そのままのテンションで仕事から帰ってきて書き上げたのでいつもよりおかしなところがあるかもしれません。あと今そのネタかよ感も。サンラクの誕生日書いてる時点で今更のような気がしますが。
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「こんにちは楽郎さん!どうぞお上がりください! それから…お誕生日おめでとうございます!」
「お、おぅ。…うん、ありがとう」
11月21日。自分でも大して意識していなかったが、俺の誕生日。紅音には特に言った覚えもなかったが、どうやら瑠美が伝えていたらしい。紅音からお祝いしたいと言われ、紅音の家でご相伴にあずかることとなったのだが…紅音の家に上がるのは初めてだから緊張するな…。
いや待て、よく考えたら紅音のご家族と初めて会うことになるんじゃないか?ヤバいぞ、挨拶とかなにも考えてなかった。とりあえずこれまでのゲームの経験、そう、ラブクロックは恋愛シミュレーションだし参考に…ならないな。あの感情を殺して留学者の選別をするゲームの何を参考にするつもりだ。
「あー、紅音、とりあえず初めて上がるわけだし、親御さんに挨拶とかしたいんだけど」
「お父さんとお母さんですか?今日は二人とも出かけるとかでいませんよ?」
「えっ」
もしかして二人きり?若い男女が、一つ屋根の下で、二人きり…当然なにも起こらないわけがなく…。…くっ、駄目だ思考がディープスローターに汚染され始めてる、邪念を振り払わなければ!
「そ、そういえば、今日は何を食べるんだ?」
「今日はすき焼きです!」
「…すき焼き? 二人ですき焼きを食べるのか?」
「はい!今日は楽郎さんの誕生日って言うおめでたい日ですから!」
あー、すき焼きって言うと大人数で集まって食べるイメージが強かったけど…そうだよな、少人数でも食べられるよな。大体大晦日に食べるイメージが付いてるけど、うちの場合は親族で集まって食べるんだよな…。そして酔っ払ってカオスになるからみんなして甘酒を飲むという…。
…
……
………
「それじゃあこれから準備しますね!楽郎さんは座って待っててください、すぐ作りますので!」
そう言って調理を始めた紅音の手際は、想定していたものよりもずっとよかった。こう言っちゃアレだが、いろんな意味で大らかだし、料理とかも苦手だとばかり勝手に思っていたんだが。
あ、もしかしてそういうことなのか?
「新鮮なお野菜をたくさん使ってますからね。たくさん食べてください!」
「おー、確かに上手そうだな。だいぶ練習したんだな?」
「練習、ですか?料理は普段からお母さんのお手伝いしてるので得意ですよ?」
「あれ、そうなのか?ここ最近手に絆創膏貼ってること多かったから包丁で指切ったのかと」
そう、ここ最近紅音の手には至る所に絆創膏が貼ってあった。気にはなってたが聞いてもはぐらかされてたし、紅音のことだから何かに打ち込んでいる結果じゃないかと思い深くは追求していなかった。
「あ、そういうことですか!?えーと、その…もう少ししたら話すつもりなので、それまで待っててもらいたいです!」
「何か理由あるなら話したくなったときでいいぞ。…お、もうそろそろ食えるんじゃないか?」
「あ、そうですね!それじゃあ…」
「「いただきます」」
早速鍋に箸を延ばし、皿に取り分ける。春菊、しらたき、ネギ、牛肉、白菜、豆腐、春菊、エノキ、ネギ、エノキ、白菜、春菊……ホントに野菜多いな!?
「あ、楽郎さん楽郎さん!」
「ん?」
「はい、あーん!」
こ、これは…デートイベントの定番、というものなのだろうか。ただその、食べるものがすき焼きだと色気もなにもないというか…。
「あ、あーん…」
「どうですか!?おいしいですか!?」
「…うん、上手い」
「そうですか、お口に合って良かったです!」
まあ、実際美味しいし、これはこれで俺たちらしいかもしれないし、いいか。
…
……
………
「…それじゃあ、もう遅いし帰るわ。すき焼き上手かったよ」
「いいえ、お粗末様でした!私も楽郎さんの誕生日をお祝いできて良かったです!」
11月下旬にもなると日が落ちるのも早い。平日なので明日も当然学校があるし、遅くなる前に帰らなければならない。
「あ、戸締まりはちゃんとするんだぞ。その、紅音も女の子だからな、夜一人でいるのも危ないしな」
「あ、お父さんとお母さん、もうすぐ帰ってくるって連絡があったので大丈夫ですよ?」
よぉーし心の中のディプスロは完全に去った!いやなにもする気はなかったが、軽率な行動をして信頼を失うようなことはしたくないしな!
