病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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筆休め。


開国祭3日目/ギャルドの受難

 第58.5話  開国祭3日目

 

 開国祭3日目。

 本日も天候は悪くない。

 ラフィエル=スノウホワイト、本日は体調不良にて手厚い介護を受けての参戦である。彼女の隣には介護と称して決勝戦に出場する事となった勇者マサユキを観察に来たギィとヴェルザードが座っている。

 彼等は勇者マサユキの実力を見るために来たのだが、あっさりと終わった決勝戦に自身の推測が正しかったのだと納得し、近く帝国を襲撃――もとい、訪れる事が確定した。

 そして昼時を過ぎ、彼等は地下迷宮(ダンジョン)へと足を向けた。その際、先日ラフィエル=スノウホワイトと夕食を共にした金髪の少女とすれ違いながらも、二人は互いに視線を交わすことなく歩き去った。小さな舌打ちが空気に溶け、その場には祭り特有のざわめきだけが残る。

 

「腐っても魔王、毒は効かなかったみたいよ」

「そうだね、マリアベル。病弱と名高いならば毒殺も可能かと思ったのだが――」

 

 小さな小さな囁き声は、空気に溶けて消えていく。

 その真意は誰かに届く事もない。浮かれた人々に紛れて消えた人影は、着実に計画を煮詰めていた。彼女から、秘めた計画を口外されることを警戒しながら。

 そしてラフィエル=スノウホワイトは、風に髪を揺らして足を進める。その身に落とされた悪意を、自覚なきままに悪意でもって相殺した事にまるで気付かぬまま。

 瞬きの瞬間に赤く染まったその瞳の持ち主は、聖女の本心だけを知らぬまま、今か今かと、かの強欲の計画を待ち望んでいる。近く訪れる不可解な魂を持つ勇者の復活までに、野望を遂げんとして。

 

 地下迷宮(ダンジョン)のお披露目を冷やかしに来たギィとヴェルザードは、その地下迷宮(ダンジョン)を作った人物に心当たりがあった。

 このようなものを作れる者は知っている限り一人だけである。

 

「ラミリスの奴、随分大掛かりなもの作ったじゃねーか。あいつにそこまで知恵が回るとは思えんが、リムルの入れ知恵か?」

「彼女はこの国に随分協力的なのね。……ヴェルドラちゃんもいるし、色々と厄介だわ。いえ、もう勝負の方はあまり固執する必要はないのかしら」

 

 民衆の外側から遠目に眺めたそれに、それぞれが呟く。独り言だと分かっているからこそ相槌はなく、穏やかに時は流れる。

 計算してほんの数分だけではあるが、それだけで十分に理解したそれに既に興味は無く。ギィとヴェルザードはラフィエル=スノウホワイトを促してその場から離れた。

 

「一つ伺いたいのですが、よろしいですか?」

「ん?」

「先日からギャルドの姿が見えないのですが……何かご存知で?」

「ミリムが引き摺ってるのなら見たな」

 

 

 

 

 

 

 

 第58話 ギャルドの受難

 

「ゴブタとランガ、そしてラフィーのところのお前! それなりに戦えるようになるまでワタシが鍛えてやるのだ!」

 

 バトルロワイヤルで覆面獅子(ライオンマスク)にたこ殴りにされたかと思えば、これは一体全体どういう事だ?

 ルミナス様に知らぬ間に武闘大会に出場させられていたかと思えば、バトルロワイヤルでは他の者に目もくれずに俺を攻撃してきた。その動きの精度、洗練された技に、俺は防戦一方になってしまった。

 使い慣れた武器は火曜師によって破壊されてしまったため、滞在期間中に魔王リムルに頂いた槍を持参してきたのだが……。まだ使い慣れていないとはいえ、まるで歯が立たない。結局、槍を吹き飛ばされて意識が飛ぶまでボコボコにされてしまった。

 それが、意識を失う直前の記憶だ。だというのに、何故俺の前には魔王ミリムが……?

