病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー 作:昼寝してる人
第48.5話 勇者マサユキ
ギィ・クリムゾンは魔王である。
それも、ただの魔王ではない。一番初めに誕生した最古の魔王であり、原初の赤。悪魔の中でも最上位に位置付けされる悪魔でもある。
だからこそ、彼がそのまま何の小細工もせずに魔国連邦へ向かえば阿鼻叫喚へと陥ってしまう。
しかし、そんな事態をラフィエル=スノウホワイトが許容するはずもなく――
「案外気付かれないもんだな」
下手な変装はしないものの、その身から溢れる妖気を完璧に抑えたギィとヴェルザード。二人とラフィエル=スノウホワイトは、旅人に扮していた。
リムルのところの魔物にはバレるだろう。その程度の杜撰な潜入方法である。しかし、それでいい。
ここに来たのは、ラフィエル=スノウホワイトとリムル=テンペストの関係が険悪ではない事を証明するため。
あちら側にばれなくては意味が無いのだ。
それにしても……、顔を隠しているのはラフィエルスノウホワイトだけ。だというのに、妖気を隠しただけで人間の大多数を欺けるとは。
魔王の顔くらい覚えておけよと、ギィは呆れた。
しかしその人間側の適当さのおかげで騒ぎにならずに入国出来ているのだが……。
まあ気にしても仕方ない。
ギィが開国祭の前日である今日にわざわざ来たのは、珍しく気を利かせたからだ。前日であれば開国祭本番よりも時間が取れるだろうという、気遣いである。
ついでに一番いい宿を手配させようとも。ラフィエル=スノウホワイトの病弱さは伊達ではないのだ。
今だって、何だか騒がしそうな連中が近くに居るせいか、耳を押さえて座り込んでいる。
移動にも時間を使ったせいか、彼女の体調は芳しくない。
「ラフィーちゃん、大丈夫? あの子達を黙らせてきてあげましょうか?」
ヴェルザードが過激な事を言い出すが、ラフィエル=スノウホワイトはふるふると首を横に振った。
ラフィエル=スノウホワイトの頬から流れる汗を拭い、冷たい水を彼女に渡す。水分補給をしっかりとさせ、メイド達の代わりに世話を焼くヴェルザードを尻目にギィは前を向いた。
騒がしそうな連中――いや、実際に騒がしいか。いかにも待遇が良さそうな馬車に乗った人間達。時折勇者だのと聞こえてくるあたり、どこぞの勇者がいるらしい。
もしや魔王リムルを倒しに来たとか? いや、まさか。この祭りをそんな無粋な真似をして盛り下げる輩はいるまい。
それにしても煩い。勇者様勇者様と、周りの迷惑も考えろ。どんどん体調が悪くなっていくラフィエル=スノウホワイトを間近で見ているヴェルザードの機嫌が急降下していく。
ゴミを見る目で馬車を視認したヴェルザードが、今にも襲いかかろうとした時、魔王リムルがやって来た。
一応勇者の乗る馬車の前で彼等とやり取りをしているが、視線が何度もラフィエル=スノウホワイトへ向かっている。
ギィにリムルから向けられる視線はどういう事だと非難と説明を求めるものだ。
そして、勇者とのやり取りが終わり、リムルも帰っていく。しかしそれでも、絶対に説明しろと鋭い睨みを貰ったが。
先程よりは静かになった勇者御一行に、とりあえずは殺意を収めたヴェルザード。ラフィエル=スノウホワイトの世話に戻った彼女は、落ち着きを取り戻している。
その理由には、少し顔色の良くなったラフィエル=スノウホワイトがいたからでもある。
「――ん?」
何処か、懐かしい気配。
いつかの記憶が蘇りかけて、こんなところにいるはずかないとギィは首を振る。
しかしまた、どうして急に?