「じゃあ、おやす…」
「あ、ちょっと待ってください!渡したいものがあるので!」
「渡したいもの?」
「はい!お誕生日プレゼントです!」
誕生日プレゼント?紅音が料理してくれたすき焼きがプレゼントだとばかり思っていたんだが違ったのか?
疑問を投げかける前に紅音は家の中に入っていき、そしてすぐに袋を携え戻ってきた。
「お待たせしました!誕生日プレゼントです、受け取ってください!」
「うん。…その、ここで開けていいか?」
「はい!出来れば、今日帰るときにでも使ってくださると嬉しいです!」
帰るときに使う?一体何を……あ。
「……マフラー?」
中に入っていたのは赤く染まったマフラー。一抹の寂寥と同時に燃えるような暖かさも感じる、黄赤色。
「はい!一生懸命編みました!」
「え、紅音が作ったのか?これを?」
「その、私一人では出来なかったんですけど、サイガ-0さん……玲さんが手伝ってくださいました」
「ちょっと待って。え、玲氏?もしかして知り合いなの?」
「楽郎さんの誕生日に何をプレゼントしようか、旅狼の皆さんに相談に乗ってもらってたんです。それでマフラーはどうかと言う話になって、だけど私一人では編み方が分からないって言ったら、家も近いみたいだから玲さんが教えてくださると言ってくれて…」
え、なに。もしかして俺と紅音が付き合ってるのバレてるの?あの外道連中に?……あいつら絶対おもしろがってただろうなぁ…。
「…あ、もしかして手の怪我って…」
――慣れない作業で大変だっただろう。手の至る所に絆創膏が張り付いているということは、それだけ痛い思いをしたということ。それでもこのマフラーを作り上げ、プレゼントとして手渡してくれた紅音。
胸が温かくなる。この子を好きになって良かったと、この子に好きになってもらえてよかったと…これからも、この子に相応しい自分でありたいと、強く思う。
「…最高のプレゼント、ありがとう紅音。大切に使うよ」
「はい!ありがとうございます!…あ、その、今付けますか?」
「ん?そうだな。せっかくだしすぐにでも使わせてもらうよ」
「じゃあその、私が巻いてもいいですか!?」
「え?まあ紅音がそうしたいならいいけど…」
そう聞くなり、紅音は手にあるマフラーをとり、俺の首に巻こうと……ん?巻くだけにしてはやけに顔を近づけて……
「―――大好きです楽郎さん。ずっとそばにいてください」
「なっ!?!?」
「え、えっと、それじゃあおやすみなさい!!」
耳元でささやいたと思ったら即座にマフラーを巻き付け、逃げるように家に入っていった紅音。紅音の顔も真っ赤だったのを見るにあちらも相当恥ずかしかったのだろうが……
「ふ、不意打ちは卑怯だろ……!」
すっかり冷え込みを増した夜空の下、マフラーの温もりと紅音のひたむきさ、そして最後の爆弾発言…いろんな意味で暖かくなってしまった俺だけが取り残されてしまった。
硬梨菜先生のおっしゃるように、秋津茜の人気は単なる光属性というだけでは説明付かないなぁと強く思います。そうでなければこんなにも焦がれない…!
ここから先、この話におけるヒロインちゃん視点という、需要のあるなしで言えばなしじゃないかなぁ、といった話です。元々1話書く前から構想自体あったのを没にしてたんですが、ヒロインちゃんの存在するユニバースで書いててこの部分曖昧にするのも…と言う気持ちが捨てきれなかったので、この後書きに書きました。その割に雑さが残る感じになりましたが。
完全な自己満足な為、そんなの読むつもりはないと言う方は戻るボタンを、マジで暇だし読んでもいいかと言う方はそのままスクロールしてください。
〇
最初にそれを頼花さんから聞いたときは、何かの間違いだと思った。
けれど次の瞬間、校門から手を繋いで走り去っていく一組の男女…そして彼の表情が、私がこれまで観てきたもののどれとも違うのを見て、それが事実なのだと理解した。
それから先のことは、よく覚えていない。頼花さんになんと言いながら別れたのか、どのように家に帰ったのか、家族とどのような会話をしたのか。
ただその夜…布団の中で、枕を涙で濡らしたことは覚えている。そして、思考は相変わらずぐちゃぐちゃになったままでありながら……この恋心が、宙ぶらりんになったまま終わってしまったと理解した。
〇
その連絡があったのは、交際を始めたと知って少したった後だった。
同じクランに所属している秋津茜さん。彼女が陽務君の交際相手。
それを知ったとき私が感じたのは、自分でも驚くことに妙な納得だった。
そう、初めて彼女と会ったのはリュカオーンの影と戦闘している最中。サンラクさんと会うために走ってここまで来たと…彼のことを偉大な先達と呼ぶ彼女を見て真っ先に浮かんだのは「ヤバい」という想い。
女の子に化けたエムルちゃんを見たときも、彼と親しげに話すペンシルゴンさんを見たときも、漠然とした不安や嫉妬は感じた。けれどあの時抱いた、はっきりした焦燥感には届かない。
それを感じていながらなお、私は彼に対して積極的な行動を移すことは出来なかった。いや、そもそも、彼に思いを抱き続けていた間、私は何をしてきたのだろうか。…なにもしていない、ただ眺めていただけだ。
彼と付き合う秋津茜さんに対し、思うことは当然ある。正直…嫉妬もしている。けれど、行動に移し続けてきた彼女に、止り続けていた私が何かを言うことなどできるはずもない。
でも、だとすれば…私は一体、これからどうすればいいのだろうか?
