病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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定められた未来への道
啓蒙なる/強欲


 第59.5話 啓蒙なる

 

 開国祭が終わったその日には、眠るラフィエル=スノウホワイトを置いてギィとヴェルザードは魔国連邦(テンペスト)から立ち去った。

 本人には昼食時にその旨は伝えてあるため、問題はない。リムルの様子からしてラフィエル=スノウホワイトを置いていっても手厚く保護するだろうし、そもそも彼女の住まいである教会はこの国にあるのだから。

 彼等の予想通り、ラフィエル=スノウホワイトはリムルに保護され、前回滞在していた頃と同じように生活する事となった。

 ただし、彼女への相談――懺悔室に関してはギャルドが反対したために再開する事はなかった。その反対の理由に、ギャルドは「いや元勇者殿、あの夢で、その」などと訳の分からない事を口走っていたが、ラフィエル=スノウホワイトがギャルドの願いを容認したために、その再開の話はお流れとなったのだった。

 

 そして現在。

 ラフィエル=スノウホワイトは元より、彼女の配下であるギャルドもその教会にて生活していた。ギャルドに関してはルミナスを始め立場が違う様々な人々に反対されたが、ラフィエル=スノウホワイトが押し切ったのである。

 彼女がそう言うのであれば、そこには確かな理由があるのだろう。そう渋々納得していたが、それでも恨みや妬みがなくなるわけではない。

 

 しかも、だ。

 同じ屋根の下で生活しているだけでも内心非難囂々であったろうに、その上色々とギャルドに融通を利かせているのだ。

 ラフィエル=スノウホワイトが彼に押し付けた鉱石がとんでもないもので、それを使った武器の鍛造を、ラフィエル=スノウホワイト本人に頼まれたドワーフのカイジンは椅子から転げ落ちる所だった。

 しかもその鉱石は魔王ディーノから貰ったものだと彼女が告げた時はギャルドは死を覚悟した。魔王ディーノに知られれば殺されると思ったからだ。

 

 ちなみにその日その時、何を思ったのかラフィエル=スノウホワイトは魔王ラミリスと落ち葉を集めて焼き芋をしていた。

 ギャルドは幻覚でも見ているのかと思ったが、渡された焼き芋は大変美味だった。

 このような日常を過ごしていると、彼女の神聖さを認識すると同時に、その人間臭さを体感してしまう。

 開国祭でのウニと醤油のくだりでも感じていたが、彼女――ラフィエル=スノウホワイトは、自分達が思っていたよりも、ずっとずっと、普通の人間だと。

 それでもどうしてだろう、彼女はふとした時に人間離れした雰囲気を纏う事がある。教会に椅子に腰掛け、ふと窓から空を見上げた時――ルベリオスにいた頃によく見かけた宗教画のような、美しいそれ。現実離れした光景を、見ているような気になってしまう。そんなわけがないのに。

 

 だけれど、そんな時は何時だって、彼女の瞳は澄み切っている。青く、青く、深く沈んでしまいそうなその瞳の奥に。見知らぬ何かがいるような。

 そんな錯覚を起こしてしまいそうだ。何かに、ラフィエル=スノウホワイトを通して監視されているかのような気がしてならない。

 気のせいだと分かっていても、それでも何度も怖気がする。根源の恐怖を掬い上げられるような、心臓を直接嬲られているような。

 そんな錯覚を拒絶したくて、ラフィエル=スノウホワイトごと拒絶しそうになって――悪戯っ子のような仕草を見せる人間臭い彼女に、振り払いそうになったその手をぐっと抑え付けた。

 

 分からない。

 どうすればいいのか、どうするべきなのか。

 美しく、種を愛する聖人なのか。それとも時折見せる人間臭い少女なのか。どちらが本性なのかが分からなくて、頭を悩ませる。

 ふらりと夢の中に現れて自らの要求だけ伝えて消える元勇者に問いかけてみても、答えはない。のらりくらりと躱されて、気が付けば朝日の差す部屋で目を覚ましている。

 だから、彼は頭が回っていなかったのだ。

 聞いてしまったのだ、本人に。

 

「           ?」

 

 教会の中。

 朝日が窓から照らすその場所で。

 ギャルドを振り返った聖女の後ろ、神の偶像が揺らめいた。

 それは、にんまりと笑って、愉快げに目を細めて、掌で転がしていた何かを握り潰した。

 指の隙間から零れ落ちたものは、一体?

