ハリー・ポッターRTA ヴォルデモート復活チャート 作:純血一族覚書
この辺にぃ、ガバって途中段階で投稿した奴いるらしいっすよ? じゃけん「磔の呪い」しましょうね〜。
……投稿ガバ何回目じゃい! 予約投稿も満足にできんのかこのサルゥ!
ハリー・ポッtアッーとassガバガバンのプリンス、Fuck off!(暴言)
やだ、怖い、やめてください……アイアンマン!(クロスオーバー)
さて、前回シリウスくんがロンくんの寝込みを襲ったところで終わりました。超スピード!? で流しまして、その二日後から開始します。
現在は朝食の時間中、毎朝恒例のふくろう爆撃便がいつものように降り注いでいます。
「なんたる恥晒し! 一族の恥!」
シリウスくんに合言葉一覧を進呈したネビルくんに届いたバッチャマの吠えメールをBGMに優雅に食事を楽しみましょう。イギリスでうま
と、ヘドウィグ姉貴がハリーに手紙を届けにきました。ハリーが封筒を破き、中を読みます。
どうやらハグリッドくんからのお誘いのようです。今日6時とのことなので時間を空けておきましょう。
「ハーマイオニーのことだ」
6時、小屋にて。ハグリッド兄貴にハーマイオニー姉貴のことについて話をされました。
ロンくんとハリーくんにはペットや箒なんかより友達を大切にしろ、レズちゃんにはもうちょい周りに気を配れと嗜められました。
ハーマイオニーの好感度を稼ぐよりハリーの育成を優先する方が重要だから多少はね? RTA上承服しかねますがまま、ええわ。今回は納得したる。
スキャバーズくんをむしゃむしゃされたロンくんも納得していないようですが、その場はなんとなくそのままお開きとなりました。
獅子寮談話室に戻ると、掲示板に貼り紙があります。今週末はホグズミード解禁日のようですね。早速ロン兄貴はハリーを誘っていますが、それを見咎めたハーマイオニーちゃんが噛み付きました。
「ハリー! 駄目よ、ホグズミードに行っちゃ!」
「おっ、ハリー? 誰かが何か言ってるのが聞こえるかい?」
「ロン!
──ズィラ! まさかあなたもハリーを連れて行くなんて言わないでしょうね!?」
おっと、飛び火してきましたね。
連れて行かないから大丈夫だって安心しろよ〜。へーきへーき、ヘーキだから。
「──信じてるわよ!」
「それで、ズィラ、どうするんだい?」
嫌です……。
ハーマイオニーちゃんとの約束があるため……というのは建前で、ホグズミードイベントが基本的にはまず
前回はハリーの因縁を回収するために行ったようになんらかの目的がある場合は別ですが、通常時のホグズミードイベントは基本的にメリットがありません。
現在『忍びの地図』の所持者はレズちゃんである、という優位を活かして意見を強行します。
ハーマイオニーちゃんの心配を無視するなんてどうなんだよ人として!
熱心にそう強弁し続けたところ、彼らは渋々納得してくれました。ありがとナス!
夜になりました。今日も今日とて『必要の部屋』遠征にイクゾー! デッデッデデデデ。
現在の期間ですが、昼間はハリーと一緒にボガート道場で閉心術の熟練度稼ぎを行うため、夜間は戦闘用魔法の特訓を行なっています。
無言呪文もそこそこ形になってきたため、そろそろ「悪霊の火」の安全な使用のための「闇の魔術」適性の熟練度を稼ごうと思います。用いる闇の魔術はインペリオとセクタムセンプラの二種です。
ナギニ以外の分霊箱破壊をダンブルドアに丸投げした分、呪文習得ペースがチャートより早まっています。これはもしかすると、もしかするかもしれませんよ? 最終戦までにワンドレス・マジックまで習得できるかもしれません。死喰い人の露払いを迅速に行えばその分ヴォルデモート戦が楽になるため、レズちゃんの強化は嬉しいですね。
それではいつものようにデミガイズマントと『忍びの地図』の徘徊セットを取り出して……
……?
