ヒロインちゃんは存在こそしてるけど出番自体は…がっつり絡む話も考えたんですけど、何というか重い話になってしまったので…
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夏休み明け初日、ホームルームが終わり下校となった頃。俺はある思いを抱えていた。
そう、クソゲーをやりたいと。
昨日の隠岐とのクソゲートークで、ああそういえば最近クソゲーやってないなというのを再認識してしまった。シャンフロ、GHC、ネフホロ。いずれも神ゲー、及び良ゲーに分類されるものだ。まあネフホロは過疎っているという前提が付くが、ゲーム自体は面白いしな。
そして最後にやったクソゲーはフェアクソ…いやウェザエモン戦の前にちょっとやった便秘だったか? とにかく、あれ以来クソゲーをやってない。クソゲーマーは定期的にクソゲニウムを摂取しないと死んでしまうとは誰の言葉だったか。今の俺がその状態だ。
ただクソゲーをやるだけなら問題はない、それこそ部屋にズラリと並んでるからな。だがしかし…
「どうしたものか…」
「珍しい、なに悩んでるんだ?」
「雑ピか、いや少しな。分かりやすくいうとこう、ラーメンを食いたいが出来れば今まで言ったことのない店のラーメンが食いたい、みたいな」
「あーあるよなそういうとき。で、結局何の話?」
「今ので理解できなかったのか。もっと想像力を鍛えないといい作品は生まれないぞ?」
「いやただの例え話で理解しろとか無理じゃん!ていうか何の話!?」
「お前が授業中書いてるノートの中身」
「え、嘘、なんで知って…すいませんこれで勘弁してください」
ブツは受け取っておくが、この先も黙っているとは言っていない。いざとなったらこいつがポエム書いてることを盛大にぶちまけよう。
さて、実際どうしたもんか。とりあえず岩巻さんに聞くか。最近ロックロールに顔出してなかったし、もしかしたら新作が入荷しているかもしれない。いやまて、今回のきっかけである隠岐から聞くというのもありじゃないか?隠岐は厳密にはクソゲーマーではなく、小遣いがなかったからワゴンゲーを買っていた。ワゴンゲー=クソゲーというわけではないが、何かしらの理由があるからこそワゴンゲーとなるのだ。それに隠岐と俺の好むゲームジャンルは割と被っている。あいつがおすすめするゲームなら俺も楽しめるゲームなのではないか?
「よし、そうと決まれば行動あるのみ」
というわけで現在ロックロール。
「こんにちは岩巻さん、とりあえずクソゲーを一本」
「はいこんにちは。ひどい挨拶してるって自覚してる?そんな常連感だしてもないものはないよ」
くっ、こちらは空振りか。まあ岩巻さんとてすべてのクソゲーを完璧に把握しているわけではないだろう。となれば隠岐の薦めるゲームに期待するしかない。今日は休み明け初日で部活もなかったらしく、ロックロールに来て直接選んでくれるという。そこまでやってくれると逆に申し訳なく思えてくるが、ここは素直に乗っかっておこう。
「ひとまず隠岐の奴を待つか…」
「あれ、陽務君紅音ちゃんと知り合い?」
「あーはい、シャンフロで知り合ったんですけど実は妹の友人だったらしくて。岩巻さんもあいつの名前知ってるんですね」
「まあ、彼女はある意味不良在庫を買って行ってくれる天使みたいな子だからね。…しかし知り合いだったんだ。ふうん、そう………」
「…あの、何か問題でもあったんですか?」
「へ? いや何もないよ。ただちょぉっとね、もしかしたら相性的に良すぎるんじゃないかと乙女ゲーマーとしての勘が告げているというか。噛み合わなければお互い我が道突っ走りそうなんだけど…」
「えーと、さっきから何の話を…」
「こんにちは!岩巻さんお久しぶりです! あ、楽郎さんも先に来てたんですね!」
と、ここで隠岐がやって来た。返信が来てからそんなに経ってないし急いできてくれたのかな? そうだとしたら少し悪い気がする。
岩巻さんも我に返ったようで、いつも通りの様子で隠岐を迎える。
「あーうん、紅音ちゃんこんにちは。陽務君から聞いたよ、実は知り合いだったんだってね」
「はい、私も昨日知ってびっくりしました!あ、ゲーム見させてもらってもいいですか?」
「いいよー。いつも通りワゴン?」
「はい! 楽郎さん、いつもこの中から選んでいるんですけどいいですか?」
「ああ、頼む。隠岐のお薦めがあればそれを選んでくれ」
「責任重大ですね!わかりました!」
そういってワゴンにあるゲームを真剣に眺め始める。もうちょっと気を抜いてくれてもいいんだが、真剣に選んでくれているというのが嬉しいという気持ちもある。…うーん。
「どういうこと? もしかして紅音ちゃんに見繕ってもらってるの?」
「ええまあ。昨日話した限りやってるゲーム被ってたから、隠岐のお薦めは信用できるんじゃないかと思って」
「あー、確かに便秘とか危牧とかやってるね。あんないい子なのにクソゲーばっかりやる羽目になって…。それに比べてこっちの子はゲロの中に喜んで突っ込んでいくし…」
世の中にはいろいろな生き方があるのです、仕方ないことなんですよ。
しかし金の問題はどこまで行ってもついてまわるということだな。やはり武田氏から推薦されたプランを実践するのが一番正しいルート…!
