病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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片鱗/悪魔の独白

 第45.5話 片鱗

 

 必要最低限の食事と睡眠をこなし、ギャルドは自身の最速で魔国連邦へと駆け抜けた。せめて、自分が到着するまでは戦闘を始めてくれるなと願いながら。

 しかし、そんなちっぽけな願いは叶わなかった。

 自分が駆けつけた時には既に戦線は開かれており、団長の首と胴体は離れていた。

 その上、そこには魔王リムル以外に、圧倒的な存在感を持つ少女までもが現れていたのだ。

 呆然と立ち尽くすギャルドは、その数秒後に必死で頭を回転させる。この状況を把握するために。今、無闇に飛び込んだ所で余計に状況を混乱させるのだという事が、分かっていたから。

 

 ――ギャルドが駆け付ける、ほんの少し前。

 リムルがヒナタの首を切り落とした直後、そこに七曜の二人が現れた。ただし、ぼろ雑巾のようになって、という言葉がつくが。

 それに青ざめたのはギャルドに扮した火曜師である。こんなことが出来るのは、彼の知る限りたった一柱(ヒトリ)だけ。

 

「ルミナス、様……」

 

 神ルミナス。あるいは真なる魔王ルミナス・バレンタイン。

 七曜を倒すとしたら、彼女しか有り得ぬ事。

 何故――とは言えない。彼女はきっと、自分達の企みに気付いたのだ。そして七曜が害されたという事は、彼女にとって自分達の行いは看過できない程の失態でしかないという事だ。

 それを証明するかのように、現れたのは銀髪の可憐な少女。金銀妖瞳(ヘテロクロミア)の、少女である。

 

「――魔王リムルよ、迷惑をかけたようじゃな」

 

 凜として涼やかな声は、彼女の口から零れたもの。

 しかし、その冷たい顔は瞬時に憤怒へと染まる。何しろ、坂口日向(ヒナタ・サカグチ)はルミナスのお気に入り。彼女の死体を目にしたからだ。

 そんな彼女を殺したとあっては、いくらルミナス側に非があるとしても激怒するだろう。魔王とは、理不尽な存在である。

 故に、ここから先は魔王リムルと魔王ルミナスの本気の戦いが始まる――はずだった。

 

「~~~~♪」

 

 流れてきたのは、美しい音色。

 一触即発だった空気は、瞬時に霧散していく。心を、体を癒すその音色は魔国連邦に響き渡る。

 そして、その音色はが止む頃には、その場に怪我人はいなくなっていた。

 

「怪我が!?」

「こんなことって……」

「う、ん…? ルミナス様?」

「――ヒナタ!」

 

 はっと、それぞれの意識がヒナタへと向かう。そこに首を切り落とされた彼女の姿はなく、五体満足で困惑気味の彼女が、座り込んでいた。

 彼女の容態を確認したルミナスは、周囲へ視線を走らせる。今の音色、効果――間違いなくラフィエル=スノウホワイトの仕業である。

 何処にいるのだと探せば、出てきたのは赤い髪の男。

 

「え……ギャルド? どうして、二人……!?」

 

 今まで、ギャルドに扮していた火曜師と共に行動していたレナードが、すぐさま距離を取る。

 騎士達に動揺が広がり、リムル達も警戒する。しかし、出てきたギャルドが見せたそのフルートによって、リムル達の警戒は最初からその場にいたギャルドに扮した火曜師へと向かう。

 

「俺は、火曜師に暗殺されかけた所をラフィエル様に救われた。そっちの俺は偽物だ」

「……ふん。まあ、そうであろうな。そうでなければ、そのフルートでラフィーの『聖歌者(ウタウモノ)』の効果は出せぬ」

 

 若干不満げに納得したルミナスは、火曜師を他の二人の七曜と一纏めにして拘束した。

 そして、改めてリムルと向かい合う。

 

「……お前が、神ルミナスか? 魔王達の宴(ワルプルギス)では――」

「その件に関しては追々話そう。まず、七曜は始末する。ヒナタを殺した事については――」

「――謝らない。そもそも、お前らがラフィーを連れて行った事が原因だろ。それが無ければ、殺してない」

 

「それについて、妾は把握しておらぬ」

 

 不快げに鼻を鳴らし、ルミナスは告げる。

 それに関しては完全に七曜の独断であったこと。噂に気付いてルベリオス内を捜索したが、既にルベリオスから出て何処ぞへ向かっていたこと。

 すぐさま七曜を始末するために動き、ファルムスにも七曜を始末させるためにロイを向かわせた事。

 

「……それで? はいそうですかと受け入れろとでも?」

「ふん――そうは言わぬ。こちらも最大限譲歩しよう。貴様はラフィーのお気に入りでもある故な。お互い、あの娘の機嫌を損ねたくはなかろう?」

「…………。………………聞こう」

 

 ようやく剣を鞘へ収めたリムルが、ルミナスとの交渉へと移る。彼女の出した条件と、それに更に付け足すリムルが口論し、より良い条件へと落ち着かせていく。

 それを、リムルの配下は当然といった様子で。騎士達はハラハラと不安そうに窺っている。騎士達は既に彼女が神ルミナスだということに気付いていた。

 

「まあ、これくらいかな」

「随分と足下を見る奴よ。ラフィーのお気に入りでなければ八つ裂きにしてやるものを……」

 