多分見間違いだと思います。もう一度確認します。バッグの中などの直接所持していない道具はアイテムインベントリで確認できないですからね。「検知不可能拡大呪文」のかかった入れ物の場合、よく整理していないと目的のアイテムが見つからないことは稀によくあります。ここら辺アプデで改善してほしいですね。
気を取り直して『忍びの地図』を…………?
……?
変な位置に挟まったかもしれません。ただの羊皮紙だからね、仕方ないね♂ よくあることです。リュックサックをひっくり返して調べます。
デミガイズ製マント、幸運の液体瓶、「姿をくらますキャビネット棚」の片割れ、逆転時計、「深い闇の秘術」ほか書籍いろいろ、元気爆発薬ほかドーピングアイテムいろいろ、お菓子類いろいろ、その他雑貨……。
…………?
あれー!? あれ、あれ、あれ、待てよ、あれ、あれ、おかしいですねぇ?(1239D)
(『忍びの地図』が)ないです。あっ無い……。
アクシオ! 『忍びの地図』よ、来い!
────羊皮紙一枚来ることなかったですぅ。残念ながら。はい。
………………??
レズちゃんの動きが固まっていますが、ご安心ください、お使いの端末は正常です。
時間をすっ飛ばして。
あっという間に1994年6月6日。グランドクエスト『アズカバンの囚人』決戦日です。
今日までに色々ありました。
バックビークくんが敗訴した反動でハーマイオニーとロンが仲直りしたり。
ハーマイオニーの精神値が限界に達して占い学の授業をボイコットしたり。
クィディッチ最終戦でグリフィンドールチームが優勝を決めたことにより、ハリーが守護霊の核となる幸福な記憶を得たり。
度重なるボガート道場の果てにレズちゃんの閉心術が妥協ラインを越えたり。
おおむね順調に推移したと言えるでしょう。
なお、『忍びの地図』は見つかっていません(絶望)。
ここまでの調査報告について、お話しします。
『忍びの地図』を最後に使用したのはピーターくん惨殺(大嘘)事件発生時、紛失を認識したのは野獣と化したシリウスくん襲撃の二日後。存在不明期間はこの間の五日間です。
紛失時にアクシオが無効化された以上、『忍びの地図』の行方について考えられる可能性は『該当アイテムが存在しない』、『呪文効果範囲外』、『所有権が他者に移動した』の三つとなります。
一つ目についてはもはや考えてもしょうがないので、二つ目以降の可能性について捜索していました。
呼び寄せ呪文について、現在のレズちゃんの熟練度はホグワーツ一帯を覆うほどとなっています。それが反応しなかった以上、ホグワーツの通常のエリアには存在しないといえます。
その上で、『必要の部屋』、『レストレンジ邸』、『ホグズミード村』については呼び寄せ呪文が反応しなかったことを確認しました。
『校長室』、『秘密の部屋』など未捜索区域も存在しますが、レズちゃんの行動範囲において捜索可能な箇所は潰した以上多分落としたということはないでしょう。
となるとやはり盗まれた、あるいは落とした『地図』を誰かが拾って持ち去った可能性が高いですが……。腑に落ちない点があります。
その有用性からついつい忘れがちですが、『忍びの地図』は用途を知らなければただの古ぼけた羊皮紙の切れ端です。そんなゴミをわざわざ盗む、後生大事に抱え込もうと考えるキャラクターはごくごく少数に限られます。
存在と用途を確定で知っているのはマローダーズの四人とリリー・エバンズ。
正確な用途は不明だが存在を知っているのがスネイプとフィルチ。
『地図』に干渉することで存在を知り得たであろうダンブルドア。
レズちゃんに『忍びの地図』を継承させたウィーズリーの双子。
レズちゃんが存在を知らせてしまった相手として獅子寮3人組。
同室ということでパーバティ、ラベンダーも知っている可能性が否定できません。
容疑者はこんなところでしょうか。
故人であるポッター夫妻、ホグワーツにいないルーピンは除外して、12人。
わざわざレズちゃんにくれた以上、ウィーズリーの双子も除外していいでしょう。残り10人。
ここまでの期間観察を続けていましたが、いつもの3人と同室の2人は使う素振りを見せませんでした。確定ではありませんが動機もないことですし、彼らを白寄りに見て残り5人。
シリウス、ピーター、ダンブルドア、スネイプ、フィルチが最有力容疑者です。
流石に『忍びの地図』を落とすというメガトン級のガバをしたとは思えないので盗まれたと仮定をしますが、そうした場合一つ問題が浮上します。
彼らが全員男だということです。
いつぞやの説明のように、ホグワーツの女子寮にアニメーガスを含む男性は通常侵入できません。教職員ならば可能ですが、寮監であれば、という但し書きがつくためスリザリン寮監及び用務員も不可能です。ただしホグワーツ校長であれば緊急時に特例として侵入権を得ることができます。他の教員の場合は一度校長の許可を得る必要があります。
…………犯人はダンブルドアしかいないんですが(絶望)。
以上、調査報告終了!
