病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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週1更新だと言ったな……あれは嘘だ。
学生って忙しいね(すっとぼけ)


人間族(ヒューマン)を騙る者/目玉焼き

 第61.5話 人間族(ヒューマン)を騙る者

 

「魔王リムルへの作戦は失敗したわ、失敗したのよ。でもいいの、一番の目的は果たせたもの。これで駒は揃ったわ――全力で打って出る」

 

 花が咲き誇るバルコニーにて。

 マリアベルは勝利を確信した表情で、そう口にした。そもそも魔王リムルへの作戦は失敗しても予想通り、予定通りであるからだ。

 本来の目的は魔王ラフィエル=スノウホワイトの手足であるギャルドを手に入れること。あの何を仕出かすか分からない魔王の行動を縛り付ける事は、どんな労力を使ってでも叶えたかった。

 そのための第二第三の策も用意していたが、一度目でギャルドを手に入れられたのは僥倖である。あの魔王はどうやらギャルドに執着しているようで、彼の言葉ならばある程度行動を自制すると報告が上がっている。

 ならばこそ、たかが十大聖人の一人といえど念入りに支配しておくべきであろう。

 

 まあ――もし、わざとあの男が捕まったというのであれば、飛んで火に入る夏の虫というやつだが。

 こちらの情報をろくに調べずに捕虜として潜入しようなどとは片腹痛い。頭の回る魔王は無謀にもそんなことはさせないだろう。

 であるならば――ギャルドの独断。

 自らの主の指示を仰がずに敵地に入るとはなんという阿呆か。笑いながら、マリアベルは頭を回転させる。

 ギャルドを支配し、魔王ラフィエル=スノウホワイトと対峙させる。それだけで彼女の行動を制限できる。ならばその隙に、魔王リムルを潰す。

 そのための手札は、既に揃っている。

 

「あの魔王ラフィエル=スノウホワイトが、ギャルドの支配を意に介さない場合も考えておかなければならないわ。あの魔王はただ優しいだけではないのよ」

「いや、それはそうだろうが……例え聖女の姿が演技であったとしても、人前で聖女の皮を脱ぎ捨てるだろうか?」

「聖女の皮を脱ぎ捨てたところで、問題なんてないわ」

 

 ――だって、見てしまった人間を皆殺しにすればいいだけなのよ。

 マリアベルの言葉に唖然とする、五大老の一人であるヨハンに、彼女は溜息を吐いた。やはり何も分かっていない。いくらあの魔王が、聖女が、人間族(ヒューマン)を名乗っているからといって油断しすぎなのだ。

 そも、何故魔物や魔人ではなくただ純粋な人間族(ヒューマン)が魔王として名乗る事が出来るのか疑問には思わなかったのだろうか。思わなかったのだろう。生まれた時からそうであったから。

 だが、マリアベルは違う。マリアベルは異世界からの転生者だ。だからこそ、気付いた。

 

 何故人間族(ヒューマン)が、何百何千年も生きられる?

 

 魔人ラーゼンのような魔法を極めた者であっても、他者の体を奪ってようやく人の寿命を超越しているというのに。

 なくなるべき寿命が、何故尽きない。

 身体も何もかもが変わらないのは、何故だ。他者から奪った訳でもないのに、何故変わらぬ姿で生き続けているのだ。

 魔王レオン・クロムウェルのように人から魔に落ちた訳でもないというのに。何故、聖なる人として生き続けている。

 

 何故人間族(ヒューマン)であるのに、人間の括りである仙人などではなく魔物の括りである魔王として認識されている?

 

 それはかの聖女が、人や国など関係なく無差別に襲い、天災のように猛威を振るったからだ。であるならば、魔に落ちたのではないのか。

 否である、彼女は魔になど落ちていない。

 正真正銘――最初から、心が人ではなかったのだ。

 人として生まれ落ちながら、聖女として他者に美しく振る舞いながら、心の悪意を節々から露出させている。

 

 一番初めの逸話もそうだ。

 国を救った聖女が、卑しい王族の悪意によって踊らされ傷つけられ――そして魔王となった、だと?

