病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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明日から新学期始まるので前みたいな週1更新に戻ります。余裕あったら隔日更新になります


要請/甘やかしたらこれだよ

 第60.5話 要請

 

 ギャルドが一度ミリムの修行から解放された後、再度引き摺られて修行を受けた後にラフィエル=スノウホワイトの住まう教会へ戻ってきて、しばらく日が経った時の事だった。

 ギャルドは、鍛造された彼の新たなる武器――リムルから貰った槍はバトルロワイヤル中に破損していた――を手に、自己鍛錬を行っていた。

 驚く程手に馴染むそれは、まるで使い慣れたもののようで。その感覚に首を傾げるも、まあ主であるラフィエル=スノウホワイトから賜ったものだからだろうと納得していた。

 あるいは、恐怖を落ち着けるために鍛錬に集中していたために恐るべき早さで手に馴染んだのかもしれないが。

 そんな鍛錬中、ラフィエル=スノウホワイトがぽつりと呟いた。

 

「外は……あまり行きたくありませんね」

 

 ラフィエル=スノウホワイトの言葉に反応して体を止めたギャルドは、視線を彼女へと向ける。

 何を意図して呟かれたのかは分からない。だが、憂いを帯びたその表情を晴らすためならば、配下としては当然の行動を。

 

「ならば、代わりに俺が行こう。外に出る用事があるのなら、全てを押し付けてくれて構わない」

 

 貴女のためならば容易い事だと告げると、瞬きを繰り返したラフィエル=スノウホワイトは、花が咲くように笑った。

 どこにでもいる普通の少女のような笑顔に、ギャルドも緊張していた体を緩ませる。つられるように笑ってみせると、彼女は安心したように頷いた。

 

「そう仰るのなら、外への用事は貴方にお願いする事にします。頼りにしていますよ、ギャルド」

 

 なんてことの無いように請け負ったギャルドだが、これは酷く珍しいことだ。あのラフィエル=スノウホワイトが、自らの用事を全て誰かに頼むなど、有り得ないこと。

 それ程までに何故、その男を信頼しているのか――そう嫉妬する者も、少なくはない。

 だけれど、その珍事が現実に起きている。それが何を齎すのか。

 

 未来はただ、舗装された道へと繋がっているだけだ。

 その先にある、枝分かれする未来にこそ。

 現在に布石を撒き全てを賭けた元勇者が望んだ、ラフィエル=スノウホワイトが生存する一片の未来。その未来へ繋ぐために、この珍事は起きたのだ。

 否、珍事ではない。

 これは、確定された現象なのだ。全ては、たった一つの未来へと、この現在を繋ぐために。

 

「お、いたいた。ラフィー、ギャルド、今いいか?」

「リムル」

 

 シュナとシオンを傍に控えさせ、リムルが二人に向かって歩いてきた。わざわざ二人も伴ってくるとは、何か重要な要件なのだろうかとギャルドは思う。

 普段は一人で遊びに来るリムルなので、余計にそう考えたのだ。

 実際、その考えは間違っていなかった。

 

西方諸国評議会(カウンシル・オブ・ウェスト)から私の参加要求――ですか」

「ああ。俺だけじゃ不安なんだろうな。その点ラフィーなら人類側から信頼もあるし、俺から守ってくれるかもしれないと期待しているんだろう」

「…………なる、ほど」

「悪いんだけど、参加して貰えないかな?」

 

 考え込んだラフィエル=スノウホワイトが、ちらりと申し訳なさそうにギャルドを見る。その視線に気付いたリムルが再度口を開いた。

 

「勿論、護衛としてギャルドを連れて行って貰っても構わない。何なら俺の方からも幹部を出していいし」

「いえ。そうではなく……ギャルド、お願いできますか?」

 

 ラフィエル=スノウホワイトの言葉に、ギャルドは大きく頷いて前に出た。

 つい先程の出来事だったのだ。だからこそ、この場は自分から言わなければ。

 状況を理解出来ていないリムル達に、ギャルドは頭を下げ、主ではなく自分が説明させて欲しいと願った。その間、ラフィエル=スノウホワイトには教会の中で休んで貰う。

 元々ギャルドが鍛錬している間はわざわざ外に来て見学しているのだ、彼女は。どこか楽しげにしているからこそ中に戻ってくれなんて言えなくて。結局、彼女の体調が悪くなる前に鍛錬を切り上げて教会へラフィエル=スノウホワイトと共に戻るのが日課になっていた。