なにこれ、ガバガバじゃん!
……多分犯人はダンブルドアですので、お慈悲〜お慈悲〜と靴でもなんでも舐めて返してもらいます。最悪分霊箱を質に入れてでも返してもらいたいです。とてもじゃありませんが地図無しでは安定しません。ここ最近の深夜徘徊で再認識しました。
リセット級のガバですが、その他の面で十二分にアドバンテージを得ている他、この先全てノーミスって可能性もあるため続行します(補完理論)。
気を取り直して。
本日のスケジュールをご紹介します。
その1! 学期末試験残り! どうでもいいわ♂ ……と言いたいところさんですがひとつだけ回収したいイベントがあります。後ほど説明。
その2! バックビークくんの動物裁判だ……(大嘘)!
その3! 裁判に関連して魔法省職員並びに魔法生物死刑執行人の来訪! 英国魔法界の裁判はどうなっちゃうんだよこれ!? こんなんで? いいのかよこれ!?(ウィゼンガモット)
その4! ピーターくんの逃走!
その5! シリウスくんの逃走!
過密ですが一つ一つこなしていきます。
試験については真面目にやりました。成績悪いと『逆転時計』取り上げられるからね、仕方ないね♂ 詳細についてはカットします。
あっという間に最後の試験、「占い学」! 適当に答えて差し上げろ(暴論)。トレローニーとかいうホグワーツ教授の屑は悲劇的な要素を含んでいればそれだけで点数をくれるガバガバ教師です。おお楽ちんちん。ハリーとロンより先の順番なため、さっさと終わらせて寮に帰ります。
談話室で待っていると、ロンくんとハーマイオニーちゃんが戻ってきました。沈痛そうな顔をしていますね。あっ……(察し)。
「ハグリッドが負けた」
ロンくんが一言溢してソファーにもたれ掛かり、ハーマイオニーちゃんが泣き崩れました。悲しいなぁ……。
そのあとハリーも戻ってきたので伝えたところ、今夜こっそりハグリッドを見舞いに行くこととなりました。
「トレローニー先生?」
夕食時、ハリーに占い学の試験について確認します。『予言』の確認、これをやりたかったんだよ!
既プレイ兄貴姉貴には言うまでもありませんが、シビル・トレローニー大先生普段はガバガバ似非占い師の振りをした大予言者であらせられます。
本作において『予言』とはイベント確定行為であり、『予言』が下された段階でその後何をもってしてもそのイベントは発生します。これを防ぐためには『予言』発生前にそれが起こり得ない状況を作るしかありません。なお、逆転時計で『予言』を覆そうとしても、『予言』発生以後の時間軸から遡ったキャラクターは『予言』事象に対し干渉不可能になります。悲しいなぁ……。
本RTAにおいては、ゲーム開始時に『傷跡の子供とヴォルデモートが頃し合い、片方が勝つ』と定められているためハリーの育成を行う必要がありました。
ですが、逆説的に言えば『予言』で確定したイベントは以降放置しても勝手に実施されるということでもあります。
というわけで今夜ピーターくんが脱走に成功するかお伺いを立てましょう。トレローニー御大はなんて言ってたん?
