ハリー・ポッターRTA ヴォルデモート復活チャート   作:純血一族覚書

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小説パート。過去最長を余裕で更新、どころか二話分、二万字突破!
これまで基本的には人物設定を弄っていませんでしたが、今回明らかに原作を逸脱した人物が登場します。ご了承ください。
同様に一つの魔法をその根幹から弄っていますが、ご了承ください。
──独自設定! 独自解釈! 独自展開! 原作沿いRTA小説として恥ずかしくないのか!


マグルにも使える魔法が何かわかるか? 言葉じゃよ。言葉は人を傷つけることもできるが、癒すこともできる──アルバス・ダンブルドア


ムーニー、ワームテール、パッドフット、プリンス

 結局、『彼女』が合流する前に、バックビークの処刑は実行されてしまった。ハリーたち自身も彼の死に目を見ることすら叶わなかった。

 せめてハグリッドの側にいたいと話したが、彼自身が固辞した。ハリーたちを面倒に巻き込むわけにはいかないと、彼は一人でバックビークを看取りに行った。その心遣いもハリーたちには辛いものだった。

 

「あの人たち──どうしてこんな──こんなことって──」

 

 ハーマイオニーが嗚咽を漏らしながら悪態をつき、そんな彼女をロンが慰める。ハリーは黙って透明マントを支え続けた。

 良かったことはロンのペットのスキャバーズが見つかったことくらいだ。そのほかは全て最悪だった。

 そうしてハグリッドの小屋からホグワーツ城へ向かう途中、「暴れ柳」の近くで、ハリーは猫の鳴き声を聞いた。

 ふとそちらに目を向けると、オレンジの毛並みの猫が、じっとこちらを見ていた。

 クルックシャンクスだった。

 

「ダメよ、クルックシャンクス、良い子だからあっちに行ってなさい」

 

 ハーマイオニーが祈るように囁く。

 しかし、猫は透明マント越しにハリーたちが見えているのか、スキャバーズのキィキィ声が聞こえるのか、彼らに徐々に近づいてきた。

 

「スキャバーズ! 行くな!」

 

 捕食者のプレッシャーに耐えかねたのか、鼠はロンの指を器用にすり抜け走り出す。ロンは彼を追って透明マントから駆け出る。彼があまりに遮二無二走るので、ハリーたちは全力でロンを追いかけるために、マントを脱がざるを得なかった。マントを放棄しなかったのは、それを決して捨てるな、と『彼女』に口酸っぱく言われたことによる刷り込みだった。

 

「捕まえたぞ! ハーマイオニー、そいつをこっちに近づけるなよ!」

「──────────!!」

 

 獣の唸り声。

 ロンに追いついたハリーたちが見たのは、人間大の黒犬が彼に襲いかかる姿。呆然とするハリーたちを尻目に、黒犬はロンの腕を噛み、人ひとりを引きずって「暴れ柳」の根元の虚に消えていった。

 このままではロンが喰われてしまう──そんな焦燥を解決したのは、これまたオレンジの猫だった。

 

 

 

「ロン、大丈夫? 犬はどこに?」

 

 クルックシャンクスの先導に従い「暴れ柳」の下の隠し通路を越えた先、ハーマイオニー曰く「叫びの屋敷」の薄暗い一室に、ロンが遺棄されていた。ひどい向きに脚が折れている。ハリーとハーマイオニーが駆け寄り声をかけると、ロンは呻いてハリーに警告した。

 

「違うんだ、ハリー、犬じゃない。罠だ。あいつが犬だったんだ。『動物もどき』だ……」

 

 直感。誰かが部屋に入ってくる気配を感じた。思考をすっ飛ばして、ハリーは咄嗟に杖を振る。

 

「プロテゴ 護れ!」

「エクスペリアームス 武器よ去れ!」

 

 急拵えの防壁は赤い閃光からハリーだけは護ることに成功したが、展開が間に合わなかったハーマイオニーは杖を攫われる。

 彼女の杖をキャッチした死体のようにやつれた男は、黄色い歯を剥き出しにして笑った。

 

「やるな、ハリー。よく学んでいるようだ。教師が優秀なのか? 天性の資質か? 将来は闇祓いを目指すといい。プロングスの奴も喜ぶだろう」

 

 ──だが、今はまだ、経験が足りなかったな。

 

 ドンっと背中に衝撃を感じ、ハリーの手から杖が弾き飛ばされる。

 振り返れば、最初からこの部屋に潜んでいたのか、浮浪者のように見窄らしい男が少年たちに杖を向けていた。

 ハリーの杖はすでにその男の手にあった。

 死体のような男が、揶揄うようにハリーに言葉を投げかける。

 

「ハリー、敵がぐだぐだ話しはじめた時は大抵時間稼ぎだ。何もさせずにぶちのめして黙らせてやれ。『油断大敵』ってやつだ」

「パッドフット、格好つけているところ悪いけど。いくらプロングスの息子でも、大の大人が三年生に奇襲を防がれるなんてどういうことだい? 私がこの屋敷を知り尽くしていなければ、君、今手詰まりだったろう? アズカバンはそこまで衰えるほどひどいところだったのか?」

「──ああ、最悪だった。我が自慢の肉球もカチカチに凍ってしまうくらい最低だったぞ、ムーニー」

「ならば、イギリス魔法界の淑女にとっては幸運なことだろう。君の肉球に騙されるいたいけな娘はいなくなったわけだ」

 

 くつくつと笑い合う死体と浮浪者。ハリーの目に、それは極悪人と呼ぶには些か滑稽に映った。

 そんなハリーの目に気が付いたのか、浮浪者のような男は手近な椅子に座り、気さくに少年に話しかけた。

 

「やあ、はじめまして、ハリーとそのご友人たち。会えて嬉しいよ。

 私の名前はリーマス・ルーピン。そして彼はアズカバンの脱獄に成功したスーパースター、シリウス・ブラック殿だ。

 ──さぁ、一杯やりながら話をしようか」

 

 

 

 テーブルに置かれたバタービール。

 ブラックたちはそれを飲んだが、ハリーたちは一切口をつけなかった。当たり前だ。何が入っているのかわからないものを飲むわけがない。

 ルーピンは「薬よりよっぽど美味い」と言っているが、ハリーたちに与えられたものは薬かも知れない。

 ロンが立ち上がろうとするが、脚が折れているためふらつく。それでもハリーの肩を借りて立ち上がり啖呵を切った。

 

「話なんてするもんか! もしハリーを殺そうとするなら、まずは僕を殺す必要があるぞ!」

「いやいや、私たちに君たちを殺したりするつもりはないよ。それより、折れたままで無理に立ったら脚を悪くするよ、座ったらどうだい?

