病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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現状維持/何もわからん

 第69.5話 現状維持

 

「ミリムの奴、何してるんだ……」

 

 遺跡から離れた場所ならばともかく、遺跡のすぐ傍で最大出力で放たれた竜星爆炎覇(ドラゴ・ノヴァ)の余波から自身と配下、ダークエルフ達と調査員を守るために結界を構築したリムルは苦々しく呟いた。

 ミリムの攻撃が直撃したのは、ラフィエル=スノウホワイトのそっくりさん——要するに偽物である。

 彼女を倒すためにここまで高火力の攻撃が必要だったのかと、リムルは疑問に思わざるを得ない。何せリムルから見ても、偽物はそこまで強いとは思えなかった。

 智慧之王(ラファエル)による警告もなかったし、リムル単独でも十分に撃破可能であると考えていたからだ。

 だというのに、ミリムはリムルから偽物を庇い、その対戦権を奪い取った。

 

(何か、理由があるのか? カオスドラゴン程の脅威には思えなかったけど……)

《告。個体名:ラフィエル=スノウホワイトの生体反応の消失を確認。状況から仮称:赤眼による干渉と推測されます》

 

「…………は!?」

 

 リムルは突然の報告に動揺する。

 それもそのはず、ラフィエル=スノウホワイトの生体反応の消失などという報告を聞いて動揺するなという方が無理な話だ。

 というか、あの偽物がミリムの攻撃を食らったタイミングでなんて——

 

《告。個体名:ラフィエル=スノウホワイト固有の結界の再構築を確認。仮称:赤眼の生体反応消失と共に、個体名:ラフィエル=スノウホワイトの生体反応を確認しました》

 

(……? …………??? えっと、つまりどういう事なんですかね、智慧之王(ラファエル)先生?)

 

 

 ラフィエル=スノウホワイトが死んだのかと思えば復活したり、訳が分からない。

 上空のミリムも何故かキョトンとした顔をしているし、きょろきょろと辺りを見渡している。

 土煙が消えたその場に偽物は居らず、血肉の一欠片も残ってはいなかったのだ。

 

《解。仮称:赤眼は個体名:ラフィエル=スノウホワイトと同じ物質体(マテリアルボディ)を所持している可能性があります》

(は?)

 

 唖然。

 それは、つまり。二重人格だとか、そういう事だろうか。あの悪意の塊のような女性は、ラフィエル=スノウホワイトの暗黒面——一面の一つだということなのか。

 では、ならば。

 自分が殺そうと剣を突き付けたのは、自らが守ろうと慈しもうと思っていた、病弱な優しい少女だった?

 ひゅ、とリムルの喉からおかしな音が出た直後、大声がリムルを呼んだ。

 

「おい、リムル! 早くこっちに来るのだ!」

 

 無意識に自分の胸元を堅く掴んでいたリムルは、はっとして手から力を抜く。そして、遠くから自らを呼ぶミリムの呼びかけに答えようとして、はたと気づいた。

 

 というか、待てよ?

 そっくりさんだとか吐かしていたミリムは、俺がラフィーの偽物だと思っていた時にラフィーを庇ってたよな。

 もしかして知ってた——いや、だとすると何で本気で攻撃なんてしたんだ?

 ううむ、分からん。

 

 直接聞くか、とリムルはこの場を配下に任せてミリムの元へ駆け出す。

 ミリムはいつの間にか上空から降りていて、遺跡の出入り付近で仁王立ちしていた。その前には、赤い髪の少年が正座しており……、

 

「……どういう状況?」

「うむ。こいつがな、せっかくのチャンスを水の泡にしてくれおったのだ! 一発ぶん殴ってやろうと思ってな」

「待て待て待て、全然話が見えないから説明してくれ」

「ん? それはだな……まあ、まずは魔王達の宴(ワルプルギス)でラフィーのそっくりさんがいると言ったが、あれが嘘だという事から話さないといけないのだが」

 

(めちゃくちゃアッサリ暴露された……)

 

 既に何となく察してはいたが、こうもアッサリと告げられると微妙な気持ちになる。

 そして話が進むと、正座をしているギャルドも徐々に縮こまっていく。

 そう、ミリムの計画は頓挫した。

 それも他ならぬラフィエル=スノウホワイトの配下、ギャルドによって。

 

「まったく! 悪魔が表に出ている時にラフィーを殺して、ラフィーだけを蘇生させる計画が台無しなのだ! こいつのおかげで逃げられてしまったし、ラフィーが今何処にいるか見当もつかないではないか!」

