病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー 作:昼寝してる人
第63.5話 同行者
「リムル? 随分と珍しい格好をしていますが……どこかにお出かけですか?」
「ラフィー、何でここに……体調は大丈夫なのか? 俺達は今からイングラシアに行って調査団と合流してから、ジスターヴの遺跡を調査する予定なんだけど」
「今日は調子が良いので、散歩ついでに顔を出そうかと思いまして」
遺跡調査当日。
探検者用の服装を着込んで準備をしているリムル達の下へ、ラフィエル=スノウホワイトがやって来た。本人の申告通り、今日は確かに顔色も良く調子が良さそうだ。
ギャルドもユウキ・カグラザカの元へ潜入して居ないため、何時もよりも教会に閉じ籠もっていた彼女の数日ぶりの姿に安堵する。
ここ最近は食欲もなかったのか、食事を届けても完食される事がないと報告も上がっていたのだ。元々小食の彼女が更にものを食べなくなった事で頭を悩ませていたのだが、元気になったのなら万々歳である。
「それにしても、ジスターヴの遺跡ですか。ううん、何故か妙に聞き覚えが……行ったことはないはずなのですが」
「気になるなら一緒に来ればいいのだ! 体調も悪くないのだろう?」
うんうんと記憶を引っ張り出して思い出そうとするラフィエル=スノウホワイトに、ミリムが名案とばかりに提案する。
それに目を丸くするのはラフィエル=スノウホワイトだけではなく、リムルもだ。
「いやいや流石に、な? ラフィーは今は良くてもいつ体調が悪くなるか分からないんだぞ」
「むぅ……しかしだな……」
「リムルの言う通りです。それに、ギャルドが何時帰ってくるか分からない以上、無闇にここを離れる訳にもいきませんから」
「なんだとぅ!? ワタシよりも、出会って間もない男を優先するというのか!?」
「そういうわけでは、」
「もう怒ったぞ、ラフィーは絶対に連れて行くのだ!」
プンスコ怒るミリムに、リムルとラフィエル=スノウホワイトが顔を見合わせる。スマンな、と苦笑するリムルに、彼女は気にするなと言わんばかりに微笑んだ。
ミリムの我が儘は何時だって唐突だが、譲らない大人げなさと粘り強さはヴェルドラに匹敵する。大人しく従うが吉なのである。
何はともあれ、ラフィエル=スノウホワイトが参戦するとなれば、更に警戒を増していかなければいけない。
万が一傷でもつけられれば、ミリムが大暴走する可能性が大なのだ。
そもそもの話、危険な場所にわざわざ出向かせるのはどうかと思うが、魔王二人がいればそう危険な事はないだろう。
「調査団の方には俺とミリムが行くと伝えたんだけど、大丈夫か?」
「問題ないぞ!」
元々はワタシの領地を調査させてやっているのだ、文句など言わせん。そう言って胸を張るミリムに、これ以上言うのは無粋だろうとリムルは口を閉じた。
そのリムルの対応を見て、ラフィエル=スノウホワイトも口を噤んだ。
イングラシアへと転移したリムル達は、自由組合本部へ向かった。そこには、調査団の一人でもあるカガリが本部の入り口で立っていた。
いるはずのない魔王ラフィエル=スノウホワイトが歩いていることに目を丸くした彼女だったが、すぐさま表情を戻した。
「お久しぶりです。今日から暫く、お世話になりますね!」
「初めましてだな、ミリムだぞ。宜しくなのだ!」
「初めまして、カガリと申します。こちらこそ宜しくお願いしますわ。……ところで、そちらの方はもしやラフィエル=スノウホワイト様でいらっしゃる?」
何故ここに、という意図を含ませた言葉に、ラフィエル=スノウホワイトは困ったように微笑んだ。