 ──パッドフット! この子を痛めつける必要があったのか!?」

「ムーニー、無茶を言うな。あいつを逃さないためには少々乱暴にする必要があった。ウィーズリーくん……モリーさんの息子で合ってるか? すまない。名誉の負傷とでも思ってくれ」

 

 温度差。

 命をかける覚悟のロンに対し、ブラックたちの様子はどうにも()()

 本当に自分たちを殺す気は無いのか、それとも油断させるためのブラフであるのか、ハリーにはわからなかった。

 そうして、10秒ほど考え、ハリーは決断した。

 

「まずは、ロンの脚を治せ。話はそれからだ」

「ハリー! 駄目だ!」

 

 どっちみち、ハリーたちは今丸腰だ。抵抗できてもたかが知れている。

 ならば、ロンの身の方が大切だ。仮に彼らが殺意を持っていても、自分の身だけで済むだろう。

 ハリーの言葉に、ルーピンはうんうんと頷いて微笑んだ。

 

「優しい子だ。これはプロングスじゃないな。あいつはもっと破天荒だ。リリーの優しさだ。君は二人のいいところを受け継いだらしい。

 ──ヴァルネラ・サネントゥール 傷よ、癒えよ」

 

 聞き覚えのない魔法。ロンの怪我は治っているようだが、その効果がわからない。

 ハリーはその場において最も信頼できる魔女に尋ねた。

 

「ハーマイオニー、この呪文は?」

「……私には使えないけれど、確かすっごく高位の治癒魔法だったと思うわ。闇の魔術による怪我も治せる、道具なしでできる最高級の治療法よ」

 

 打てば響くように淀みない答え。

 そんな様子にルーピンは感心したようにほぅと息を漏らした。

 

「素晴らしい、お嬢さん。三年生にしてN.E.W.Tレベルの魔法を知っているなんて。皆して有望じゃないか。これからもハリーの力になってほしい」

 

 褒められたことにハーマイオニーは思わず頬を緩める。

 ハリーは彼女を小突いた。

 

「パッドフット。この子はどっちの子だ?」

「おそらくグレンジャー嬢だ。俺の従姪殿は今ホグワーツを離れている」

「だろうね。彼女はどこから見てもベラトリックスには見えない」

「ああ、安心したぜ。ベラトリックスの顔を見たら、ついうっかり魔法を撃ってしまうかも知れないからな」

 

 ──待て、おかしい。

 ハリーは『彼女』がホグワーツにいないことを知らなかった。なのに、彼らはそのことをハリーたちより早くに知り得ていた。

 いや、そもそも、ハリーたちは誰一人として名前を名乗っていない。ファーストネームならいざ知れず、ファミリーネームまで知られているのはおかしい。

 そんなハリーの表情から勘づいたのか、ブラックは答え合わせを始めた。

 

「そうだな。俺たちが殺すべき相手のことを、君たちは知ってもいいだろう。特にウィーズリーくん、君はだ。

 ──おいで、クルックシャンクス」

 

 にゃーん。

 オレンジの毛玉が跳ね、ブラックの手に収まった。彼はクルックシャンクスを撫でながら話を続ける。

 

「俺は()()()が生き延びていることを知りアズカバン、あのくそったれな監獄を脱獄したが、あいつがどこにいるかを正確に知らなかった。何よりホグワーツは広すぎたし、あいつも抜け道には詳しかった。あいつが俺たちより特別小さかったことを考えれば、あるいは一番詳しいのはあいつだったのかもな」

 

 何かを懐かしむように表情を歪めるブラック。

 彼の頬をクルックシャンクスがひと舐めした。

 

「俺には協力者が必要だった。そこで出会ったのがこの子、クルックシャンクスだ。この子は俺が本物の犬でないことをすぐに見破ったし、あいつが本物の鼠でないことを見破っていた。彼の協力があって、俺はホグワーツ城のいくつかを見通すことができた」

 

 そうして、彼から情報を流してもらう中で、俺は一つ面白い話を聞いたんだ。

 そう話すブラックの腕の中で、クルックシャンクスが自慢げな表情を浮かべている。ハリーにはあまり可愛いとは思えなかった。

 

「彼の言うところの『ご主人様にベタベタまとわりつくアバズレ女』は毎夜のように寮を抜け出しているが、いつ頃からか羊皮紙のような何かを手に持って部屋を出ているとのことだった。

 俺が一番必要としていたものの情報だった」

 

 羊皮紙のようなもの──ハリーには心当たりがあった。

 ハーマイオニーは飼い猫をぎょっとしたような目で見ていた。

 猫は何も言ってませんといった顔をしていた。

 

「ウィーズリーくんの元にいるあいつを殺しに行った夜。残念ながらあいつはすでに姿をくらましていたが、クルックシャンクスから『地図』を受け取ることができた。ハリー、我が従姪殿には盗難に気をつけるよう言っておいてくれ。

 ……ともかく、俺はあいつを追いかける手段を確保したわけだが、そこで俺は思ったわけだ。

 果たして俺一人で決着をつけてもいいものか、ってな」

 

 そこから先は私が話そう。

 ルーピンが声を上げた。

 

「パッドフット──シリウスが私の元を訪ねてきたわけだが、実のところ、出会った当初、私は彼を殺そうと思った。当然のことだ、私自身裏切り者は彼だと思っていたのだから。

 だが、彼は信用のおける無実の証拠を持ってきた。その時私──いや、我々は皆ペテンにかけられていたことを悟った」

 

 証拠はこれだ。

 そう言ってルーピンはポケットから古ぼけた羊皮紙を取り出し、呪文を唱える。

 我ここに誓う、我よからぬことをたくらむ者なり!

 羊皮紙は展開し、ホグワーツ城の精巧な地図となった。

 それは、友人が持っていたはずの魔法道具。『忍びの地図』だった。

 

「今これを見ればわかるように、この『地図』はホグワーツ外でも利用できる。この『地図』に名前が書かれていた以上、あいつはのうのうと生きてホグワーツに潜伏していたことは明らかだった」

「──どうしてこの『地図』を信用したんですか? ブラックの持つ魔法道具を無批判に信頼した理由がわかりません」

 

 ハーマイオニーが口を挟む。

 ハリーを含む彼らは『地図』をある程度信用していたが、それは彼らの友人が実際に使っていて、効果を実証していたからだ。そんな彼らも『地図』がホグワーツ外で使えることを知らなかった。

 殺そうと思っていた相手が怪しげな魔法道具を取り出したところで、判断を即座に撤回する理由には普通はならないだろう。

 ハーマイオニーのそんな疑問に、ルーピンはすらすらと答えた。

 

「ああ、それは簡単なことだ。我々はこの『地図』のことを知り尽くしていて、この地図が信頼できることを確信していたからだ。

 ここを見てくれ」

 

『ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングス

 われら「魔法いたずら仕掛け人」のご用達商人がお届けする自慢の品』

 

「そう、私がムーニーであり、シリウスがパッドフット。ついでに言えば、ハリー、君のお父さんであるジェームズがプロングスであり、あいつがワームテールだった。

 我々はかつては親友であり、盟友であり──今は旅立った友、騙された罪人、何も知らない鈍間、そして裏切り者からなる『マローダーズ』だったんだ」

 

 

 

「──話はもういいだろう、ムーニー」

「ああ、そうだな、パッドフット。それでは本題に入ろう。

 ──ウィーズリーくん。君の飼っている鼠を我々によこしてほしい。大丈夫、それがただの鼠であれば、傷ひとつなく返すことを約束しよう」

 

 ルーピンの言葉に、反射的にロンは拒否した。

 その先の「真実」を悟ったかのようだった。

 

「嫌だ! 信じないぞ!」

「気持ちはわかる、信じたくないだろう。同情するよ。だが、事実だ、事実なんだ。

 そいつは飼い始めて今何年だ? 12年? なんとまあ、横着をしたものだ。普通の鼠はそんなに長生きしない。私がそいつだったら、飼い主は数年おきに変えただろうね」

「俺がそいつが生きていることを確信したそもそもの理由を話そう。ウィーズリーくん、そいつの前足は無事か? なるほど、指が一本ない。

 ところで、俺がアズカバンにぶち込まれた直接の罪は、ピーター・ペティグリューを含むマグルを殺した罪らしい。ピーターの残骸は指一本しか残らなかったらしいが、奇妙な偶然だな?

