この世界の私は私を見つめて微笑みながら変身した。
その姿は白衣を纏った暗殺者のようだった。
「私は親が死んだあの日、キュゥべえと契約して殺してもらいました。私の願いは『親が死んで私に親の物が手に入ること』です」
狂ったこの世界の私は微笑みながら、私なら出来ないし出来たら発狂しそうなことを言った。
「あのキュゥべえは不運にも事故った私で、さらなる実験をして死者の魔法少女化と、魔法少女に別の魔法少女の魂を入れることに成功した」
そう言うと、また鳥栖は黒板に何かを書き始めた。
「殺しの願いと救いの願いを一つの体に共存させる。それはキュゥべえにとって最高な実験台になったことでしょう。これなら多重人格にも適用できるかもしれないのだから」
黒板に書き続ける鳥栖の表情は狂人のそれだった。
「ただ、あなたがあんな願いでこんなことをするのは予想外だったでしょう。こうなれば感情エネルギーの回収が難しくなる。商売あがったりでしょう」
そう言ってから書き終えたそれを私に見せながら説明に入った。
「鳥飼さん、希望からの絶望の相転移エネルギーがキュゥべえが求めるもので、それをあなたなら手に入れられないように出来ることを知ってますよね?」
そう質問されて私は静かにうなずいた。
「でも、ドッペルシステムとグリーフシードリサイクルなら、絶望のエネルギーを回収しつつ、希望を与え続けることもできます。宇宙を守るシステムはそこにあります」
黒板にはそれをわかりやすく図式した物が、はっきりと全体的に書かれている。
「ただ、ここにシステムの不具合をいくつも書いていますが、いくら考えてもこのシステム達で世界を救えません。なら、あなたが用意してくれたイブとワルプルギスで終わらせればいい」
そう言う彼女の顔は狂気的で美しい笑みを浮かべていた。
「もう気付いてるでしょうけど、イブとワルプルギスの夜の因果は結びついてしまいました。あなたの中で配下の魔力が少量入ってそれで結びつきました」
彼女の言う通り、あの時私の中で全ての終わりと始まりを告げる鐘がなった。
それは、ワルプルギスの夜からの解放と、イブによる魔法少女の解放だ。
「そこで、結びついた瞬間に私と鳥飼さんの運命もつかながりました。それによって私は今ここで体に戻ることができたのです」
鳥栖はすごく嬉しそうにしながら私に自慢げに言った。
「しかも、私の固有魔法『空間切断』とあなたの固有魔法『魔女支配』が同時に使えるようになった。これで私はもう無敵です。だから、あなたにはなまるの評価を与えたのです」
その言葉を聞いて本当にまずいと思った。
出会うはずのない運命を結びつけたせいで、出会うはずのない私達まで会ってしまった。
しかも、この体はもともと彼女のだから本来なら私には何の権利もない。
つまり、私の完全敗北で成果を持っていかれることになる。
「そんなのはお断りだ」
私がうつむいてそう呟くと、私はここでフラグを回収することにした。
最初に神浜に降り立った時に思ったこと。
『魔女の回収を邪魔する人は居なくなればいいのに』
本当に私はそう言ったことを後悔した。
なぜなら、目的達成をしようとするせいでこんな人と戦うことになったのだから。
「悪いけど、あなたは運命の結びつきで帰ってこれるのかもしれないけど、そうなると私は消えないといけなくなる。だから、あんたにはここで消えてもらう」
私は今までにないほどの怒りが自分の中から湧いてくるのを感じた。
このまま行かせればすでに人を殺してるこの子は、報いを受けてない状態で絶対に暴れ始める。
しかも、ワルプルギスの夜を絶対にイブの所に連れて行ってしまうに決まってる。
それは絶対に阻止しないといけない。
「あんたみたいなクズは生きてる価値もない。しかも、あの日記も偽装の可能性が濃厚になった。なら、私を生き返らせたのもわざとの可能性が高い」
私はフラフラとしながらゆっくりと、でもしっかりと鳥栖に近づいて言ってやった。
ちゃんと胸ぐらを掴んで。
「私はまんまとあんたの手のひらの上で踊らされたわけだ。キュゥべえはどうせあんたの思惑を知らなかった。あんなのすらあんたは利用してこんなことをした。それを絶対に私は許さない!」
そう言いながら拳に配下達の数と力の分だけ込めて、思いっきりこのクズの顔面を殴ってやった。
その拳の重みは、こいつの思惑で私も含めて狂わされた運命の分だけ増した。
その一撃で鳥栖こよみは、この鳥飼こよみの前から消滅した。
次回、今回のことの解説とアリナとの最終決戦
おばさんは今回でこの体を完全に自分のものにした。もう、誰でも彼女という救世主を止められない。