 

「――ギャルド? ごめんなさい、何を言ったの聞こえなくて……もう一度お願いできますか?」

 

 不思議そうな顔をしたラフィエル=スノウホワイトの白い首には、薄く赤い模様がついていた。首締められたような、そんな模様が。

 息を飲むギャルドを心配そうに見つめる彼女に、何でもないとそう告げて。

 

「……あれは、一体」

 

 なんだったのだ。

 教会の外へ出たギャルドは、どっと吹き出た汗を拭って空を仰いだ。青い空が瞬きの瞬間だけ、赤くなった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 第59話 強欲

 

「無理ね、無理なのよ」

 

 マリアベルは、苦々しく顔を歪めてそう告げた。

 五大老が集まるその場で、問いかけられた疑問、その答えである。

 人間、否、生き物には欲求があるものだ。三大欲求しかり、知識欲コンプ欲などなど。だからこそ、マリアベルは最強なのだ。

 他人の欲に作用するその力。それによって、彼女はここまでのし上がってきた。

 

 だけれど、あの魔王――ラフィエル=スノウホワイトの欲望は、まるでスイッチが切り替わるように大小に変化するのだ。

 初めに一瞥したその時は、やれると確信した。自らの力で操り人形にするには容易い欲望の大きさ。これならばと手を伸ばそうとした瞬間に、欲望は見たことの無い程の大きさに変わった。

 今まで見た中で一番の大きさであるグランベルですら、比較にならない程の。化け物だ。異常だ。ありえない……そう呆然とした時には、一切の欲がなくなった。

 訳が分からなかった。

 ゼロか、百、その中間しかなかった。

 その欲の大きさは不定期に切り替わる。相席になった事を利用して話しかけ、意識を逸らしてみてもその欲の切り替わりにはまるで効果がなかった。その欲の有様では、マリアベルの力を使ったところで欲が切り替わった瞬間に効果が解けてしまう。

 だからこそ、彼女に力は使えない。使ったところで意味が無い。

 

「魔王ラフィエル=スノウホワイトには、私の力は効かないの」

 

 中間の時を狙って支配したとしても、欲が切り替われば解けてしまう。ゼロか百かの時は論外。支配出来ても十数秒であろう。

 それではまるで役に立たない。

 こうして頭を悩ませる事も、ラフィエル=スノウホワイトの掌かもしれないと思うと苛立ちが募る。

 今思えば、グランベルが魔王リムルを陥れるためにラフィエル=スノウホワイトをルベリオスに軟禁した事も、既に彼女の掌の上だったのかもしれない。

 その時から――いや、その前から自分達の計画に気付いていたとしたら。

 

(……とんだ腹黒なのよ。何もかもを見通しているくせに、何を企んでいるのか見当もつかないの)

 

 目的も、何も分からない。

 魔王ルミナスのように、魔王リムルのように、何か行動しているのなら分かりやすいのに。魔王ラフィエル=スノウホワイトは、最古の次に長く存在しているのに、何も行動した事が無いのだ。

 ここ最近でいうならば、魔王リムルの元で静かに暮らしている事しかしていない。

 ここまで何もしていないのに、その頭脳は侮れない。その手腕も。

 自らが派手に行動した訳でもないのに、全てを思い通りに動かし事を収束させる事が出来るのは知っている。西方聖教会がいい例だ。

 だが、このまま手をこまねいている訳にはいかない。ラフィエル=スノウホワイト本人には手を出せない。ならば。

 

「将を射んと欲すればまず馬を射よ――」

「……? マリアベル、どうするつもりだい」

「――あの男(ギャルド)を、魔王から奪うのよ」

 

 まずは、手足をもいでやる。

 

 

 




 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
   ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
   ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
   ユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)
 secret:『悪魔契約』
     『悪魔共存』
     『禁忌の代償』
 備考:魔王から貰ったものを処分出来て御満悦。ギャルドが良い仕事したね!
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