「なんだっけ……『帝王』がどうとか、召使いが主人の元に帰るとか、『帝王』が偉大に立ち上がる、とか。いつもと違う様子だったよ」
やったぜ。
人狼先生がいない以上今夜のピーターくんの逃走が不安でしたが、無事に逃げてくれるようです。その上、お辞儀様の復活まで確定しました。まだまだRTAを続行できそうですね。
というわけで夕食も食べ終わりましたしそのままハグリッドの小屋に──
「──待て、ちょっと待ってくれミス・レストレンジ」
なんだお前(驚愕)。
振り返るとそこには銀色のセイウチ髭を携えた老人──スラグホーンくんがいました。
ハグリッドの小屋に行こうとした矢先に止められたせいでハリーたちが動揺しています。まあハグリッドの小屋とは言え夜間外出だからね、仕方ないね♂
仕方ないので対応しましょう。足止めするからハリーたちは先に行ってて、どうぞ。
で、どうしたんですか?(疑問)
「ミス・レストレンジ。今夜時間はあるかい? すまないがついてきて欲しいところがある。
──『髪飾り』と『カップ』の件についてアルバスが話があるそうだ」
「ほっほ、ズィラや。6月とはいえ今夜はまだ冷える。コートはいるかね?」
懐中電灯の灯りを頼りに小道を進んでいる途中、ダンブルドアがそう語りかけてきました。見れば彼もスラグホーンも外套を纏っています。ありがたくいただきましょう。
老人二人と少女一人という奇妙なパーティーですが、誰にも話しかけられることはありません。というより、周囲には誰もいません。
ここは「寂れた」を通り越して「終わった」ともはや呼ぶべき村です。
現在、レズちゃん、ダンブルドア、スラグホーンはホグワーツを離れ、とある一つの村を訪ねています。
先ほど見た薄汚れた看板には「リトル・ハングルトン」と書かれていました。
そのまま進むことしばらく、目的地へと辿り着きました。
廃墟ですらなくゴミと化した小屋こそ最終目的地。「ゴーントの屋敷」です。
はい。そうです。
現在レズちゃんパーティーは分霊箱・『ゴーントの指輪』を破壊しにきています。
何故今日なんですか? バックビークくんの処刑はどうなったんですか? シリウスくんとピーターくんはどうなったんですか?
知りません。ダンブルドアは何も答えてくれませんでした。プレイの主導権を握られるとチャート壊れちゃ〜う! ダンブルドア丸投げチャートが望ましくない理由の一つです。
「さて、ズィラ。これより先わしらはあの小屋へと向かうが、二つだけ頼みがある」
スラグホーンくんは……すでに知っているようですね。ズィラちゃんの後ろで神妙にしています。
大人しく聞きましょう。
「一つはわしが与える命令には、疑問を挟まずすぐに従うことじゃ。無論、お主が何かしら犠牲を払うことには拒否する権利はあるが」
もちろんです。
「『隠れよ』、『逃げよ』と言われれば従うか?」
あ、いいっすよ(快諾)。
「わしやホラスを切り捨てよ、わしらの命を身代わりに生き延びよと言われれば従うか?」
嫌です……(断固拒否)。
ヴォルデモート再札RTAにおいてダンブルドアは用意可能な最高戦力です。こんな前座で使い潰すなどとんでもない!