「あ、これ!楽郎さん、これなんかどうでしょうか!?」
「どれどれ。…ラインズ・ソルジャー?」
「あーなるほど、そういえばそれは陽務君買ってなかったかな」
パッケージにでかでかと兵士らしき男の背中が載っているゲームソフトを眺めていると、岩巻さんが納得したかのように頷く。この反応、アタリとみていいようだな。
「岩巻さんのその様子からしてクソゲーですよね。どんなゲームなんですか?」
「んーそうだねー。ちょっと癖のあるアクションゲームってところかな。君がやった中だと…ネフホロが近いかな。ロボゲーじゃないしあそこまで複雑って訳じゃないけど、操作に慣れずに挫折した人が多いって聞くかしら」
そうなるとクソゲーというより過疎ゲーが近いのか?どうする、個人的にはもっとエグくくる感じのクソ要素が欲しいんだが…
しかし、どうやら岩巻さんには俺の考えはお見通しだったらしい。ニヤリと笑いながらそのゲームについての話を続ける。
「心配しなくても大丈夫だよ。ネフホロの操作性はリアルの適性を追求してしまったが故のもので、アクティブなプレイヤー達からはきちんと受け入れられたもの。それ以外の要素にクソゲーの原因もないしね。
一方でこっちは、あんまり詳しいこと言うとネタバレになっちゃうけど、まあ結構な理不尽を要求されてるんだよね。評価するべき箇所もあるっちゃあるけど、それ以上に批判される部分も多い。やりこんでいる人たちからもクソゲー認定してる人多いらしいし、君も満足できると思うよ」
ふむ、そういうことならやってみるか。金額を聞き購入手続き…やっぱワゴンゲーだけあって安いな。
「あの、楽郎さん。少しいいですか?」
「ん、どうした?」
「えと、そのゲーム、二人プレイのモードがあるんですけど…その、一緒にやってもいいですか!?」
「このゲームをか?でも隠岐は一度クリアしてるんだろ?」
「二人プレイだと敵の数が増えたり配置が換わったりなんかして、難易度が上がるみたいなんですけど、私そちらではやったことないんです。あとセーブデータも複数作れるので、初期状態でまたプレイし直せますし。
それにその、今までリアルで一緒にゲームをする友達がいなくて、ゲーム上の知り合いしかいなかったから。だから、友達というと失礼かもしれないですけど、リアルで知り合うことが出来た楽郎さんと同じゲームを一緒にやりたいと思ったんです。…だめ、ですか?」
うーん、既にクリアした人と一緒にやるとなると寄生プレイになるからあんまりしたくないんだが…初プレイのクソゲーを高難易度でプレイ、というのはありだな。あちらも初期状態らしいし、完全な寄生って訳でもないか。というか、純粋な善意でゲームを薦めてくれた隠岐の誘いを断るというのも、流石に気が引ける。
「いいよ、一緒にやるか。…ログインする時間を合わせる必要があるな。希望はある?」
「あ、ありがとうございます! 時間は…えと、二〇時からでどうですか?」
「こっちもそれでいいよ。はじめてすぐ合流できるのか?」
「大丈夫です!始めたらインターミッションエリアに飛ばされるのでそこで待っててください!私が楽郎さんを探します!あ、楽郎さんのPNはこのゲームでもサンラクにします?」
「ゲームは基本それで統一してるからな、これもそうするつもり」
「わかりました!」
二〇時からならそれまでに勉強やら風呂やら済ましておくか。隠岐の感じからして夜中までやることはないだろうし、シャンフロは深夜帯にプレイしよう。
さて、新しいクソゲー、存分に楽しませてもらおうか。
◇
「…うーん、思った以上に相性良さそうだったわね」
「これ、玲ちゃんきついかもしれない…」
扱いこそこんなですが、ヒロインちゃんかなり好きです。ヘタレだけど一途で独占欲強いというのが凄くいい…