病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー 作:昼寝してる人
第73話 丸投げ無茶ぶり
「よお、邪魔してるぜ」
「何でいんの?」
マリアベルやラフィエル=スノウホワイトの一件が終わって、一週間程経ったある日のこと。
今日もリムルの庵で目覚めたリムルは、ラフィエル=スノウホワイトの住まう教会に顔を出してから、執務室に赴いた。
そこには、リムルの席を我が物顔で占領する魔王ギィ・クリムゾンと、その傍に腰掛ける膨大な
《告。個体名:ヴェルドラに匹敵する
えっ、ヴェルドラに?
マジか……まあギィに連れてこられたなら、強くてもおかしくはないか。
そう思考するリムルだったが、そこでふと気付く。そういえば彼女は開国祭にも来てたけど、その時には会っても何も感じなかったな、と。
(まさか――その時はあえて隠してたのか? いや、その時はギィもだったな。……騒ぎを起こさないように、ラフィーが提案したのかも)
それなら納得だ、とリムルは頷く。
それから、傍に控えるシュナにちらりと視線をやると、心得たように思念伝達が返ってくる。
彼等はラフィエル=スノウホワイトに関することで来たらしい。元々リムルの執務室に現れ、客間に案内しようとしたら、執務室に堂々と居座られたとか。
人の国で自由気ままに振る舞う辺りがギィらしい。まあ恐らく、客間で待つより執務室で待つ方がすぐにリムルと会えると踏んだのだろうが。
「さて、それじゃあ早速本題に入るとするか」
「今からかよ……俺にだって、予定ってもんがあるんだけど?」
「おっ、そうか? じゃあラフィーに直接言いに行くぜ」
「まあ待てよ、お茶でも飲んでゆっくりしてけ」
手のひら返し。
朝っぱらから出待ちされて気分を害された仕返しに、ちょっと嫌味と皮肉を言ったリムルは、シュナにお茶を淹れさせて引き止めた。
くすくすとギィのそばに居る女性が笑い、リムルに顔を向けた。
「開国祭の時は挨拶が出来なかったもの。改めて、私は白氷竜ヴェルザード。弟がお世話になっているそうね」
「えっ!? あ、いやいや、こちらこそヴェルドラには……」
「あら、あの子が大人しくしてるのは貴方のおかげでしょう?」
私が怒っても、あの子は何度も繰り返すから……と憂いの顔でため息を吐くヴェルザードだったが、リムルは内心顔を引き攣らせた。
ヴェルドラから姉については多少聞いていた。今までは彼女が姉だとは知らなかったが、道理で開国祭の間ずっとヴェルドラに覇気がなかったはずだ。
ヴェルザードが近くにいるということで、大分精神を摩耗していたのだろう。
「おい、今はヴェルドラについて話に来た訳じゃないだろ? ヴェルザード」
「そうね。そうだった――単刀直入に言いましょう、魔王リムル。東の帝国を瓦解させてきたわ」
「なんて???」
思わぬ言葉に唖然とするリムル。
傍で静かに控えていたシュナも、流石にこの言葉は看過出来ぬようで、目を見開いて固まっている。
なんでもないように振舞っているのはギィとヴェルザードのみ。
ぽかんと口を開けて数秒固まったリムルは姿勢を正した。
「ラフィーの話じゃないのか? それに瓦解させたって……戦争の話なら何も聞いてないぞ」
「戦争してきた訳じゃねーよ。ただ確認しに行っただけだ。まさかああなってるとはなあ……とりあえず手っ取り早くあちら側の世界から来た奴は潰して、ヴェルグリンドにはラフィーに聞いた話を聞かせてきた」
「訳分からん……」
要するに、だ。
ラフィエル=スノウホワイトによって、ギィ達は今の東の帝国の主であるルドラが、もはやルドラではないのではないかという疑念を抱いた。
そして堂々と東の帝国に侵入し、ルドラとヴェルグリンド――竜種の一人――に会いに行った。
ギィは即座に、ルドラの魂は摩耗してもはやほとんど残されておらず、スキルであったミカエルに乗っ取られていることを見抜いた。
が、ヴェルグリンドとヴェルザードは天使系のスキルを持っていたために見抜けず、ギィは一時一対三の大舞台を演じる事になった。
「…………お前らが暴れたら、皆すぐ気付くと思うんだが」
「はははっ、そこはまあ隠蔽しようとする奴がいたってことさ。もういないけどな」
「あ、そう」
詳しくは聞かないでおこうと、リムルは思った。
その後、何やかんやでヴェルザードが一番に我を取り戻し、ギィと共闘。ヴェルグリンドもヴェルザードの渾身の一撃と共に、一瞬だけ思考のモヤが晴れて根性でミカエルの干渉を跳ね除けた。
そうして今度はギィに有利な三対一になったところで、乱入者がいた。
その乱入者により、ヴェルグリンドは残ったルドラの魂の欠片と共に異空間へと飛ばされる。ヴェルグリンドのその後は分からないが、とにかく乱入者とミカエルは友人に、姉に手を出されてキレた本気の2人に始末される事になった。