「ヴォルデモートを倒すためにわしらを見捨てよと言ってもか?」
嫌です……(断固拒否)。
ヴォルデモートを倒したいんじゃありません。ヴォルデモートを「神秘部の戦い」で倒したいんです。ダンブルドアというクソデカ戦力を欠いては勝てるものも勝てません。
「この命令に従わない場合、わしとお主が今後協力することはない、と言ってもか?」
嫌です……(断固拒否)。
どうせ分霊箱ぶん投げればぶっ壊してくれるから多少はね? 最終目的が同じ以上連携せずとも問題ありません。チャートにもちゃーんと書いてあります(激ウマギャグ)。
「ズィラ、聞き分けておくれ」
「──もういいだろう、アルバス」
押し問答の結果、スラグホーン先生が仲裁してくれまして。
「よかろう。ズィラ。お主はわしらを見捨てて逃げずとも良い。しかし、これだけは約束して欲しい──」
何やらダンブルドアが話していますが、要約すれば、なんとかレズちゃんは「ダンブルドアとスラグホーンの命を切り捨てる」命令に対する拒否権を得たまま突入する権利を得ましたということに他なりません。やったぜ。なお、スラグホーンくんだけなら別に切り捨てても問題ありません。ダンブルドア級のように隔絶しきっていないから、多少はね?
……ところでもう一つの条件は?
「ほっほ。それは後で話そう。それでは行こうか。ホラス、援護を頼む。ズィラ、わしとホラスの間から外れぬように」
「──このくらいでよかろう」
ダンブルドア強すぎィ!
レズちゃんがマグルのドカタのにいちゃんの自爆特攻と魔法使いの浮浪者のおっさんの「悪霊の火」という卑劣な術で突破しようとしていたダンジョン・「ゴーントの屋敷」。
ダンブルドア校長はこれを正面から攻略してのけました。雑多な魔法効果を異常な規模のフィニートで終わらせ、ヴォルデモートが選りすぐったであろう呪いの数々を反対呪文で全て打ち消し、ついでに屋敷の中をスコージファイで綺麗にして、壁時計をレパロで修復する余裕までありました。
スラグホーンくんがレズちゃんを守ってくれていましたが、正直必要ある? というレベルです。
やっぱりこんなクソデカ戦力を捨てるなんてとんでもない!
「あったあった。これじゃな?」
屋敷を蹂躙してのけたダンブルドアくんが小箱を持って凱旋してきます。小箱にはゴーント家……というよりスリザリンの紋章が刻まれていますね。
小箱の中には宝石──三角と丸と直線の紋章が刻まれた『石』のついた指輪が入っていました。
その紋章を見たスラグホーンくんは絶句していますね。
「アルバス、
「左様。
そう言ってダンブルドアは何事もなかったかのように杖腕に指輪を嵌め──
「ヴェンタス・マキシマ! 暴風よ!」
一陣の風が吹き荒れ。
今まさにアルバス・ダンブルドアの指に嵌められようとしていた『ゴーントの指輪』が吹き飛ばされる。
そこで、ホラスはズィラ・レストレンジが杖を構えているのをようやく認識した。
「──わしは、今、何を……?」
ホラスの横ではアルバスが同じように呆然としていた。
ここに来る前、ホラスとアルバスの間ではいくつか情報が共有されていた。
「ヴォルデモートの分霊箱はゴーント、遡ってペベレル家に伝わる指輪であり、『死の秘宝』の一つ、『蘇りの石』が嵌め込まれている」
「伝承のとおり『蘇りの石』に人を蘇らせる力はない。『石』に飲まれたものの末路は決まっている」
「おそらくは『みぞの鏡』のように、『蘇りの石』にも人を惹き寄せる力があるだろう」
ここまでだ。ここまで知っていてなお、ホラスとアルバスはその指輪を嵌めようとした。それになんの疑問も挟まなかった。
ホラスの頭にはかつての大戦で失われた大勢の誰か、『彼女』の顔
ゾッとした。寒気がした。凍えるようだった。
コートの一枚や二枚ではまるで足りない。地獄の釜が凍らんばかりの寒さだった。
「──なにやらお二人の様子が変でしたので、とりあえず吹き飛ばしましたが、大丈夫ですか?」
