病弱聖女と魔王の微睡み ー転スラ二次創作ー   作:昼寝してる人

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 ラフィエル君視点は次話です(少ない)


それぞれにとっての聖歌者 Ⅰ

 第8話 ギィ・クリムゾンの場合①

 

 ギィ・クリムゾンがラフィエル=スノウホワイトに興味を持ったのには、理由がある。単純に、ミリムの心を救った、というのも勿論理由の一つではあるが、最大の理由ではない。

 彼がラフィエル=スノウホワイトに本心から興味をそそられたのは、出会ってからしばしの年月が経った時だった。

 優しさだけが取り柄の弱者。

 自分達と平素の態度で接する事のできる心強き者。

 ただそれだけの認識でしかなかった、あのラフィエル=スノウホワイトが、国を一つ滅ぼしたのだ。

 この一件は、ギィを大いに驚かせた。無論、驚いたのはギィだけではなく、ミリムやラミリスもだが。

 そこで、ラフィエル=スノウホワイトの秘密を知った。

 ラフィエル=スノウホワイトの中には、正体不明のナニカが存在する。そしてそれを、ラフィエル=スノウホワイトは許容している。

 ミリムはその存在を酷く厭い、どうにかして消し飛ばそうと躍起になっていた時もあったが、結局はラフィエル=スノウホワイトに困った顔をされて断念した。

 ラミリスも同様、影から小細工してナニカをラフィエル=スノウホワイトから引き剥がそうとしていたようだが現状は無理だと悟ったようだ。

 そして、そのナニカは未だにラフィエル=スノウホワイトの奥底にある。

 

 それが、ギィの興味を盛大に掻き立てた。

 好奇心。そして、純粋な心配。

 今までは興味はそこまでなかったとはいえ、長年友人として過ごしていれば情も湧く。それ故に、正体不明のナニカが気になり、危険があるのならラフィエル=スノウホワイトから引き剥がしたいと考える。

 それ程までに、ラフィエル=スノウホワイトはギィに気に入られている。

 その結果が出る過程で、とある一件があった事も、その感情に拍車をかけているのだろう。

 未来では、その出来事は無かった事にされているが……ギィはその日のことを鮮明に覚えている。きっと、ラフィエル=スノウホワイトも、そうだろう。

 

 あの日――ギィ・クリムゾンとラフィエル=スノウホワイトは、激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラフィエル=スノウホワイトが国を滅ぼした。

 この知らせを耳にするのは、これで八回目である。ギィは今回はスパンが短かったなと思うだけで、特に気にもしていなかった。

 この3日後、未だにラフィエル=スノウホワイトが暴れ回っているという報告を聞くまでは。

 

「へぇ……あいつがなあ」

 

 何か面白い事でもあったのか、と考えて、否と切り捨てる。あの聖女が、人を傷つけるような真似をする訳がない。ということは……あの日、ラフィエル=スノウホワイトの奥底に感じたナニカが表に出てきているのだろう。

 なるほど、それは面白そうだ。

 あのラフィエル=スノウホワイトが許容した存在。そんな存在が今や周辺を荒らし回っている。

 矛盾している。

 人を傷つけない聖女と、その聖女が許容した暴虐を振るうナニカ。

 一体、どういう関係なのだろうか。

 知りたい。興味が尽きない。

 ならば、直接会いに行って知ればいい。

 そこまで思考した瞬間、ギィ・クリムゾンは白氷宮を飛び出した。

 

 飛び出してしばらく。

 クレーターがあちこちに出現している荒れ地を見つけた。跡を見る限り、新しい。

 ラフィエル=スノウホワイトの中に潜む存在によって出来た物だと仮定して……発見。

 機嫌良さげに、スキップでもしそうな足取りで、ラフィエル=スノウホワイトはその地を歩んでいた。

 その瞳は、血のように赤い。

 柔らかで暖かみのある青い瞳は、そこには無かった。

 

「あいつか」

 