 

 ものすごく不機嫌そうに、ミリムは鼻を鳴らした。

 その音で更に萎縮してしまったギャルドが、ものすごく申し訳なさそうに口を開いた。

 

「その件については謝罪する、申し訳なかった……。てっきり、魔王ミリムがラフィエル様を何も知らずに殺そうとしているのだとばかり」

「ワタシが何も知らない訳がないのだ! せっかくのチャンスを、お前が聖書を投げるから悪魔が逃げてしまったのだぞ!」

「うぐ……良かれと思って……」

 

 ギャルドからすれば、完全なる善意からの行いではあったのだが、ミリムからすればとんだ横槍である。

 またとないチャンスを潰した相手に憤慨するのは当然であり、その正当性を今までの説明で理解しているギャルドはそれを甘んじて受け入れるしかない。

 

「ま、まあ失敗したとはいえ、悪化した訳じゃないだろ? ラフィーの居場所は分かってるから、迎えに行こう、な?」

「何? 居場所が分かっているのか? それなら……まあ良かろう。失敗は惜しいが、現状維持が出来るのなら、今はそれに越したことはないのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第69話 何もわからん

 

 ふと意識が浮上して、真っ先に思ったこと。

 …………何でオレは死にかけてるんだ???

 は? 意味わからん。ていうかオレなんか物凄く嫌な夢を見た気がするんだが……自殺とかいうとんでも体験をした気がするが、まあ気の所為だろ。

 それにしても何でオレはとんでもねえ質量の光に飲み込まれかけてるんだ??

 は~~~訳分からんな(諦め)

 これはきっと恐らくたぶん夢。そうに違いない。だってそうじゃなきゃおかしいから!!!!

 

 こんなにも訳の分からん状況に放り出されるなんて夢に決まってる。ていうかさっきから頭痛い。

 足元に聖書転がってるけどもしかしてこれオレに投げられたの? どうりでいきなり目が覚めたはずだよ、投げた奴殴るからな。

 ていうか夢だから殴るも何もねぇわ。

 

 ………………。服が熱でか何でか知らんけど消え始めてる……え? 

 あつ、熱い! 燃える!

 は? 夢じゃねぇのかよ、死ぬ!!

 こんな苦しい思いして死にたくない、何とかしてくれ誰か!!(涙目)

 何でオレがこんな目に遭わなきゃなんないんだよ、こういうのは悪い事した奴が遭うべきだろ!!

 泣きながら服をバサバサしてみても、服は端から燃えて消えていくし。

 

 びぇ……そ、そうだ! 

 この際、リムルとのアレコレなんざ関係ねぇ。生命力なんてちょっとくらい消費したって構わん。

 オレは実家に帰らせて貰うからな!!!

 

 死にそう。

 異空間に舞い戻れば万事解決だとか誰が言ったよ。全身激痛に苛まれてるが???

 むしろあのまま一思いに焼かれ死んだ方が良かったんじゃねぇのって思うくらい。全身に火傷を負ってるよこれ、もう駄目だ。

 もうお前、死んでねって神が言っているとしか思えない。あんなに贖罪として敬虔な信徒として暮らしてたのにこの仕打ちか、許さねぇからな……(激怒)

 死んだら来世は神をいないものとして広めてやる。背教者になってやる。人間至上主義を絶対としてやるからな。

 あ、う、これほんともうだめ、

 

 生きてた。

 なんか知らんけど生きてた。

 傷も綺麗さっぱり治ってるし、なんかよく分からんけど、とりあえず生きてる!!(歓喜)

 なんでオレあの怪我で生きてるのか全然分からんけど……まいっか!

 どうせあんな事、二度は起きないだろうしな!

 でもこれ服がアレだな……人前に出られるような格好じゃない。肌を晒すのは神前で未来を誓い合った相手とじゃなきゃ駄目だしな。

 誰かに持ってきて貰うにしても、性行為が出来ない神官クラスじゃなきゃ……あ、リムルもスライムだ(性器がない)から良いのか。

 いやでも、あいつに持ってきて貰うのは……弱味をこれ以上見せる訳には……!!(葛藤)

 

 うーん、どうするか。

 とりあえず肉壁くん、はあいつ裏切りおったから駄目か。他に誰か……、

 

 

 

 

 …………だ れ か き た ?

 

 

 




説明回はまた後日。



アンケ来てくれた人ありがとう
感謝の印に現在1位の小ネタ追記しておきます

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