「──ああ、すまぬ、ズィラ。ありがとう。助かった。まさしく君に脱帽ものじゃ」
吹き飛び、転がった『石』をズィラが持ってくる。アルバスはそれを讃えんと彼女の背中を叩き、本当に脱帽した。直後、彼の頭に蜘蛛が降ってくる。老人は慌ててそれを払い除け、少女はそれを見てくすくすと笑った。
だがホラスは見逃さなかった。今世紀最強の魔法使い、アルバス・ダンブルドアの顔はその時確かに引き攣ったような笑みを浮かべていた。
無理もない。ホラスは思う。
ズィラ・レストレンジの持っている指輪──『石』。あれはまさしく劇薬だった。
彼らはその効果と危険性を認識していたのにも拘わらず、自ら積極的に、無意識に『死』に
長く生きた老人二人、彼らの「過去」が追い縋ってきていた。
今でこそ『蘇りの石』の危険性が認識できる。ただしそれを見た瞬間はそうではなかった。
長年『死』を呼び寄せなかった『石』の腹が空いていたのか、ヴォルデモート卿の仕掛けた罠が作用したのか、あるいは老人たちの意思が脆弱だったのか。
ホラスには仔細はわからない。
ただ、「過去」にズィラ・レストレンジは囚われなかった、そしてもう『石』の危険性は吹き飛んでしまった、ということだけが分かった。
アルバスがズィラから『石』を受け取ってポケットにしまう。大丈夫か? そんな少女の視線を感じたのか、老人はひらひらと杖腕を振って答えた。
「大丈夫じゃ、ズィラ。心配要らぬ。この『石』、分霊箱はわしが然るべき処置をしよう。約束じゃ」
ふとホラスが壁にかかった時計を見ると、短針は既に11と12の間を指していた。
アルバスが何やら杖を振り、ズィラへと話しかける。
「さて、ズィラ。今まさに命を救われたばかりのわしがこんな話をするのは滑稽を通り越していっそ醜悪であるが、聞いて欲しい。
この屋敷に入る前に話した君への頼み、その二つ目じゃ」
「なんです? わたくしに出来ることならなんでもしますが」
なんでもする。
そんなものはただの口約束だ。
だがホラスは、否、魔法族なら子供であろうと知っている。
その『誓い』を前に、なんでもするとは決して言ってはならない。
「──ズィラや、わしと『破れぬ誓い』を結んで欲しい」
「────────」
レストレンジは口をあんぐりと開け、驚愕の眼差しでダンブルドアを見ていた。彼女の視線がこちらに向けられる。
スラグホーンはダンブルドアの言葉を肯定した。
「──正気ですか?」
やっとの思いで口から引き摺り出すように、少女はそう口にした。
老人はこの上なく不快そうに答えた。彼はきっと自らを許さないのだろう、と友人は感じ取った。
「うむ、正気、いや、正気でないかもしれぬ。正気でなければいいと思っておる。
しかし必要なことじゃ」
何故、「今日」分霊箱を壊しに行く必要があったのか。
今日の昼、ダンブルドアに急な呼び出しを受けた時、ホラス自身もそう思った。
ヒッポグリフの処刑というイベントがあり、魔法大臣さえもホグワーツを訪れている。彼女はハグリッドの友人であり、自身は人脈作りを行う絶好の機会であった。
ダンブルドアでさえ、本当ならば直近の夏休み、クィディッチ・ワールドカップの途中にでも分霊箱を壊しに行く予定だったらしい。
しかし、予定は変わった。今夜でなければならなかった。
何故、「ここで」話をする必要があったのか。
ホラスにはその理由が朧げながらわかる。
アルバスはホグワーツ魔法魔術学校の教授としての職を重んじていた。彼はホグワーツを愛していた。
だからこそ、ホグワーツでは、ホグワーツ校長としては話なんてできなかったのだろう。
「ゴーントの屋敷」なんてホグワーツから遠く離れた場所、『彼』のルーツでなければ話なんてできなかったのだろう。
ホグワーツ校長が生徒に対してではなく。
不死鳥の騎士団団長、アルバス・ダンブルドアが、死喰い人の娘、ズィラ・レストレンジと6月7日を迎える前に話をする必要があった。