 俺がそいつだったら、わざわざ新聞に載る写真に映り込んだりはしないね」

 

 男たちが客観的な事実を重ねる。

 ロンも半ば意固地になって、彼らの要求を拒否し続ける。

 最初に痺れを切らしたのは、ブラックだった。

 

「率直に尋ねよう。ウィーズリーくん。君は鼠と友達、どっちが大切だ?」

「パッドフット!」

「言うまでもないことだが、俺たちは君たち三人よりも強力な魔法使いで、その上君たちは今誰も杖を持っていない。その気になれば、荒っぽいことをしてでも鼠を奪い取ることはできる。そんなことはやりたくはないが。

 ──しかし、やりたくないだけでできないことではない。

 君達に傷一つ残すつもりはないが、少しばかり嫌な思いはするかも知れない。俺たちが交渉をしていることそのものが、君たちに対する譲歩だったことは認識してほしい。

 脅迫するような形になってすまないが、あいにくこちらにも時間がないんだ。早めに渡してもらえると助かる。

 ──そら、ウィーズリーくん、グレンジャー嬢、杖だ。返すよ」

 

 ブラックは彼が握っていた二本の杖を元々の持ち主の足元へと放り投げる。先ほど話した優位を自ら捨てるような行為に、ロンは動揺した。

 

「……やっぱり脅迫は性に合わないな。普通に交渉しようか。さて、これで俺は丸腰、先払いだ。鼠と引き換えにハリーの杖も返そう。ムーニー、いいか?」

「ああ、構わないとも、パッドフット。さあ、ウィーズリーくん。決断の時だ。鼠を渡してくれ」

「……………………わかったよ」

 

 ロンはのろのろとポケットから鼠を取り出す。鼠はかつてないほどに激しく暴れていたが、ルーピンが杖を振ると、鼠は空中に磔になった。

 

「ありがとう、ウィーズリーくん。君の判断が正解だったと証明しよう」

「……その前にハリーの杖を返せよ」

「もちろんだとも。我々は誠実であり、裏切りは行わない」

 

 ルーピンはハリーに杖を渡す。ハリーは杖が少し拗ねているように感じた。

 

「さて、ウィーズリーくん。何の呪文を使われるかわからないままでは不安だろう。これより私たちが使うのは、スペシアリス・レベリオという呪文だ。

 ──ミス・グレンジャー。この呪文の特性は?」

「はい、スペシアリス・レベリオは暴露呪文の一種で、対象の化けの皮を剥がすことに特化した呪文です。隠された呪い、変身術で姿を変えたものを見破り、変化したものを元に戻しますが、それ以外の対象を傷つける効果はありません」

「よろしい。もし私が教師だったら、グリフィンドールに得点を与えたことだろうね」

 

 それはまるで授業のようなやりとりだった。

 

「さて、ウィーズリーくん。少しは安心したかな?

 それではパッドフット、準備はいいか?」

「問題ない。一緒にするか?」

「そうしよう。三つ数えたらだ。いち、に、さん──」

 

 スペシアリス・レベリオ 化けの皮剥がれよ!

 

「ひ、久しぶりだね……ムーニー、パッドフット……」

「やあ、()()()()。しばらくぶりだね、元気だったかい?」

「ああ、会えて嬉しいよ()()()()。すぐにさよならすることになるだろうがね」

 

 鼠が急成長し、小柄な男となった。

 ブラックたちの言うとおり、スキャバーズはピーター・ペティグリューだった。

 足が治ったというのに、ロンがふらりと倒れそうになる。ハリーは彼の肩を支えた。

 ピーターはキーキーと声を上げて弁明する。

 

「違うんだよ、ムーニー。僕は何も裏切っちゃいない」

「ああ、そうかもしれないね。ピーター。しかしね、無実の人間はわざわざ鼠として12年も飼われようとは思わないんだよ」

「それは……怖かったんだ! パッドフットが僕を殺しに来ることが怖くて……」

「なるほど。ところで君はついさっきまでどこにいたんだい? ホグワーツだろう? ダンブルドアに話さなかった理由を持っているかな? 彼なら君のことを例えヴォルデモートからでも護り抜いたと思うんだけれど」

「──ムーニー。そろそろいい時間だ。ダンブルドアが帰ってくる前に手っ取り早くすませよう」

 

 それもそうか。ルーピンが同意し。

 ピーターがヒィと悲鳴を上げ。

 かたり。

 物音がした。

 反応できたのはブラックだけだった。

 

「セクタムセンプラ 切り裂け!」

 

 飛来する白い閃光。

 ブラックが全力で体を捻ると、それは先ほどまで彼の首があった位置を通過して、背後にあった衣装棚を上下に切断した。

 滑り落ちる棚の上半分。堆積した埃が宙を舞う。

 

「──学校の脅威に対し、アルバス・ダンブルドアが何の対策も打たなかったと()()()考えていたならば、そいつは最早ホグワーツ史上最も愚かな生徒だったと言わざるを得ませんな」

 

 視界が良好になった時。

 スネイプが這いつくばるブラックに杖を向けていた。

 

 混迷は加速する。

 

 

 

「今夜、貴様がホグワーツに侵入することを校長は掴んでいた。彼の要請を受け、我々教員は最大限の警戒網を敷いていた──貴様らはホグワーツ中の隠し通路を知っていたから苦労しましたぞ。

 よりにもよって、我輩が唯一知っていた隠し通路を選んでくれるとは、全く有難いことですな」

 

 ──ハグリッドが足止めしなければもっと早く来れたものを。

 

 スネイプはぼそりと悪態をつく。よくよく見れば、スネイプのローブはところどころ濡れていた。

 

「──それにしても、ムーニー! ワームテール! パッドフット! 『マローダーズ』諸君がお揃いで同窓会とは! いや、失敬。プロングス殿はご欠席のようで。旅行中ですかな?」

「スニベルス、お前こそ『死喰い人』の仲間を迎えにきたのか? ヴォルデモートの配下が友達思いだなんて初めて知ったぜ」

「軽口を叩くのもこれで最後だ。十分に楽しむといい、ブラック。吸魂鬼がお前とキスするのを楽しみにしているぞ」

「スネイプ、違うんだ。シリウスは無実だった。ピーターが鼠に化けて隠れていた。こいつが裏切り者だったんだ」

「違うんだ! リーマス! ハリー! シリウスとスネイプが二人で僕を殺しに来たんだ!」

「ペティグリュー、貴様もブラックの後を追わせてやる。だから腰巾着は黙っていろ。

 さて、ルーピン、貴様は奴らの中でも多少マシだと思っていたが、どうやら我輩──私の見込み違いだったようだな。()()貴様が何も知らなかったとして、こいつらが()()()()裏切ったとは何故考えない? ついに頭にまでウェアウルフィー(人狼症)が回ったのか?」

「スニベルス、俺の親友を馬鹿にするな!」

「親友! 親友とは! 私はてっきり、貴様にとってルーピンは召使いか何かだと思っていたぞ。

 ──グリフィンドールでは、事故を装って他人を謀殺するための道具を『親友』と呼ぶのか?