結果――
「――今、帝国には、王であるルドラも、守護竜と総帥を兼任していたヴェルグリンドもいない、無法地帯になってしまっていると、そういうことだな?」
「そうだな」
「そうね」
さらりと言ってのける二人だが、そんな簡単な問題じゃないだろとリムルは叫びたかった。
ていうか何でこの話を俺に――と考えたところで、ふと嫌な予感。
「ま、まさかとは思うけど……」
「いやあ、リムルよ。お前ほど優秀な奴は俺の知り合いにも中々いなくてな?」
「やめろ、おい、離せこら」
「帝国の件――何とかしてくれるよね?」
「ふざっけんなよお前!!」
リムルの肩に腕をまわして猫撫で声でそう言うギィに、リムルはキレながら離させようと藻掻く。
ギィとリムルが戯れているのを見て、ヴェルザードはニコニコして「肩の荷がおりたわね」とお茶を飲んでいる。
丸投げする気満々の二人に、リムルは顔を険しくしてきっと睨む。
「俺にだって王としての責任があるんだ。仮想敵国だった帝国の面倒まで見てられるか!」
「おいおい、リムル。忘れちゃいないか? 俺達は、ラフィー関連の話をしにきたって言ったよな?」
「はっ?」
「ラフィーが俺達を焚き付けたんだ。責任は勿論ラフィーに取ってもらうさ。だが……ラフィーを引き取ったのはお前、つまりラフィーの責任はお前の責任だろ?」
「お、おまえぇ……!」
最初からそのつもりだったのかよ、とリムルが恨みがましくギィを睨む。
機嫌よくギィは笑って、それじゃ任せたぞ、とリムルの肩をぽんと叩いた。
ぎりぎりと歯軋りするリムルに、思念伝達が入る。今度はなんだよ、と問い掛けると――
こんこん、と扉がノックされる。
そして勢いよく扉は開かれ、滂沱の涙を流すマサユキが執務室に流れ込んできた。
「リムルさん!! 何とかしてください!!」
「やあマサユキ君。よく来たね」
えぐえぐ泣きながらリムルの腰に縋りついたマサユキには、見たことないほど綺麗に笑うリムルが見えていない。
いきなり僕のことルドラって呼ぶんですよ、訂正してもですよ、しかもあのひと絶対竜でしょ知ってる。
ということを泣きながら言い募ったマサユキを根気強く慰め、リムルは彼を着席するように促した。
びいびい泣いた彼の前には面白そうな顔をしたギィと、まあまあと驚いた顔のヴェルザード、そして微笑むヴェルグリンドがいる。
「というわけで、帝国の新しい国主のマサユキ君だ。仲良くしてやってくれ」
「なんて???」
涙も引っ込むトンデモ発言が聞こえてマサユキは顔を上げてリムルを見る。
ニッコリ笑顔のリムルは、さっとヴェルグリンドに手のひらを向ける。
そして今現在帝国には王もヴェルグリンドもいないことを告げ、リムルの先生の推測によるルドラとマサユキの関係性を告げる。
盛大に顔を引き攣らせたマサユキは、
「冗談ですよね……?」
「残念ながら本気です。頼まれてくれ」
「嫌ですよ王とか柄じゃないです!! ただの高校生に何の期待してるんですか!?」
「安心しろ。俺も元はただのおっさんだけど、意外と上手くやれてるし」
「何も安心出来ないですよ! 僕はリムルさんと違って戦えないんですよ!? この剣だって数分持つだけで腕が吊りそうになるんですからね!! ほら!!」
「マサユキ君。君の目の前にいるのはルドラと古馴染みの魔王と竜だ。鍛えてくれるさ」
「やめてくださいキツいのもしんどいのも無理なんで!!!」
勘弁して……と泣き叫ぶマサユキに、リムルがぽんと笑顔で肩を叩く。
「勇者としてあちこち回って勝てない相手と震えながら戦うのと、王としてどーんと偉そうにするだけで命の危険も何も無いの、どっちがいいかね?」
「僕、勇者やめます」
キリッとした顔で、マサユキは宣言した。
ヴェルグリンドもマサユキが王になるなら不満も無いだろうし。もしリムルが帝国を支配下に置いたりしたら、きっと不満を持たれていただろう。
マサユキのおかげで間一髪で回避できた。
リムルも、ギィも、ヴェルザードもヴェルグリンドも、みんなが納得する解決策だった。
恐らく、というか確実に帝国には膿が色々と溜まっているだろうが、ギィと竜種二体、勿論リムルも支援するつもりだし、これだけいれば多少のゴタゴタはあれど何とかなるだろう。
ようやくほっと一息ついたリムルだったが、またも控えめに扉がノックされる。
嫌な予感と共に許可を出すと、
「すまない、魔王リムル。ラフィエル様のことで相談が――」
難しい顔をしたギャルドが、またもリムルに難題を持ってきたようだった。
帝国編完!!!!
詳細は個々人で補完してくれめう……悪魔娘が出てきたあたりから時間なくて原作読めてないからまとめ見てきたんで……