その答えはすぐに判明し、ギィは驚愕に目を剥いた。
勇者。
勇者マサユキ。
サラサラの金の髪に、切れ長の目。線が細く、少し童顔の、美少年。
リムルが対応した勇者であり、ラフィエル=スノウホワイトの体調を悪化させた勇者。
微弱ではあるが『英雄覇気』を纏っており――
――何より、東の帝国の皇帝と、瓜二つの顔。
「ルドラ……いや、違う? どういう事だ?」
唖然としたギィの呟きに反応したヴェルザードも顔を上げ、見えた勇者マサユキの顔に絶句する。
これ程までに瓜二つなんて有り得ない。血族とはいえここまで似ることはない。双子ならば有り得るが、それは違う。彼には妹が一人いただけなのだ。
では、勇者マサユキは何者なのか――?
「――そういえば、あの周りに居た人間。やたらと勇者マサユキを褒めていなかった?」
ぽつりと零されたその言葉に、ギィは思考加速を使いながら脳を回転させた。
そして辿り着くのは、信じたくない結論だった。
苦虫を噛み潰したように顔を歪め、ギィは無言でラフィエル=スノウホワイトを見た。
これさえも、計算の内だったのか。気付かせるために、わざとこんな方法で入国したのか。
「ルドラはもう……死んでしまったのね。そして記憶は無いまま転生して、それが彼――勇者マサユキ」
「ああ。だが、皇帝ルドラは生きている。体を動かしているのは、皇帝を名乗っているのは、誰だ?」
「――近いうちに、ヴェルグリンドへ会いに行きましょう」
勇者マサユキは、英雄の道を歩き続けなければならない運命にある。
何故なら――彼は『
第48話 絶望しかねぇわ
聞いてない。
まったく、何も、聞いてないんだが??
開国祭するのがリムルのとこの国だなんて、これっぽっちも聞かされてないんですけど!(怒)
やばい、胃が痛くなってきた。
最近は胃痛ともサヨナラした、そこそこの快適生活だったってのに。どうしてくれるお前らこの野郎。
キリキリと痛むんだけど。あー、脱走したってばれてるから酷いことされるんだろうな。あっ、激痛。
ぐるぐると体の中に響く胃が収縮する音。ああああ、トイレに籠もらせて……!(悲鳴)
久し振りに痛みと真っ正面から向き合うオレの顔色の悪さにヴェルザードが顔を覗き込んでくる。どっかいけ。
くっ……くそ、やべぇぞ、これ。
本格的に胃に穴が開くんじゃないかと血の気を引かせながらお腹を押さえていると、騒がしい声がダイレクトアタック。
傷()に響くから大声出すんじゃねぇよ殺すぞ!!(殺意)
耳を押さえて声をシャットアウト出来ないか試みる。あまり意味は無かった。死んでくれないか??(真顔)
あー本当にこれだから、祭りのたびに騒ぐゴミカスは嫌いなんだよ。お前ら、顔覚えたからな? 夜道には気を付けろよ(血走った目)
リムルへの恐怖で胃痛になっているのに、更にうるせぇゴミカスの大声でイライラしてストレス倍増。
胃痛が進化してしまいそうだ……。
あまりの激痛に大量の汗を流す。今のオレの顔色絶対悪い。知ってた。
そしてヴェルザードの顔が怖い。泣きそう。
ぷるぷる震えていたら、向こうからリムルがやって来た。終わった(絶望)
話をしているのは前にいるきらびやかな馬車の連中だが、ちらちら視線を寄越してくるから絶対に気付いてる。オレがいる事に気付いてる。
しかも去り際超睨まれたし、これはもう地獄ってことかな? 死にそう……。
でも今は帰ったって事は、これから逃げられる可能性はあるよね。ちょっとだけ胃痛が和らいだ気がする。
「良かった、本当に嫌われた訳じゃなかった……」
オリ主「よーし、隙を見て逃げるか!(笑顔)」
逃げられません(断言)
この後、マサユキとルドラの件についてギィとヴェルザードの質問攻めに合い、疲れ切って今日は休もうとしたら、ギィに連れて行かれて各国の要人がご飯食べてるところに突撃させられる。合掌。
現在のステータス
name:ラフィエル=スノウホワイト
skill:ユニークスキル『
ユニークスキル『
ユニークスキル『
ユニークスキル『
secret:『悪魔契約』
『悪魔共存』
『禁忌の代償』
備考:胃痛が復活した。穴が開くかもしれない。