 少なくとも友誼を重んじるスリザリンではそんなものは親友とは呼ばぬが、騎士道とはかくも奇怪なものですな」

「その件については私とシリウスの間で決着がついている。無関係な人間に言われる筋合いはない」

「だからなんだ? こいつとポッターが私を殺そうとしたのは事実だ。少なくとも当事者たる私は謝罪の一つも受け取ってはいない」

「ガキの頃の話をぐちぐち言いやがって。当然の見せしめだ。今お前は生きているからいいじゃねぇか」

「そうだな。ポッターのやつが怖気付いた結果だ。ブラック、貴様は私を殺すことに一切躊躇しなかった。今だからこそ思うが、『マローダーズ』の中でも特に貴様は異常だった。

 ──人狼を使って半純血を殺しても良い、というのはブラック家の教えか? 『純血よ永遠なれ』。人狼も半純血も『混じり物』に違いはないのか?」

「俺を、あいつらと一緒にするな──」

「ハリー! 僕は君に傷一つつけなかった! そんな僕が裏切り者なわけがないだろう!?」

 

 情報の氾濫。

 

 シリウス・ブラックは両親を死に追いやった裏切り者だと思われていたが、それは誤りだった。しかし、スネイプを殺そうとしたのは事実であり、本人も認めている。

 セブルス・スネイプはハリーとは気の合わないと言うだけの教師だった。しかし、彼は『死喰い人』の一員であったとブラックは語り、本人も否定しない。

 ピーター・ペティグリューは死んだものと思われていたが、彼は実は生き延びていて、その上裏切り者だとブラックとスネイプの双方が言う。しかし、彼自身が主張するように、少なくともこの3年間ハリーはかすり傷ひとつ受けていない。

 唯一、リーマス・ルーピンだけは誰からも強く疑われていない。彼は「人狼」なる存在らしいが、ハリーはそれについての知識を持っていなかった。この中では比較的信頼がおけるだろう。しかし、彼はブラックと意見を同じくしている。この男がブラックの仲間ではない保証──そこまで言わずともブラックに騙されていない保証はどこにもない。

 

 異なる世界、異なる前提。

 もし、仮に、この中にハリーにとって一人でも信頼できる大人がいたならば、彼はその人物に味方しただろう。

 しかし、ここにいる人間のうち、二人は初対面であり、一人はハリーと険悪な仲であり、残りの一人は人間としては今日初めて出会った。

 判断材料が全く不足していた。

 

 ブラックはスネイプに杖を向けられ動けない。

 スネイプはルーピンを警戒し動けない。

 ルーピンはペティグリューに目を配る必要があり動けない。

 そしてペティグリューも動かない。

 状況はいっそ奇妙なまでに硬直していた。

 彼らと比べれば些細な戦力ではあるが、事実上ハリーたちはキャスティングボートを握っていた。

 

「ムーニー! ピーターから目を離すなよ! 何かあればそいつは逃げ出すぞ!」

「他人の心配をする余裕があるのか、ブラック? 私はお前に会える日をずっと楽しみにしていたぞ……。私を殺そうとし、リリーを裏切った貴様には、然るべき報いが必要だ……」

 

 しかし、ハリーには解法が浮かばない。状況を動かす『智』を持たない。

 

「はっ、リリーのケツを追いかけていたスニベリーくんは今度は俺にご執心なのか?

 ──お前、すげぇ気持ち悪いぞ」

「最期の言葉はそれでいいんだな? 安心したまえ、すぐに貴様の腰巾着を送ってやるとも。

 セクタム──」

「────あの!」

 

 なればこそ、『智』は彼女の領域だった。

 

「スラグホーン先生です! 彼なら真実薬を──」

 

 状況が動いた。

 ペティグリューが瞬時にその身体をネズミに変え逃走を図る。

 ルーピンがペティグリューに妨害呪文を打ち込み彼の動きを遅延させる。

 スネイプはブラックに向けていた杖をペティグリューに向け直し、切断呪文を放って。

 そして這いつくばっていたブラックは自らを黒犬に変え、必死の動きで切断呪文を躱したペティグリューをその前足で捕らえた。

 

「──持っているわ……」

 

 ハーマイオニーが言葉を言い切る頃には、状況は終結していた。

 真実薬を用いずとも、今や真実は明らかだった。

 スネイプとルーピンは黒犬に近づく。空気が少しだけあったかくなったようにハリーは感じた。

 

「ミス・グレンジャー、残念ながらお勉強が足りませんな。真実薬はあくまで『本人が思う真実』を明らかにする魔法薬だ。狡猾な魔法使いなら()()の一つや二つ用意しているが故に、ウィゼンガモットは薬の証拠能力を信頼していない」

「スネイプ、誰も彼もが君のように魔法薬学に精通しているわけじゃないんだ。彼女が知り得なかったとしても、それを責めるべきじゃない」

「ルーピン、教師じゃない貴様は知らんだろうが、この小娘はマグル生まれにしてはなかなかに優しゅ──」

 

 口を滑らせた。

 

「──とにかく、ペティグリューは『確実に』裏切り者であり、真実薬について三年生程度の知識しかない愚か者だったというわけだ。そら、ブラック、何をしている? 貴様が無実だと言うのなら、さっさとそいつを喰い殺したまえ」

 

 言われずとも。そう言わんばかりに黒犬は歓喜の咆哮をあげる。完全に押さえつけられた鼠は全く動けなかった。

 止めたのはやはりハーマイオニーだった。

 

「──それは、ダメだと思います。真実薬に証拠能力がなかったとしても、『自分は裏切り者だった』とペティグリュー自身が認識していれば、少なくともブラックさんの犯行動機の前提がなくなります。そうすれば、ブラックさんの再捜査は行われるはずです。今ペティグリューがいなくなれば、ブラックさんに弁明の機会がなくなるかと……」

「そうだ、パッドフット。君は自由になれるんだ!」

「──グリフィンドール、ホグワーツに戻ったら、無断で学校を抜け出した罪により一人五十点ずつ減点する」

 

 ちっ、とばかりにスネイプは渋面を浮かべる。

 ハーマイオニーが口を挟まなければ、今、確実にブラックはペティグリューを喰い殺していた。

 そうして無実の証拠がなくなったブラックは一生罪を晴らすことができなくなっていた。

 スネイプはごく自然にブラックを社会的に謀殺しようとしていたのだ。

 ハリーは彼らの間に横たわるどす黒い因縁にゾッとした。

 

 黒犬が人間の姿へと変わる。

 ブラック──シリウスはハーマイオニーに謝辞を述べた。

 

「──ありがとう、お嬢さん。……俺は、アズカバンでピーターを殺すことだけをずっと考えていた。それだけしか考えていなかった。無実だったらアズカバンを釈放される、ってことすら考えられなかった。ピーターを殺した後、幸せに暮らせるだなんて一度も考えなかった。

 ……そうか、ピーターが裏切り者だって証明できれば、俺は自由か。自由か──」

 

 シリウスはその言葉が信じられないように、何度も自由、自由、自由、と繰り返し。

 突如爆笑。ニヤリ、と笑ってルーピンに語りかけた。

 

「よぅ、ムーニー! 俺って自由だったらしいぜ! いやいや、吸魂鬼に頭をやられていたかな。無実だってことと自由になれるってことが全く結びついてなかった!