 だからこそ分かるのだ。彼女の体調が少し悪くなり始めた事に。倒れる前に、早々に休んで貰わなければ。

 

「では、ここからは俺が。中で話すとラフィエル様が落ち着いて休めないと思うので、どうかこの場で話すことを許して欲しい」

「それは構わないけど……」

「有難い。それで、西方諸国評議会(カウンシル・オブ・ウェスト)だが――ラフィエル様本人が参加する事は出来ない」

 

 ぴくりと反応するのはシュナとシオンだ。だがリムルの手前、そして、ラフィエル=スノウホワイトの唯一の配下であるという理由の下、口を出すのは控えた。

 無言で続きを促すリムルに、内心安堵してギャルドは口を開く。

 

「ここ最近、ラフィエル様の体調は思わしくない。本人も自覚していて、遠出は不可能というのが理由だ」

「思わしくない……? 体調が悪いって、ラフィーは大丈夫なのか?」

「今のところは。ラフィエル様の魔素(エネルギー)に満ちている教会内では比較的体調が良くなるみたいなので、散歩も最低限にして頂いている」

 

 うむむ、とリムルは唸る。

 流石にそんな状況のラフィエル=スノウホワイトに無理に参加させる事は出来ない。

 しかしそれではリムルが西方諸国評議会(カウンシル・オブ・ウェスト)には行けなくなってしまう。彼女が参加する事こそが、リムルが――魔国連邦(テンペスト)が参加する条件なのだ。

 

「それは、代理では駄目なのだろうか?」

「代理? ……お前が?」

「ラフィエル様から、外への用事は全て俺が請け負うように頼まれている。俺では条件は満たせないのか?」

「それは――まあ、聖女の協力を条件としてと書かれているから穴をついていいのなら、いけるだろうけど。……いいのかな?」

 

 いや俺に聞かれても、とギャルドは思った。がしかし、リムルは自分の中で自問自答しているようで、一つ頷いた。

 

「オッケー、それでいこう!」

 

 ――そうしてギャルドは、リムル達と共にイングラシア王国へと旅立ったのである。

 聖女の代理であるという二つの証を持って。

 ラフィエル=スノウホワイトから前々から預かっていたフルート。

 借り受けた、彼女が正式に神へと祈る際に使用する白い布。それは世界のどこにも見ない異世界の極上の素材で作られており、一目で聖女に連なる者だと分かる代物だ。それを、ギャルドはマントのように着用した。

 元の世界の縁となる物を惜しげも無くギャルドに貸し与えたラフィエル=スノウホワイトだが、彼女のことを異世界人だと知る者はここにいない。

 意気揚々と教会を後にしたギャルドは――リムル達と共に帰ってくる事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第60話 甘やかしたらこれだよ

 

 いきなりミリムが教会に突撃した時はまたかと気が遠くなったが、なんとその目的はギャルドだった。奴は泣きそうな顔でオレを見たが、オレに被害が無いならとオレは快くギャルドを送り出したのだった。

 そんなギャルドが帰ってきたのは数日前。

 そこそこだった顔面がメタモルフォーゼを遂げて帰ってきた時は「おまえ誰?」と口に出してしまいそうになった。実際誰か分からなかったし、うっかり口に出しても誰にも責められなかっただろうけどな。

 まあ、リムルが何故か教会に定期的に補充している完全回復薬をあげたら元の顔面に戻ったけど。どうやったらあんなボコボコになるん??

 ミリムに引き摺られていったギャルドの他にもう一人程いた気がしたけど、まあ気にしても無駄だな。

 

 いやそれにしてもオレの生贄くん……ギャルドは優秀だな。前回の魔王達の宴(ワルプルギス)で押し付けられた物は、ギャルドのおかげでほぼ無くなった。

 ギィのは当日に飲んだし、ラミリスのは置いていてもアレだからとりあえず乾燥ハーブと同じようにして棚の奥に置いてある。

 ルミナスのは無理矢理飲まされたし、ディーノから貰った石ころはギャルドの武器鍛造に押し付けたし、ダグリュールのは芋だと判明したその日に焼き芋した。全部ギャルドにくれてやった。

 残るはレオンのゴミだが……捨てたら怒るかな?