 ギィはその人物がラフィエル=スノウホワイトである事を確認し、突撃する。衝突寸前で、ラフィエル=スノウホワイトは振り返って、歪んだ笑みを見せた。

 そして、ギィの頭に右手を乗せると、そのまま体重を乗せて、跳び箱を跳ぶような気軽さでギィを飛び越え、突撃を回避した。

 避けられた事自体、特に何も思わなかったようで、ギィは背後のラフィエル=スノウホワイトを振り返った。

 

「よお、お前とは初めましてだな?」

初めまして、という気はしないが。敢えて言うのなら、その通りだ

「あ?」

 

 ラフィエル=スノウホワイト……否、ナニカの言葉に、ギィは首を傾げた。初めて会う気がしない、とはどういう事か。

 考えて、恐らくナニカはラフィエル=スノウホワイトの視覚や聴覚などの五感を通じて外界の情報を盗んでいるのだろうと推測する。

 なるほど、それならナニカが自分を知っているのも理解出来る。俄然、面白くなっ(ワクワクし)てきた。

 口角をつり上げ、ギィは楽しそうにナニカに声をかけた。

 

「ラフィーに手を出したらミリムやラミリスがうるせえんだよ。その点、お前ならちょっとくらい遊んでも大丈夫だよな?」

 

 身体はラフィエル=スノウホワイトであろうと、その理性と主導権はナニカにある状態であれば。国一つ簡単に滅ぼせる実力を実際に体感できる。

 そんな魂胆で、ギィはナニカに初っ端から攻撃を仕掛けていたのだ。

 そんな思考を見抜き、ナニカは嘲笑った。

 

戦いを望むか。同胞

「……同胞?」

異界の、と付くがな

「お前……悪魔か。しかも異世界の? そいつは…おもしろいなあ」

 

 凶悪な笑みを見せ、ギィが楽しげに腕を振るった。これ以上は、問答するよりも実際に闘った方が面白いと判断したのだ。

 わざわざこれ以上の情報を与えられた後に闘うよりも、手探りで闘う方が、きっと楽しくなる。元来の悪魔としての闘争本能が、そう告げていた。

 

せっかちな奴め。この世界の悪魔は対話を楽しみもしないのか?

「闘う方が楽しいだろ?」

闘いは残しておくもの(メインディッシュ)だ。まずは会話(オードブル)だろう

 

 妙な事を言う悪魔だが、その趣旨はギィに伝わらなかった。戦闘狂と、破壊主義者は相容れない。精神から破壊する事を望む悪魔にとって、戦闘は最後に喰らうもの。

 結果、ギィの考えと悪魔の考えは相反しているのだ。二人の考えと、ラフィエル=スノウホワイトの考えはそれ以上に離れているだろう。

 呆れた顔で距離を取る悪魔に無理矢理にでも戦闘をさせるため、ギィは即座に距離を詰める。そして、嫌そうな顔をした悪魔が、叫んだ。

 

「ぐっ……!?」

 

 ふらり、ギィの身体がよろめく。くらくらと回る視界に困惑しつつ、ギィは悪魔から距離を取った。

 揺れる視界、回らない頭、思うように動かぬ身体。

 疑問符が溢れる脳内だったが、そこで世界の声が響く。

 

ユニークスキル(、、、、、、、)死歌者(ウタウモノ)』……?」

 

 元々、ラフィエル=スノウホワイトにはそれなりの興味があった。ミリムの件でうっかり失念していたが、今この場でようやく思い出した。

 そう。ラフィエル=スノウホワイトには究極の力など無いのだ。

 それなのに、ユニークごときの力で、究極に対抗以上の事が出来る――そんな、特異な存在だった。

 何故忘れていたのか?

 ギィは自問自答するが、答えは出ない。

 実際は……ラフィエル=スノウホワイトによって故意に忘却させられていた。彼女が当初、三人の魔王を拒絶していたからだ。

 彼女の持つユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)』によって、当時彼らが持っていた自身に対する興味を消していた。

 この場合は、究極に対抗できるユニークを持つ事を、彼らの記憶媒体に拒絶させていた。つまり、忘れさせた。

 最も、ギィがその事を知ることは決して無い。

 

(何故忘れていた? ラフィーのせいか?)