 お前も悪いやつだな、ムーニー。わかっていたなら先に言ってくれよ!」

「すまないね、パッドフット。ただね、私には今のいままで、君とピーター、どっちが『確実に』裏切り者かを判断できなかったんだ。君を殺す可能性があるのに、君が自由になった先を語るのは酷だろう?」

「酷いな。そこは信頼して欲しかったぜ。

 しかし、自由か。自由だな。さて、何をするか。とりあえず『漏れ鍋』かどこかでファイヤ・ウイスキーを引っ掛けて、いい女を見つけて一発──」

「──ブラック、貴様が犬らしく盛るのは結構だが、()()としては、ホグワーツ三年生の前で()()を語るのは些か問題と思うがね」

 

 なんのことだ? さあ?

 ハリーとロンは顔を見合わせる。

 ハーマイオニーは「私に聞かないでよ!」とばかりに顔をぷいと背けた。

 おそらく現時点でスネイプ教授に最も感謝したグリフィドール生はハーマイオニー・グレンジャーだった。

 

 

 

「えっ──僕はあなたと暮らすことができるんですか!」

「ああ、君が望むならだが……。もちろん君が今の暮らしがいいというなら無理強いはしない──」

「──いいえ、僕、僕! あなたと一緒に暮らしたいです! 家はありますか? 夏休みからすぐ引っ越せますか?」

 

 全てが解決した帰り道。

 彼らは一団となってホグワーツへと向かっていた。

 ピーター・ペティグリューは人型に戻され、ロンとルーピンに片腕ずつ手錠で繋がれ歩かされた。スネイプは「インペリオ」なる呪文を使うことを提案したが、ハーマイオニーはそれは許されないことだと主張し、シリウスたちもそれに同意していた。ロンでさえ、「インペリオ」のことに詳しいようで、青い顔をしてぶんぶんと首を振っていた。「インペリオ」について、ハリーは後でこっそり誰かに聞こうと思った。

 先頭をクルックシャンクス、そのすぐ後ろをペティグリューたちが歩く。シリウスとスネイプはどちらも前を歩きたくないと主張し、最終的にハリーとハーマイオニーが間に挟まることで渋々シリウスが折れた。

 

 洞窟を抜けると、すでに外は真っ暗だった。

 そのまま校庭を無言で歩く。ホグワーツ城からは灯りが漏れていて、ハリーはとても暖かな気持ちになった。

 城からだけでなく、空からも光が降り注いだ。月明かりだ。満月が彼らを見つめていた。

 突如、先頭集団が立ち止まる。

 背後から声が聞こえた。

 

「……待て、ブラック、ルーピンの奴は『薬』を飲んでいるのだろうな?」

 

 恐る恐る、というスネイプの声を、ハリーは初めて聞いた。

 シリウスはそれにあっけらかんと答えた。

 

「ああ、当たり前だろう? リーマスは馬鹿じゃない。毎月『夜の闇横丁』の人狼ネットワークから『薬』を仕入れ──」

「──この、愚か者どもが! 我輩でさえ作るのに苦労する『脱狼薬』を、どこぞの馬の骨が毎月正確に作れるわけがなかろうが! 粗悪品だ──」

 

 スネイプの罵倒は、狼の遠吠えにかき消される。

 先頭を歩いていたはずのルーピン。彼の身体が肥大化し、全身から毛が生え出し、手からは鉤爪が生える。

 「人狼」。その意味をハリーは身をもって知った。

 

 さらに、事態は動く。

 男は機会をじっと伺っていた。

 男は前にも追い詰められたが、危機において輝く才能を持っていた。

 男はかつて、周囲の人間を犠牲にすることで逃げ延びた実績があった。

 だから、男は成功体験に従った。

 

「クルーシオ! 苦しめ! セクタムセンプラ! 切り裂け!」

 

 男──ピーター・ペティグリューはロンになんらかの呪いをかけ、自分と人狼を結ぶ手錠を切断した。

 人狼に腕を繋がれたまま、ロンが聞いたことのないような絶叫をあげる。ペティグリューは聞いたことのないような調子外れの笑い声をあげる。

 

「ばかな、ワンドレス(杖なし)で『磔の呪文』だなんて、ピーターにできるはずがない!」

 

 動揺。哄笑。

 

()()()()()()、12年間君がアズカバンにいた間、僕はずーっとネズミだったんだ。わかるか? 12年だぞ!? 辛かった、ああ、辛かったとも! 12年もペットとして過ごすのは、ああ、辛かった! 人間として生きられないのはこの上なく辛かった!

 だから、少しでも人間らしく生きるために、杖が無くても魔法を使えるように練習したんだ! ベラトリックスが自慢げに言ったように、『本気』になれば『磔の呪文』を使うことなんて簡単さ!

 ああ、そうだよ! もう、僕は君よりも、プロングスよりも、アニメーガスとしても、魔法使いとしても、ずっと、ずーっと優秀なんだ!」

 

 そうだ、ベラトリックス、ベラトリックス。

 ハリーを見つめる目は、暗く澱んでいた。

 

()()()()()、君も君だ。この三年間、僕はとても怖かった! パッドフットから逃げ切ったのに、今度はベラトリックスが僕を追いかけてきた! 僕はずーっと君に助けてもらいたかったのに、君はベラトリックスなんかと仲良くしやがって! ふざけるなよ!?」

 

 ベラトリックス? 誰だ?

 ハリーの疑問をよそに妄言は続く。

 

「だいたいなんでベラトリックスと君が仲良くしているんだ! 君にはリリーがいるだろう! 僕の親友がそんなに薄情な奴だとは思わなかったぞ! リリーは優しかった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「──アバダ ケダブラ!」

 

 ハリーの後方から、緑色の閃光がピーター目掛けて飛び──。

 ぐにゃり。

 ハリーの目には、ペティグリューの上半身が消えたように見えた。

 いや、違う。

 ペティグリューの腰より上から、ネズミの上半身がネズミの大きさのままで生えていた。

 普通のネズミから人間の手足が生えていた。

 ハリーはあまりにも「まともじゃない」光景に吐き気を覚えた。

 緑色の光線をかわしたピーターはスネイプを嗤う。

 

「スニベルス、スニベルス! 残念だったな! 君なんかよりも、僕の方が『闇の帝王』には相応しい! じゃあな! 僕はもう行くぞ! 僕こそが『闇の帝王』の一番の配下! ベラトリックスよりも! スニベルスよりも!」

 

 そう言って、ペティグリューは奇怪な笑い声を上げながら走り逃げる。

 一件落着からあまりにも急転直下すぎる。

 硬直するハリーとハーマイオニー。彼らを再び動かしたのは、二人の魔法使いだった。

 

「── ()()()()! ピーターを追え! ハリー! 絶対にそこを動くなよ!」

「── ブラック! ルーピンからウィーズリーを引き離せ! 『磔』を受けている今ウェアウルフィーを流し込まれたら死ぬぞ! ポッター! 貴様は動くな!」

 

 スネイプは逃げるペティグリューの背に赤や緑、白の魔法を放つ。しかしどれも当たらない! ペティグリューは身体の一部分だけを器用にネズミに変え、人間に戻し、それを繰り返しながら『禁じられた森』へと消えていく。スネイプもそれを追っていなくなった。

 シリウスは黒犬に変身し、人狼へと突撃する。手錠の鎖を咬え、力任せに噛み切りロンを解放した。

 その代償に、彼は鉤爪で大きく切り裂かれる。しかし、黒犬はそれにも構わず人狼に体当たりし、離れたところへと押し出した。

 残されたのはロン一人。彼は血反吐を吐くようにのたうち回っていた。

 動くな? ハリーもハーマイオニーもそんな言葉は聞いてすらいなかった。彼らはシリウスがルーピンを吹き飛ばすや否や親友の元へ駆け寄った。

 

 ロンの元にたどり着くと、一分か二分しか経っていないのにロンはひどく衰弱していた。

 パラパラと降り始めた小粒の雨ですら溺れそうなほどに息絶え絶えだった。

 ハーマイオニーが彼の頭を膝に乗せ治療を始める。

 

「ロン、ロン! 気をしっかり!