〇
陽務君へのプレゼントが、マフラーに決まった。ただ、彼女は編み物のやり方が分からないと言う。そんな彼女に対し私は、編み方を教えると言った。自分でもどうしてそう言い出したのかよく分からない。気がついたら、彼女にそう提案していた。
「はじめまして、隠岐紅音です!今日はよろしくお願いします!」
「えと、はじめまして。斎賀玲です。こちらこそよろしくお願いします、隠岐さん」
「さいがれい…。あ、本名とシャンフロでの名前ほとんどそのままなんですね!」
リアルで初めて会う彼女は、ゲームで会う彼女と同様にとてもまっすぐだった。失敗を繰り返しながらも、それでも前に進むことをやめようとしない。先程から針を指に何度か刺してしまっているが、すぐに作業を再開する。そんな彼女を見て、ふと気になった。
――前に進むのが、怖くはないんですか?
「進む足を止めてしまったら、いつまでも手が届かないですから。だから私は止まりたくありません。諦めるのは、全部試して、それでも駄目だったときでいいと、そう思うんです!」
――サンラクさん…陽務君への告白も?告白は一度失敗してしまったら、もう前の関係には戻れないと…そう考えたりはしなかったんですか?
「…確かに怖かったです。だけどそれ以上に、少しでも長く一緒にいたいと思って。想いを伝えなかったら、きっと、ずっと届かないままで、そんなのは嫌だと思ったんです」
…きっと、私に最も足りなかったのはそれだろう。変化を恐れながら、それでも前に進もうとする意思。
私は恐れるばかりだった。彼女はそれでも前に進んだ。だからこその、この結果。それで彼女に対して嫉妬するなんて…
「ふ、ふふっ」
「ど、どうしたんですか!?」
「いえ、何でもないですよ。少し話し込んでしまいましたし、再開しましょうか。……喜んでもらえるといいですね、紅音さん」
「はい!」
この想いを伝えることは、もうないだろう。この想いを昇華するには、まだ時間がかかるだろう。
けれど、彼と彼女を素直に祝福できるようになる日は……もしかしたら、遠くないのかもしれない。
【旅狼】
オイカッツォ:ゆうべはおたのしみでしたね
サンラク:特に何事もなく帰ったわ
サンラク:というよりいつから知ってた?
ルスト:3週間前
鉛筆騎士王:私たちは秋津茜ちゃんの相談に真摯に乗っただけだからね!特に何かを言われるようなことはしてないよ!
秋津茜:皆さんありがとうございました!おかげさまでサンラクさんに喜んでいただけました!
オイカッツォ:いやいや、気にしなくていいよ!秋津茜さんの力になれてこっちも嬉しいよ!
鉛筆騎士王:そうそう!クランメンバーのお祝い事だからね、こういうのはみんなで分かち合わなくちゃ!
サンラク:全力で楽しみやがって…
サンラク:つーか3週間前ってことは、月初めのアレもお前らが教えたのか
京極:何のことだい?
サンラク:あるてぃめっとちゃん呼びが浸透し始めてる奴には関係ないことだよ
京極:言ったな!?すぐ幕末にこい、これまでの私より進化してることを見せてやる…!
サイガ-0:え、えと、落ち着いてください
サイガ-0:その、サンラクさん
サンラク:おやレイ氏、こんにちは
サイガ-0:こ、こんにちは。えと、その、
サイガ-0:…おめでとうございます、サンラクさん!
―――――――
自分で書いてて、「結構ご都合主義入ってるな」「ヒロインちゃんの性格からしてこんなすんなりとは行かないよなぁ」と感じましたが、暗くなりすぎてもアレですし。
こんな話書いててあれですけど、シャンフロ本編ではヒロインちゃんに是非とも幸せになって欲しいです(「番外編として」秋津茜ルートとか鉛筆ルートとかはすごく読みたいです)。