルドだが、不思議と睡魔はすぐに襲いかかってきて――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿だな、キミは。監視や盗聴されてる事に気が付かなかったのか?」

 

 目を覚ましたギャルドは、目の前にいるラフィエル=スノウホワイトに馬鹿にされた。

 しかし、今まで接していたラフィエル=スノウホワイトとは明らかに口調が違い、何よりも雰囲気が歴戦の戦士といったもので、聖女と呼ばれる彼女とはまるで違っていた。

 思わずお前は誰だと口から零れる。

 ラフィエル=スノウホワイト(仮)はキョトンとした後に楽しそうに目を細めた。

 

「僕は元勇者。それだけ分かっていればいい。勿論彼女とは――ラフィエル=スノウホワイトとは別人だ。そしてここはキミの夢。現実に干渉できる夢の中」

 

 ラフィエル=スノウホワイト(仮)改め元勇者は、そんなよく分からない事を言った。混乱するギャルドに、溜息を吐いた元勇者がパチンと指を鳴らす。

 すると、元勇者の過去*1――魔王ラフィエル=スノウホワイトとの戦いの記憶がギャルドの脳味噌に叩き込まれた。

 おかげで理解は出来たものの、その影響で酷い頭痛に襲われる。頭を抑えながら、ギャルドは最初に言われた問いに返す。

 

「監視や盗聴、とは?」

「本当に気付いてなかったのか? 彼女はグランベル――グランに閉じ込められているんだから、余計な真似をしないように監視されているのは当然だろうに」

 

 キミの迂闊な行動で、警戒が強まってしまった。

 元勇者がそう告げると、ギャルドは先の行動を思い返す。盛大な自爆をかましていた。

 真っ青になって慌て出すギャルドを宥め、元勇者はゆっくりと分かり易く説明する。

 

「いいか、キミの夢に僕は干渉している。けれどそれは現実のキミにも影響する」

「それは再三言われて分かっている。結局何が言いたいんだ?」

「察しが悪い……鍛えてやると言っているんだ」

 

 夢で鍛えたそれらは、現実に反映される。どんな無茶さえも夢ならできる。

 修行には打ってつけだろうと、元勇者は語る。

 しかし、何故そんなにも親身になってくれるのか。ほぼ初対面にも関わらず、何故――

 

「僕は元勇者だが、ラフィエル=スノウホワイトでもある。それは悪魔にも言える事で……要するに『上位者(ミオロスモノ)』の行使が可能だ。未来予知で、必要なプロセスだった――そういうこと。ハッキリ言おうか? キミのためではない」

 

 ただのついで、ラフィエル=スノウホワイトのためになるから、強くしてあげようと言うわけだ。

 理解できたか、そう問われる。

 それに頷き、ギャルドは頭を下げた。

 

「それで構わない。よろしくお願いする」

「ああ。キミはキミの目的で動いてくれて構わないから……ただし、ラフィエル=スノウホワイトの意思はちゃんと確認しておくことだ」

 

 それで万事上手くいく――そういう星の下に生まれているから。

 その言葉は飲み込んで、元勇者はギャルドを見やる。人間にしてはそこそこ強いが、所詮はそこまで。これでは到底悪魔には敵うまい。

 夢の中に侵入出来ずに元勇者の行動を妨害出来ない悪魔が歯嚙みしている気配を感じつつ、静かに息を吐く。

 

 元勇者自身の権能によって大幅に強化された状態で見た未来――悪魔は滅ぶ。しかし、その大半でラフィエル=スノウホワイトも亡くなっている。

 稀に起こるラフィエル=スノウホワイトだけが生存する時間軸で、キーパーソンとなるのは黒髪の勇者と魔王達、そして目の前の青年だった。

 今まで絶対に配下を作る事の無かったラフィエル=スノウホワイトが、唯一自分の手元に置いた者。

 それが目の前の青年――ギャルドだった。

 ちなみに彼は多くの時間軸で七曜に殺されている。そこを生き残ったギャルドだけがラフィエル=スノウホワイトの配下となっている。

 

 が、配下となっても彼の死亡率は高い。彼が死んだ世界では九割ラフィエル=スノウホワイトも死亡する。

 そのために、元勇者は悪魔の妨害にブチ切れながらもラフィエル=スノウホワイトの意識に干渉し、彼女を外に連れ出しギャルドを救わせた。

 しかしこれで終わりではない。まだ彼の死亡率は高い。それを少しでも下げるために、わざわざ出張ってきたのだから。

 

「それで、俺は何をすれば?」

「ん? ……僕に教えられるのが不安なのか?」

「えっ、いや、そういう訳では」

 

 ヒナタ・サカグチというベテラン指導者に教わっていたために、他人に教わるのが不安だというギャルドの心の声に元勇者は呆れ顔だった。

 記憶を叩き込んだというのに、この男は元勇者が何者なのか忘れているのではないだろうか。

 

「安心してくれていい。僕はユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)』――キミを聖人レベルまで導くなんて、赤子の手を捻るようなものだ」

 

 

 

 

 

 

*1
幕間 或る勇者の話①②③参照




オリ主「ギャルド君、訳分からん事言うの止めてくれるかね?」
元勇者「あんなんが彼女の本性とは思わなかった。まああれはあれで可愛いとは思う(本心)」

ラフィエル君の本性を知ってなおベタ惚れな勇者。
ただし知っているのは元勇者だけで、悪魔はラフィエル君の本性なんて知らない。当然だよね!

 現在のステータス

 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
   ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
   ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
   ユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)
 secret:『悪魔契約』
     『悪魔共存』
     『禁忌の代償』
 備考:知らない所で何かが起こっている事をまるで察知できない人。
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