 なんというお笑い種。踊らせられたのは王族とその民、国の方であろう。

 かの魔王は喜んで、正当防衛として、美しく語られるだろうと確信したに違いない。そして秘めていた心の悪意を振るったのだろう。

 要するにあの魔王は、自らを美しい逸話で飾り付ける事を趣味とした、人を傷つけ殺害する事に喜ぶ超弩級のクズでしかないのだ。

 だからこそ、彼女は魔王となった。

 人として生きる事は許されなくなった。

 それでも人間族(ヒューマン)と名乗り、人類から敬愛を集めているのだから――なんという喜劇だろうか。

 

「あの魔王は、国諸共人を殺したって何とも思わないわ、思わないのよ。自らが美しく語られるならば、我慢なんて絶対にしない」

 

 だからこそ、何故あの魔王がギャルドを傍に置くのかは理解出来ない。それこそが最大の不安要素であり、マリアベルの――ひいてはロッゾ一族の賭けとなる。

 だからこそ、最善の結果を手に入れるために、彼等は動き出さなければならないのだ。

 

 

 

 

 

 

 第61話 目玉焼き

 

 何であの野郎帰ってこないの????(半ギレ)

 は? キレそう。あいつオレの私物貸してあげたの忘れてるんじゃないだろうな。ぶっ飛ばすぞ。

 リムルお前もさあ、何で連れて帰ってこないの? 普通に考えて一緒に帰ってくるだろ、なあおい。

 なーにが「あいつにはあいつの考えがあるんだろ。しばらくは一人で考えさせて仕事させてもいいんじゃないか」だ。ギャルドの仕事はオレの代わりにお前らと受け答えする事なんですけど? それ以外の仕事を勝手にこなされても困るんですけど??

 ギャルドがいなくなったら、体調の悪いオレの面倒を誰が見るんだよッ!

 

 はー許せん。帰ってきたら鼻フックの刑にしよ。良さげな割り箸見つけておかないな!(笑顔)

 つーかギャルドには最近オレのご飯も作って貰ってたんですけど。久し振りに自炊したけどクッソしんどいな……。

 今までこんな面倒臭い事やってたんか、オレ偉いな! はよギャルド帰ってこい、お前が飯炊き係だ。

 もはや火を使う事すら辛くなったので、よく貰う皮むきしなくていい果物をそのまま齧る。

 これからは毎食が剥かなくていい果物になります。爆速で飽きてしまうな……(死んだ目)

 あれっ??

 もしかしてオレ、世話係(ギャルド)がいないと生活出来なくなってない??

 いやいやいやいや、そんなわけ……ないよな?

 

 いや、うん。心機一転しよ。

 ちゃんと料理くらいはね、やっとこうな。ギャルドがいない時は……ん? 待てよ。

 オレが最後に自炊したのって、こないだの魔王達の宴(ワルプルギス)よりも前じゃねぇか。

 そりゃ腕も鈍るわ……よし、久し振りだし簡単なやつにすっか!!(腕まくり)

 焼くだけだし、とりあえず今回は目玉焼きで。

 

 フライパンと卵を取り出して、なんだか前よりも確実に重くなってるフライパンをコンロに設置。何でこんなに重いんだよ、もうゼェハァ言ってるんですけど?

 内心キレ散らかしながら火を付けて、フライパンに油を流した。

 呼吸を整えてから二、三回卵割りを失敗しつつフライパンに玉子を投入。

 ……卵の殻入ったけどまあいっか!! 出来上がってから取れば問題ないもんな!!

 水を入れてから蓋をして数分待てば、よし。

 

 ふっ……まあ多少ブランクがあれど、オレにかかればこんなもんよ(ドヤ顔)

 完璧な目玉焼きが出来てしまうな……。

 数分経ってから蓋を開けてみると、

 

せ……歌……ころろ……

 

 蓋を閉じた。

 あれ? 目玉焼きの癖になんか喋ってなかった? えっ?? とろろ???(混乱)

 ていうか目玉焼きって割ってない卵そのものって感じのフォルムしてたっけ??(恐怖)

 とんでもねぇメタモルフォーゼやめろ(憤怒)

 ていうかこれどうしよ……あのメシマズ鬼娘のこと言えなくなってきたんだけどこれ……え? オレの腕が悪いのか??

 そんなわけねぇだろオレの腕はマトモだわ、ぶっ飛ばすぞ。

 よしこれ捨てよう!!(名案)

 フライパンと蓋もまとめてゴミ箱に突っ込んだ後、ゴミ箱を外に出しておく。どうせリムルか誰かが回収するだろ。

 ……ん、なんかちょっとスッキリしたな。

 

 




ラフィエル君の料理の腕は普通です。
とんでもねぇメシマズになったのは今回と数回だけでちゃんと理由があります!!!(大声)

 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
   ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
   ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
   ユニークスキル『寵愛者(ミチビクモノ)
 secret:『悪魔契約』
     『悪魔共存』
     『禁忌の代償』

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