 エネルベート! リナベイト! エピスキー! アナプニオ! フィニート・インカンターテム!」

「ハーマイオニー! ロンは何の呪文にやられたの!?」

「『磔の呪い』よ! 『許されざる呪文』の一つ! ああ、あの人! なんて──なんて恩知らず! 助けるべきじゃなかった! シリウスの無罪を掴む方法なんて他にいくらでもあった!」

「──ハーマイオニー! しっかりしてくれ! 君だけが頼みなんだ! 治療法は!?」

 

 ハリーの問いかけに、ハーマイオニーは半ば絶叫するように答えた。

 

()()()()! 無いの! 『磔の呪文』は傷じゃなくて痛みだけを与える魔法なの! 効果が切れるまで耐えるしかないの! 早く止めないと心が壊れ……その前にショック死しちゃうわ!」

 

 なんだ、それは。そんな馬鹿な話があるものか。

 認められない。ハリーは過去を呼び起こす。

 ベゾアール石、賢者の石、マンドレイク、盾の呪文、チョコレート、骨抜き呪文と骨生え薬、不死鳥の涙──。

 浮かんでは消えていく治療法。

 効果のないものがあり、間に合わなかったものがあり、用意できないものがあり。

 やがて──。

 

「ハリー、何を!?」

 

 ハリーは杖をロンの胸に当て、深く息を吸った。

 

 


 

 

 記憶の果て。

 

「さっ、ハリー。少しの間休憩しましょう? はい、今回のお菓子はマカロンです。ダンブルドア先生が昔ご友人からいただいた由緒ある銘柄だそうですわよ?」

 

 あれは、そう。一月頃だったか。

 『必要の部屋』で『彼女』と「守護霊の呪文」を練習していた時のこと。

 話の種として、ハリーは「守護霊の呪文」について尋ねた時のことだ。

 アクシオ、と少女が唱えると、「通常の呪いとその逆呪い概論」、「闇の魔術の裏をかく」、「自己防衛呪文学」、「呪われた人のための呪い」などの書籍が周囲の本棚からドサドサと飛来する。

 少女はその中の一冊を手に取りページをめくり、語り出す。

 

 一つ。魔法的な技量は関係なく、その個人の「幸福な思い出」を依代に発動する。

 二つ。吸魂鬼を撃退する効果を持つ。

 三つ。レシフォールドなる、人を窒息死させる魔法生物を撃退する効果を持つ──机上の空論ではあるが。

 四つ。遠隔地へと伝令を行う。

 五つ。基本的に守護霊の姿は決まっているものの、ごく稀に姿が変わる事例が報告されている。

 六つ。心の調子を崩した人には守護霊を作り出せない。作り出せても奇妙な形になる。

 七つ。どんなに優秀な存在であっても、闇の魔法使いに「守護霊の呪文」は使えない。

 

 本に書かれていること、書かれていないこと。混ぜこぜに少女は楽しそうに話す。

 そうして詳細を知った上で、ハリーの当初からの疑問は解決しなかった。

 ハリーは思い切って疑問を口にする。

 

「ねえ、この呪文、やっぱり変じゃない? 魔法の効果が()()っていうか……」

 

 浮遊、閃光、全身金縛り、盾、武装解除、風……。

 これまでハリーが知り、学び、使ってきた魔法。

 その全ては、「一魔法一効果」を原則としていた。

 もちろん、例えばルーモスの呪文であっても、暗闇を照らすだけでなく目眩しに使うことだってできる。

 しかし、それはあくまで出力を変化させただけ、「杖の先に光を灯す」という魔法効果を拡大しただけに過ぎない。

 「闇の魔法生物を撃退する」と「離れた相手に言葉を伝える」では全く用途が違う。どちらかの解釈を捻じ曲げたとしても、ハリーにはこの二つがイコールで結びつくとは思えなかった。

 そんなハリーの疑問にしばしの間少女は小首をかしげ、考えがまとまったのか話し始めた。

 

「──そもそも、『守護霊の呪文』は吸魂鬼対策の魔法では()()、とわたくしは考えています」

 

 え、とハリーの口から思わず声が漏れた。

 

「ごめんなさい、言葉が足りませんでしたわね。私が言いたかったのは、『守護霊の呪文』は吸魂鬼を撃退できる魔法ではあるものの、吸魂鬼を撃退する()()()作られた魔法()()()()ということです」

 

 少し、魔法史の勉強をしましょうか。

 そう言って少女は再びアクシオ、と唱え、「魔法史」の本を呼び寄せた。彼女はパラパラとページをめくり、やがて止まる。

 そこには、北海に浮かぶ孤島とそこに立った要塞の写真が載っていた。

 

「吸魂鬼の発生については諸説ありますが、現在最も有力な説は、『魔術師エクリジスが作り上げた人造魔法生物』というものです。15世紀にアズカバン島を根城にしたエクリジスは、さまざまな闇の魔術を開発し、吸魂鬼もその研究結果の一つとされています。

 一方で、『守護霊の呪文』については、それがいつ、どこで作られた魔法か明らかになっていません。発掘された壁画や遺物に描かれていたことから、少なくとも歴史が編纂される以前より存在する古代の魔法だと言われています」

 

 少女はティーカップを手に取り、口を潤す。

 

「ね? 年代が合わないでしょう?

 少なくとも、吸魂鬼が生まれるはるか昔から、『守護霊の呪文』は使われてきた、ということは明らかなのです」

 

 ここからは、わたくしの妄想話になりますが、お付き合いくださいます?

 そう言って、少女はハリーの目を見つめた。

 これまでにも度々目にしてきた表情だ。この少女は、魔法、呪文について話す時、目を輝かせて語りだす。

 気恥ずかしくなって、少年は急いで続きを促した。

 

「わたくしは、『守護霊の呪文』の本質は、むしろ『誰かに想いを伝える』方にあると思っています。

 吸魂鬼を撃退できるのは、彼らの許容量を超えた『幸福』は毒に等しいから。

 守護霊の形が変わってしまうのは、守護霊が変わるほどの強い『想い』を抱いたから。

 心を崩した魔法使いには守護霊を作り出すほどの強い『幸福』、『想い』を生み出す気力がないから。心を歪めて『想い』がおかしくなった魔法使いは、守護霊の形も不安定になるといいます。アニメーガスと同じですね。

 闇の魔法使いに守護霊が創り出せないのは、もはや彼らが誰かに『幸福』を伝えようとすら考えることができなくなったから。

 レシフォールドを撃退できるのは、彼らが本質的に一人でいる『孤独な人間』を捕食する性質だから──なんてどうです? 『歌う魔女』のお父様は有体の守護霊を出せないのに、マグルの奥方を助けたそうですよ?」

 

 ──最後には流石に無理がないか?