「『──今夜、真夜中になる前、その召使いは自由の身となり、ご主人様のもとに馳せ参ずるであろう。闇の帝王は召使いの手を借り、再び立ち上がるであろう。以前よりさらに偉大に、より恐ろしく──』」
「それ……は……」
「わしは普段、ホグワーツ内で起こることを全て知っているというわけではない。むしろ、ほとんど無知と言ってもいい。
──じゃが、とある先生に関することだけは、わしは聞き漏らさぬようにしておるのじゃよ」
沈黙。沈黙。沈黙。
永劫のそれを破ったのは少女だった。
「……なるほど、わかりました。理解しました」
少女は近くにあった椅子を修復呪文で修復、ゆったりと腰掛け話した。
「トレローニー先生がハリーにした『予言』ですか?」
「左様。『予言』について知っておったのか?」
「『闇の帝王の召使い』の『予言』という意味なら、今日の夕食の時にハリーに聞きましたわ。
『予言』という必ず当たる未来予測の技能については──」
少女はふっと笑って呟いた。
「──トレローニー先生の授業を
くっくっ。
アルバスもホラスも思わず笑ってしまった。確かにあれは『授業』ではない。
「カッサンドラ・トレローニー氏の逸話を聞けば、『予言』が『そういうもの』だとはわかります。
……それで、何故わたくしが『闇の帝王の召使い』だと思われたのですか?」
アルバスは可能な限り真摯に答えた。ホラスにはそう見えた。
「──まず、誤解の無いように言うが、わしらは君が心底から『闇の帝王の召使い』だとは思っておらぬ。仮にそうだとしたら、わしらが『指輪』を嵌めようとした時に止めぬじゃろう」
「……? ならば何故?」
「わしらは君が『闇の帝王の召使い』としての自覚なく、『闇の帝王の召使い』として振る舞うかもしれぬ、と考えておる」
自覚なく。そう少女は言葉を漏らした。
「ズィラ、お主がヴォルデモートが復活すると
「小さな頃、お母様がそう仰っているのを聞いてそう考えました。その程度で
「いや、そうではない。わしが疑問に思ったことは、一歳や二歳の頃の記憶をそんなにも鮮明に覚えておけるのか? ということじゃ」
無論、そういった例がないわけではない。ハリーも両親のことを覚えておったからの。
ダンブルドアは続けた。
「ズィラ、『髪飾り』と『カップ』の件じゃが、何故わしにそれらを託したんじゃ?」
「それならこの前お話ししましたわよね? わたくしには分霊箱を壊すすべがありません。校長先生にお任せするのが適切かと思いました」
「うむ、確かにわしは分霊箱を破壊できる。その上で疑問なのは、『髪飾り』はともかく『カップ』は何故あのタイミングだったんじゃ? わざわざ学校を抜け出してまで
勿論、わしから呼び出しを受けたからついでに、ということもありうるじゃろうが。
ダンブルドアはさらに続けた。
「こんなもの、くだらぬ言いがかりに過ぎぬ。過ぎぬが……わしには無視できなかった。
ズィラ、わしが危惧しておるのは、お主が『服従の呪文』、あるいはその亜種魔法を受けた可能性が排除できない、ということじゃ」
『服従の呪文』。
『許されざる呪文』はどれも最低最悪の魔法だが、先の魔法戦争の経験者であれば、一番卑劣な魔法は『服従の呪文』だと口を揃えて言う。
死を与えるでもなく、痛みを与えるでもなく、人から尊厳を奪う魔法。
さらに厄介なことに、『許されざる呪文』についてもっとも精通しているのはヴォルデモートであり死喰い人であり。ダンブルドアと不死鳥の騎士団は常に対応する側であった、というのが問題だった。『服従の呪文』を『改良』されている可能性が否定できなかった。
真実薬を飲ませても意味がない。心を開いても意味がない。『服従』が潜伏し、ある日ウイルスのように発症する可能性があった。
ダンブルドアとスラグホーンの推察の結果としては、ズィラ・レストレンジがこの呪文の影響下にある確率は、高くても1%あるかないか、と言うものだった。