「初めまして、ラフィエル=スノウホワイトです。ミリムのお願いでこうして同行させて頂いています。ご迷惑にならないよう隅にいますので、どうかお気になさらず」
それはちょっと無理です、という顔をしているカガリをリムルが話題を変えた事で話を流す。それでも複雑そうな表情をしているので、気にしない事は出来ないのだろう。
ミリムは大丈夫なのにラフィーは無理なのかと、リムルは少しだけ困惑した。
第63話 遠い白の夢
――夢を見ていた。
両手を組んで、高らかに聖なる歌を奏でる少年少女達。彼等の一歩手前には、美しい白銀の少年が、一際心地良い声を紡いでいた。
その美しい声は、邪悪な悪魔を滅ぼして、優しく美しい世界を守る最強の矛だ。少年少女に慕われて、幸せそうに笑い合う。白銀の少年は、悪魔によって衰退した世界での希望ともいえる存在だった。
しかし、白銀の少年の世界は一変する。
絶望に落とされ、人を憎み、嫌悪してしまった。
白銀の少年は、邪悪な神秘に魅入られて、その手に縋ってしまったのだ。
――夢を見ている。
同じ夢を繰り返す。その日々を見る事を繰り返して、しかして覚えられず。同じように信じて裏切られ、絶望に頽れる日々を繰り返して見る。
白銀の少年は、ラファエルと呼ばれていた。
親しい人にはラフィーと呼ばれて、素朴な焼き菓子が好み。贅を凝らした甘ったるい菓子が苦手で、ハーブで作った匂い袋を持ち歩いている。
実は辛い物や苦いものが好きで、内緒だよと、こっそり分けてくれる先輩の聖歌隊の少女に懐いている。彼女はもう卒業してしまったけれど。
そんな、どこまでも普通の白銀の少年は、その歌声だけは特別だった。美しく、神々に愛されたかのような聞く者全てをうっとりとさせるような、そんな魅惑の歌声を持っていた。
だからこそ、白銀の少年は悪魔を殺す聖歌を沢山歌う。身近な人を、大切な人を、知りもしない他人を守るために。
大勢の悪魔を殺した英雄は、卒業すると名誉なる上級機関へと所属する。白銀の少年も、例に漏れず卒業後は上級機関へ所属した。
白銀の少年は、絶望に泣いて憎悪を抱いて死んだ。
――夢を見ていると自覚した。
それでも覚めぬ夢が、人を憎めと囁いている。こんなに愚かで醜い人間を殺せと叫んでいる。何度繰り返しこの夢を見ても、この夢を覚えられない。唯々、憎悪と殺意だけが降り積もっていく。
何故、何故、何故、――あんなに、助けてやったのに。お前達を救ってやったのは誰だと思っている。
深い怒りと悲しみが積もりに積もって、憎悪や嫌悪に変わってゆく。
それでもなお、静かに爪を研いでいるだけだった。
――夢が、終わらない。
神々に愛されたかのような、美しい真白の少年を、見つけた。
殺してしまおう、と思った。
真白の少年は、――憎き怨敵に愛されていた。
白銀の少年は、真白の少年の博愛が気持ち悪くて、見ていられなかった。歪んだ価値観と歪められた精神が気味が悪くて、
白銀の少年は、
――夢から覚めると、そこは見たことも無い天井が広がっていた。
そして、思考はどこか靄がかかっているようにぼんやりとしている。ここはどこだろうと考えたところで、そもそも何故ここにいるのか分からなかった。
「目が覚めたのね、……ええ、きちんと効果はあるようなのよ。やはりあの白い衣が邪魔をしていたの」
「貴女は……? いや、ん?」
「私はお前の主人、マリアベル。きちんと役に立って貰うのよ――ギャルド」
本来の主、ラフィエル=スノウホワイトから流れていた魔力が途切れるその時まで、聖歌隊の少年の記憶を淡々と見せつけられていた赤い髪の青年は――自分の主を覚えてはいなかった。
name:ラフィエル=スノウホワイト
skill:ユニークスキル『
ユニークスキル『
ユニークスキル『
ユニークスキル『
secret:『悪魔契約』
『悪魔共存』
『禁忌の代償』