 そんなハリーの視線に、「わたくしが魔法生物に詳しくないことなんて知ってますわよね!? レシフォールドの『正解』を知りたいならスキャマンダー教授にでも連絡をとってくださいな!」と少女は声を荒げる。

 その顔はほんのり赤く染まっていた。

 

 

 こほん。

 空咳一つで気を取り直して。

 ね? だんだん見えてきません?

 そう少女はまとめに入った。

 

「最初に『守護霊』を作り出した方は、きっと思ったのでしょう。

 『自分の親しい誰かに、自分の幸せを知ってほしい』と。

 ──つまりは、『愛』ですわ、ハリー。そうだったら、素敵ではありません?」

 

 


 

 

「エクスペクト・パトローナム! 守護霊よ!」

 

 ハリーは守護霊をロンの胸の奥、『心』に流し込んだ。

 ハーマイオニーが驚愕の声を上げるが気にしない。

 『彼女』もそんな使い方があるなんて言っていないが気にしない。

 ハリー自身、これがとんでもなく分の悪い賭けだと分かっているが気にしない!

 

 ハリーはロンに想いを流し込む。

 装填するは一つの『幸福』。

 

 ハリー・ポッターは十一歳の誕生日を迎えるまで、孤独だった。叔父夫妻は彼をやっかみ、従兄弟は彼を対等とみなさず、周囲の誰もが助けてくれなかった。

 ハグリッドに出会ったことは『幸福』だったが、彼は父性──父親としての側面が強かった。

 

『「ここ空いてる? 他はどこもいっぱいなんだ」

 「君、ほんとにハリー・ポッターなの?」

 「まあ、いいや。これからよろしく、ハリー」』

 

 なればこそ、最初の友達にして一番の親友たるロンに出会ったことは、紛れもなく、誰がなんと言おうと、彼の誇るべき『幸福』だ──。

 

 思いを、想いを、幸福を流し込む。

 ハーマイオニーが呪いを看破し。『彼女』が打破の構想を与え。

 ハリーはいつだって友人に支えられてきた。

 

「リリー、ハリーを連れて逃げろ!」

「ハリーだけは! ハリーだけは!」

 

 この一年嫌になる程聞いた幻聴が聴こえた。

 『生き残った男の子』なんて、糞食らえだ。

 自分一人だけ『生き残って』もなんの価値もない!

 

「ロン。頼むよ、ロン。起きてくれ! 君と友達になれたことは、僕にとって一番の『幸福』だ──!」

 

 

 そうして、精魂尽き果てて。

 ハリーは夢見心地になる。

 

「ハリー、ハリー! 凄いわ! ロンが落ち着いたの!」

 

 ハーマイオニーの声が聞こえた。

 よかった。安心した。

 ハリーはゆっくりと目を閉じる。

 意識を失う直前、遠くで吸魂鬼を白銀の牡鹿が吹き飛ばすのがちらりと見えた。

 

 

 

「やあ、おはよう、ハリー」

 

 目が覚めると、恰幅の良い白髪の男がハリーを覗き込んでいた。

 見覚えがある──そうだった。魔法大臣だった。

 コーネリウス・ファッジであることをハリーは認めた。

 ファッジはハリーに労るように話しかける。

 

「ハリー、大丈夫か? 痛むところはあるか?」

「いえ、僕は大丈夫です──そうだ! ロン! ロンは無事ですか?」

 

 よくよく見れば、ファッジの後ろにはスネイプが立っていた。ハリーは状況に詳しいであろうスネイプに問いかけたつもりだったが、ファッジが答えた。

 

「大丈夫だ。問題ない。大丈夫だ。ウィーズリーくんは先ほど少し起きて、一杯水を飲んだ。話をしたマダムが言うには、受け答えはしっかりしていて緊急の影響は無いとのことだ。

 あとは時間が解決するのを待つしか無い」

 

 ファッジは少し目を伏せ、やがて明るく振る舞った。

 

「しかし、ハリー、君たちもひどい目にあったね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! それも未成年に『磔』をかけるだなんて人間とは思えない!」

「──違います! ペティグリューが! 奴が生きていたんです! 奴がロンに『磔の呪い』をかけたんです!」

 

 ハリーは叫んだ。

 あまりにも声を荒げてしまったために、彼は大きくむせる。

 そんなハリーをファッジは痛ましげに見つめ、少年の背をさすった。

 

「ハリー、いいんだ、もういい、もう終わったことだ。ブラックには間もなく刑が執行される。

 ──スネイプ教授、ありがとう。君たちの協力のおかげで、ブラックを捕まえることができた」

「──いえ、我輩はできることをしたまでです。むしろ、ウィーズリーが『磔の呪文』を掛けられ、ポッターたちが『錯乱』される前に助けられなかったことは、大きな失態でした」

「そう完璧を求めることはない。君はよくやったよ。ハリー、十分に休むといい。きっとウィーズリーくんも良くなる。だから、心配するな」

 

 

 

「さて」

 

 魔法大臣が去った後。

 今にも飛びかからんばかりのハリーをよそにスネイプは保健室の椅子に座った。

 

「ポッター、グレンジャー。初めに言っておくが、今晩起こったことは全て事実だ。諸君らは『錯乱』などしていない。

 あの後ペティグリューは『闇の帝王』の元へ返り、ルーピンは『禁じられた森』の中へと消え、人狼と吸魂鬼と戦ったブラックは精魂尽き果てたところをフリットウィック教授に捕縛された。

 考えうる限り最悪の結末だ」

 

 ハーマイオニーがスネイプに抗議する。

 

「待ってください! 貴方が、ペティグリューさえ、ペティグリューさえ捕まえていれば! なんとかなったはずではありませんか!?」

「──そうだな。それは我が輩の落ち度である。認めよう。セブルス・スネイプはピーター・ペティグリューに敗北した。耐え難い屈辱だ。

 その上で、敗者の我が輩に言わせていただければ、我が輩は()()()()()ペティグリューの奴を無力化しろ、と提案したと思うがね。我が輩の意見を()()()()()切り捨てたのは、グレンジャー、君の小賢しい浅知恵ではありませんでしたかな?」

 

 いつものように皮肉を言っているが、スネイプはかなり堪えているようにハリーには見えた。

 

「終わったのだ。終わったのだよ、グレンジャー。我々はペティグリューを取り逃し、ブラックは吸魂鬼のキスを受ける。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。これは決まったことだ。もっとも、我が輩にとっては、ブラックの奴を始末できただけでも不幸中の幸いだがね。

 このあと、我が輩は八階のフリットウィック先生の部屋へと向かう。奴の遺言は聞かせてやるとも。

 それでは、グレンジャー。君がクローカーの論文を読んでいることを願うのみだ」

 

 

 そう言ってスネイプが立ち去った後、うんうんと唸っていたハーマイオニーが突然立ち上がった。

 

「──ハリー! そうよ! 過去に戻るのよ! 私たちにはまだ、時間が残されているわ!」

 

 

 

 

 

「──なんと。わしがおらぬ間にそんなことがあったとは」

「失礼ながら、校長。あなたは全てを見通していたのでは?」

「そんなことはないよ、セブルス。わしは他のものより少しだけ長生きし、他のものよりそれなりに賢いだけの、ただの老人に過ぎぬ」

 