 条件は二人の中で納得と共に落ち着いたようで、それぞれの視線がギャルドへと突き刺さる。

 

「――で、だ」

「そろそろ話を聞かせて貰うとしよう」

 

 絶対に逃がさない。

 その目が、物語っていた。

 ラフィエル=スノウホワイトに関しては、敵対していた二人でも息が合うようだ。

 魔王と神に睨まれたギャルドは、びくりと肩を震わせて、それでも気丈に目を逸らさなかった。

 

「ラフィエル様は、魔国連邦とは真逆へ向かうと言っていた。こちらに来てくれた方が丸く収まるのではと言ってみたが、断られた」

 

「真逆……って事は、不毛の大地か?」

「すぐに捜索させる。ギュンター! 聞こえておるな?」

 

 すぐさま指示を出したルミナスに、リムルも捜索させようかと迷う。流石に今は、そんなところにまで配下を行かせる訳にはいかないのだ。

 心情的には今すぐにでも探したいのだが……。

 

「……ルミナス様。今は探さない方がいいかと」

「何だ。ラフィーが探すなとでも言ったか?」

「いえ……しかし、ラフィエル様は何か考えがあってそうしたのではと。実際――日曜師に攫われたのも自分の意思だと聞い」

「何だとッ!?」

 

 今までの大前提が崩れ落ちた。

 驚愕に目を剥く彼等に親近感が湧く。少し前の自分もそれくらい驚いたものだ。ラフィエル=スノウホワイトは誘拐され監禁され、自由を無くしていると思っていたのだから。

 しかし、それは彼女によって故意に起こされたものだ。

 

「これ以上――悪い影響が出ないように、と。そう考えたのだと」

「悪い……影響?」

 

 どういう事だと問い質す前に、ギャルドは答えた。

 

「『魔王になる前の貴方ならば、例え私がいなくなったとしても、彼女(ヒナタ)を殺す事はなかったでしょう』」

 

 ――力に溺れ、飲まれかけている。

 私がいると、それが激しくなるようです。

 だから、距離を置きましょう。

 

 それが貴方のためです――どうか、これ以上、人の(優しい)心を失わないで。

 

「……………あ」

 

 そして、ようやく。

 彼女の言葉を、思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第45話 悪魔の独白

 

 ラフィエル=スノウホワイトは聖女である。しかし、その手は汚れきっている。けれどそれでも、その魂は気高く貴い。

 だからこそ、その器は悪魔を内包していても生きていられる。

 その悪魔は――ラフィエル=スノウホワイトを、憎悪していた。

 

「貴方に誘われる事は渡りに船だったのです」

「……ならば、気が変わらないうちに」

 

 ラフィエル=スノウホワイトは、分かっていた。

 ルミナスがこの件に関わっていない事などお見通しだった。だからこそ、ルミナスに――ではなく、貴方にと言ったのだ。

 けれども、その言い回しは嘘こそ吐いていないものの詐欺師のやり口である。清廉潔白な聖女様とは思えぬやり方だと、嘲った。

 それでも、その行動は全て他人のため。

 リムル=テンペストが魔王に覚醒し、微かに見て取れた意思なき化け物への至る可能性の片鱗。そしてそれは、ラフィエル=スノウホワイトと共に過ごすごとに激しく表れていく。

 だからこそ、彼女はグランベルの手を取った。

 リムル=テンペストを、意思なき化け物にしないために。

 けれど、それは、グランベルを捨て駒として扱うという事に他ならない。

 

 他者を救うために、他人を蹴落として奈落へ落とす。

 

 そんな人間を、聖女と呼べるのだろうか?

 ――答えは、否である。

 だからこそ、悪魔は嘲り嫌悪し、ラフィエル=スノウホワイトを憎悪する。

 綺麗事を並べるだけの人間らしい人間。

 それが、悪魔にとってのラフィエル=スノウホワイトに他ならない。

 

「いいや。そんなこと、彼女は考えてすらいない」

 

 悪魔の思考に割り込んできたのは、元勇者。ラフィエル=スノウホワイトの延命措置を図った、元勇者はラフィエル=スノウホワイトと同じように綺麗事を吐く。

 くだらない妄想を垂れ流すくらいなら、悪魔の力となればいいのに。

 しかし、元勇者は狂信的なまでにラフィエル=スノウホワイトを愛している。

 悪魔の味方には、どうやっても成り得ない。

 

「彼女はただ、自分のことだけで精一杯なだけ」

 

 馬鹿なことを。

 神々に愛された博愛の少年……少女。汚れきった両手は赤い血で染まっている。

 他人の事を考えながらも、他人のために他人を殺す。そんな、馬鹿な人間。

 それがラフィエル=スノウホワイトなのだ。

 彼女は、自分のことなど考えてもいない。

 だからこそ、ラフィエル=スノウホワイトは自分(悪魔)を受け入れている。

 

 

 ――そうだろう? 忌々しい聖歌者よ。

 

 

 




オリ主「ヒッ、竜がいるよぉ……(恐怖)」

 本番はまだではあるが、既にフライングブーメランが直撃した模様。
 ラフィエル君は考えなしではあるが、元勇者以外はそんなこと思っていなかったり。

 現在のステータス

 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
   ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
   ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
   ユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)
 secret:『悪魔契約』
     『悪魔共存』
     『禁忌の代償』
 備考:ヴェルザードとエンカウントした。
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