 とりあえずラミリスのと同じ場所に放り込んでおいたが、やはり使い所はない。まあゴミだからな。あいつほんと許さん。

 オレはゴミ収集係じゃないんだよ!!(怒)

 

 それはさておき。

 ここ最近、何故か体調が悪い。原因という原因は、強いて言うならば住宅の立地であるとオレは思いますけれどもね(皮肉)

 知らねぇうちに、またこの国で生活する事が決定していたオレの気持ちが分かるか?? 人の意思を聞かずに勝手に決めるなって何回言えば分かるんだ、いい加減にしろ!!

 お悩み相談室まで再開しかけた時は何度目かの家出を決意したが、なんとギャルドが反対してくれたおかげでお流れとなった。お前が神か??(真顔)

 そんなことがあったために、オレは自分でもギャルドには甘いのではないかという対応をしていると思う。ミリムの時なんてちゃんと見送ってあげるほどの優しさを見せてしまった……これは甘過ぎでは?

 もうちょっと厳しくした方がいいかもしれんな。

 

 まあ体調不良の原因は立地であるのは確定として。やたらと教会を足を運ぶリムルにうんざりしてるけど、それでも前よりは大分マシな感じにはなったよな。

 何より黒い悪魔がいないのが良い。最高。あいつの視線ほんと熱烈すぎて泣きそうになるから。

 あと毎回持ってくるシュークリムルが大変美味しいので全て許した。これからも持ってきて貰うために全力で媚びを売る所存。

 まあそれはそれとしてちょいちょい外出とかに誘うのは止めて欲しい。本当に。

 

「(誰かと一緒に)外は……(一人でもそうだけど)あまり行きたくありませんね」

 

 なんかご飯とかも誘われるんだけど全力で断ってるくらいだからな。

 

「ならば、代わりに俺が行こう。外に出る用事があるのなら、全てを押し付けてくれて構わない」

 

 なんだこいつ、格好いいな。

 変態(マゾ)か??

 

「そう仰るのなら、外への用事は貴方にお願いする事にします。頼りにしていますよ、ギャルド」

 

 でもこれを見逃す程オレは馬鹿じゃない。

 全てを押し付けるためにギャルドに渾身の笑顔を見せると、ギャルドは顔を緩ませた。

 勝ったな(確信)

 

「お、いたいた。ラフィー、ギャルド、今いいか?」

「リムル」

 

 お前また来たの?

 来るのは良いけどちゃんとお土産持ってきたんだろうな。シュークリムル無かったら歓迎しねぇぞ。

 リムルの手元には何も無かった。帰って、どうぞ。と思ったら後ろにいる奴の手元にはケーキ屋特有の白い箱があった。よし、話を聞こうじゃねぇか!

 

西方諸国評議会(カウンシル・オブ・ウェスト)から私の参加要求――ですか」

 

 何でそんなもんにわざわざオレが行かなきゃいけないんだ。何様のつもりだこいつら。

 その評議会とかいうて烏合の衆だろ。知らないだろうから教えてあげるけど、元聖歌隊所属ってかなり地位が高いんだからな?(半ギレ) 

 お前らみたいなのが勝手に呼び出せるほど、お安い存在じゃねぇんだよ!! 都合の良い時にしか名乗ってないけど!!

 

「ああ。俺だけじゃ不安なんだろうな。その点ラフィーなら人類側から信頼もあるし、俺から守ってくれるかもしれないと期待しているんだろう」

「…………なる、ほど(押し殺した怒り)」

「悪いんだけど、参加して貰えないかな?」

 

 絶対に参加しないという強い意思しかねぇわ。

 連れて行きたいならギャルドでも連れて行けよ。オレは行かねぇからな。と思ってちらっとギャルドを見れば何を勘違いしたのか、見当違いのことを言ってきた。

 

「いえ。そうではなく……ギャルド、(とりあえず全部)お願いできますか?」

 

 頷いて一歩前に出たギャルドに全てを任せ、オレはさっさと教会の中に戻った。ギャルドってほんと優秀だな……(感心)

 まあ結局ギャルドがオレの代理として行くことになったので、オレがそれなりに使っていた布を貸してやる事にした。

 ギィがこの世界にはない素材とか言ってたから、まあこれで代理らしく見えるだろ。

 

 

 

 

 

 

 ――あの野郎、ちょっと甘い対応してやったらオレの私物借りパクしやがった。




 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
   ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
   ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
   ユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)
 secret:『悪魔契約』
     『悪魔共存』
     『禁忌の代償』
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