それは、イギリス魔法界、ひいては世界の命運を賭けるには高すぎる数値だった。
未来に続く害悪の極みたる呪文は、小数点以下の確率であっても少女が裏切る可能性を否定せず、小数点以下の確率であっても老人にはその魔法に対策しないわけにはいかなかった。
たとえ少女の自由を侵害したとしても、『服従の呪文』と何の違いもないと老人の善性が叫んだとしても。
彼は秩序を守る騎士団長としてやらざるを得なかった。
「……なるほど。確かにそうです。わたくしが『服従の呪文』を受けていないことは、わたくしには証明できません。わたくし自身にそのような意図がなくとも、『服従』してしまう可能性はあります。
──正しい判断だと思います。それで、わたくしは何を誓えばよろしいですか? 『闇の帝王』の味方に絶対にならない、などが単純でよろしいかと思いますが。それとも細かく行動を規定しますか?」
少女の提案に老人は首を振り否定した。
その顔は反吐を吐くように沈痛な面持ちだった。
「いや、たった一つ。一つだけでよい。
──ハリーを、ハリー・ポッターを裏切らないで欲しい。それだけじゃ」
そう言ってアルバスは頭を下げた。
何がそれだけだ。彼は無言で自分自身を罵倒していた。
カチリ、カチリ。
あたりを時計の針の音だけが走り。
長い沈黙ののち、観念したかのように少女は応じた。
「わかりました。結びます。
ただし、二つだけ、お願いがあります。
まずは、ハリーを裏切らないのは『闇の帝王』に関することだけにしてくれません? 一生涯においてそれを誓うのは重すぎますわ」
「大丈夫、初めからそのつもりじゃ。このようなことをしでかしたわしのことなど信じられぬかもしれぬが、君の人生に制約を設けるつもりはない」
「信じますわ、ダンブルドア
そしてもう一つですが──」
ズィラは校長の目をしっかりと見つめて話す。
彼と彼女の青い目は、朝焼けに照らされた海面のようにキラキラと輝いていた。
「わたくし、ホグワーツでの食事が大好きですの。とりわけ、クリスマスや学期末のパーティーは。
だから、校長先生」
少女ははにかんだ。
「『闇の帝王』──『ヴォルデモート卿』を打倒した暁には、ホグワーツで記念パーティーを開きましょう? 先生とわたくしの二人が主催、ハリーが主賓ですわ」
「──あいわかった。すまぬ、ズィラ。恩に着る」
「イギリス中のみんなが訪れるような、素敵で盛大なパーティーにしましょうね?」
カチリ。
灼熱の赤い不死鳥と大鴉が、鎖となって絡み合う中。
時計が0時を告げた。
Tips:アルバス・ダンブルドア
本キャラクターを象徴するステータス、「Greater Good値」であるが、本作においてこのステータスを持つキャラクターは二人存在する。
ゲラート・グリンデルバルドとアルバス・ダンブルドアだ。
しかし、同様のステータスを用いても、彼らの行動規範は大きく異なる。
単純に言えば、前者は能動的、後者は受動的、となるだろう。
グリンデルバルドは「より大きな善のため」ならば、どんなに困難な難題であっても必ず解決し、相手が無辜の存在であっても躊躇なく殺害する。何故なら彼は自らの「善」を信じているからだ。
ダンブルドアは「より大きな善のため」であっても、絶対に手を下さなければならない局面以外は決して手を出さず、どんなに害悪な存在であっても殺害を躊躇する。何故なら彼は自らの「善」を信じていないからだ。
グリンデルバルドが手を出さない時、それには相応の理由があり、ダンブルドアが手を出した時、それには相応の理由がある。
忘れてはならないのは、グリンデルバルドがやったとしても、ダンブルドアがやらずとしても、それは「善」なる行為のためである。
〜ハリー・ポッター完全攻略読本 より抜粋〜
『予言』については本作独自の設定を含みます。
同時間帯の話を小説パートでやって3章おしまいです。