 

「あんまりっすよぉ、リムル様……ジジイの修行だけでもキツいのにミリム様の修行なんてオイラ死んじゃうっす!」

「ええい、ウルサイのだ! そこのお前も、カリオンに負ける程度でラフィーの配下なんて駄目なのだぞ。しっかり鍛えてやるから覚悟するのだ!」

「は? か、カリオン?」

「うむ! お前が負けた覆面獅子(ライオンマスク)、あれの正体はカリオンなのだ」

 

 カリオン。

 元魔王カリオン!? 獅子王(ビーストマスター)のカリオンだと!?

 元魔王が参加しているなんて聞いていないぞ!? まさかルミナス様、魔王ミリムとグルだったのでは? ラフィエル様はルミナス様から聞いただけだったようだしな……いや、待てよ。

 元々俺がラフィエル様の配下としては歓迎されてはいないとは思っていたが、それはほとんどの魔王がそうなのだろう。

 つまり、これは……ルミナス様と魔王ミリムだけではなく、ラフィエル様に同行していた魔王らしきお二人と魔王リムルもグル、ということか。

 その目的は、恐らく俺の実力の底上げ。元勇者によって鍛えられたものの、それは超短期間のドーピングのようなものだった。鍛錬をして何とかそのドーピング状態を維持しているが、それはそれで心許なかったのだ。

 元勇者は来たるべき時までそれが保っていれば、それ以上はどうでもいいと考えていたため、アフターケアなどまるで無かったのだから。だが今、魔王ミリムによる修行をつけて貰えるのなら、強くなれるのなら、それは願ってもいないことだ。

 

「――分かりました。よろしくお願い致します、魔王ミリム」

「うぇっ!? 正気っすか!?」

「ほほう、いい心がけなのだ。さぁゴブタとランガ、お前達も気合いを入れた方が身のためだぞ?」

 

 死ぬ気で頑張るのだぞーという軽い言葉と共に放り出されたのは、格上と思わしき魔物の前で。

 数秒前の自分をぶん殴りたくなるほど後悔するような、地獄の特訓はまだまだ序盤の序盤であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中略。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「た、ただいま、もど、戻りまし、た」

「(声のない悲鳴)」

「魔王ミリムに、少し、修行、を……ら、ラフィエル様!?」

 

 俺の姿を見て卒倒したラフィエル様を介抱していたら、騒ぎを聞きつけた従業員から様々な人に伝わってしまった。

 結果、やりすぎだと魔王リムルを筆頭に色んな方々に懇々と説教されてしょんぼりする魔王ミリムを直視するはめになった。あの時、俺とゴブタさんの懇願を一切聞き入れずに淡々と魔物の前に放り出し続けた恐ろしい魔王は何処に行ってしまったのか。

 確かに精神はこれ以上なく鍛えられたし、恐らく実力もついたと思うが、もう二度と経験したくはない。

 

 

 

 

 

 

(あれっ、ギャルド生きてる?? ミリムにぶっ殺されたギャルドがゾンビになって襲ってきたのかと思った…………)

 

 

 

 




 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
   ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
   ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
   ユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)
 secret:『悪魔契約』
     『悪魔共存』
     『禁忌の代償』






コメで話数ナンバリングについて指摘されたので見返したら確かにちょっと変でした。.5でラフィエル君視点と第三者視点で分けて書いてるだけで細かいことを気にしてなかったツケが回ってきましたね!!
でもまあ、今更変えるのもあれなのでこのままいきます♡
ぶっちゃけナンバリングなんてフィーリングですよ!!(適当)


あと前話で出てたラフィエル君がクソガキって言ってた人の正体を見破った人すごいなって思いました(小並感)
容姿の描写もないしほんの数行なのに……もしや名探偵でいらっしゃる?? コメ見た時びっくりしました。
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