 

 が、何となく推測する事は出来る。ギィにとって、ラフィエル=スノウホワイトは優しさの塊であると同時に、酷く悪辣な存在なのだ。

 何かのために、誰かの為に、そんな理由であればどんな事だって出来てしまう。彼女から匂う血の香りを、ギィは感じ取っていた。

 悪魔を殺したその汚れた手を、直接聞いた訳ではないが……汚れている事は分かっていた。

 

(変な事してくれやがったな。後で仕返しするか)

 

 が、ギィにとってそんな事はどうでもいい。

 勝手に記憶を忘却してくれた仕返しとして、何をして困らせてやろうかと思考し、今は悪魔との闘いが優先だと思い直す。

 

ん? ……ほぅ、生きているのか。普通なら死んでいるのだがな

「へえ。叫びを聞いたら死ぬのか? 厄介なスキルだなあ」

叫びじゃない。死歌だ

 

 まあでも、聞かなきゃいいだけか。ギィはそう思ったが、その程度は悪魔も予想していたのだろう。悪魔は、ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)』によって、ギィの聴覚を封じようとする動きを拒絶した。

 

「おっ、やるな!」

 

 しかし、ギィは手段を封じられたというのに、楽しそうに悪魔を褒めた。楽しげな笑みのまま、ギィは再度悪魔へ向かって突撃した。

 

……脳筋が

 

 同じ行動をするギィを、悪魔は見下していた。

 何も学習しない奴だと。初めて見た時は、この世界でも最強の一角だと思ったのだが、どうやら勘違いだったらしい。

 傲慢はギィの特権なのだが、悪魔にはそんなものは関係ない。落胆を隠しもせず、虫けらを見る目で再度同じように彼の突撃を避けようとし、

 

《告。ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)』を獲得……成功しました》

 

 その直後に走った悪寒。

 このままだと死ぬ。そう直感した悪魔は即座にユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)』による結界を張ろうとしたが、間に合わなかった。

 咄嗟に防御の姿勢をとった悪魔の顔面に、ギィの拳が諸にめり込んだ。

 

がっ……ふ、ッ!

 

 吹き飛び、地面を転がった悪魔はその勢いのまま地を蹴り、ギィから更に距離をとった。

 その間に、つい先程得たユニークスキルについて確認する。どうやら、自分が格下以下と認定した相手にだけ発動するらしい。

 その権能は、感知系統と未来予測。極僅かにではあるが、確率操作による未来改変。

 先程の悪寒は、このユニークスキルによる警告だったのだ。

 前回とは違い、今回の突撃では自身が死ぬと感知。未来予測による、警告。

 そのおかげで、ギリギリ位置を少しでも変えられたため、生きているらしい。

 

初見の突撃は手加減していたか……。今回もまた、本気ではないな。――見誤った

 

 悪魔は悪態をついて遠くにいるギィを睨んだ。

 そして――ちょうどその時、同じように悪態をついていた人物がいた。

 

(えっ、なんかオレの身体がいつも以上に言う事聞いてくれないんですけど……。くそがっ!)

 

 ラフィエル=スノウホワイト。

 十大魔王が一人、"暗黒皇帝(ロード・オブ・ダークネス)"ギィ・クリムゾンの一撃で、ようやくお目覚めである(遅い)




悪魔「雑魚が……」
「ん? 何か言ったか?」
悪魔「」

 ねぇねぇ悪魔、今どんな気持ちなの? NDK? NDK?
 ギィを見下したその直後にボコられるってどんな気持ちなんですかねえ?(スキップしながら)
 性格悪くなったIFラフィエル君なら絶対に煽るだろう事間違いなしの展開。

 現在のステータス(過去)

 name:ラフィエル=スノウホワイト
 skill:ユニークスキル『聖歌者(ウタウモノ)』↔『死歌者(ウタウモノ)
    ユニークスキル『拒絶者(コバムモノ)
    ユニークスキル『上位者(ミオロスモノ)
 secret:『悪魔契約』
     『悪魔共存』
     『禁忌の代償』
 備考:いくら悪魔といえど、原初の悪魔と最古の魔王を兼任してるギィに敵う訳ない。舐めプしてたら返り討ちにあった(当然)
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