 どうだか。

 セブルス・スネイプは心の中で悪態をついた。

 優れた開心術・閉心術師であるセブルスであっても、ダンブルドアの心は読めず、心を読まれているかもわからない。

 底知れぬ老人であった。

 老人はレモン・キャンデーを男に勧める。男は固辞した。

 老人はそれを口に入れ、旨そうに頬を緩めた。

 

「──ところで、セブルス。よかったのかの?」

「何がです?」

「ハリーたちを誘導してシリウスを逃したことじゃ。わしとしては非常に助かるが、君にとっては、ほら、のっぴきならぬ関係じゃろう?」

 

 ああ、そのことか。

 セブルスは鼻を鳴らして答えた。

 

「問題ありません。グレンジャーはよくやってくれました」

 

 あの小娘はうまくやり遂げてくれた。校長の話を聞くにペティグリューはあの場から絶対に逃げられたという。ならば、この結果は最善だろう。

 口にはしないが、セブルスは大半のスリザリン生のようにマグル生まれである彼女を嫌ってはいなかった。授業を自らのショーステージと勘違いしている傲慢さには腹が立つが、「魔法薬学が得意なマグル生まれの魔女」を嫌いにはなりきれなかった。

 口にはしないが。

 

「うむ、しかし、シリウスはお主を殺そうとしたじゃろう? これがリーマスならわかる。人狼であることに罪はない。ジェームズでも理解しよう。結果だけ言えば、彼はお主の命を──」

「──校長。戯言を申されるならお休みになられては?」

「──そうじゃな。話を戻そう。わしにはお主がシリウスを助けようとした理由がわからぬ。むしろ嬉々としてシリウスを殺そうとすると思っておった」

 

 セブルスは皮肉げに口を歪めた。

 

「校長。やはりあなたのお見込みは正しい。私はブラックを殺してやりたいと思っていますし、機会があれば殺そうと思います」

「ならば何故──」

「──ブラックはリリーの仇ではなかった。ペティグリューこそが裏切り者だった。それでは不十分ですか?」

 

 そう、セブルスにとっては当然の帰結だった。

 真理だった。

 

「我々が誰一人として知らなかった、ペティグリューが裏切っていたことを知っていたのは奴ですし、ペティグリューを見つけ出したのも奴です。

 奴は猟犬としては使えます。ここで首を絞めるよりも、鼠狩りにでも使ったほうが賢いかと」

 

 それに、奴の無罪が証明されなかった今、奴にはペティグリューを捕まえるより先はない。駄犬でも鼻先に餌をぶら下げれば走ります。死んでも死喰い人疑いの脱獄犯が消えるだけ、使い潰しましょう。

 セブルスは提案した。

 

「──セブルス。わしは可能であれば誰も死なぬように取り計らうが、それでもよいのか?」

「存じております」

 

 そんなことは知っている。ダンブルドアは非情であり、甘くもある男だ。そんなことは手駒であるセブルス自身が分かっていた。

 セブルスは酷く苦々しげに認めた。

 

「──ええ、ダンブルドア。リリーの仇を討ち、奴がそれに貢献したのであれば、私はブラックがのうのうと生き延びても良い、と考えています」

 

 リリーを裏切り死に追いやったことに比べれば、自分を殺そうとしたことなど比べるまでもなく軽い。

 そんな彼の言葉に、ダンブルドアが驚愕するように表情を歪めた。

 何を不思議がる必要がある? セブルスにはわからなかった。

 

「お主は……お主は、自分を殺そうとした男が幸せになっても良いというのか」

「語弊がありますな。ブラックはすぐにでも死んでほしいし、なるべく苦しみ抜いてほしいですが、ペティグリューを捕らえリリーの仇を討った後なら、認めてやる、というだけです」

 

 ダンブルドアは呻いた。

 

「セブルス、お主はそこまで──」

 

 

 校長室から戻る途中、ふと窓を覗くと。

 セブルスは学校の端で吸魂鬼が一匹蠢いているのを見つけた。

 アズカバンは吸魂鬼の管理もできぬらしい。そんなんだからブラックの奴を逃すのだ。

 

「エクスペクト・パトローナム」

 

 セブルスは守護霊を放ち、吸魂鬼を狩らせた。

 牝鹿は青空を駆け、消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 




Tips:セブルス・スネイプ

 〜ホグワーツ学生時代、彼と「マローダーズ」との関係は常に険悪なものだった。以下は彼と彼ら個人の関係性である。

 ジェームズ・ポッター:険悪。
 リリー・エバンズを誑かした男と仲良くできるはずもなし。
 ただし、実のところ彼ら自身の相性はそこまで悪くない。グリフィンドールを体現するジェームズとスリザリンを体現するセブルスは、憎み合いながらも付き合うことができる。とりわけ、リリー・エバンズを傷つけるような輩には協力して戦うことを惜しまない。
 同じ女を愛した以上、どことなく似るのは自然なこと。

 シリウス・ブラック:不倶戴天の敵。
 純血をくだらないと叫ぶ男と純血であればと渇望した男。
 名家の子供と貧困の子供。
 女性に愛されながら反抗心で無下にする男とただ一人の女性を死んでも愛した男。
 価値観が真逆、合うはずもなし。
 両親との関係性に悩んでいることのみ共通しているが、そもそものきっかけが存在しない。共通の敵、倒すべき邪悪が存在すれば協力することはできるものの、仲良くなる土壌が存在しない。
 血縁や心情で同じ寮に配属される可能性は存在するため、その時だけが唯一のチャンスだ。

 リーマス・ルーピン:多少マシ。
 リーマスは上記三名ほど交戦的ではない。「マローダーズ」に所属さえしなければ、ほどほどに仲良くすることができる。
 「マローダーズ」に所属していたとしても、リーマスが人狼であることそのものをセブルスは嫌悪しない。血縁や体質だけが人間の価値を決めるものではないと、セブルスは考えているからだ。
 それはそれとして、「マローダーズ」の破滅のためなら嬉々としてその情報を用いるが。

 ピーター・ペティグリュー:無関心。
 ジェームズとシリウスの取り巻き。それだけ。
 この男は自分に敵対しているが、それすら確固たる意思によるものではないと考えている。
 なお、リリー・エバンズを裏切ったあとは、「殺意」で固定される。改善はありえない。

 リリー・エバンズ:無粋。

 〜人物評! ハリー・ポッターキャラクター相関図 より抜粋〜




長かった「謎の囚人」編もこれにて閉幕です。お疲れ様でした。
最後におそらく来るであろう感想に事前に返信して閉幕となります。

Qピーターが超強化されてるのにうちの旦那様は薬飲み間違えとかアンチヘイトかな?
 噛ませ犬通り越してステージギミック扱いじゃねぇか頃すぞ(NNHADR)。
Aお姉さん許して(命乞い)
 原作において薬飲み忘れと言うメガトンコイン級のガバをやらかしている以上、あり得ると判断しました。
 リーマスを出したかったのですが、大人三人だと流石にピーターくんオーバーキルになっていたため、このような扱いとなりました。全国114514万人のリーマスファンと闇祓いの方に謝罪致します。
 ピーターくんは精神疾患から魔法疾患へのクソコンボです。どこぞの死喰い人に似た女が最後の引き金を引きました。
 ピーターくんの超強化とリーマスくんの見せ場は後ほどとなります。

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